福利厚生のメニューを増やしたい。若手や女性社員だけでなく、男性社員にも喜ばれる制度を入れたい。そうした検討の中で、美容に関する福利厚生が候補に挙がることが増えています。

一方で、美容は好みが分かれ、税金や表現の面でも気をつける点があります。この記事では、美容系の福利厚生の種類、向いている会社とそうでない会社、選び方の判断基準、導入前に確認したい注意点を順に解説します。

美容系の福利厚生とは

美容系の福利厚生は、社員の身だしなみや自分を整える時間を、会社が費用や機会の面で支える制度です。法律で決まった社会保険などの法定福利厚生ではなく、会社が自由に設計する法定外福利厚生に入ります。

住宅手当や食事補助のような生活を支える制度に比べると、歴史は浅い分野です。ただ、身だしなみへの関心は性別や年代を問わず広がっており、福利厚生の選択肢の一つとして取り入れる会社が出てきています。

注目される背景

背景には、主に3つの変化があります。1つ目は、接客や営業、Web会議など、人と顔を合わせる場面が多い仕事が増えたことです。身だしなみを整える支援は、仕事の場面とつながりやすくなりました。

2つ目は、福利厚生に「自分のための時間」を求める声が出てきたことです。3つ目は、採用の場面で、ほかの会社と違う特色を出したいというニーズです。美容系の制度は話題になりやすく、求人や採用サイトで伝えやすい分野でもあります。

美容系の福利厚生の主な種類

美容系の福利厚生は、提供の形で大きく「会社に来てもらう・置く型」「外部の店舗を割安に使える型」「費用を補助する型」に分かれます。代表的なものを表にまとめます。

美容系の福利厚生を、会社に来てもらう・置く型、外部の店舗を割安に使える型、費用を補助する型の3つに分けた図
種類主な内容提供の形導入時の注意点
セルフホワイトニング社員が自分で行うホワイトニングを利用できる店舗利用・メニュー提供効果をうたわず、メニューの一つとして案内する
美容院・理容室の補助カット代などの一部を補助する費用補助現金での支給は給与として扱われやすい
エステ・サロンの割引提携店舗を割引価格で利用できる割引・優待勤務地の近くに店舗があるかを確認する
ネイル・まつげなどサロンの利用補助や出張サービス費用補助・出張業務の身だしなみ規程と矛盾しないか確認する
フィットネス・ヨガジムやスタジオの利用補助、社内レッスン費用補助・社内実施美容より健康づくりとして位置づけると使われやすい
スキンケア用品の支給日焼け止めや保湿用品などを配る現物支給肌に合わない人もいるため、受け取りを任意にする

どの種類も、全員が同じように使うとは限りません。単独で入れるより、ほかの制度と並べて「選べるメニュー」の一つにする方が、不公平感が出にくくなります。

セルフホワイトニングが選ばれやすい理由

美容系の中でも、セルフホワイトニングは福利厚生に取り入れやすい種類の一つです。性別を問わず関心を持つ人がいること、1回の利用時間が比較的短いことなどが理由として挙げられます。

ただし、歯の状態や好みは人によって違います。歯科医院で行う治療とは別のものであることを社内案内で明確にし、気になる症状がある人には歯科医院への相談をすすめる書き方にしておくと安心です。

セルフホワイトニングは、利用者が自分で機器などを使う形のサービスです。歯科医師法は「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない」と定めています(出典:e-Gov法令検索「歯科医師法」第17条)。この点について、厚生労働省はグレーゾーン解消制度にもとづく照会への回答で、次の考え方を示しています。

一般論として、歯科医行為に該当する可能性のある行為であっても、自ら自身の体に対して実施する場合においては、歯科医師法(昭和23年法律第202号)第17条に違反しないものと考えられる。

出典:厚生労働省「新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表」(令和7年4月18日回答)

回答はあくまで一般論として示されたものです(出典:厚生労働省「新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表」)。福利厚生として導入する前に、サービスの手順のうち誰が何を行うのかを、提供会社の資料で確かめておきます。

契約の条件も確認が必要です。国民生活センターは、セルフホワイトニングの契約トラブルについて注意を呼びかけ、特定商取引法との関係を次のように説明しています。

「セルフホワイトニング」は、自身で機器等を使用するため、一般に同法の対象外となるケースが多く、クーリング・オフや契約書の交付義務、中途解約のルール等は適用されません。

