人手が足りないのに、求人を出しても応募が集まらない。そんな悩みを抱える企業が、リモートワーク(在宅勤務)を前提にした採用を検討するケースが増えています。

通勤できる範囲に住む人だけを対象にしていると、応募者の数には限りがあります。働く場所の条件を広げれば、これまで届かなかった人材に出会える可能性があります。

一方で、労務管理や情報管理、入社後の育成など、リモートワークならではの難しさもあります。

この記事では、リモートワークを前提にした採用のメリットとデメリット、向いている仕事と向いていないケース、求人で明示すべき条件、選考と入社後の注意点を解説します。

リモートワーク採用とは

リモートワーク採用とは、入社後に自宅などオフィス以外の場所で働くことを前提に、人材を募集・採用することです。

厚生労働省のガイドラインでは、テレワークを、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務とし、業務を行う場所に応じて、自宅で行う在宅勤務、メインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、臨機応変に選択した場所で行うモバイル勤務に分類しています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

この記事では、主に在宅勤務を前提とした採用を「リモートワーク採用」と呼びます。

働き方の主な形

リモートワーク採用には、いくつかの形があります。

形内容向いている例
フルリモート原則としてすべての業務を自宅などで行う事務、入力作業、カスタマーサポート、Web制作など
一部リモート週の一部を出社し、残りを在宅で行う社内での打ち合わせや研修が定期的に必要な仕事
入社後の段階的な移行最初は出社して業務を覚え、慣れてから在宅に移る業務の習得に対面での指導が必要な仕事

どの形にするかで、応募できる人の範囲や、必要な仕組みが変わります。採用を始める前に決めておくことが大切です。

リモートワークの広がり

企業のテレワーク導入は、ここ数年で大きく進みました。

企業のテレワーク導入率の推移を示す棒グラフ。2019年20.2%、2020年47.5%、2025年50.1%

総務省の通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は2019年の20.2%から2020年には47.5%に増え、2025年は50.1%でした(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」テレワーク・オンライン会議)。

同じ白書は、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大後に急速に導入が進み、その後は横ばいで推移していると説明しています(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」テレワーク・オンライン会議)。

導入している企業が半数程度ある一方で、残りの半数は導入していません。働く場所の柔軟さは、求職者にとって会社を選ぶときの比較材料の一つになっています。

リモートワーク採用のメリット

厚生労働省のガイドラインは、テレワークのメリットを労働者と使用者の両方の立場から挙げています。使用者にとってのメリットは次のとおりです。

使用者にとっても、業務効率化による生産性の向上にも資すること、育児や介護等を理由とした労働者の離職の防止や、遠隔地の優秀な人材の確保、オフィスコストの削減等のメリットがある。

出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」

ここで挙げられている「遠隔地の優秀な人材の確保」と「離職の防止」は、採用の面から見ても大きな意味を持ちます。採用の場面に当てはめて整理すると、主なメリットは次の4つです。

リモートワーク採用のメリットとデメリットを観点ごとに比べた表

1. 住んでいる場所を問わず募集できる

通勤の条件がなくなるため、オフィスから遠い地域に住む人も応募できるようになります。地方の企業が都市部の人材に、都市部の企業が地方の人材に出会える可能性が広がります。

2. 通勤が難しい人が応募できる

子育てや介護をしている人、通勤に負担を感じる人など、働く意欲はあっても通勤が難しい人がいます。リモートワークを前提にすれば、こうした人たちも応募の対象になります。

在宅で働きたい人材が集まる求人サイトもあります。子育て中の方など通勤が難しい人材の採用を考えている場合は、在宅ワークに特化した求人サイトへの掲載サービスの詳細も参考にしてください。

3. 入社後の離職を防ぎやすい

ガイドラインが挙げるように、育児や介護などを理由とした離職の防止につながります。採用した人が生活の変化があっても働き続けられることは、採用にかけた費用と時間を生かすことにもなります。

4. オフィスの費用を抑えられる

在宅で働く人が増えれば、席の数を増やさずに採用できます。オフィスの移転や拡張の時期を見直せる場合もあります。

リモートワーク採用のデメリット

メリットがある一方で、リモートワークを前提にした採用には次のような難しさがあります。

1. 労働時間の管理が難しくなる

在宅で働く人の様子は直接見えないため、労働時間の把握が難しくなります。

テレワークでも労働時間を適正に把握する責務は変わりません。厚生労働省のガイドラインは、始業・終業時刻の確認の原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録することを挙げています(出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。

