お客様との電話を録音したい。でも、相手に断らずに録音してよいのか、告知しないと違法になるのかが分からない。通話録音を始めようとする会社の多くが、まずこの点で迷います。
この記事では、通話録音と告知の関係を、個人情報保護法のルールから整理します。録音した通話が個人情報にあたる場合、利用目的の伝え方、受ける電話とかける電話での告知の考え方、録音データの管理、漏えいが起きたときの報告まで、公的機関の資料をもとにまとめました。法的な判断が必要な場面では、弁護士などの専門家に相談してください。
結論|問われるのは「録音」より「目的の伝え方と管理」
先に結論を整理します。会社が自分の通話を録音すること自体を直接禁じる規定は、個人情報保護法にはありません。個人情報保護法が会社に求めているのは、録音した情報を何のために使うのかを決め、本人に知らせるか公表すること、不正な手段で取得しないこと、目的の範囲内で使うこと、安全に管理することです。
つまり、「録音します」と毎回言わなかったから直ちに違法、という単純な話ではありません。一方で、利用目的を公表も通知もせずに録音を続けたり、録音を目的の外で使ったり、ずさんに管理して漏らしたりすれば、法律のルールに反するおそれがあります。
また、法律上の問題とは別に、相手が録音を知らなかった場合、あとで録音の存在を知って不信感を持つことがあります。実務では、法律のルールを守ることと、相手の信頼を損なわないことの両方から、告知の方法を考えるのが現実的です。
録音した通話は個人情報にあたる
通話の録音は、声だけのデータに見えます。しかし、会話の中で名前や会社名、電話番号が話されていれば、誰との通話かが分かります。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人情報に該当する事例として「本人の氏名が含まれる等の理由により、特定の個人を識別できる音声録音情報」が挙げられています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。
お客様からの問い合わせや営業の電話では、名乗りや本人確認のやりとりが入るのが普通です。そのため、会社の通話録音は、多くの場合で個人情報の取り扱いにあたると考えておくほうが安全です。録音を通話の相手ごとに整理して検索できるようにすれば、個人データとして扱うことになります。
通話録音で守るべき個人情報保護法のルール
個人情報を扱う会社には、取得、利用、保管、提供のそれぞれの場面でルールがあります。政府広報オンラインは、取得するときには利用目的を具体的に決め、あらかじめ公表するか本人に知らせる必要があると説明しています(出典:政府広報オンライン「これだけは知っておきたい『個人情報保護』のルール」)。

利用目的を決めて、通知または公表する
告知と最も関係が深いのが、利用目的の通知または公表のルールです。ガイドラインでは、法律の条文を次のように示しています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」PDF版
この条文から読み取れるのは、「本人に知らせる」か「公表する」かのどちらかを行えばよいということです。通話のたびに口頭で伝えることまでは、この条文だけでは求められていません。ウェブサイトのプライバシーポリシーなどに、通話を録音することと、その利用目的をあらかじめ載せておく方法も、公表の一つです。
ただし、公表の方法は何でもよいわけではありません。ガイドラインは、公表とは広く一般に自己の意思を知らせることであり、事業の性質や個人情報の取扱状況に応じ、合理的かつ適切な方法によらなければならないと説明しています。本人への通知も、内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法によらなければならないとされています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」PDF版)。見つけにくい場所に小さく書くだけでは、十分とはいえない場合があります。
決めた目的の範囲内で使う
取得した個人情報は、決めた利用目的の範囲内で使います。取得したときと違う目的で使う場合は、本人の同意が必要です(出典:政府広報オンライン「これだけは知っておきたい『個人情報保護』のルール」)。
たとえば「応対品質の向上のため」と公表して録音した通話を、そのまま広告の素材に使うのは、目的の範囲を超えるおそれがあります。録音をどう使う可能性があるかは、最初に広めに洗い出しておき、利用目的に含めておくことが大切です。
安全に管理し、勝手に第三者に渡さない
個人情報は、漏えいなどを防ぐために安全に管理する必要があります。政府広報オンラインは、パソコンのファイルにパスワードを設定する、ウイルス対策ソフトを入れるといった例を挙げ、従業員の教育や委託先の監督も大切だとしています。本人以外に渡す場合は、原則として事前に本人の同意が必要です(出典:政府広報オンライン「これだけは知っておきたい『個人情報保護』のルール」)。
本人から開示などの請求があった場合の対応も、ルールの一つです。事業者の名称、利用目的、請求の手続きの方法などを、本人が知り得る状態にしておくことが求められています(出典:政府広報オンライン「これだけは知っておきたい『個人情報保護』のルール」)。録音を検索して取り出せる状態にしておくと、こうした請求にも対応しやすくなります。
告知のしかた|受ける電話とかける電話で分けて考える
通話録音の告知は、受ける電話とかける電話で考え方が変わります。どちらの場合も、ウェブサイトなどで利用目的を公表したうえで、通話の中でも分かるように伝える形が、相手の信頼を得やすい方法です。

受ける電話:自動音声で案内する
