新規開拓の営業を始めようとしたとき、最初に必要になるのが営業リストです。

ただ、「とりあえず企業名と電話番号を集めた」リストでは、連絡しても反応が少なく、営業担当者の時間が無駄になりがちです。

この記事では、営業リストの作り方を5つの手順で整理し、入れるべき項目、情報の集め方、購入やツールを使う判断基準、法令上の注意点までを順に解説します。

成果につながるリストを作るための手引きとして使ってください。

営業リストとは

営業リストとは、営業の対象とする企業や担当者の情報を一覧にまとめたものです。

企業名や連絡先に加えて、業種・規模・地域などの属性、過去の連絡の記録を持たせることで、誰に、いつ、どの方法で連絡するかを判断する材料になります。

よい営業リストの条件

  • 正確さ:企業名や連絡先に誤りがない
  • 新しさ:移転や閉鎖、担当者の異動が反映されている
  • 狙いとの一致:自社の商材で役に立てる企業がそろっている
  • 使いやすさ:項目と書き方がそろっていて、絞り込みや並べ替えができる

件数が多いことよりも、狙いと一致していることの方が成果に直結します。1,000件の合わないリストより、100件の合うリストの方が商談につながりやすいのが一般的です。

営業リストの作り方:5つの手順

営業リストは、次の5つの手順で作ります。集める作業より前に、狙いと項目を決める手順を置いているのがポイントです。

営業リストの作り方を、ターゲット設定、項目とルール、収集と整理、優先順位と更新の流れで示す図
  1. ターゲットを決める
  2. 入れる項目とルールを決める
  3. 情報を集める
  4. 整理して、誤りと重複をなくす
  5. 優先順位をつけ、運用しながら更新する

それぞれの手順を順に見ていきます。

手順1:ターゲットを決める

最初に、どんな企業に連絡するかを言葉にします。ここが曖昧なまま情報を集め始めると、件数は増えても使えないリストになります。

既存顧客から逆算する

  • 受注が多い業種・規模・地域はどこか
  • 受注までの期間が短かった企業に共通する点は何か
  • 長く取引が続いている企業は、どんな課題を持っていたか

既存顧客の共通点が、新しく狙う企業の条件になります。顧客がまだ少ない場合は、自社の商材が解決できる課題を持っていそうな企業を仮に決め、反応を見て修正します。

条件の書き方の例

「従業員30〜200名、首都圏、製造業。営業担当者が5名以下で、問い合わせの管理を表計算ソフトで行っている企業」のように、業種・規模・地域に加えて、課題につながる条件まで書くと、集める情報が明確になります。

手順2:入れる項目とルールを決める

項目は、使い方から逆算して決めます。最初から項目を増やしすぎると、入力と更新が続かなくなります。

区分項目の例使い道
基本情報企業名、法人番号、所在地、代表電話、WebサイトのURL連絡先の確認、重複の判定
属性業種、従業員数、資本金、設立年絞り込み、優先順位づけ
連絡先担当部署、役職、担当者名、問い合わせフォームのURL連絡する相手と経路の判断
根拠情報の取得元、取得日正確さの確認、法令上の説明
活動の記録連絡日、手法、反応、次の行動、断られた理由フォローと改善
除外情報取引中、取引停止、連絡を希望しない誤った連絡の防止

決めておきたいルール

  • 企業名の書き方(「株式会社」の位置、全角・半角)
  • 業種の分け方(どの分類を使うか)
  • 電話番号やURLの書き方
  • 更新する担当者と頻度

業種の分け方は、総務省の日本標準産業分類に合わせておくと、公的な統計や他のデータと照らし合わせやすくなります。最新の第14回改定は、令和6年4月1日から施行されています(出典:総務省「日本標準産業分類」)。

