新規開拓の営業で「担当者とは会えるのに、話が先に進まない」と感じることは少なくありません。

提案の内容がよくても、決める権限を持つ人に届かなければ、検討は止まってしまいます。

この記事では、決裁者アポの取り方を手法別に整理し、決裁者の見極め方、受付での伝え方、断られたときの対処、法令上の注意までを順に解説します。

自社の商材や体制に合った進め方を選ぶ材料として使ってください。

決裁者アポとは

決裁者アポとは、導入や発注を最終的に決める権限を持つ人と、商談の約束を取り付けることです。

中小企業では社長や役員、規模の大きい企業では部門長や事業責任者が決裁者になることが多く見られます。

担当者アポとの違い

項目担当者アポ決裁者アポ
会える相手情報収集や比較を担当する人導入の可否と予算を決める人
アポの取りやすさ比較的取りやすい受付や秘書を通る必要があり難しい
商談の進み方社内での説明や稟議を経るため時間がかかりやすいその場で方向性が決まることもある
求められる準備商品の機能や比較の材料経営や事業の課題に結びつけた提案
失敗したときの影響別の担当者から再度接点を持てることもある次の機会がつくりにくくなる

決裁者アポの利点は、検討の途中で話が止まりにくいことです。

一方で、準備が足りないまま会うと、その場で「必要ない」と判断され、次の機会を失うこともあります。

決裁者アポが難しい理由

決裁者アポが難しいのは、営業担当者の話し方だけが原因ではありません。主に次の3つの理由があります。

  • 受付や秘書、代表電話の担当者が、営業の電話を取り次がない方針を持っていることが多い
  • 決裁者は使える時間が少なく、売り込みに時間を割く余裕がない
  • 誰が決裁者なのかが外から分かりにくく、連絡先も公開されていないことが多い

このため、「誰に」「どの経路で」「どんな用件で」連絡するかを事前に決めておくことが、決裁者アポの出発点になります。

決裁者を見極める方法

アプローチの前に、相手企業で誰が決めるのかを見極めます。

決裁者を見極める3つの方法として、公開情報で調べる、規模で目安をつける、商談で確かめるを示す図

公開情報で調べる

  • 企業のWebサイトの会社概要・役員一覧・組織図
  • プレスリリースやニュース記事に出てくる事業責任者の名前
  • 採用ページやインタビュー記事に出てくる部門長
  • 決算資料や中期経営計画(上場企業の場合)

規模ごとの目安

従業員数十名までの企業では、社長が多くの導入を決めていることが一般的です。

従業員が数百名以上の企業では、金額や分野によって決める人が変わります。少額のツールは部門長、全社に関わるシステムは役員会、といった形です。

商材の価格帯と、相手企業の規模から、どの階層の人に会うべきかを考えます。

商談の中で確かめる

担当者と会えた場合は、「導入を決めるまでに、どなたが関わりますか」と率直に確認します。

決裁の流れが分かれば、どの段階で決裁者に同席してもらうかを相談できます。

決裁者アポの主な取り方

決裁者に届く経路は一つではありません。商材の単価や、相手の業種・規模によって向き不向きがあります。

手法特徴向いているケース注意点
電話(テレアポ)すぐに反応が分かる担当部署や役職者の名前が分かっている受付で断られやすい。時間帯に配慮が必要
問い合わせフォーム企業の公式窓口に届く用件を文章で伝えたい相手が営業目的の利用を禁止している場合は送らない
手紙・DM役員宛てに届けやすく、読まれやすい単価が高く、対象企業を絞れる1通あたりの費用と手間がかかる
紹介信頼のある状態で会える既存の顧客や取引先との関係がある紹介してくれる人の立場に配慮が必要
経営者が集まる場直接話せる経営者向けのセミナーや交流会に参加できる売り込みの場にしない
SNS発信内容から関心が分かる相手が実名で発信している一方的な営業メッセージは嫌われやすい
決裁者の情報を含むデータベース役職や部署を絞って連絡先を探せる新規開拓の数を増やしたいデータの出所と個人情報の扱いを確認する

電話でアポを取る

電話は、相手の反応がすぐ分かる手法です。

受付で「責任者の方をお願いします」と伝えると、営業電話と判断されて断られることが多くなります。事前に部署名と役職者の名前を調べ、用件を一文で言えるようにしておきます。

