業務の引き継ぎや改善を進めようとすると、「この仕事は誰が、どの順番で、何を使ってやっているのか」が分からず、話が進まないことがあります。そうしたときに役立つのが、業務の流れを図で表す業務フロー図です。

この記事では、業務フロー図の書き方を、基本の記号、6つの手順、スイムレーンで担当を分ける方法、見やすくするコツ、書いたあとに課題を見つける使い方まで整理します。自治体のBPR(業務改革)の資料を参考に、生成AIを使って作るときの注意点や、自社で進めるか外部の支援を使うかの判断の基準もまとめました。

業務フロー図とは

業務フロー図は、ある業務の始まりから終わりまでを、作業の順番と担当者が分かるように図で表したものです。石川県のBPR推進ハンドブックは、業務フローを、業務の一連の流れを図で表し、客観的に把握するための道具として説明しています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。

業務フロー図を作る主な目的は、関係者の間で業務の流れを同じように理解することです。同じハンドブックには、次のように書かれています。

業務フローを作成することで、関係者間の認識のずれを防ぎ、業務上の問題点や課題の分析が容易になる。

出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」

頭の中にある業務の流れは、人によって少しずつ違います。図にして並べてみると、「この確認は誰がしているのか」「この書類はどこで止まっているのか」といった点が見えてきます。業務フロー図は、改善や引き継ぎ、システムの導入を考えるときの土台になります。

フローチャートとの違い

フローチャートは、処理の手順や条件の分かれ方を表す図の総称として使われることが多い言葉です。業務フロー図は、その考え方を業務に当てはめ、特に「誰が」その作業をするのかを明確にした図、と考えると分かりやすいでしょう。担当者ごとに列を分けて書く方法(スイムレーン)がよく使われるのも、このためです。

業務フロー図で使う基本の記号

業務フロー図では、決まった形の記号を使って作業や判断を表します。記号の種類を増やしすぎると読みにくくなるため、まずは基本の記号だけで書くのがおすすめです。石川県のハンドブックでも、開始・終了、処理、判断、作成物・システム、使用書類などの記号を凡例として定めています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。

業務フロー図で使う基本の記号として、開始・終了、処理、判断、書類、システム・データ、矢印の形と意味をまとめた表
記号形表すもの
開始・終了角の丸い四角業務の始まりと終わり
処理四角一つひとつの作業
判断ひし形条件によって流れが分かれるところ
書類下が波形の四角作成したり使ったりする書類
システム・データ円柱などデータを保存するシステムや台帳
矢印線と矢印作業の順番と流れの向き

記号の形は、社内でそろっていることのほうが大切です。図の端に凡例(記号の意味の一覧)を付けておくと、初めて読む人にも伝わりやすくなります。

業務フロー図の書き方:6つの手順

業務フロー図は、いきなり作図ツールで書き始めるより、先に材料をそろえてから書くほうが早く仕上がります。一般的な手順は次の6つです。

業務フロー図の書き方の6つの手順を、目的と関係者の決定、作業の洗い出し、粒度をそろえて図にする、関係者との確認の4段階にまとめた図

1. 目的と対象の業務を決める

何のために業務フロー図を作るのかを決めます。引き継ぎのためか、改善のためか、システムの導入のためかで、書き込む内容が変わります。対象の業務も、「受注から請求まで」のように、始まりと終わりをはっきりさせます。

2. 関係する人と部署を洗い出す

その業務に関わる人や部署、社外の取引先、使っているシステムを書き出します。これが、後でスイムレーンの列になります。

3. 作業を洗い出す

担当者に聞き取りをしながら、作業を一つずつ書き出します。付せんや表計算のシートに、「誰が」「何を」「何を使って」するのかを1行ずつ書くと整理しやすくなります。石川県のハンドブックも、作業を「誰が・何を・どの順番で」行うかで整理する手順を示しています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。

4. 粒度をそろえる

書き出した作業の細かさ(粒度)をそろえます。細かすぎると全体が見えにくくなり、粗すぎると課題が見つかりません。ハンドブックは、この点について次のように述べています。

そのため、記述する粒度は「作業単位」とすること。

出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」

同じハンドブックは、業務単位では粗すぎて課題が特定できず、動作単位では細かすぎて全体像が見えにくくなると説明しています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。「請求書を作成する」は作業単位、「ファイルを開く」「宛名を入力する」は動作単位、と考えると区別しやすくなります。

