高卒採用を始めたいが、いつ何をすればよいか分からない。気づいたときには応募の時期が過ぎていた。初めて高卒採用に取り組む企業からは、こうした声がよく聞かれます。

高卒採用は、大卒採用と違い、行政・学校・経済団体の申し合わせで日程が決められています。準備が遅れると、その年度の採用に参加できないこともあります。

この記事では、高卒採用のスケジュールを、令和9年(2027年)3月卒業予定者の日程をもとに解説します。企業が月ごとにやること、準備にかかる時間の目安、遅れたときの対応も、労働局や厚生労働省の資料をもとに整理します。

高卒採用のスケジュールが決まっている理由

高校生の就職活動は、学業への影響を抑え、すべての生徒に公平な機会を確保するために、行政・学校・経済団体が話し合って日程を決めています。企業はこの日程に沿って求人を出し、選考を行います。

文部科学省・厚生労働省・経済団体・学校関係者などでつくる高等学校就職問題検討会議のワーキングチーム報告でも、ハローワークによる求人申込みの受付開始日(6月1日)、企業による学校への求人申込み及び学校訪問開始日(7月1日)、選考開始日(9月16日)が全国的な日程として整理されています(出典:高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告(案))。

日程は毎年度、全国の申し合わせをもとに都道府県ごとに決められます。基本的な日付は全国でほぼ共通ですが、応募方法などは都道府県によって異なります。求人を出す地域の労働局やハローワークの案内を必ず確認しましょう。

高卒の求人は求職者を大きく上回っている

令和8年3月卒業予定の高校生について、令和7年9月末時点のハローワーク求人は約48万3千人、求職者は約12万3千人で、求人倍率は3.94倍でした(出典:厚生労働省「令和7年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(9月末現在))。1人の生徒に約4件の求人がある計算です。日程に遅れると、生徒の目に留まる機会はさらに減ります。

大卒採用のスケジュールとの違い

大卒採用に慣れている企業ほど、高卒採用の進め方に戸惑うことがあります。主な違いを整理しておきます。

項目高卒採用大卒採用
日程行政・学校・経済団体の申し合わせで期日が決まっている政府の要請はあるが、企業ごとの判断の幅が大きい
求人の窓口ハローワークで確認を受けた求人票を学校に出す求人サイトや自社サイトなどで企業が直接募集する
生徒・学生との接点応募前は学校を通じた接点が中心説明会やインターンシップなどで直接接点を持つ
応募の方法学校の推薦を通じて応募する学生が企業に直接応募する
応募できる数一定期間は1社、または2社までに制限される地域が多い制限はない
応募書類全国高等学校統一用紙企業ごとの様式やエントリーシート

高卒採用では、企業が生徒に直接連絡して応募を促すことはできません。学校の先生を通じて自社を知ってもらうことが、採用活動の中心になります。

令和9年3月卒業予定者の主な日程

北海道労働局(ハローワーク釧路)の案内では、令和9年3月卒業予定者の日程は次のとおりです(出典:北海道労働局 ハローワーク釧路「新規高卒者の募集・採用を予定している企業のみなさま」)。

令和9年3月卒業予定者の高卒採用の主な日程を示す表
時期内容
令和8年6月1日からハローワークで高卒求人の受付を開始
令和8年7月1日から学校への求人申込み・求人情報の公開を開始。企業による学校訪問もこの時期から
令和8年9月5日から学校から企業への応募書類の提出(推薦)を開始
令和8年9月16日から選考・面接・採用内定を開始

なお、5月31日以前に受け付けられた求人は、前年度の卒業者向けの求人として扱われます。翌年度の求人を出す場合は、6月1日以降に申し込みます。

応募のルールも都道府県で異なる

多くの地域では、応募開始から一定期間は、生徒1人が1社だけに応募する「一人一社制」がとられてきました。たとえば神奈川県の令和6年3月卒業者向けの取り決めでは、9月30日までは1人1社、10月1日以降は1人2社まで応募できるとされていました(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。