企業を識別する項目には、法人番号を入れておくと便利です。国税庁は、法人番号を次のように説明しています。

法人番号は、株式会社などの法人等が持つ13桁の番号です。(中略)法人番号は、利用範囲の制約がなく、誰でも自由に利用できます。

出典:国税庁 法人番号公表サイト「法人番号とは」

利用の制約がないため、営業リストの管理番号として使えます。企業名の表記が揺れていても同じ企業として扱えるため、重複の判定にも役立ちます。

手順3:情報を集める

情報の集め方には、主に次の方法があります。

営業リストづくりに使える公的な情報源として、法人番号公表サイト、gBizINFO、日本標準産業分類をまとめた図
方法費用手間向いているケース
公的なデータベース無料中程度法人番号や所在地など、基本情報を正確にそろえたい
企業のWebサイト・業界団体の名簿無料大きい件数が少なく、1社ずつ調べられる
展示会・名刺出展費など中程度会ったことのある相手を整理したい
営業リスト作成ツール・データベース月額・年額の利用料小さい件数が多く、条件で絞り込みたい
リストの購入件数に応じた費用小さいすぐにまとまった件数が必要

無料で使える公的な情報源

国税庁の「法人番号公表サイト」では、法人番号・商号・所在地の基本3情報を調べることができます(出典:国税庁 法人番号公表サイト「法人番号とは」)。

経済産業省の「gBizINFO」は、登記済みの法人約400万社を対象に、法人番号・法人名・本社所在地に加えて、府省との契約情報や表彰情報など、政府が持つ法人の活動情報をまとめて検索できるサイトです(出典:経済産業省「gBizINFOについて」)。

こうした公的な情報源は、企業の基本情報を正確にそろえる土台として使えます。業種や担当者などの情報は、企業のWebサイトなどで補います。

Webサイトで調べるときのポイント

  • 会社概要で、事業内容・従業員数・所在地を確認する
  • 問い合わせフォームのURLと、営業目的の連絡を断っていないかを確認する
  • ニュースや採用情報から、最近の動きを把握する
  • 情報の取得元と取得日を記録する

決裁者の情報を含むデータベースを使う

件数が多い場合や、役職で絞り込みたい場合は、データベースを使うと調べる時間を大きく減らせます。

決裁者の情報を含む企業データベースを使い、商談につながりやすい相手に直接アプローチする方法としては、ツナグバ掲載の決裁者に直接アプローチできる企業データベースもあります。

データベースを選ぶときは、情報の出所、更新の頻度、自社の対象企業がどの程度含まれているかを、試用やサンプルで確かめてください。

手順4:整理して、誤りと重複をなくす

集めた情報は、そのままでは使いにくいことが多くあります。次の作業で整えます。

  • 企業名の表記をそろえ、法人番号やURLで重複を削除する
  • 取引中の企業、取引を停止した企業、連絡を断られた企業を除外する
  • 閉鎖・移転・統合が確認できた企業を除外する
  • 必須の項目が空欄の企業に印をつけ、補うか除外するかを決める

除外する企業の一覧は、別のシートで管理しておくと、リストを更新したときにも照らし合わせやすくなります。

特に、連絡を断られた企業や、メールの受信を拒否された相手に再び連絡すると、信用を損ない、法令上の問題にもなり得ます。特定電子メール法では、受信を拒否した相手に広告宣伝メールを送ることが禁じられています(出典:e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)。

手順5:優先順位をつけ、運用しながら更新する

すべての企業に同じ順番で連絡するより、受注の見込みが高い企業から連絡する方が効率的です。

優先順位のつけ方の例

優先度条件の例連絡の仕方
A既存顧客と業種・規模が近く、課題につながる動き(採用の増加、新拠点など)がある決裁者を調べ、個別に文面を用意する
B業種・規模は合うが、課題が見えない共通の文面に一文を加えて連絡する
C条件の一部だけが合う情報提供の連絡にとどめ、反応を見る

更新の進め方

  • 連絡するたびに、反応と次の行動を記録する
  • 半年に1回など、基本情報を見直す時期を決める
  • 反応の記録から、受注しやすい条件を見直し、ターゲットを修正する