5. 記号と矢印で図にする

作業を時間の順に並べ、記号と矢印でつなぎます。条件によって流れが分かれるところは判断の記号を使い、「はい」「いいえ」など分かれる条件を矢印の横に書きます。

6. 関係者と確かめて直す

できあがった図を、実際に作業している人に見てもらい、実態と合っているかを確かめます。ハンドブックも、関係者による確認で手順の過不足や認識のずれを直す手順を挙げています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。書いた人の思い込みで描かれた図は、改善の土台になりません。

スイムレーンで担当を分ける

業務フロー図を見やすくする代表的な方法が、スイムレーンです。プールのコースのように、担当者や部署ごとに列(または行)を分け、それぞれの列にその担当の作業を置きます。

スイムレーンを使うと、作業が担当者の間をどう行き来しているかが一目で分かります。矢印が列をまたぐところは、仕事の受け渡しが起きているところです。受け渡しが多い業務ほど、待ち時間や連絡の漏れが起きやすくなります。担当別に流れを分けることで役割と責任が明確になる、という考え方は、石川県のハンドブックにも示されています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。

列の分け方は、人ではなく役割で分けるのが基本です。同じ人が複数の役割を持っている場合も、役割ごとに列を分けておくと、担当が変わったときにも図を使い続けられます。

見やすい業務フロー図にするコツ

同じ業務でも、書き方によって読みやすさは大きく変わります。次の点を意識してください。

  • 流れの向きをそろえる:上から下、または左から右に流れるようにし、矢印が逆戻りする箇所を減らします。
  • 1枚に収める範囲を決める:1枚に入りきらない場合は、業務を区切って複数の図に分け、つながる箇所に印を付けます。
  • 例外は分けて書く:まれにしか起きない例外の処理まで1枚に入れると、通常の流れが見えにくくなります。主な流れを先に書き、例外は別の図や注記にします。
  • 作業の名前は「名詞+動詞」にする:「請求書を作成する」「内容を確認する」のように書くと、何をする作業かが伝わります。
  • 使う書類やシステムを書き添える:どの書類やシステムを使うかが分かると、改善の手がかりが増えます。
  • 作成日と版を記録する:業務は変わっていくため、いつ時点の流れなのかを図に書いておきます。

例:請求書の発行の業務フロー

ここでは、よくある請求書の発行の業務を例に、業務フロー図に書く内容を文章で示します。列は「営業担当」「経理担当」「上長」「取引先」の4つです。

  1. 営業担当が、納品の完了を経理担当に連絡する
  2. 経理担当が、受注の内容をもとに請求書を作成する
  3. 上長が、請求書の内容を確認する(誤りがあれば経理担当に戻す)
  4. 経理担当が、請求書を取引先に送付する
  5. 取引先が、請求書を受け取る
  6. 経理担当が、入金を確認し、台帳に記録する

これを図にすると、営業担当から経理担当、経理担当から上長、上長から経理担当へと、矢印が何度も列をまたぐことが分かります。また、3の確認で差し戻しが多いなら、2の作成の段階で確認できる項目を増やす、といった改善の検討につながります。

書いたあとに課題を見つける使い方

業務フロー図は、書いて終わりではありません。石川県のハンドブックは、BPRでは業務フローを完璧に作ること自体が目的ではない点に留意するよう求めています(出典:石川県「石川県BPR推進ハンドブック」)。図を見ながら、次のような点を確かめていきます。

業務フロー図を見ながら課題を見つけるための7つの観点をまとめたチェックリストの図
  • 同じ情報を、複数の担当者が書き写していないか
  • 承認や確認が、必要以上に重なっていないか
  • 担当者の間の受け渡しで、待ち時間が生まれていないか
  • 特定の人しかできない作業がないか
  • 紙の書類や表計算のファイルが、途中で行き来していないか
  • 差し戻しや手戻りが多い作業はどこか
  • その作業は、そもそも必要か

課題が見つかったら、作業をなくせないか、まとめられないか、順番を変えられないか、簡単にできないか、という順で改善の案を考えます。改善の案をもとに、改善後の業務フロー図も書いておくと、関係者に変化を説明しやすくなります。自治体の取組みでも、現状の業務の流れを可視化したうえで改善策を検討する進め方がとられています(出典:名古屋市総務局行政改革推進課「令和6年度における業務改革(BPR)の取組みについて」)。中小企業庁の行政手続の電子化に向けた調査でも、現行の業務フローを確定したうえで、電子化後の業務フローを作る手順がとられています(出典:中小企業庁「令和3年度中小企業実態調査事業(中小企業庁の行政手続の電子化に向けたBPR事業)調査報告書」)。