一方、茨城県の令和9年3月卒業予定者向けの申し合わせでは、推薦の開始時点から複数応募が認められています。

推薦開始期日については、令和8年9月5日以降(文書到達主義)とし、当該期日から一人二社までの複数応募・推薦を可能とすること。

出典:茨城県の関係団体・機関「令和9年3月新規中学校等及び高等学校等卒業者の就職に関する申し合わせ」(令和8年3月18日)

同じ申し合わせでは、企業が一人一社での応募を希望する求人は、複数応募の対象にしない扱いも定められています。2020年の高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告が、地域の実情に応じて複数応募の方式を選び、毎年度見直すよう求めたことが背景にあります(出典:高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告(令和2年2月10日))。このように地域差があるため、求人を出す都道府県の取り決めを確認することが大切です。

企業がやることを月別に整理する

高卒採用の準備は、求人受付が始まる6月より前から始まります。ここでは、翌年3月卒業予定者を採用する場合の流れを、前年の秋から整理します。

高卒採用で企業が1年間にやることを4つの時期に分けた図

前年10月〜3月:採用計画を立てる

  • 採用する職種と人数を決める
  • 配属先と、教える担当者を決める
  • 前年度の採用活動を振り返り、改善点を洗い出す
  • 地域の高校の情報を集め、訪問する学校の候補を考える

高卒採用では、学校との関係づくりが重要になります。初めての企業は、この時期に地域の高校の就職状況や、ハローワークの説明会の日程を調べておきましょう。

4月〜5月:求人票と会社紹介の準備をする

  • 求人票の内容(仕事内容、賃金、休日、教育の流れなど)を固める
  • 会社案内や、高校生向けの説明資料を作る
  • 職場見学の受け入れ方法を決める
  • ハローワークの事業主向け説明会に参加する

求人票は、高校生と先生が読む資料です。専門用語を避け、仕事の内容や1日の流れを分かりやすく書きます。神奈川労働局の資料では、固定残業代を設ける場合は算出の根拠を明確にすること、試用期間を設ける場合は補足事項欄に期間を書くことなどが示されています(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。

6月:ハローワークに求人を申し込む

6月1日から、ハローワークで高卒求人の受付が始まります。申し込みは、ハローワークインターネットサービスの求人者マイページから行うのが一般的です。

ハローワークで内容の確認を受けた求人票(確認印付きの求人票)が返されると、学校へ提出できるようになります。茨城県の申し合わせでも、確認済み求人票の返戻と学校での求人申込みの受理は7月1日からとされています(出典:茨城県「令和9年3月新規高等学校等卒業者の就職に関する申し合わせ」)。7月初めから学校訪問を始めたい場合は、6月中の早い時期に申し込んでおきましょう。

7月〜8月:学校訪問と職場見学

7月1日から、学校への求人申込みと学校訪問ができるようになります。確認印付きの求人票を持って、高校の進路指導の先生を訪問します。訪問する場合は、事前に各学校の就職担当の先生に連絡を入れるのが基本です。

夏休みの期間には、生徒の職場見学を受け入れます。職場見学は応募前の情報提供の場です。神奈川労働局は次のように求めています。

見学の際は採用選考に直接つながる質問などは行わないようにお願いします。

出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」

見学で志望動機を聞いて評価するなど、選考の前倒しにあたる対応は避けましょう。案内役の社員にも事前に伝えておきます。

9月:応募書類の受付と選考

9月5日から、学校を通じて応募書類が届きます。応募書類は「全国高等学校統一用紙」と呼ばれる決まった様式で、これ以外の書類は選考に使えません。

9月16日から選考と内定が可能になります。選考結果は、学校を通じて本人に伝えます。神奈川労働局の資料では、書類選考だけで不採用にせず面接などを行うこと、結果は学校と生徒の両方に文書で知らせること(両方とも学校あてに送付)などが示されています(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。

面接の質問にも注意が必要です。厚生労働省は、採用選考を「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」の2点を基本に行うよう求めています(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。家族のことや尊敬する人物など、適性と関係のない質問はしないよう、面接官で共有しておきましょう。

