高卒採用を始めたいが、大卒採用と何が違うのか分からない。高校生に直接連絡してよいのか、どんな書類が必要なのか。初めて高卒採用に取り組む企業からは、こうした質問が多く寄せられます。

高卒採用には、生徒を守るための独自のルールがあります。ルールを知らずに動くと、学校やハローワークとの信頼を損ね、翌年以降の採用にも影響しかねません。

この記事では、高卒採用の方法と、企業が守るべきルールを、労働局の資料や都道府県の申し合わせをもとに解説します。求人票の書き方、公正な選考の注意点、内定後の対応、高卒採用に向いていないケースも整理します。

高卒採用の基本的な仕組み

高卒採用は、企業が生徒に直接募集するのではなく、学校とハローワークを通じて進めるのが基本です。まず全体の流れを押さえておきましょう。

学校とハローワークを通じた高卒採用の流れを示す図

学校とハローワークを通じて採用する

大まかな流れは次のとおりです。

  1. 企業がハローワークに高卒求人を申し込む
  2. ハローワークが求人の内容を確認し、確認印付きの求人票を返す
  3. 企業が求人票を学校に提出し、学校訪問で自社を紹介する
  4. 生徒が求人票や職場見学をもとに応募先を決める
  5. 学校が生徒を推薦し、応募書類を企業に送る
  6. 企業が選考を行い、結果を学校を通じて伝える

令和9年3月卒業予定者の場合、求人の受付は令和8年6月1日、学校訪問などは7月1日、応募書類の提出(推薦)は9月5日、選考・内定は9月16日から始まります(出典:北海道労働局 ハローワーク釧路「新規高卒者の募集・採用を予定している企業のみなさま」)。

なぜ独自のルールがあるのか

高校生の就職活動は、在学中に進められます。学業への影響を抑え、すべての生徒に公平な機会を確保するため、行政・学校・経済団体が申し合わせを行い、日程や応募の方法を決めています。

ハローワークが求人の内容を確認するのは、労働条件が法令に沿っているかを確かめ、生徒が安心して応募できるようにするためです。

企業が守るべき主なルール

高卒採用のルールは、全国的な申し合わせと都道府県ごとの取り決めで成り立っています。主なものを一覧にします。

ルール内容注意点
求人の申込みハローワークに高卒求人を申し込み、確認を受ける受付は毎年6月1日から
学校への求人提出確認印付きの求人票を学校に提出する提出・学校訪問は7月1日から
生徒への直接の働きかけの禁止応募前に生徒へ個別に連絡し、応募を促さない連絡は学校を通じて行う
応募書類全国高等学校統一用紙を使う独自の様式やエントリーシートは求めない
応募の数の制限一定期間は1人1社、または2社までなど、地域ごとに決まっている都道府県の申し合わせを確認する
選考の時期定められた期日(例年9月16日)より前に選考・内定をしない内定の約束も含めて行わない
公正な選考適性と能力に関係のない事項で判断しない面接の質問や提出書類に注意する

一人一社制とは

一人一社制とは、選考開始日から一定の期間、1人の生徒が応募できる企業を1社として学校が推薦する仕組みです(出典:高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告(案))。多くの地域でとられてきましたが、近年は見直しも進んでいます。2020年のワーキングチーム報告は、地域の実情に応じて複数応募の方式を選び、毎年度見直すことを求めました(出典:高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告(令和2年2月10日))。

神奈川労働局の資料(令和6年3月卒業者対象)では、9月30日までは1人1社、10月1日以降は1人2社まで応募できるとされていました(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。一方、茨城県の令和9年3月卒業予定者向けの申し合わせでは、推薦開始日から1人2社までの応募ができるとされています。求人を出す企業が一人一社での応募を希望する場合は、複数応募の対象にしない扱いも定められています。

一人一社制の地域では、生徒は内定を受けた企業に入社するのが一般的です。そのため内定辞退は少なくなりますが、企業には入社後まで生徒を支える責任があると考えておきましょう。

複数応募の場合の内定の扱い

茨城県の申し合わせでは、2社から内定を受けた生徒は、1社に承諾、もう1社に辞退を学校を通じて速やかに連絡するとされています。企業側の責任についても、次のように定められています。

求人者は、求人数を上回る採用内定を出した場合、内定の承諾があった生徒全員を雇用すること。

出典:茨城県の関係団体・機関「令和9年3月新規中学校等及び高等学校等卒業者の就職に関する申し合わせ」(令和8年3月18日)

辞退を見込んで多めに内定を出すと、承諾した全員を雇う必要が生じます。複数応募が認められる地域では、内定の数と承諾の見込みを慎重に考える必要があります。

高卒採用の方法

高卒の求人は、生徒の数を大きく上回っています。令和8年3月卒業予定の高校生について、令和7年9月末時点のハローワーク求人は約48万3千人、求職者は約12万3千人で、求人倍率は3.94倍でした(出典:厚生労働省「令和7年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(9月末現在))。求人票を出すだけでは選ばれにくいため、次の方法を組み合わせます。

