人手が足りず、同じ作業に毎日追われている。AIで業務を改善できると聞くが、自社のどこに使えばよいのか分からない。大きな投資は難しいが、何もしないままでよいのかも不安。中小企業の経営者からは、こうした声がよく聞かれます。

この記事では、中小企業がAIで業務改善を進める手順を解説します。業務の棚卸しから対象業務の選び方、AIの種類ごとの向き不向き、費用の考え方と補助金、自社で進めるか外部に頼むかの判断基準、導入しなくてよいケースまで、公的資料を出典にまとめました。

中小企業のAI活用の現状

まず、企業がAIに何を期待しているのかを、公的な調査で確認します。

生成AIの活用で生じうる影響として業務の効率化が61.6パーセント、製品やサービスの質の向上が32.2パーセント、人員不足の解消が26.8パーセントであることを示す棒グラフ

総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成AIの活用により生じうる影響として、日本企業の61.6%が「作業時間の短縮などによる業務の効率化」を挙げました。「製品・サービスの質の向上」の32.2%や「人員不足の解消」の26.8%を大きく上回っています(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節)。

一方で、生成AIを「積極的に活用する」または「領域を限定して利用する」方針の企業は、大企業で74.0%、中小企業で58.1%でした。生成AIによる業務変革について「組織的な取組はない」と答えた企業は27.0%で、中小企業ほどその割合が高い傾向が示されています(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」)。

国の方針としても、AI法に基づく人工知能基本計画が令和7年12月23日に閣議決定され、令和8年7月14日に改めて閣議決定されています(出典:内閣府「人工知能基本計画」)。AI法は、AIを事業活動で活用しようとする事業者に、活用による事業活動の効率化や高度化に努めることを求めています(出典:e-Gov法令検索「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」第7条)。AIは大企業だけのものではなく、人手不足に悩む中小企業こそ、業務改善の手段として検討する価値があります。

業務改善が進まない原因と、AIについてのよくある誤解

AIの活用でつまずく会社に多いのは、「AIを入れること」が目的になってしまうケースです。先にツールを契約し、使い道を後から探すと、結局使われないまま費用だけが残ることがあります。

中小企業で改善が止まりやすい理由

  • 人手も時間も足りず、改善に取り組む担当者を置けない
  • 業務が特定の人に属人化していて、手順が文書になっていない
  • 部署ごとに別々のツールを使い、情報があちこちに分かれている
  • どの業務から手をつければよいか、判断の基準がない

白書は、中小企業では「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」との回答が最も高かったことを紹介し、次のようにまとめています。

中小企業におけるAI活用については、トップダウンの関与がキーポイントとなっていることがうかがえる

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節

担当者を置きにくい中小企業ほど、経営者が「どの業務の、何を減らすのか」を示すことが出発点になります。

よくある3つの誤解

1つ目は「大きな投資が必要」という誤解です。文章を作る生成AIは月額制のサービスが多く、少人数から始められます。2つ目は「専門知識がないと使えない」という誤解です。下書きや要約は、指示の書き方を覚えれば多くの社員が使えます。3つ目は「自社の業務には合わない」という誤解です。議事録やメールなど、どの会社にもある業務から試すと、合う業務と合わない業務が見えてきます。

大切なのは、まず業務のどこに無駄や負担があるかを洗い出し、その解決手段のひとつとしてAIを検討することです。業務によっては、AIよりも手順の見直しや既存システムの設定変更のほうが効果的な場合もあります。

AIで業務改善を進める5つの手順

中小企業がAIで業務改善を進める基本の流れは、次の5つの手順です。期間は社員30名前後の会社で、担当者が他の業務と兼務しながら進める場合の目安です。

AIで業務改善を進める業務の棚卸し、改善する業務の選定、改善方法の決定、小さな試行、定着と展開の5つの手順を示した表

この流れは、自治体が中小企業向けに示している進め方とも重なります。愛媛県の手引は、取り組む業務の選び方を次のように説明しています。

活用事例の検討では、取組対象となる業務を選定し、業務プロセス分析などによる課題抽出と生成AI機能の適用対象を検討のうえ、検証・評価するアプローチがあります。

出典:愛媛県経済労働部「生成AI導入の進め方の手引」(令和7年3月)