お客様からかかってくる電話では、つながる前の自動音声で録音を案内する方法が一般的です。たとえば「応対の品質向上と、内容の確認のため、通話を録音しています」のように、録音することと目的を短く伝えます。
案内に入れる目的は、ウェブサイトで公表している利用目的とそろえます。案内では「品質向上のため」とだけ言い、実際には別の目的にも使っている、という状態は避けます。
かける電話:最初に口頭で伝える
営業やフォローの電話など、こちらからかける電話では、相手は録音されることを予想していないことが多くあります。自動音声の案内を流せない場合は、名乗ったあとに「この通話は、内容の確認のため録音しております」と一言添えると、あとで相手が不信感を持つことを防げます。
相手から「録音しないでほしい」と言われた場合の対応も、あらかじめ決めておきます。録音を止められる仕組みかどうか、止められない場合はどう説明するかを、社員が迷わず答えられるようにしておきます。
ウェブサイトに書いておくこと
- 電話の通話を録音すること
- 録音の利用目的(応対品質の確認、内容の確認、トラブルの防止など)
- 録音データの管理の方針(必要な期間だけ保存するなど)
- 開示などの請求の手続きと、問い合わせの窓口
告知しないと違法になる?問題になりやすいケース
告知や公表をしなかった場合に、どのような問題が起きやすいかを整理します。個別のケースが法律に反するかどうかは、事実関係によって判断が変わります。迷う場合は専門家に確認してください。
| ケース | 問題になりやすい点 |
|---|---|
| 利用目的をどこにも公表せず、通話でも伝えていない | 利用目的の通知・公表のルールを満たしていないおそれがある |
| 「品質向上のため」と伝えた録音を、別の目的に使った | 利用目的の範囲を超えた利用になるおそれがある |
| 録音を取引先や社外の人に渡した | 本人の同意のない第三者提供になるおそれがある |
| 誰でも録音を聞ける、持ち出せる状態だった | 安全管理が不十分で、漏えいにつながるおそれがある |
| 相手に録音を隠したまま、発言を引き出した | 相手の信頼を失い、トラブルが大きくなるおそれがある |
録音を裁判などの証拠として使えるかどうかも、よく聞かれる点です。証拠としての扱いは、録音の方法や内容などの事情によって判断されるため、一律には言えません。証拠に使う可能性がある場合は、早めに弁護士に相談してください。
なお、金融商品の取引など、業種によっては別の法令や業界のルールで、通話の録音や記録の保存について決まりがある場合があります。自社の業種に関係するルールがないかも、あわせて確かめておきます。
カスタマーハラスメント対策としての通話録音
通話録音が改めて注目されている理由の一つが、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策です。厚生労働省は、法律の改正について次のように案内しています。
令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が全ての事業主の義務となりました!
出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
カスハラへの対応では、何が起きたかを後から確かめられる記録が重要になります。厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルでは、電話での対応について、通話内容を録音できるようにしておくこと、録音や対応の記録など第三者が検証できる証拠を集めることが示されています(出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」)。
同じマニュアルは、録音にあたっての注意点にも触れています。
録音・録画に当たっては個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第57 号)等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うこと。
出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」
カスハラ対策のための録音も、個人情報保護法のルールの外にあるわけではありません。利用目的に「トラブルの防止と対応」などを入れて公表し、録音データを必要な人だけが聞けるように管理することが前提です。録音していることを伝えるだけで、相手の言動が落ち着く場合もあります。
録音データの管理ルールと、漏えいへの備え
録音を始めると、データはどんどん増えていきます。保存の方法を決めないまま始めると、誰でも聞ける共有フォルダに置かれたままになる、といったことが起きがちです。
個人データの漏えいなどが起きた場合、一定の要件にあたると、個人情報保護委員会への報告が義務になります。要件は、要配慮個人情報を含む場合、不正に利用されて財産的な被害が生じるおそれがある場合、不正の目的で行われたおそれがある場合、本人の数が1,000人を超える場合です。速報はすみやかに、確報は発覚した日から30日以内(不正の目的のおそれがある場合は60日以内)が期限とされています(出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」)。

通話では、病歴などの要配慮個人情報や、カード番号のようにお金にかかわる情報が話されることもあります。録音データは、こうした情報を含む可能性があるものとして管理しておくと安心です。