令和8年3月卒業予定の高校生の求人数と求職者数を比べた棒グラフ

ハローワークと学校を通じた採用

最も基本となる方法です。求人票を学校に提出し、進路指導の先生に自社を紹介してもらいます。ハローワークで内容の確認を受けた求人は、希望すれば高卒就職情報WEBを通じて全国の高校で閲覧できます。

学校訪問

7月以降、地域の高校を訪問して求人票を届けます。訪問の際は、事前に各学校の就職担当の先生に連絡するのが基本です。訪問では、仕事の内容、教育の流れ、職場の雰囲気など、先生が生徒に説明しやすい情報を伝えます。

職場見学の受け入れ

夏休みを中心に、応募を考えている生徒の職場見学を受け入れます。職場見学は応募前の情報提供の場です。神奈川労働局の資料でも、見学の際は採用選考に直接つながる質問などは行わないよう求められています(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。

就職面接会・説明会への参加

ハローワークや自治体が開く、高校生向けの就職面接会や企業説明会に参加する方法もあります。開催の時期や形式は地域によって異なるため、地域のハローワークに確認しましょう。

支援サービスを使う

初めての企業や、学校とのつながりが少ない企業は、高卒採用の支援サービスを使う方法もあります。ツナグバでは、高卒採用の手順や時期に沿って進められる高卒新卒採用の支援サービスを掲載しています。支援の範囲は、サービスによって異なります。

求人票の書き方

高卒の求人票は、生徒と先生が読む資料です。生徒が初めて読む仕事の説明であることを意識して書きましょう。

法令や運用で注意が必要な点

神奈川労働局の資料では、求人票について次のような留意点が示されています(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。

  • 試用期間を設ける場合は、補足事項欄に期間を記入する
  • 固定残業代を設ける場合は、算出の根拠(計算式)を明確にする
  • 基本給に手当を含めない
  • 申込み後に内容が変わる場合は、ハローワークに連絡する

また、令和6年4月1日以降の求人申込みでは、「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」などの明示も必要です(出典:東京労働局「求人票に明示する労働条件が新たに3点追加されるのでご留意ください」)。配属先や勤務地が将来変わる可能性がある場合は、その範囲を書きます。

高校生に伝わる書き方

  • 専門用語や業界用語を使わず、仕事の内容を具体的に書く
  • 1日の流れや、入社後の研修の内容を書く
  • 配属先や勤務地が変わる可能性がある場合は、その範囲を書く
  • 先輩社員の入社年数や、高卒で入社した社員の人数を書く

たとえば「製造業務全般」ではなく、「自動車部品を機械で加工し、寸法を測って検査する仕事です。最初の3か月は先輩と一緒に作業します」のように書くと、生徒も先生も仕事を想像しやすくなります。

職場の情報を書く

新卒者を募集する企業には、若者雇用促進法にもとづき、募集・採用の状況、職業能力の開発・向上の状況、雇用管理の状況といった職場情報の提供が求められます(出典:厚生労働省「若者雇用促進法について」)。研修の有無、離職者の状況、有給休暇の取得状況などは、生徒や保護者、先生が気にする項目です。分かる範囲で正確に書きましょう。

選考で気をつけること

公正な採用選考の考え方

厚生労働省は、公正な採用選考の考え方を次のように示しています。

「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」の2点を基本的な考え方として実施することが大切です。

出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」

同じページでは、就職差別につながるおそれがある事項として、次のようなものが挙げられています(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。

分類主な事項
本人に責任のない事項本籍・出生地、家族のこと(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)、住宅状況、生活環境・家庭環境
本来自由であるべき事項宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や学生運動などの社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書
採用選考の方法身元調査、適性や能力に関係のない事項を含む応募書類の使用、合理的・客観的な必要性のない採用選考時の健康診断

面接で「お父さんの仕事は何ですか」「尊敬する人は誰ですか」といった質問をしないよう、面接官全員で共有しておきましょう。

応募書類と選考の進め方

応募書類は決められた様式に限られます。神奈川労働局の資料では、次のように示されています。

選考に用いる応募書類は、「全国高等学校統一用紙」以外のものは使用できません

出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」

作文や家族の情報を書かせる独自の書類は求めないようにします。同じ資料では、選考の進め方について次のような点も示されています。

  • 書類選考だけで不採用にせず、面接などを行う
  • 選考結果は、学校と生徒の両方に文書で知らせる(いずれも学校あてに送る)
  • 内定後であっても、本人との連絡は学校を通す
  • 採用の基準は、適性と能力にもとづいて明確にしておく

面接で確認したいこと

高校生は面接に慣れていません。緊張で十分に話せないこともあります。質問は、仕事への関心や学校生活で取り組んだことなど、本人の適性に関わる内容にしましょう。

  • この仕事に興味を持った理由
  • 職場見学で印象に残ったこと
  • 学校で力を入れて取り組んだこと
  • 入社後に身につけたいこと

内定から入社までの対応

内定を出したあとも、生徒との連絡は学校を通じて行うのが基本です。卒業までの半年ほどの間、生徒は「本当にやっていけるか」という不安を抱えやすくなります。

  • 入社前の説明会や職場見学を行い、職場の様子を見てもらう
  • 入社前に準備しておくこと(通勤方法、必要な書類など)を早めに伝える
  • 配属先の上司や先輩と顔を合わせる機会をつくる