2. 育成とコミュニケーションに工夫がいる

入社したばかりの人は、分からないことを気軽に聞ける相手がいないと、仕事に慣れるまで時間がかかります。孤立を感じて早期に辞めてしまうこともあります。

オンラインでの定期的な面談や、質問しやすい窓口を決めておくなど、意識的に関わりをつくる必要があります。

3. 評価の仕組みを見直す必要がある

働く様子が見えないと、成果や過程をどう評価するかがあいまいになりがちです。

ガイドラインは、時間外などのメールに対応しなかったことを理由に不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえないとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。評価の基準をあらかじめ決め、本人に伝えておくことが大切です。

4. 情報管理と費用負担のルールが必要になる

自宅で業務の情報を扱うため、端末の管理や通信の安全など、情報セキュリティの対策が欠かせません。IPAは中小企業向けに、経営者が実施すべき指針と社内での対策の手順をまとめたガイドラインを公開しています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。

通信費や機器の費用を誰が負担するかも、事前に決めておく必要があります。ガイドラインは、テレワークによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくないとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

リモートワーク採用が向いている仕事・向いていないケース

すべての仕事がリモートワークに向いているわけではありません。自社の仕事がどちらに近いかを確かめてから進めます。

向いている仕事の例は次のとおりです。

  • パソコンとインターネットがあれば完結する事務や入力作業
  • 電話やメール、チャットで対応するカスタマーサポート
  • Webサイトの更新、デザイン、ライティングなどの制作の仕事
  • 成果物や作業の量で進み具合を確認できる仕事

一方で、次のような場合は、リモートワーク採用を急がないほうがよいことがあります。

  • 書類の原本や現物を扱う作業が多く、在宅では完結しない
  • 業務の手順が文書になっておらず、教える人が隣にいないと覚えられない
  • 個人情報や機密情報を、社外の環境で扱うためのルールや仕組みがない
  • 労働時間を記録する仕組みがなく、在宅での働き方を把握できない

こうした場合は、まず業務の手順を文書にする、勤怠の記録の方法を決めるなど、社内でできる準備から始めます。ガイドラインも、それまでの業務のあり方を前提にするのではなく、仕事内容の本質的な見直しを行うことが有用な場合があるとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

求人で明示すべき条件

リモートワークを前提に募集するときは、働く場所や条件を求人の段階ではっきり示すことが大切です。

職業安定法では、労働者の募集を行う者などに、労働条件などを明示することを義務づけています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」)。

2024年4月からは、明示すべき事項が追加されました(出典:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」)。募集の際には就業の場所について、変更の範囲も含めて明示することとされています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」)。

雇い入れるときの労働条件の明示でも、就業の場所と従事すべき業務について、変更の範囲を含めて明示することが定められています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」)。

テレワークについて、ガイドラインは次のように示しています。

自宅やサテライトオフィスなど、テレワークを行う場所を明示する必要がある。

出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」

求人の段階で「在宅可」とだけ書くと、応募者との認識にずれが生じやすくなります。次のような点を具体的に書いておくと、入社後のずれを防げます。

明示しておきたい点書き方の例
働く場所自宅(原則)。研修期間中は本社に出社
出社の頻度月1回の全体会議のみ出社、など
変更の範囲会社の定める場所(自宅を含む)、など
勤務時間始業・終業の時刻、休憩、時間外労働の有無
機器と費用会社が貸与する機器、通信費の負担の考え方
対象となる地域居住地の条件がある場合はその範囲

リモートワーク採用の進め方

リモートワーク採用は、次の4つの手順で進めると準備の漏れを防げます。

リモートワーク採用を進める4つの手順を示す図
  1. 任せる仕事を決める:在宅で完結する業務を洗い出し、手順を文書にする
  2. ルールを整える:勤怠の記録、情報管理、費用負担、評価の基準を決める
  3. 求人を出す:働く場所、出社の頻度、変更の範囲などを具体的に明示する
  4. 入社後を支える:最初の1〜3か月の面談や質問の窓口を決め、定着を確かめる