10月〜翌年3月:二次募集と内定者のフォロー

採用予定数に届かなかった場合は、10月以降も募集を続けられます。茨城県の申し合わせでは、10月1日以降も1人2社までの応募・推薦ができ、就職面接会では2社以上の応募も可能とされています。このように、この時期は複数の企業に応募できる地域が多くなります。

内定を出した生徒とは、卒業までの半年ほどの間、学校を通じて連絡を取ります。入社前の説明会や職場見学を行い、入社後の不安を減らしておきましょう。

4月:入社と受け入れ

入社後は、社会人としての基本から教えることになります。最初の数か月は、仕事の進め方や人間関係で悩みやすい時期です。教える担当者を決め、定期的に話を聞く時間をつくります。

年間スケジュールの一覧

時期企業がやること注意点
前年10月〜3月採用計画、学校の情報収集前年度の振り返りを反映する
4月〜5月求人票・会社案内の準備、説明会への参加高校生に分かる言葉で書く
6月ハローワークへの求人申込み5月以前の申込みは前年度扱い
7月〜8月学校訪問、職場見学の受け入れ見学で選考をしない
9月応募書類の受付、選考、内定統一用紙で受け付ける。結果は学校経由
10月〜3月二次募集、内定者のフォロー連絡は学校を通じて行う
4月入社、受け入れ定着のための面談を設ける

準備にかかる時間の目安

初めて高卒採用を行う企業では、求人票の作成から学校訪問まで、社内の作業が想定より多くなりがちです。主に次のような作業が発生します。

  • 求人票と会社案内の作成:社内での確認を含めて数週間程度を見込む
  • 学校訪問:訪問する学校数によるが、7月〜8月に集中する
  • 職場見学の対応:案内役の社員の時間を、受け入れ回数分確保する
  • 選考と結果通知:9月中旬から下旬に集中する

訪問する学校の数や、採用人数によって必要な時間は変わります。採用担当者が他の業務と兼務している場合は、7月〜9月の業務量を前もって調整しておきましょう。

スケジュールに遅れたときの対応

7月以降に高卒採用を始める場合

7月以降でも求人の申し込みはできます。ただし、生徒の多くは夏休み中の職場見学をもとに応募先を決めるため、遅れるほど応募を集めにくくなります。

遅れて始める場合は、次の方法を検討しましょう。

  • ハローワークに相談し、求人を早めに公開してもらう
  • 求人を出したことを、地域の高校に連絡する
  • 10月以降の二次募集の時期に向けて準備する

応募がなかった場合

9月の応募で生徒が集まらなかった場合でも、10月以降の募集で採用できることがあります。応募がなかった理由を、学校の先生に聞いてみるのも一つの方法です。仕事内容や条件の伝え方を見直すきっかけになります。

学校との関係づくりのポイント

高卒採用は、学校の進路指導の先生との信頼関係が採用の結果を左右します。スケジュールに沿って動くだけでなく、年間を通じた関係づくりを意識しましょう。

  • 7月の学校訪問では、求人票だけでなく、仕事の様子が分かる資料を持参する
  • 前年度に採用した生徒がいる場合は、入社後の様子を先生に報告する
  • 選考結果や内定後の連絡は、決められた方法で速やかに行う
  • 採用できなかった年も、翌年度に向けて学校とのつながりを保つ

内定後の連絡も学校が窓口です。神奈川労働局の資料では「内定後であっても、本人との連絡は学校を通してください」とされています(出典:神奈川労働局「令和6年3月新規高校卒業者採用のための求人説明」)。卒業生が入社後に元気に働いている様子は、先生にとって次の生徒に紹介するときの判断材料になります。

高卒採用を始めるかどうかの判断基準

高卒採用は、毎年の日程に合わせて準備を続ける必要があります。入社後の定着も含めて、自社に合っているかを確認しておきましょう。

事業所規模別の新規高卒就職者の3年以内離職率を示す棒グラフ

令和4年3月に高校を卒業して就職した人の3年以内の離職率は37.9%でした。事業所規模別では、5人未満で63.2%、5〜29人で54.6%と、規模が小さいほど高い傾向があります(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2025年10月24日公表)。採用することだけでなく、入社後に定着してもらう体制まで考えたうえで判断することが大切です。