業務を分析して課題を見つけ、AIを当てはめる箇所を決め、試して評価する。この順番を守ることが、ツール先行の失敗を避ける近道です。

手順1:業務を棚卸しする

各部署で、日々行っている業務を書き出します。業務名だけでなく、1回あたりの時間、月の回数、担当者の人数も記録します。「1回の時間×月の回数×担当者数」で、その業務に毎月どれだけの時間がかかっているかが分かります。社員に「困っている作業」「くり返しが多い作業」を挙げてもらうと、経営者からは見えにくい負担が見つかることがあります。

手順2:改善する業務を選ぶ

棚卸しした業務の中から、最初に取り組む業務を選びます。選び方の判断基準は、次の章で詳しく解説します。最初は欲張らず、2〜3個の業務に絞るのがおすすめです。

手順3:改善の方法を決める

選んだ業務について、AIを使うのか、手順の見直しや既存ツールの活用で済むのかを判断します。AIを使う場合は、どの種類のAIが合うかを検討します。

手順4:小さく試す

いきなり全社に広げず、一つの業務、一つの部署で1〜2か月試します。試す前と後で作業時間を比べ、ミスの増減や担当者の負担感も記録します。うまくいかなかった点も、次の改善の材料になります。

手順5:定着させて広げる

効果があった方法は、手順書にして誰でも同じようにできる状態にします。そのうえで、似た業務や他の部署に広げます。半年に1回程度は効果を測り直し、使い方を見直しましょう。

AIで改善しやすい業務を選ぶ判断基準

どの業務からAIを使うかは、次の5つの基準で判断すると選びやすくなります。

判断基準AIで改善しやすいAIで改善しにくい
かかる時間毎月の合計時間が大きい月に数分〜数十分程度
くり返し同じ種類の作業を何度も行う毎回内容がまったく違う
判断の難しさ下書きや整理が中心で、最終判断は人が行える高度な専門判断が中心
扱う情報個人情報や機密情報を含まない、または加工できる個人情報や機密情報が中心
ミスの影響誤りがあっても社内で気づいて直せる誤りがそのまま顧客や取引に影響する

5つの基準すべてで「改善しやすい」に当てはまる業務が、最初の候補です。たとえば、会議の議事録づくり、社内文書や定型メールの下書き、問い合わせへの返信案、紙の書類の文字の読み取りなどは、多くの中小企業で候補になりやすい業務です。白書の調査でも、日本企業で生成AIの活用が最も多い業務類型は「議事録・メール作成補助」で約7割、導入効果を実感した割合も約7割でした(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」)。

AIの種類と向いている業務

業務改善に使われるAIには、いくつかの種類があります。それぞれ得意な作業が違うため、業務に合ったものを選ぶことが大切です。

業務改善に使われるAIとして文章を作る生成AI、文字を読み取るAI、音声を文字にするAI、問い合わせに答えるAI、予測・分析のAIの5種類と向いている業務をまとめたカード図
AIの種類得意なこと向いている業務の例
文章を作る生成AI文章の下書き、要約、言い換え、分類議事録、社内文書、メール、提案書の構成、求人原稿
文字を読み取るAI紙や画像の文字をデータにする請求書や申込書の入力作業
音声を文字にするAI会話や通話を文字に起こす会議の記録、電話応対の記録
問い合わせに答えるAIよくある質問に自動で回答する社内外のよくある問い合わせへの一次対応
予測・分析のAI過去のデータから傾向を読み取る需要の予測、在庫の調整

中小企業が最初に取り組みやすいのは、文章を作る生成AIです。月額制のサービスが多く、少人数から始められるうえ、幅広い部署で使えるためです。予測・分析のAIは、十分な量のデータが社内にそろっていることが前提になるため、データが少ない段階では効果が出にくいことがあります。

AIを使う前に確認しておきたいこと

AIを業務で使うときは、情報の扱いに注意が必要です。個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認し、入力したデータが機械学習に利用されないことなどを十分に確認するよう注意喚起しています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

出力の正しさについても、総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AIを業務で使う「AI利用者」に次のことを求めています。