受付の方は、決裁者の時間を守る役割を持っています。丁寧に対応し、取り次げない場合は、都合のよい時間帯や、資料の送り先を確認してください。

問い合わせフォームや手紙を使う

文章で用件を伝えると、決裁者が自分の都合のよい時間に読むことができます。

手紙は手間と費用がかかる一方、役員宛てに届けやすい手法です。受注単価が高い商材で、対象を絞って送る場合に向いています。

文章では、相手企業について調べた内容に一文でも触れ、なぜその会社に連絡したのかを書きます。どの会社にも同じ文面を送ると、読まれにくくなります。

紹介を受ける

既存の顧客や取引先からの紹介は、最初から一定の信頼がある状態で会える経路です。

成果が出た時期や、契約を更新する時期に、「同じような課題を持つ会社をご存じでしたら」と依頼するのが自然です。

データベースで決裁者を探す

役職や部署を条件に企業と決裁者の情報を探せるデータベースを使うと、調べる時間を減らし、連絡する相手を絞り込めます。

決裁者の情報を含む企業データベースを使い、商談につながりやすい相手に直接アプローチする方法としては、ツナグバ掲載の決裁者に直接アプローチできる企業データベースもあります。

データベースを使う場合も、相手の課題を考えて連絡するという基本は変わりません。

アポの獲得率を高める準備と伝え方

決裁者アポの成否は、電話をかける前の準備でほぼ決まります。相手を調べ、用件を短くまとめ、断られたときの次の一手まで決めてから連絡します。

決裁者アポの獲得に向けた準備から日時の提案までの4つの手順を示す図

事前準備で用意すること

  • 相手企業の事業内容と、最近のニュースや発信
  • 相手が抱えていそうな課題の仮説(一つに絞る)
  • 同じような規模・業種の企業でよくある課題と、その解決の方向性
  • 商談で使う時間(例:30分)と、商談で話す内容
  • 断られたときに、資料の送付など次の接点を提案する言葉

受付での伝え方の例

「お世話になります。〇〇株式会社の△△と申します。営業部の□□様に、営業リストの作り方についてのご案内でお電話しました。ご在席でしょうか。」

会社名と名前を最初に名乗り、誰に、何の用件かを短く伝えます。用件をぼかすと、かえって警戒されます。

決裁者につながったときの伝え方

決裁者につながったら、最初の30秒で「なぜ連絡したか」「相手にとって何の役に立つか」を伝えます。

商品の説明から入るのではなく、「同じ業界の企業で、〇〇の課題を持つ会社が多いと聞きます。御社ではいかがでしょうか」と、相手の状況を尋ねる形にすると会話が続きやすくなります。

最後は「30分ほどお時間をいただけますか」と、日時と時間を具体的に提案します。

文章で伝える場合の組み立て

問い合わせフォームや手紙で連絡する場合は、次の順番で組み立てると、短い時間で用件が伝わります。

  1. 名乗り:会社名と名前、連絡した部署
  2. 連絡した理由:相手企業について調べて気づいたこと
  3. 提供できること:相手の課題に対して役に立てそうな点を一つ
  4. お願い:30分程度の面談、または資料の送付の可否
  5. 連絡先:返信の方法と、連絡を希望しない場合の伝え方

全体で300〜400字程度に収めると、決裁者が目を通しやすくなります。長い会社紹介や実績の羅列は、面談の場に回してください。

決裁者アポを数字で管理する

決裁者アポは、件数だけを追うと、会えても受注につながらない商談が増えることがあります。

活動を段階に分けて数字を記録すると、どこで止まっているかが分かり、改善の手を打ちやすくなります。

段階記録する数字数字が低いときに見直すこと
接触連絡した企業の数、つながった数対象企業の条件、連絡する時間帯
取り次ぎ決裁者につながった数受付で伝える用件、事前の調べ方
アポ商談の約束を取れた数最初の30秒の伝え方、提案する時間の長さ
商談商談が実施された数日程確定後の連絡、リマインドの方法
受注受注した数課題の仮説の立て方、提案の中身