1つ目と2つ目は、求人を出す前に社内で進められます。ここが整っていないと、採用できても入社後に困ることになります。

選考で確認したいこと

オンラインで面接する場合は、通信の環境や、自宅で仕事に集中できる環境があるかも確認しておきます。

あわせて、自分で予定を立てて仕事を進めた経験や、文章で報告や相談をする力など、在宅で働くうえで必要になる点を質問で確かめます。

在宅勤務の経験の有無だけで判断せず、入社後の支え方とあわせて考えることが大切です。

入社後に定着してもらうための工夫

リモートワーク採用では、採用した後の支え方が定着を左右します。

ガイドラインは、新入社員や中途採用の社員は、業務について上司や同僚に聞きたいことが多く、不安が大きい場合があるとして、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましいとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

具体的には、次のような工夫が考えられます。

最初の数週間の予定を決めておく

入社初日から何をすればよいか分からない状態をつくらないよう、最初の数週間の業務と、誰が教えるかを決めておきます。必要な機器やアカウントは、入社日までに使える状態にしておきます。

質問の窓口と時間を決める

「いつ、誰に聞けばよいか」が決まっていると、質問のハードルが下がります。毎日の短い打ち合わせや、チャットで質問を受ける担当者を決めておくと効果的です。

教える内容を動画や文書に残す

ガイドラインは、社内教育などをオンラインで行うことも有効であり、動画にしていつでも学べるようにするなど、オンラインならではの利点があるとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。一度まとめておけば、次に採用する人の育成にも使えます。

定期的に面談する

入社後1か月、3か月など節目ごとに面談し、仕事の量や困っていることを確認します。在宅では表情や様子が見えにくいため、意識して話す機会をつくることが大切です。

リモートワーク採用にかかる費用の考え方

リモートワーク採用でかかる費用は、大きく分けて「募集にかかる費用」と「在宅で働く環境を整える費用」の2つです。

募集にかかる費用は、使う求人媒体や掲載の期間、掲載の形式によって変わります。媒体によって料金の決まり方が異なるため、掲載料が固定のものか、応募や採用の件数に応じて決まるものかを確認し、同じ条件で比べてください。

在宅で働く環境を整える費用には、パソコンなどの機器、通信費、情報セキュリティの対策などがあります。会社が貸与するか、本人の機器を使うかによっても変わります。

一方で、席を増やさずに採用できる、通勤手当がかからないなど、出社を前提とした採用と比べて減る費用もあります。増える費用と減る費用の両方を書き出して比べると、判断しやすくなります。

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  • 在宅で働きたい人が集まる:在宅勤務を希望する人が探しに来る求人サイトです。在宅でできる仕事の求人を、関心のある人に見てもらいやすくなります。
  • 住んでいる地域に縛られずに募集できる:通勤がないため、遠方に住む人からの応募も考えられます。採用できる人の範囲を広げることにつながります。
  • 子育て中の人材などに届けやすい:子育てや介護などで通勤が難しい人も利用しています。経験を持つ人材と出会う機会を作れます。

資料で確かめたいこと

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  • 雇用か業務委託かなど、契約の形に合った掲載ができるか

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よくある質問

リモートワークで採用した人を、後から出社に切り替えられますか?

雇い入れるときに明示した就業の場所と変更の範囲によります。就業の場所の変更の範囲を明示することが定められているため、将来出社をお願いする可能性がある場合は、その範囲を最初から明示しておくことが大切です(出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」)。

在宅で働く人の通信費は、会社が負担しなければなりませんか?

負担の方法は会社ごとに決めることになりますが、労働者に過度の負担が生じないよう、労使で話し合って就業規則などに定めておくことが望ましいとされています。

正社員だけでなく、パートタイムの人もリモートワークの対象にできますか?

できます。ガイドラインは、正規雇用か非正規雇用かといった雇用形態の違いだけを理由に、テレワークの対象から外すことのないよう留意する必要があるとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

遠方に住む人を採用するときに気をつけることはありますか?

研修や会議で出社が必要になる場合は、その頻度と交通費の扱いを事前に決め、求人の段階で伝えておくと、入社後のずれを防げます。

リモートワーク採用でも試用期間を設けられますか?

設けられます。在宅での働き方に合わせて、試用期間中に任せる業務、確認する点、面談の予定を決めておくと、本人と会社の双方が判断しやすくなります。

試用期間中だけ出社してもらう場合は、求人の段階でその旨と期間を明示しておくと、応募者との認識のずれを防げます。

参考資料