時間と費用をかけて採用したのに、入社して数か月で辞めてしまった。面接では問題なかったのに、配属後に「思っていた仕事と違う」と言われた。採用のミスマッチは、多くの企業が抱える悩みです。
ミスマッチは、採用の一場面だけで起きるものではありません。募集の段階で伝える情報、選考での見極め方、入社後の受け入れ方が重なって起きます。
この記事では、採用のミスマッチの種類と原因を、厚生労働省の統計や法令の情報とあわせて整理し、段階ごとの防ぎ方を解説します。適性検査や入社後のアンケートの使い方、費用の考え方、対策が必要ないケースもまとめます。
採用のミスマッチとは
採用のミスマッチとは、企業が求めていた人材像と入社した人の実際、または入社した人が期待していた仕事や職場と実際の状態が合っていないことを指します。
企業側から見たミスマッチと、入社した人から見たミスマッチの両方があります。どちらか一方だけを見ていると、対策がずれてしまいます。
早期離職の状況
厚生労働省が2025年10月に公表した調査では、令和4年3月に卒業して就職した人の3年以内の離職率は、大学卒で33.8%、高校卒で37.9%でした。事業所の規模別では、従業員5〜29人の事業所で大学卒52.0%、高校卒54.6%と、規模が小さいほど離職率が高い傾向があります(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」)。
新卒に限らず、人の入れ替わりは少なくありません。令和7年の1年間の離職率は、働く人全体で13.7%でした(出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 入職と離職の推移」)。中小企業にとって、ミスマッチを防ぐことは採用の効率に直結する課題です。
採用コストが上がっている
2025年版中小企業白書では、採用コストが5年前より増加したと答えた事業者が約7割を占めています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第2部第1章第4節 人材戦略)。1人の早期離職で失う費用も、以前より大きくなっていると考えられます。人を集めにくい状況も続いており、令和8年8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍でした(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」)。
ミスマッチの主な種類
ミスマッチには、いくつかの種類があります。自社で起きているのがどれかを見極めることが、対策の出発点です。
| 種類 | 起きていること | 入社後によく聞かれる声 |
|---|---|---|
| 仕事内容のミスマッチ | 任された業務が、募集時の説明と違う | 思っていた仕事と違った |
| 能力・スキルのミスマッチ | 求めた水準と、本人の能力に差がある | ついていけない、物足りない |
| 価値観・社風のミスマッチ | 仕事の進め方や大切にすることが合わない | 職場の雰囲気になじめない |
| 労働条件のミスマッチ | 給与、残業、休日などが期待と違う | 聞いていた条件と違った |
| 期待する役割のミスマッチ | 会社が求める役割と、本人が望む役割が違う | もっと任せてほしい、責任が重すぎる |
複数の種類が同時に起きていることも少なくありません。退職した人に理由を聞くときは、どの種類に当たるかを分けて記録すると、次の対策につなげやすくなります。
ミスマッチが起きる原因
働く人がどんな理由で職場を離れているかは、公的な統計からも読み取れます。令和7年の雇用動向調査では、転職した人が前の職場を辞めた個人的理由として、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%、男性は「給料等収入が少なかった」9.9%が最も多く、男女とも「職場の人間関係が好ましくなかった」が続きました(「その他の個人的理由」を除く。出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 転職入職者の状況」)。

条件や人間関係は、入社前に伝え方を工夫できる部分と、入社後の職場づくりで変えるべき部分の両方を含みます。原因を企業側と応募者側に分けて整理します。
企業側の原因
- 求める人物像があいまいで、面接官ごとに評価がばらつく
- 応募を増やしたいあまり、良い面だけを伝えている
- 人手不足から、採用の基準を下げて採用している
- 面接が雑談中心で、仕事に必要な力を確かめていない
- 入社後の受け入れや教育の体制が整っていない
応募者側の原因
- 給与や勤務地など、条件だけで応募先を選んでいる
- 仕事内容や職場について、十分に調べられていない
- 面接で良く見せようとして、本音を話していない