AIの出力について精度及びリスクの程度を理解し、様々なリスク要因を確認した上で利用する

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編」第5部 AI利用者に関する事項

令和8年3月31日公表の第1.2版では、自律的に作業を進めるAIエージェントについて、人間の意図しない動作などのリスクや、人間の判断を介在させる仕組みの構築といった留意事項も追加されました(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容」)。重要な判断や社外に出す内容には、人が確認する工程を残しておくことが大切です。

AIによる業務改善の費用の考え方と補助金

AIによる業務改善の費用は、どの種類のAIを使うか、どこまで外部に頼むかで大きく変わります。主な費用は次のとおりです。

費用の種類内容考え方
ツールの利用料AIサービスの月額料金や導入費用利用人数や機能で変わる。最初は使う部署に絞ると抑えやすい
社内の工数棚卸し、試行、手順書づくりにかかる社員の時間最初の数か月は担当者の時間が必要になる
研修費社員がAIを使いこなすための研修全員向けの基礎か、業務別の実践かで変わる
外部支援費業務の分析から改善、AIの実装・運用までの支援月額制の伴走型や、期間を区切ったプログラム型などがある

費用対効果は、「削減できる時間×人件費の単価」と上の費用を比べて判断します。手順1で棚卸しした時間のうち、どれだけ減らせそうかを試行で確かめてから投資額を決めると、判断を誤りにくくなります。

使える可能性がある補助金・助成金

中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金」は、旧IT導入補助金にあたる制度で、AIを含むITツールの導入を支援します。2026年は3月30日から申請受付が始まりました。通常枠の補助額は、1業務プロセス以上で5万円から150万円未満、4業務プロセス以上で150万円から450万円以下です。補助率は1/2以内で、賃上げの取組状況によって2/3以内になる場合があります(出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「デジタル化・AI導入補助金2026 3月30日から申請受付」)。申請には、事務局に登録されたIT導入支援事業者のサポートが必要です(出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」)。

社員にAIの研修を行う場合は、厚生労働省の人材開発支援助成金の対象になる場合もあります。ただし、令和8年8月3日以降に提出する計画届では、生成AIを利用するための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は対象外とされ、職務に直結する内容かどうかが問われます(出典:厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コース 令和8年8月3日からの変更点について」)。どちらの制度も、要件、対象、申請の時期が細かく決まっており、見直しもあります。申請を考える場合は、必ず公式の公募要領や支給要領で最新の内容を確認してください。

自社で進めるか、外部に頼むかの判断基準

AIによる業務改善は、自社だけで進めることもできます。外部の支援が必要かどうかは、次の点で判断するとよいでしょう。

状況自社で進めやすい外部の支援を検討したい
推進役AIやITに詳しい社員がいて、時間を割ける推進役を置く余裕がない
改善したい範囲議事録や文書作成など、一部の業務に限られる複数の部署にまたがる業務の流れを見直したい
業務の見える化業務の手順がある程度そろっている人によってやり方が違い、整理から必要
社員のスキルITツールに慣れた社員が多いツールに不慣れな社員が多い

外部に頼む場合も、すべてを任せきりにせず、社内に仕組みが残る形で進めることが大切です。自社の業務を題材に、社員が手を動かしながら改善の仕組みを作るAIによる業務改善の集中プログラムのような形であれば、支援が終わったあとも社内で改善を続けやすくなります。

導入前のチェックリストと、AIを使わなくてよいケース

導入前のチェックリスト

  • 改善したい業務と、今かかっている時間を数字で把握しているか
  • AIを使わずに、手順の見直しで解決できないか検討したか
  • 使うAIサービスの利用規約と、入力データの扱いを確認したか
  • 入力してはいけない情報と、出力の確認方法を決めたか
  • 推進役と、経営者の関わり方を決めたか
  • 試行する業務と、効果を測る指標を決めたか

AIを使わなくてよいケース

  • 業務の手順が人によってばらばらで、先に手順をそろえることが必要な場合
  • 決まった操作のくり返しが中心で、RPAや業務システムの自動化機能で対応できる場合
  • 正確な計算や数値管理が中心で、専用の会計ソフトや表計算のほうが確実な場合
  • 対象業務の時間が少なく、費用と手間に見合う効果が見込めない場合