それぞれの段階の数字は、商材や業界によって大きく変わります。他社の数字と比べるより、自社の過去の数字と比べて改善を続ける方が役に立ちます。

商談当日までにすること

アポを取れたら、商談の前日までに日時と参加者、話す内容を短いメールで送ります。

当日は、最初に「本日は30分で、御社の〇〇の状況を伺い、私どもでお役に立てそうかを判断していただく場にしたいと考えています」と目的を共有すると、決裁者も時間の使い方を判断しやすくなります。

商談の最後には、次に何をするかを決めます。資料の送付、担当者との打ち合わせ、見積もりの提出など、具体的な行動と期日を確認してください。

断られたときの対処

決裁者アポは、断られることが前提の活動です。断られたときの対応で、次の機会が残るかどうかが決まります。

断りの言葉考えられる状況対応の例
今は必要ない課題を感じていない、時期が合わない情報提供の資料を送り、時期を改めて連絡してよいか確認する
担当者に話してほしい決裁者が自分で判断する分野ではない担当者の部署と名前を教えてもらい、紹介を受けた形で連絡する
忙しい時間が取れない15分など短い時間や、オンラインでの面談を提案する
資料を送って関心が少しある、または断りの言葉資料を送り、目を通してもらえたか確認する日を決める

断られた理由は、記録に残します。同じ理由での断りが続く場合は、対象の企業や、伝え方そのものを見直すきっかけになります。

はっきり断られた相手に何度も連絡することは、相手の負担になり、自社の評判を下げることにもつながります。

消費者向けの電話勧誘については、特定商取引法が次のように定めています。

電話勧誘販売に係る契約等を締結しない意思を表示した者に対する勧誘の継続や再勧誘を禁止しています。

出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」

同じガイドでは、営業のため、または営業として結ぶ契約は適用除外として挙げられています(出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」)。法人の決裁者への営業電話は、多くの場合この規制の直接の対象ではありません。

ただし、相手が個人事業主で、契約が営業のためと言えない場合などは対象になり得ます。対象かどうかにかかわらず、「断られたら同じ用件で連絡しない」を社内のルールにしておくと安全です。条文はe-Gov法令検索で確認できます(出典:e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」)。

決裁者アポで守るべき法令とマナー

決裁者アポでは、個人の氏名や連絡先を扱い、場合によっては広告のメールを送ります。主に関わるのは、個人情報保護法と特定電子メール法です。

特定電子メール法のポイントとして、オプトインの原則、同意がなくても送れる例外、表示義務、罰則をまとめた表

個人情報保護法

決裁者の氏名や役職、連絡先は、個人情報にあたります。個人情報保護委員会のガイドラインでは、本人の氏名や、氏名と組み合わせた連絡先・会社での職位などの情報が個人情報の例として挙げられています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。

ガイドラインのQ&Aでは、新聞やインターネットなどですでに公表されている個人情報も保護の対象として扱われています(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q1-5)。

取得するときは利用目的を明らかにし、目的の範囲で使うことが基本です(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。外部から名簿やデータベースを入手する場合は、提供元がどのように情報を取得したかも確認します。

また、2026年7月17日に個人情報保護法の改正法が公布されました。施行に向けて、政令や規則の整備の考え方が個人情報保護委員会から示されています(出典:個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」)。施行日や具体的なルールは、個人情報保護委員会のWebサイトで最新の情報を確認してください。

特定電子メール法

広告や宣伝を目的とするメールは、特定電子メール法の対象です(出典:e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)。総務省の資料は、原則を次のように説明しています。

原則としてあらかじめ同意した者に対してのみ広告宣伝メールの送信が認められる「オプトイン方式」が導入されています。

出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」

つまり、決裁者のアドレスが分かったからといって、営業メールを自由に送れるわけではありません。送る前に、同意があるか、例外に当たるかを確認します。

同じ資料では、名刺などの書面でアドレスを知らせてきた相手や、アドレスをインターネットで公表している相手(個人の場合は営業を営む者に限る)などが例外として示されています(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。ただし、広告メールを拒否する旨が併せて公表されている場合は送れません。

送る場合は、送信者の名称と、受信を拒否するための連絡先などを表示する必要があります。送信者の情報を偽って送った場合、法人には3,000万円以下の罰金が科されることがあると説明されています(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。

マナー

  • 早朝、昼休み、終業間際の電話は避ける
  • 名乗らない、用件をぼかすといった対応をしない
  • 受付の方にも、決裁者と同じように丁寧に接する
  • 問い合わせフォームに「営業目的の利用はお断り」とある場合は送らない