業務フロー図は、部分的な改善だけでなく、業務全体を見直すときにも役立ちます。IPAのDX動向2025は、日本企業のDXの方向性として「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」への転換を掲げています(出典:IPA(情報処理推進機構)「DX動向2025」)。部署をまたいだ業務の流れを1枚の図で見られるようにしておくことは、全体を見て判断するための材料になります。

業務フロー図を作るツールの選び方

業務フロー図は、紙と付せん、表計算ソフト、プレゼンテーションのソフト、専用の作図ツールなど、さまざまな方法で作れます。最初の洗い出しは付せんや紙で行い、清書を作図ツールで行う、という使い分けも一般的です。

選ぶときは、次の点で比べます。

  • 社内の誰でも開いて読めるか
  • 図を直したいときに、担当者が自分で直せるか
  • 版の管理や共有がしやすいか

最近は、生成AIに業務の説明を渡して、業務フロー図の下書きを作る方法もあります。聞き取りの内容を文章で整理してもらい、作業の一覧や図の下書きにする使い方です。ただし、業務の説明には取引先の名前や個人情報が含まれることがあります。個人情報保護委員会は、生成AIサービスを使うときの注意点として、次のように示しています。

個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

生成AIを業務で使う場合は、入力してよい情報の範囲を社内で決めておきます。AIを使う事業者が留意すべき点は、経済産業省のAI事業者ガイドラインにも整理されています(出典:経済産業省「AI事業者ガイドライン」)。組織で生成AIを導入・運用するときの考え方をまとめた資料も公開されています(出典:IPA 中核人材育成プログラム卒業プロジェクト「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」)。また、AIが作った下書きは、実際の業務と合っているかを担当者が必ず確かめます。

自社で進めるか、外部の支援を使うかの判断

業務フロー図は、自社で作ることができます。対象の業務が少なく、担当者が時間をとれるなら、まずは自社で1つの業務から書いてみるのがよいでしょう。

一方で、次のような場合は、外部の支援を検討する余地があります。

  • 部署をまたぐ業務が多く、社内で中立に聞き取りを進められる人がいない
  • 業務フロー図を書いたあと、改善やシステムの導入まで進めたい
  • 生成AIを業務に取り入れたいが、どの業務から始めればよいか分からない

外部の支援の費用は、対象の業務の範囲、期間、支援の内容によって変わります。たとえば、ツナグバに掲載している生成AIで業務プロセスを見直し、課題分析から業務改善、AIの実装と運用まで一貫して支援するサービスは、料金が月額10万円からで、内容によって変わるとしています。費用を比べるときは、業務フロー図を作るところまでなのか、改善の実行や定着まで含むのかを確かめることが大切です。

国の機関でも、業務の改革や、サービスの設計に関するガイドラインが公開されています(出典:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」)。自社で進める場合も、こうした資料の考え方は参考になります。

あわせて読みたい

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  • 自社のどの業務から始めるのがよいか
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よくある質問

業務フロー図は、どのくらいの細かさで書けばよいですか?

課題を見つけるのが目的なら、「請求書を作成する」のような作業単位でそろえるのが目安です。「ファイルを開く」のような動作単位まで書くと、全体が見えにくくなります。目的が手順書づくりなら、別に細かい手順書を作る方法もあります。

業務フロー図とマニュアルは、何が違いますか?

業務フロー図は、業務全体の流れと担当の受け渡しを見るためのものです。マニュアルは、一つひとつの作業のやり方を説明するものです。業務フロー図で全体を示し、細かい作業はマニュアルで補う、という組み合わせが使いやすいでしょう。

生成AIに業務フロー図を作ってもらってもよいですか?

下書きづくりに使うことはできます。ただし、入力する情報に個人情報や取引先の情報が含まれないかを確かめ、社内のルールに沿って使います。できあがった図は、実際に作業している人が確かめて直します。

業務フロー図は、誰が作るのがよいですか?

業務をよく知る担当者と、全体を整理する人の組み合わせが理想です。担当者だけで書くと思い込みが入りやすく、整理する人だけで書くと実態とずれやすくなります。聞き取りと確認の場を設けて、一緒に作るのがよいでしょう。

参考資料