営業リストは一度作って終わりではありません。使いながら記録を残すことで、次のリストを作るときの精度が上がります。

営業リストを成果につなげる使い方

リストができたら、すぐに全件へ連絡するのではなく、使い方を決めてから動きます。

セグメントに分けて伝える内容を変える

リストを業種や規模などで数十〜数百件ずつのまとまりに分け、まとまりごとに最初に伝える一言を変えます。

たとえば、製造業には「受注の問い合わせ管理」、小売業には「店舗ごとの集客」のように、相手の業種でよくある課題に合わせると、連絡の内容が相手に関係のあるものになります。

同じ文面を全件に送るより手間はかかりますが、反応の差が分かるため、次の改善にもつなげやすくなります。

小さく試してから広げる

最初は1つのまとまりに絞って連絡し、反応の数を確かめます。

反応がよければ同じ条件の企業を増やし、反応が少なければターゲットか伝える内容を見直します。いきなり全件に連絡すると、うまくいかなかったときに、リストの多くを使い切ってしまいます。

営業リストづくりでよくある失敗

失敗起こること防ぎ方
件数を集めることが目的になる合わない企業が多く、反応が少ない手順1の条件に合う企業だけを入れる
項目を増やしすぎる入力と更新が止まる使い道のない項目は入れない
取得元を記録していない情報の正確さや法令上の説明ができない取得元と取得日の欄を必須にする
除外情報を管理していない取引先や断られた企業に連絡してしまう除外の一覧と照らし合わせてから連絡する
作ったまま更新しない移転や閉鎖、担当者の異動に気づかない更新の担当者と時期を決める

営業リストを作るときの法令上の注意点

営業リストに担当者の情報を入れたり、リストのアドレスに広告メールを送ったりする場合は、法令の確認が欠かせません。主に関わるのは、個人情報保護法と特定電子メール法です。

営業リストを作るときに確認したい個人情報保護法と特定電子メール法のチェック項目

個人情報保護法

担当者の氏名・役職・メールアドレスなど、特定の個人を識別できる情報は個人情報にあたります。個人情報保護法の定義は、次のとおりです。

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

同じガイドラインでは、本人の氏名や、氏名と組み合わせた連絡先・会社での職位や所属の情報が個人情報の例として挙げられています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。営業リストの「担当部署・役職・担当者名」の欄は、まさにこれにあたります。

個人情報保護委員会のガイドラインQ&Aでは、新聞やインターネットなどで公表されている情報も保護の対象として扱われています(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q1-5)。

企業名・代表電話・所在地だけのリストであれば、一般に個人情報にあたりにくいとされますが、担当者の名前と結びつけると扱いが変わります。

  • 利用目的を明らかにし、目的の範囲で使う(個人情報保護法の基本のルール)
  • 外部から入手する場合は、提供元が適法に取得しているかを確認する
  • 取得元と取得日を記録しておく
  • 社内で閲覧できる人を限り、持ち出しのルールを決める

これらのルールは、個人情報保護法の条文で定められています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。

2026年7月17日には個人情報保護法の改正法が公布されました。施行に向けて、政令や規則の整備の考え方が示されている段階です(出典:個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」)。リストを購入・提供する場合は、個人情報保護委員会の最新の情報を確認してください。

特定電子メール法

営業リストのアドレスに広告や宣伝のメールを送る場合は、特定電子メール法のルールを守る必要があります。

総務省の資料は、法律の原則を次のように説明しています。

原則としてあらかじめ同意した者に対してのみ広告宣伝メールの送信が認められる「オプトイン方式」が導入されています。

出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」

リストにアドレスがあることは、送ってよい理由にはなりません。アドレスごとに、同意があるか、例外に当たるかを記録しておくと、送信の判断がしやすくなります。

総務省の資料では、名刺などの書面でアドレスを知らせてきた相手や、アドレスをインターネットで公表している相手(個人の場合は営業を営む者に限る)などが例外として示されています(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。ただし、広告メールを拒否する旨が併せて公表されている場合は送れません。