自社で取り組むか、外部の力を借りるかの判断基準

自社で取り組みやすいケース

  • 対象の企業が数十社程度に絞られている
  • 営業担当者が、相手企業の調べものに時間をかけられる
  • 業界の中に人脈があり、紹介を受けやすい

データベースや代行の活用を検討したいケース

  • 対象企業が多く、決裁者を調べる時間が足りない
  • 営業担当者が少なく、アポ取りと商談の両方を担っている
  • 業界や役職で絞り込んだ相手に、まとまった数のアプローチをしたい

決裁者アポにこだわらなくてもよいケース

  • 単価が低く、担当者の判断で導入が決まる商材
  • 現場の担当者が使い勝手を確かめてから決める商材
  • 相手企業で、すでに担当者が比較検討を進めている

こうした場合は、担当者との関係を深め、担当者が社内で説明しやすい資料を用意する方が、結果として早く進むこともあります。

始める前のチェックリスト

  • 商材の価格帯から、会うべき相手の階層を決めている
  • 対象企業の条件(業種・規模・地域)を決めている
  • 相手企業ごとに、課題の仮説を一つ用意している
  • 受付で伝える用件を一文にまとめている
  • 断られたときの次の提案(資料送付など)を決めている
  • 連絡の記録と、断られた理由を残す方法を決めている
  • 個人情報の取得経路と利用目的を説明できる
  • 広告メールを送る場合、特定電子メール法の表示を入れている

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ツナグバで、決裁者に届く営業支援サービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

営業支援の分野では、決裁者の情報を含む企業データベースを使い、商談につながりやすい相手に直接アプローチできる営業支援ツールを掲載しています。

新規開拓の営業を強化したい企業に向いたサービスです。

収録されている情報の範囲や料金は、資料で確認できます。

自社の対象企業や営業の体制に合うかを、資料で確かめてから検討してください。

こんな課題があれば

  • 電話をかけても受付で止まり、決裁者と話せないことが多い
  • 営業リストを作るのに時間がかかり、商談の準備に手が回らない
  • どの企業に優先して営業すべきか、判断する材料がない

掲載サービスでできること

  • 決裁者の情報を含む企業データを使える:企業の基本情報に加えて、決裁者に関する情報を含むデータベース(情報をまとめた一覧)を使えます。収録されている情報の範囲は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 条件をしぼって営業先を探せる:業種や地域、規模などの条件で企業を探せます。リストを一から作る手間を減らせます。
  • 決裁者への連絡につなげられる:決裁者に直接連絡するための手段を用意しているものがあります。連絡の方法や回数の上限は製品によって違います。

資料で確かめたいこと

  • 自社が営業したい業種や地域の企業が、どの程度収録されているか
  • 情報がどのくらいの頻度で更新されているか
  • 料金が月額か、使った件数ごとか
  • 個人情報の取り扱いや、連絡の方法に関するルール
  • 契約期間と、途中解約の条件

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

決裁者に電話をかけるのに適した時間帯はありますか?

業種によって異なるため、一概には言えません。

一般的には、始業直後や昼休み、終業間際は避けるのがマナーとされています。相手の業種の忙しい時間帯を考え、つながりやすい時間を記録しながら見直してください。

受付で何度も断られる場合はどうすればよいですか?

電話だけにこだわらず、問い合わせフォームや手紙で用件を伝え、その後に電話する方法があります。

それでも難しい場合は、紹介や経営者が集まる場など、別の経路を検討します。

決裁者の連絡先をインターネットで集めてもよいですか?

公表されている情報であっても、個人情報保護法の対象になります(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」)。利用目的を明らかにし、目的の範囲で扱うことが必要です。

広告メールを送る場合は、特定電子メール法のルールも守る必要があります。判断に迷う場合は、個人情報保護委員会や総務省の資料を確認し、専門家に相談してください。

決裁者と会えたのに受注につながらないのはなぜですか?

商品の説明が中心になり、相手の経営や事業の課題と結びついていないことが多く見られます。

商談の前に課題の仮説を立て、商談の最初に相手の状況を尋ねる時間を取ると、提案の方向を合わせやすくなります。

参考資料