AIは業務改善の有力な手段ですが、唯一の手段ではありません。業務の棚卸しをした結果、AIを使わない改善策のほうが合っていると分かることも、立派な成果です。

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ツナグバで、AIによる業務改善のサービスを比べる

ツナグバは、BtoBサービスを無料で比べられる掲載サイトです。気になるサービスの資料を、まとめて無料で請求できます。AIによる業務改善では、次のようなサービスが掲載されています。

  • 手を動かしながら学ぶ、AIによる業務改善の集中プログラム:AIを使った業務改善を、座学ではなく実際に手を動かしながら進めるプログラムです。自社の業務を題材に、使える仕組みを作りながら学びます。AIを業務に取り入れたい中小企業向けです。
  • AI仕事改革:生成AIで業務プロセスを見直し、課題分析から業務改善、AIの実装・運用まで一貫して支援するサービスです。経営・営業・採用・マーケティングの実務経験者が担当します。料金は月額10万円からで、内容によって変わります。従業員10〜100名の中小企業が対象で、全国にオンラインで対応しています。

社内で仕組みを作る力をつけたいのか、外部と一緒に業務の見直しから進めたいのかで、合うサービスは変わります。資料を取り寄せて比べてみてください。

手を動かしながら学ぶ、AIによる業務改善の集中プログラム

こんな課題に向いています。

  • AIを業務に使いたいが、どの業務から手をつければよいか分からない
  • 研修で話を聞いても、自社の仕事にどう当てはめるかが見えない
  • 一部の社員だけがAIを試していて、社内に使い方が広がっていない

主な特徴は次のとおりです。

  • 自社の業務を題材に学べる:実際に社内で行っている業務を取り上げて進めます。学んだ内容をそのまま現場に持ち帰りやすくなります。
  • 手を動かす時間を中心に組み立てる:説明を聞くことに加えて、受講者が自分で操作しながら進めます。つまずいた点をその場で確認できます。
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資料で確かめたいことの例です。

  • 受講費用の内訳と、人数による料金の違い
  • 対面かオンラインか、開催の形式と期間
  • 社内で使っているツールや情報の扱いのルールに合うか

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こんな課題に向いています。

  • 人手が足りず、一人ひとりの業務の負担が増えている
  • 特定の社員に頼っている業務があり、引き継ぎが難しい
  • AIツールを入れたものの、現場で使われていない

主な特徴は次のとおりです。

  • 経営課題から逆算してAIを使う:AIの導入そのものを目的にせず、売上や利益、生産性につながる業務改善から考えます。
  • 設計から実装・運用まで一貫して支援:業務の分析や改善の提案だけでなく、実際に使うAIの業務フローを作り、社内での運用まで支援します。
  • 1つの業務から試して段階的に進められる:まずは1つの業務を対象に、AI活用を試作・検証するトライアルから始められます。効果を確かめながら対象を広げます。

資料で確かめたいことの例です。

  • 自社のどの業務から始めるのがよいか
  • トライアルの範囲と、本格導入に進むときの条件
  • 支援の体制と、担当者の実務経験

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よくある質問

社員が10名以下の会社でも、AIで業務改善はできますか?

できます。社員が少ない会社ほど、一人が抱える業務の幅が広く、文書作成や事務作業の負担が大きい傾向があります。月額制の生成AIサービスなら少人数から始められるため、まずは経営者自身が議事録やメールの下書きで試してみるのがおすすめです。

AIを入れると、社員の仕事がなくなりませんか?

中小企業での業務改善は、人を減らすことよりも、くり返しの作業を減らして、顧客対応や企画など人にしかできない仕事に時間を使うことが目的になる場合が多いです。導入の目的を社員にきちんと伝えることで、不安を和らげられます。

効果が出るまでどれくらいかかりますか?

業務や進め方によって異なるため一律には言えませんが、棚卸しから試行の結果が出るまでに2〜3か月程度を見込んでおくと現実的です。試行の段階で作業時間を測っておくと、効果を判断しやすくなります。

補助金を使うには、何から始めればよいですか?

まずは中小企業庁の資料や事務局のサイトで、デジタル化・AI導入補助金の最新の公募要領と、対象となるツールを確認します。申請には、登録された支援事業者と一緒に手続きを進める必要がある点にも注意してください。研修の場合は、厚生労働省の人材開発支援助成金の支給要領を確認し、管轄の労働局に相談します。

参考資料