送る場合は、送信者の名称と、受信を拒否するための連絡先を表示します。受信を拒否された相手は、リストの除外情報に必ず記録してください。

問い合わせフォームと電話のマナー

  • 問い合わせフォームに「営業目的の利用はお断り」と書かれている企業には送らない
  • 電話は早朝・昼休み・終業間際を避ける
  • 連絡を希望しないと言われた企業は、除外の一覧に記録する

自社で作るか、ツールや購入を使うかの判断基準

自社で作るのが向いているケース

  • 対象企業が数十〜数百社程度に絞られている
  • 1社ずつ調べることで、課題の仮説も立てたい
  • 業界が特殊で、市販のデータベースに含まれにくい

ツールやデータベースの活用を検討したいケース

  • 数千社以上の企業から、条件で絞り込みたい
  • 決裁者や役職者の情報まで必要
  • リストづくりに営業担当者の時間を使いたくない

リストの購入が向いていないケース

  • 対象の条件が細かく、市販のリストでは合う企業が少ない
  • 情報の出所や取得日が確認できない
  • 購入後に情報を更新する体制がない

購入を検討する場合は、サンプルで情報の正確さと、自社の対象との一致を確かめてから判断してください。

費用の考え方

自社で作る場合の主な費用は、担当者の作業時間です。1社あたりの調査にかかる時間と件数を掛け合わせると、おおよその負担が分かります。

ツールやデータベースは、月額や年額の利用料に加えて、利用できる件数や機能で費用が変わります。リストの購入も、件数や項目の数で費用が変わります。

いずれも、受注1件あたりにかけられる費用から逆算して、見合うかどうかを判断します。

作成前のチェックリスト

  • 狙う企業の条件を、業種・規模・地域・課題で言葉にしている
  • 入れる項目を、使い道から逆算して決めている
  • 企業名の書き方などのルールを決めている
  • 情報の取得元と取得日を記録する欄がある
  • 除外する企業の一覧を用意している
  • 個人情報を扱う場合の利用目的と、閲覧できる人を決めている
  • 広告メールを送る場合、特定電子メール法の表示と受信拒否の記録を準備している
  • 更新する担当者と頻度を決めている

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営業支援の分野では、決裁者の情報を含む企業データベースを使い、商談につながりやすい相手に直接アプローチできる営業支援ツールを掲載しています。

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資料で確かめたいこと

  • 自社が営業したい業種や地域の企業が、どの程度収録されているか
  • 情報がどのくらいの頻度で更新されているか
  • 料金が月額か、使った件数ごとか
  • 個人情報の取り扱いや、連絡の方法に関するルール
  • 契約期間と、途中解約の条件

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よくある質問

営業リストは表計算ソフトで作ってもよいですか?

件数が数百件程度までで、担当者が少ない場合は、表計算ソフトでも十分に運用できます。

件数や担当者が増え、連絡の記録を共有する必要が出てきたら、顧客管理のツールへの移行を検討してください。

営業リストは何件くらい必要ですか?

必要な件数は、商談の目標と、連絡から商談につながる割合によって変わります。

まずは少ない件数で連絡し、商談につながる割合を確かめてから、必要な件数を逆算するのが確実です。

Webサイトに載っているメールアドレスに営業メールを送ってもよいですか?

特定電子メール法では、アドレスをインターネットで公表している相手は、同意がなくても送れる例外として示されています(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。ただし、広告メールを拒否する旨が併せて公表されている場合は送れません。

送る場合は、送信者の名称と受信拒否の連絡先の表示が必要です。

営業リストはどのくらいの頻度で更新すればよいですか?

連絡のたびに反応を記録し、基本情報は半年に1回程度を目安に見直す企業が多く見られます。

移転や担当者の異動が多い業界では、より短い間隔で見直してください。

参考資料