出典:国民生活センター「無料体験と思ったら…?『セルフホワイトニング』の契約トラブル」(2025年7月22日公表)

会社が法人として契約する場合も、社員が個人で申し込む形の補助にする場合も、最低利用期間や中途解約の条件を事前に確かめ、社内案内に明記しておくと行き違いを防げます。

導入で期待できることと限界

期待できること

  • 福利厚生のメニューが増え、社員が選べる幅が広がる
  • 求人票や採用サイトで、会社の特色として伝えられる
  • 接客や営業など、人前に出る仕事の社員を支える姿勢を示せる
  • 社員同士の会話のきっかけになりやすい

限界と注意点

美容系の制度は、関心のある人とない人の差が大きい分野です。使わない人にとっては「自分には関係のない制度」になり、満足度の向上にはつながりません。

労働政策研究・研修機構の調査では、従業員が特に必要性が高いとした制度は「人間ドック受診の補助」が21.8%、「慶弔休暇制度」が20.0%などでした(出典:労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」)。社員の要望は、健康管理や休暇などの基本的な制度に集まりやすいことも頭に置いておきます。

また、美容系の制度だけで、離職や採用の課題が解決するわけではありません。給与や働き方への不満が大きい場合は、そちらを先に見直す必要があります。美容系の制度は、土台の待遇が整ったうえで「選べる楽しみ」を足すものと考えるのが現実的です。

向いている会社と向いていないケース

向いている会社

  • 接客、営業、受付など、顧客と顔を合わせる仕事が多い
  • すでに基本的な福利厚生が整っており、メニューを増やしたい
  • 社員アンケートで、美容や身だしなみに関する要望が出ている
  • 採用で、若手や働き方を重視する層に特色を伝えたい

導入を急がなくてよいケース

  • 給与や残業時間など、待遇の不満がはっきり出ている
  • 社員の多くが現場作業や在宅勤務で、店舗を使う機会が少ない
  • 勤務地の近くに、利用できる店舗やサービスがない
  • 制度の申請や精算を担当できる人がいない

こうした状況では、美容系の制度を入れても使われにくく、費用だけが残るおそれがあります。まずは社員の声を集め、何に困っているのかを確かめることから始めるのがよいでしょう。

美容系の福利厚生を選ぶ判断基準

候補のサービスを比べるときは、次の5つの基準で確認します。

美容系の福利厚生サービスを比べるときの5つの判断基準をまとめたチェックリスト
  1. 利用のしやすさ:勤務地や勤務時間に合わせて使えるか。予約や申請は簡単か
  2. 対象の広さ:性別や雇用形態を問わず使えるか
  3. 費用の決まり方:月額固定か、利用した分だけか。最低契約期間はあるか
  4. 説明の安全さ:提供会社の案内に、効果を断定する表現が含まれていないか
  5. 運用の手間:利用状況の報告や精算を、提供会社がどこまで担ってくれるか

美容系の中でも、まずは一つのメニューから試したい場合は、セルフホワイトニングを福利厚生のメニューの一つとして導入できるサービスのように、対象や内容がはっきりしたものから始めると、利用状況を確かめやすくなります。

導入前のチェックリスト

  • 導入の目的(採用、定着、メニュー拡充など)を一文で説明できる
  • 社員アンケートで、関心のある人の割合を確かめた
  • 勤務地から利用できる店舗やサービスの範囲を確認した
  • パート・有期雇用の社員を対象に含めるかを決めた
  • 給与課税の扱いを税理士や税務署に確認した
  • 社内案内の文面に、効果を断定する表現がないか確認した
  • 利用状況を確認する時期と、続けるかを判断する基準を決めた

費用の考え方と税金・社内案内の注意点

予算の規模感をつかむために、公的な統計も見ておきます。厚生労働省の調査では、法定外福利費は常用労働者1人1か月平均4,882円でした。このうち文化・体育・娯楽に関する費用は163円で、住居の2,509円や医療保健の729円に比べて小さい水準です(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」)。

常用労働者1人1か月平均の法定外福利費4,882円の内訳を費目別に示した棒グラフ

美容系の制度がこの区分に入るとは限りません。ただ、娯楽や自分を整える分野にかける費用は、多くの会社で限られているのが実情です。小さな予算で始め、利用状況を見て広げる進め方が合っています。