応募者側の原因も、企業が情報を十分に出すことで減らせる部分があります。応募者が判断できる材料を用意することは、企業側の役割と考えましょう。
段階別:ミスマッチを防ぐ方法
ミスマッチの対策は、募集前、募集・選考、内定から入社、入社後の4つの段階に分けて考えます。

募集前:求める人物像を具体的にする
最初にやるべきことは、どんな人を採用したいかを具体的にすることです。
- 配属先の上司と一緒に、任せる業務を書き出す
- 必ず必要な条件と、あればうれしい条件を分ける
- 活躍している社員と、早く辞めた社員の違いを振り返る
- 能力だけでなく、仕事の進め方や大切にしてほしい考え方も言葉にする
「コミュニケーション能力が高い人」のような表現は、人によって解釈が違います。「取引先からの問い合わせに、その日のうちに返信できる人」のように、行動の形で書くと評価をそろえやすくなります。
募集・選考:良い面も大変な面も伝える
求人票や面接では、仕事の良い面だけでなく、大変な面も伝えます。入社前に現実的な情報を伝える考え方は、RJP(現実的な仕事情報の事前開示)と呼ばれます。
- 繁忙期の残業の時間や、休日出勤の頻度
- 入社後すぐに任せる仕事と、つまずきやすい点
- 評価や昇給の仕組み
求人情報の正確さは、法律でも求められています。2022年10月施行の改正職業安定法について、厚生労働省は求人企業に次のように示しています。
また、募集を終了した場合や内容に変更があった場合には速やかに採用ウェブサイトを更新するなど求人情報を正確・最新の内容に保たなければなりません。
出典:厚生労働省「改正職業安定法 2022(令和4)年10月1日施行」リーフレット
古い求人情報が残っていると、それ自体が「聞いていた話と違う」の原因になります。掲載中の求人や採用ページは、条件が変わるたびに見直しましょう。
令和6年4月1日以降の求人申込みでは、従事すべき業務の変更の範囲や就業場所の変更の範囲も明示が必要になっています(出典:東京労働局「求人票に明示する労働条件が新たに3点追加されるのでご留意ください」)。同局は「変更の範囲」を次のように説明しています。
雇入れ直後だけでなく、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する労働契約期間中での変更の範囲のことをいいます。
出典:東京労働局「求人票に明示する労働条件が新たに3点追加されるのでご留意ください」
将来の配置転換や転勤の可能性を正確に伝えることは、期待する役割や仕事内容のミスマッチを防ぐことにもつながります。
選考:質問と評価の基準をそろえる
面接官ごとに質問や評価がばらつくと、見極めの精度が下がります。次のような工夫で、評価をそろえます。
- 職種ごとに、全員に聞く質問を決めておく
- 過去の行動を具体的に聞く(例:「仕事で意見が対立したとき、どう対応しましたか」)
- 評価の基準を、事前に3段階などで決めておく
- 面接官が複数いる場合は、面接後すぐに評価を記録し、すり合わせる
職種によっては、実際の仕事に近い課題を出す方法もあります。資料の作成、電話対応の練習、簡単な作業など、仕事の一部を体験してもらうと、双方が判断しやすくなります。
選考:適性検査を補助として使う
適性検査は、面接だけでは見えにくい性格の傾向や、考え方の特徴を把握するのに役立ちます。ただし、検査の結果だけで合否を決めるのは避けましょう。
厚生労働省は、採用選考を「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」の2点を基本に行うよう求めています。就職差別につながるおそれがある事項として、宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想などの把握や、本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用も挙げられています(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。検査や書類を選ぶときは、こうした質問が含まれていないか確認が必要です。
適性検査は、面接で確認する質問を決めたり、入社後の配属や指導の参考にしたりする使い方が向いています。
内定から入社まで:不安を早めに解消する
内定から入社までの期間は、内定者が不安を感じやすい時期です。
- 配属予定の部署の社員と話す機会をつくる
- 入社後最初の1か月の予定を伝える
- 労働条件を書面で改めて確認する
条件の説明は、口頭だけでなく書面で行いましょう。2024年4月からは、労働契約を結ぶときに明示する労働条件にも、就業場所・業務の変更の範囲などが追加されています(出典:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。求人票と労働条件通知書の内容がそろっているかも確認します。