厚生労働省の調査では、令和4年3月に高校を卒業して就職した人の3年以内の離職率は37.9%でした。事業所規模別では、5〜29人の事業所で54.6%と、規模が小さいほど高い傾向があります(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2025年10月24日公表)。内定後と入社後の支えが、定着を左右します。

ルール違反になりやすい行動

意図せずルールに反してしまうことがあります。次のような行動に注意しましょう。

高卒採用でルール違反になりやすい行動のチェックリスト
  • 6月以前に、高校生向けの求人として生徒に案内を配る
  • SNSなどで高校生に直接連絡し、応募を誘う
  • 職場見学で、志望動機を聞いて評価する
  • 選考開始日より前に、内定を約束する
  • 統一用紙以外の書類(作文や家族の情報など)を求める
  • 面接で、家族のことなど適性と関係のない質問をする

ルールに反すると、ハローワークから指導を受けたり、学校との信頼関係を損ねたりするおそれがあります。迷ったときは、事前にハローワークへ相談しましょう。

費用の考え方

高卒採用は、ハローワークを通じて求人を出すため、求人の申し込みそのものに費用はかかりません。その一方で、社内の時間や準備の費用がかかります。

項目内容考え方の目安
求人票・会社案内の作成求人票の作成、高校生向けの資料づくり社内で作るか、制作を外部に頼むかで変わる
学校訪問交通費、担当者の時間訪問する学校数と地域の広さで変わる
職場見学・面接案内役や面接官の時間見学の回数、応募者の数で変わる
内定者フォロー入社前の説明会、連絡の手間内定者の人数で変わる
支援サービスの利用学校とのつながりづくりや手続きの支援など支援の範囲や料金の方式はサービスごとに異なる

費用を考えるときは、1年目だけで判断しないことが大切です。高卒採用は、学校との関係が続くほど進めやすくなります。2年目以降に必要な作業や費用がどう変わるかも見込んで判断しましょう。

初めての年の進め方

初めて高卒採用に取り組む年は、範囲を絞って始めるのが現実的です。

  • 採用する職種を1つに絞る
  • 通勤できる範囲の高校から、訪問先を数校に絞る
  • 職場見学の受け入れ日をあらかじめ決めておく
  • 選考の流れを、面接1回など簡潔にしておく

1年目に採用できなかった場合も、学校訪問や職場見学で得た反応は、翌年の求人票や説明の改善に生かせます。先生から聞いた生徒の関心や、他社と比べた印象を記録しておきましょう。

高卒採用に向いていないケース

次のような場合は、高卒採用より別の採用方法を先に検討したほうがよいでしょう。

  • 即戦力が必要で、一から教える時間がない
  • 毎年の日程に合わせて準備を続ける体制がない
  • 教える担当者や、相談に乗れる先輩社員がいない
  • 労働条件や職場環境に課題があり、離職が続いている

高卒採用は、採用して育てる前提の採用方法です。受け入れの体制が整っていない段階では、まず中途採用や職場環境の改善から始めることも考えられます。

高卒採用を始める前のチェックリスト

  • 求人を出す都道府県の日程と応募のルールを確認した
  • 求人票を、高校生に分かる言葉で書いた
  • 試用期間、固定残業代、手当、変更の範囲の書き方を確認した
  • 訪問する学校と、訪問の時期を決めた
  • 職場見学で選考をしないことを社内で共有した
  • 面接官全員が、公正な採用選考の考え方を理解している
  • 複数応募の地域では、内定の数を慎重に決めている
  • 内定から入社までのフォローの方法を決めた
  • 入社後に教える担当者を決めた

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資料で確かめたいこと

  • 支援の範囲(求人票の作成、学校訪問、選考の支援など)
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  • 採用の時期に合わせて準備を始められるか
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よくある質問

高校生に直接連絡して応募を促してもよいですか。

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一人一社制は全国共通のルールですか。

全国一律ではありません。応募の数のルールは、都道府県ごとの申し合わせで決められています。一定期間は1人1社とする地域もあれば、最初から1人2社まで応募できる地域もあります。求人を出す地域の労働局やハローワークに確認しましょう。

応募書類に独自の様式を使ってもよいですか。

高卒採用では、全国高等学校統一用紙を使います。独自の様式やエントリーシート、家族の情報を書かせる書類などは求めないようにしましょう。

職場見学で、生徒の志望度を確認してもよいですか。

職場見学は応募前の情報提供の場です。選考につながる質問やアンケートは行わないようにしましょう。生徒からの質問に答え、仕事や職場の様子を正しく知ってもらうことに集中します。

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入社前から入社後の数か月にかけて、相談できる相手がいることが大切です。教える担当者を決め、定期的に話を聞く時間をつくりましょう。仕事の目標や評価の基準を分かりやすく示すことも、働き続ける理由になります。

参考資料