費用は提供の形で考え方が変わる

美容系の福利厚生の費用は、提供の形によって考え方が変わります。料金は提供会社や契約の内容で異なるため、ここでは見積もりの考え方を示します。

  • 費用補助型:1回あたりの補助額×想定利用回数×対象人数
  • 割引・優待型:会社が払う会費と、社員の自己負担の割合
  • 出張・設置型:1回あたりの出張費や月額料金×実施回数

試算するときは、利用率を高く見積もりすぎないことが大切です。最初は対象者の一部が使う前提で予算を組み、実際の利用状況を見てから広げる方が無理がありません。

給与として課税される可能性

国税庁は、福利厚生施設の利用などで社員が受ける経済的な利益を、原則として給与所得の収入とする考え方を示しています(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2508 給与所得となるもの」)。福利厚生費として扱えるのは、一般に、全社員が対象で、金額が社会通念上妥当な範囲にとどまる場合です。

美容系の制度は、利用する人が一部に偏りやすく、金額によっては給与として扱われる可能性があります。特に、現金で補助を渡す形や、役員だけが使える形は注意が必要です。導入前に、税理士や所轄の税務署に扱いを確認してください。

社内案内では効果を断定しない

美容に関するサービスは、効果や効能の表現に法律上の制限があります。医薬品医療機器等法は、化粧品や医療機器などの効能や効果について、虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布することを禁じています(出典:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第66条)。景品表示法も、商品やサービスの内容を実際より著しく優良であると示す表示を禁じています(出典:e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」第5条)。社内向けの案内であっても、「白くなる」「肌がきれいになる」などと効果を断定する書き方は避けた方が安全です。

案内では、利用できる内容、場所、申し込み方法、会社の負担範囲など、事実だけを伝えます。体質や体調に不安がある人には、専門の医療機関に相談するようすすめる一文を添えておくと配慮が伝わります。

美容医療を対象にする場合

クリニックで行う美容医療は、自由診療として提供されます。厚生労働省は「美容医療の適切な実施に関する検討会」で、不適切な事例への対応や、患者が医療機関を選ぶための方策について報告書をまとめています(出典:厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会 報告書」)。

福利厚生で美容医療の費用を補助する場合は、会社が特定の施術や医療機関を勧める形にしないことが大切です。施術を受けるかどうか、どこで受けるかは、社員本人が判断できる設計にしておきます。

美容系の福利厚生を導入する流れ

  1. 社員の声を聞く:匿名のアンケートで、関心のある美容メニューと、今の福利厚生への要望を聞きます
  2. 候補を比べる:2〜3のサービスの資料を取り寄せ、利用のしやすさ、費用、運用の手間を同じ表で比べます
  3. 規程を整える:対象者、利用の上限、申請方法を福利厚生規程にまとめます
  4. 小さく試す:期間を区切って始め、利用率と社員の反応を確かめます
  5. 見直す:半年から1年で利用状況を振り返り、続けるか、別のメニューに切り替えるかを決めます

周知の工夫も欠かせません。制度があっても、内容を知らなければ使われません。入社時の説明、社内チャットでの案内、利用した社員の感想の共有など、何度か伝える機会をつくります。

社員アンケートの質問例

導入前のアンケートは、5分ほどで答えられる量に絞ります。匿名にすると、美容のように個人の好みが出やすいテーマでも本音が集まりやすくなります。

  • 今の福利厚生で、使ったことがあるもの
  • 美容や身だしなみに関するメニューがあれば使いたいか
  • 使いたいメニュー(ホワイトニング、ヘアカット、フィットネスなど)を3つまで
  • 使うとしたら、どの時間帯や場所なら使いやすいか
  • 美容系より優先してほしい制度があるか

最後の質問は特に大切です。美容系より住宅や食事、休暇の要望が多ければ、先にそちらを検討する判断材料になります。

男性社員にも使ってもらうための工夫

美容系の制度は、女性向けと受け取られて男性社員が使いにくくなることがあります。案内では「身だしなみ」「セルフケア」など、性別を問わない言葉を選びます。

管理職や男性社員が実際に使ってみて、その感想を共有するのも一つの方法です。申し込みが周りに知られにくい手順にしておくと、心理的なハードルも下がります。

自社でできること

外部のサービスを契約しなくても、始められることはあります。たとえば、身だしなみに関する社内の決まりを見直し、清潔感を保ちやすい環境を整えることです。更衣室や洗面スペースの整備も、日々の身だしなみを支えます。