入社後:小さな変化を早く見つける
入社後のミスマッチは、早い段階で気づけば対応できることが多くあります。
- 入社後1週間、1か月、3か月の節目で面談を行う
- 教える担当者と、相談できる別の相手を決めておく
- 定期的な短いアンケートで、仕事や職場への感じ方を確かめる
退職の申し出があってから理由を知るのでは、手の打ちようがありません。小さな変化に気づける仕組みをつくることが大切です。
採用時の適性検査と、入社後の定期的な簡易アンケートを組み合わせて、ミスマッチや離職の兆しを把握する方法もあります。ツナグバでは、適性検査とパルスサーベイによるミスマッチ・離職防止のサービスを掲載しています。
段階別の対策まとめ
ここまでの対策を、段階ごとに一覧にします。自社で多いミスマッチの種類から、優先して取り組む段階を決めましょう。

| 段階 | 主な対策 | 防げるミスマッチ |
|---|---|---|
| 募集前 | 任せる業務の書き出し、必須条件と歓迎条件の区別 | 能力・スキル、期待する役割 |
| 募集 | 大変な面も含めた情報開示、変更の範囲の明示 | 仕事内容、労働条件 |
| 選考 | 質問と評価基準の統一、仕事に近い課題、適性検査の活用 | 能力・スキル、価値観・社風 |
| 内定〜入社 | 社員との面談、条件の書面での確認 | 労働条件、仕事内容 |
| 入社後 | 節目の面談、定期的なアンケート | 価値観・社風、期待する役割 |
面接で使える質問の例
ミスマッチを防ぐ面接では、応募者の考えではなく、過去の行動を具体的に聞くのが基本です。過去の行動は、入社後の行動を予測する手がかりになります。
| 確かめたいこと | 質問の例 | 聞き取るポイント |
|---|---|---|
| 仕事の進め方 | これまでの仕事で、締め切りが重なったときはどう進めましたか | 優先順位のつけ方、周囲への相談の有無 |
| 周囲との関わり方 | 意見が合わない相手と仕事をしたとき、どう対応しましたか | 相手の話を聞く姿勢、解決までの行動 |
| 学ぶ姿勢 | 新しい業務を覚えるとき、どのように身につけましたか | 自分から調べる、質問するなどの行動 |
| 仕事への期待 | 入社後の1年で、どんな仕事ができるようになりたいですか | 会社が任せる予定の仕事との重なり |
| 働く条件 | 残業が多くなる時期があることについて、どう考えますか | 条件を理解したうえで応募しているか |
質問への答えだけで判断せず、「そのとき、具体的に何をしましたか」と掘り下げて聞くと、実際の行動が見えてきます。応募者が緊張している場合は、答えやすい質問から始めましょう。家族のことや思想・信条に関わる質問は、前述のとおり避けます。
応募者からの質問の時間を十分にとる
面接の最後に、応募者からの質問を受ける時間を十分にとります。応募者が何を気にしているかは、ミスマッチの芽を見つける手がかりです。答えにくい質問にも、事実をそのまま伝えましょう。
退職理由の聞き方と生かし方
ミスマッチの対策を改善するには、実際に辞めた人の理由を知ることが欠かせません。ただし、退職のときに本音を話してもらうのは簡単ではありません。
- 直属の上司ではなく、人事担当者など別の人が話を聞く
- 「何が合わなかったか」を、仕事内容・条件・人間関係などに分けて聞く
- 入社前に聞いていた説明と違った点がないかを確認する
- 聞いた内容を、採用時の評価や面接の記録と並べて見直す
分類の項目は、雇用動向調査の離職理由(収入、労働条件、人間関係、仕事の内容など)を参考にすると、自社の傾向を公的な統計と比べやすくなります(出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 転職入職者の状況」)。退職者が少ない企業でも、数年分を集めると傾向が見えてきます。採用担当者と配属先の上司で共有し、次の募集や面接の内容を見直しましょう。
費用の考え方
ミスマッチの対策には、費用がかからないものと、費用がかかるものがあります。
費用をかけずにできる対策
- 求める人物像と評価基準を、社内で決めて共有する
- 求人票に、仕事の大変な面や1日の流れを書き足す
- 入社後の面談の日程を、あらかじめ決めておく
- 退職者に理由を聞き、種類別に記録する
まずはこれらから始めると、どこに課題があるかが見えてきます。
費用をかける対策
適性検査や入社後のアンケートの仕組みは、外部のサービスを使うと費用がかかります。料金の方式は、受検1回ごと、社員数に応じた月額など、サービスによって異なります。
判断の目安として、1人が早期に辞めたときにかかった費用を計算してみましょう。求人媒体の費用、面接や研修にかかった社員の時間、再募集の費用などを合計します。年に何人の早期離職が起きているかと掛け合わせると、対策にかけられる費用の目安になります。