高卒採用に向いている企業

  • 社内で一から育てる体制がある
  • 毎年、継続して若手を採用したい
  • 地域に根ざして事業を行っている
  • 学校との関係づくりに時間をかけられる

高卒採用に向いていないケース

  • 即戦力が必要で、教育に時間をかけられない
  • 採用担当者が7月〜9月に時間を確保できない
  • 1回だけ採用して、翌年以降は採用の予定がない
  • 教える担当者や受け入れの体制が決まっていない

費用の考え方

高卒採用は、ハローワークを通じて求人を出すため、求人の掲載そのものに費用はかかりません。費用として考えたいのは、主に次の項目です。

  • 会社案内や説明資料の制作費
  • 学校訪問の交通費と、担当者の人件費
  • 職場見学や内定者フォローにかかる時間
  • 入社後の研修にかかる費用と時間

自社だけで進めるのが難しい場合は、高卒採用の支援サービスを使う方法もあります。ツナグバでは、高卒採用の手順や時期に沿って進められる高卒新卒採用の支援サービスを掲載しています。支援の範囲や費用はサービスによって異なるため、資料で確認しましょう。

高卒採用のスケジュール確認チェックリスト

  • 求人を出す都道府県の日程と応募ルールを確認した
  • 採用する職種・人数と、教える担当者を決めた
  • 求人票を、高校生に分かる言葉で書いた
  • 固定残業代や試用期間の書き方を確認した
  • 6月中にハローワークへ申し込む予定を立てた
  • 訪問する高校と、訪問の時期を決めた
  • 職場見学の受け入れ方法を決め、選考をしないことを社内で共有した
  • 9月の選考に関わる面接官の予定を確保した
  • 内定から入社までのフォローの方法を決めた

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  • 高卒採用の流れに沿って進められる:高卒採用には、求人票を出す時期や応募の受け付け方などに決まりがあります。その流れに沿って、準備から選考までを相談しながら進められます。
  • 求人票や会社の伝え方を相談できる:高校生や先生に伝わるよう、求人票や会社の紹介の仕方を相談できます。どこまで作成を手伝うかは事業者によって違うため、資料で確認してください。
  • 学校とのやり取りについて相談できる:高卒採用では、学校の先生との関係づくりが大切になります。学校への訪問や連絡の進め方について相談できる場合があります。

資料で確かめたいこと

  • 支援の範囲(求人票の作成、学校訪問、選考の支援など)
  • 費用が定額か、採用できたときにかかるのか
  • 自社の地域の高校とのつながりがあるか
  • 採用の時期に合わせて準備を始められるか
  • 入社後の定着支援があるか

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よくある質問

高卒採用の求人は、いつから出せますか。

ハローワークでの高卒求人の受付は、毎年6月1日から始まります。令和9年3月卒業予定者の場合、令和8年6月1日からです。5月31日以前に受け付けられた求人は前年度の卒業者向けとして扱われるため、注意しましょう。

学校訪問はいつから行えますか。

7月1日から、確認印付きの求人票を持って学校を訪問できます。訪問の前には、各学校の就職担当の先生に連絡を入れておくのが基本です。

選考はいつから始められますか。

令和9年3月卒業予定者の場合、選考と内定は令和8年9月16日からです。応募書類は9月5日から学校を通じて届きます。それより前に選考や内定の約束をすることはできません。

翌年度のスケジュールはいつ決まりますか。

全国の申し合わせをもとに、毎年度、都道府県ごとに日程や応募方法が決められます。茨城県の令和9年3月卒業予定者向けの申し合わせは、令和8年3月18日付で作成されています。基本的な日付は例年ほぼ同じですが、変更される場合もあるため、労働局やハローワークの最新の案内を確認してください。

10月以降からでも高卒採用はできますか。

できます。10月以降も募集を続けている企業は多く、この時期は複数の企業に応募できる地域が多くなります。ただし、多くの生徒は9月の時点で応募先を決めているため、早めに準備するほうが採用しやすくなります。

参考資料