管理のルールづくりには、個人情報保護委員会が公開している「個人データ取扱い要領(例)」が参考になります。中小規模事業者が個人データの取り扱いのルールを作るときの参考資料で、自社の実態に合わせて直して使うことが想定されています。ここでいう中小規模事業者は従業員100人以下の事業者で、5,000人を超える個人情報を扱う事業者や、委託を受けて個人データを取り扱う事業者は除かれます(出典:個人情報保護委員会事務局「個人データ取扱い要領(例)」)。
録音データについて、最低限決めておきたいのは次の点です。
- 録音を聞ける人と、聞ける場面(上司の確認、トラブル対応など)
- 保存する期間と、期間が過ぎたあとの削除の方法
- ダウンロードや社外への持ち出しを認めるかどうか
- 誰がいつ録音を聞いたかの記録を残すかどうか
- 録音の保存を外部のサービスに任せる場合の、委託先の確認
通話録音のツールを選ぶときの判断基準
電話機の録音機能や、手元の録音機器で始めることもできます。ただ、通話の件数が多い会社では、録音を探す、共有する、聞ける人を限るといった管理に手間がかかります。こうした場合は、通話を自動で録音して保存し、内容の確認や共有をしやすくするツールが選択肢になります。
| 確かめる点 | 見るところ |
|---|---|
| 録音の範囲 | 受ける電話とかける電話の両方を録音できるか。録音しない設定ができるか |
| 探しやすさ | 日時、相手、担当者などで録音を探せるか |
| 聞ける人の制限 | 部署や役職ごとに、聞ける録音を分けられるか |
| 保存と削除 | 保存期間を決めて、自動で削除できるか |
| 共有のしやすさ | 上司や関係者と、必要な録音だけを共有できるか |
| 費用 | 利用する人数、回線の数、保存する量で変わるため、条件をそろえて見積もる |
たとえば、通話の録音と保存、内容の確認や共有をまとめて行えるAIを活用した通話録音・管理ツールのように、応対品質の確認やトラブルの防止を目的にしたサービスもあります。導入を検討するときは、上の表の点を、自社の利用目的と照らして確かめます。
一方で、ツールを入れなくてよいケースもあります。電話の件数が少なく、トラブルもほとんどない会社なら、まずは利用目的の公表と、必要な場面だけの録音から始めても十分なことがあります。録音を始める前に、利用目的と管理のルールが決まっていないなら、ツールより先にそちらを整えます。
通話録音を始める前のチェックリスト
- 録音の目的を、具体的に書き出したか
- 利用目的を、ウェブサイトなどで公表したか
- 受ける電話の自動音声の案内を決めたか
- かける電話で、最初にどう伝えるかを決めたか
- 録音を聞ける人、保存期間、削除の方法を決めたか
- 相手に「録音しないで」と言われたときの対応を決めたか
- 漏えいが起きたときの連絡と報告の流れを決めたか
- 自社の業種に、録音に関する別の法令やルールがないか確かめたか
あわせて読みたい
ツナグバで、通話録音のサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
ITツール・SaaSの分野では、AIを活用した通話録音・管理ツールを掲載しています。電話の通話を録音・保存し、内容の確認や共有をしやすくするツールで、応対品質の確認やトラブル防止に役立ちます。電話での営業・顧客対応が多い企業に向いています。
録音できる範囲や、管理の機能、導入の進め方は、資料で確認できます。
こんな課題があれば
- 電話でのやり取りが記録に残らず、言った言わないのトラブルになる
- 新人の電話対応を確認したくても、横で聞く時間が取れない
- 通話の内容を後から探すのに手間がかかっている
掲載サービスでできること
- 通話を自動で録音・保存できる:電話の内容を録音し、あとから聞き返せます。顧客とのやり取りを確認したいときに役立ちます。
- AIで通話内容を文字にする機能がある:この種のツールには、通話を文字に起こしたり、要点をまとめたりする機能を持つものがあります。精度や機能の範囲は製品によって違うため、資料で確認してください。
- 応対の振り返りや共有に使える:録音や文字の記録を社内で共有し、良い対応の例を教育に使えます。担当者ごとの応対の差を見直すきっかけになります。
資料で確かめたいこと
- 今使っている電話回線や電話機で使えるか
- 録音データの保存期間と、保存できる量の上限
- 文字起こしの精度や、対応する機能の範囲
- 利用人数ごとの月額料金と初期費用
- 録音することを相手に伝える方法や、データの管理体制
よくある質問
相手の同意を取らずに通話を録音すると違法ですか?
個人情報保護法には、会社が自分の通話を録音すること自体を直接禁じる規定はありません。ただし、利用目的を通知または公表する、目的の範囲内で使う、安全に管理するといったルールを守る必要があります。個別のケースの判断は、専門家に相談してください。
ウェブサイトに書いておけば、電話で告知しなくてもよいですか?
利用目的をあらかじめ公表していれば、通知または公表のルールを満たす方法の一つになります。ただし、公表は合理的かつ適切な方法で行う必要があります。相手の信頼を考えると、通話の中でも録音を伝える方法をあわせて取るのが望ましいでしょう。
録音データは、どのくらいの期間保存すればよいですか?
個人情報保護法には、通話録音の保存期間を一律に決めた規定はありません。利用目的を果たすのに必要な期間を自社で決め、期間が過ぎたら削除する運用が基本です。業種によっては、別の法令で記録の保存が求められる場合もあるため、確かめておきます。
社員が個人のスマートフォンで通話を録音してもよいですか?
個人の端末に録音が残ると、会社として管理できず、漏えいや目的外の利用につながるおそれがあります。業務の通話を録音する場合は、会社が管理できる仕組みで録音し、個人の端末での録音の扱いを社内のルールで決めておきます。