対策が必要ないケース・後回しでよいケース
すべての企業が、すぐに仕組みを導入する必要はありません。
- 早期離職がほとんど起きておらず、現場からの不満も少ない
- 採用人数が年に1〜2人で、経営者や現場が丁寧に面接できている
- 給与や労働時間など、条件面に明らかな課題があり、そちらが離職の主な原因になっている
特に3つ目の場合は、選考の工夫より先に、労働条件や職場環境の見直しが必要です。統計でも収入や労働条件は離職理由の上位にあり(出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 転職入職者の状況」)、ミスマッチの対策は条件面の課題を補うものではありません。
ミスマッチを防ぐためのチェックリスト
- 求める人物像を、行動の形で書き出している
- 必須条件と歓迎条件を分けている
- 求人票に、仕事の大変な面や繁忙期の様子を書いている
- 業務と就業場所の変更の範囲を明示している
- 掲載中の求人情報を、最新の内容に保っている
- 面接で全員に聞く質問と、評価の基準を決めている
- 適性検査の結果だけで合否を決めていない
- 労働条件を書面で確認している
- 入社後の節目の面談を予定している
- 退職者の理由を、種類別に記録している
あわせて読みたい
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掲載サービスでできること
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資料で確かめたいこと
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- アンケートの頻度や設問を自社で調整できるか
- 結果の見方の説明や、活用の相談ができるか
- 社員の回答の扱い(誰が見られるか)と管理体制
- 契約期間と、利用人数が変わるときの条件
よくある質問
採用のミスマッチを防ぐために、最初にやるべきことは何ですか。
求める人物像を具体的にすることです。配属先の上司と一緒に任せる業務を書き出し、必須条件と歓迎条件を分けましょう。そのうえで、面接の質問と評価の基準をそろえると、見極めの精度が上がります。
適性検査を使えばミスマッチはなくなりますか。
適性検査だけでミスマッチがなくなるわけではありません。性格の傾向などを把握する補助として、面接や仕事に近い課題と組み合わせて使います。検査の結果だけで合否を決めないこと、適性・能力に関係のない事項を含む検査を使わないことが大切です(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。
仕事の大変な面を伝えると、応募が減りませんか。
応募の数は減る場合があります。ただし、大変な面を理解したうえで応募する人が増えるため、入社後の早期離職は減りやすくなります。応募数だけでなく、定着した人数で効果を判断しましょう。
入社後のミスマッチに気づいたら、どうすればよいですか。
まず本人と面談し、何が合わないのかを具体的に聞きます。仕事の進め方や教え方の調整、配置の見直しで解決できることもあります。早く気づくほど選択肢が増えるため、節目の面談や定期的なアンケートで変化を確かめておきましょう。
中途採用と新卒採用で、対策は変わりますか。
中途採用では、前職での経験と自社で求める業務の違いがミスマッチの原因になりやすいため、任せる業務の範囲を具体的に伝えることが重要です。新卒採用では、働くこと自体のイメージがまだ固まっていないため、職場見学や社員との対話で仕事の実際を知ってもらう機会が役立ちます。
参考資料
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」(2025年10月24日公表)
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」入職と離職の推移
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」転職入職者の状況
- 中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第2部第1章第4節 人材戦略
- 厚生労働省「改正職業安定法 2022(令和4)年10月1日施行」リーフレット
- 東京労働局「求人票に明示する労働条件が新たに3点追加されるのでご留意ください」
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」(2026年10月2日公表)
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」