そのうえで、関心のある社員が多いと分かった段階で、外部のサービスを検討すると無理がありません。

導入後の振り返り方と採用での伝え方

美容系の福利厚生は、入れたあとに続けるかどうかを判断する場面が必ず来ます。そのときに迷わないよう、導入の時点で見る指標を決めておきます。

見る指標確かめ方判断の目安の考え方
認知アンケートで「制度を知っているか」を聞く知られていなければ、まず周知を増やす
利用利用者数と利用回数を月ごとに集計する導入前に想定した利用率と比べる
満足利用者に満足度と改善点を聞く不満の理由が手続きか内容かを分けて見る
公平感利用していない人に制度への印象を聞く不公平感が強ければ、選択制への切り替えを考える
採用面接で応募者が制度に触れたかを記録する採用の材料になっているかを確かめる

数字が想定より低くても、すぐにやめる必要はありません。知られていないのか、使いにくいのか、そもそも必要とされていないのかで、打つ手は変わります。原因を分けて考えることが大切です。

求人票や採用サイトでの伝え方

採用で伝えるときは、制度の名前だけを並べるより、導入した理由を一言添える方が伝わります。たとえば「顧客と接する社員の身だしなみを会社として支えたい」といった考え方です。

一方で、効果を断定する書き方や、実際より手厚く見える書き方は避けます。利用の条件や会社の負担範囲を正確に書くことで、入社後の「思っていたのと違う」を防げます。求人の内容は、応募者が会社を判断する大切な材料です。事実に沿って書くことを基本にします。

ほかの福利厚生との組み合わせ

美容系の制度は、健康づくりや休憩の環境づくりと組み合わせると、社員全体に向けた「セルフケア」の取り組みとして位置づけやすくなります。複数の制度を並べ、社員が自分に合うものを選べる形にすると、使う人と使わない人の差による不公平感も和らぎます。

あわせて読みたい

ツナグバで、美容系の福利厚生サービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスの資料を無料でまとめて請求できるサイトです。気になるサービスを選ぶと、複数の資料を一度に取り寄せられます。

美容系の福利厚生としては、社員が利用できるセルフホワイトニングのサービスを掲載しています。福利厚生のメニューの一つとして導入できるため、メニューを増やしたい企業の検討材料になります。資料で、利用の流れや導入の条件を確かめてみてください。

こんな課題があれば

  • 福利厚生のメニューが少なく、社員から物足りないと言われている
  • 既存の福利厚生が一部の社員にしか使われていない
  • 採用の場面で、福利厚生として伝えられる特徴がない

掲載サービスでできること

  • 身だしなみのケアを福利厚生に加えられる:歯の見た目のケアに関心がある社員に向けて、新しいメニューとして用意できます。仕事で人と会う機会が多い社員にも案内しやすい内容です。
  • 社員が自分の都合に合わせて使える:店舗型や持ち帰り型など、利用の形は製品によって違います。勤務時間との兼ね合いを考えて選べます。
  • 会社の費用負担の方法を選べる場合がある:全額を会社が負担する方法や、一部を補助する方法などがあります。選べる形は製品によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいこと

  • 会社と社員の費用負担の内訳と、利用1回あたりの費用
  • 利用できる場所や時間帯が、社員の働き方に合っているか
  • 利用前の注意事項や、体質に合わない場合の案内があるか
  • 利用状況を会社側で確認できるか
  • 契約期間と、最低利用人数などの条件

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

美容系の福利厚生は男性社員にも使われますか

メニューや案内の仕方によります。セルフホワイトニングやヘアカットの補助など、性別を問わず使えるメニューを選び、性別を問わない言葉で案内すると、使われやすくなります。

美容系の福利厚生は経費にできますか

一般に、全社員が対象で、金額が社会通念上妥当な範囲であれば福利厚生費として扱われます。利用者が一部に限られる場合や、現金で支給する場合は、給与として扱われることがあります(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2508 給与所得となるもの」)。個別の扱いは税理士や税務署に確認してください。

パートや契約社員も対象にするべきですか

パートタイム・有期雇用労働法では、雇用形態による不合理な待遇差が禁じられており、福利厚生も点検の対象です(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」)。正社員だけを対象にする場合は、その理由を説明できるようにしておく必要があります。迷う場合は、雇用形態を問わず対象にすると判断がシンプルです。

使われなかった場合はどうすればよいですか

まず、制度が知られているか、申し込みが面倒ではないかを確かめます。それでも使われない場合は、社員のニーズと合っていない可能性があります。最低契約期間を確認したうえで、別のメニューへの切り替えを検討します。

参考資料