求人広告を出しても応募が集まらない。採用できても、入社後に「思っていた職場と違った」と辞めてしまう。こうした悩みから、社員の紹介で人を採る「リファラル採用」に関心を持つ会社が増えています。
リファラル採用は、うまく仕組みにすれば、自社に合う人と出会える採用の手段になります。一方で、紹介した社員に報酬を払うときは、職業安定法のルールを押さえておく必要があります。
この記事では、リファラル採用とは何か、メリットとデメリット、紹介した社員への報酬と法律の関係、導入の進め方、トラブルを防ぐルールづくりを順に整理します。
法律の部分は、職業安定法と労働基準法の条文、厚生労働省の業務取扱要領をもとにまとめました。制度を作る前の確認に使ってください。
リファラル採用とは|社員の紹介で人を採る方法
リファラル採用とは、自社の社員に、知人や友人、元同僚などを紹介してもらい、選考を経て採用する方法です。「リファラル」は英語で紹介や推薦を意味します。
社員が自社の仕事や職場の様子を伝えたうえで紹介するため、応募する人は入社前に職場を具体的に想像しやすくなります。会社にとっても、求人広告では出会いにくい、いまは転職活動をしていない人に声をかけられる点が特徴です。
職業安定法の考え方では、会社やその社員が直接働きかけて応募を勧めることを「直接募集」と呼びます。厚生労働省の業務取扱要領は、直接募集を次のように定義しています。
直接募集とは、労働者を雇用しようとする事業主(募集主)が、文書募集以外の方法で直接労働者に働きかけて応募を勧誘し、又は募集主の被用者が募集主の指示により募集主のために直接労働者に働きかけて応募を勧誘することをいう。
出典:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領 第2 文書募集及び直接募集」
社員が会社の指示で知人に応募を勧める行為は、この定義の後半にあたると読めます(出典:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領 第2 文書募集及び直接募集」)。リファラル採用は、法律上は会社の「募集」の一つとして扱われる、と考えておくと、後で説明する報酬のルールが理解しやすくなります。
縁故採用との違い
縁故採用も、社員や役員の知り合いを採用する点ではリファラル採用と似ています。違いは、選考の扱いにあります。
縁故採用は、紹介者との関係を重く見て、選考を簡単にしたり、採用を前提に話を進めたりすることがあります。リファラル採用は、紹介はあくまで応募のきっかけで、ほかの応募者と同じ基準で選考するのが基本です。紹介だから必ず採用する、という仕組みにはしません。
リファラル採用のメリットとデメリット
リファラル採用には、ほかの採用方法にない利点がある一方で、注意したい点もあります。導入する前に、両方を確かめておきます。

| 観点 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 出会える人 | 転職活動をしていない人にも声をかけられる | 社員の人脈に頼るため、紹介の数には限りがある |
| 入社後のずれ | 社員から実際の働き方を聞けるため、ずれが起きにくい | 紹介者と似た人が集まり、多様性が下がることがある |
| 採用の費用 | 求人広告や紹介会社への手数料を抑えられることがある | 社員への報酬や、制度を回す手間がかかる |
| 社員への影響 | 自社をすすめる機会が、職場を見直すきっかけになる | 不採用になったとき、紹介者と応募者の関係に気を遣う |
| スピード | 紹介があればすぐに面談できる | 人脈の中に条件に合う人がいなければ、時間がかかる |
リファラル採用は、ほかの採用方法の代わりではなく、組み合わせて使う手段と考えるとよいでしょう。特に、社員数が少ない会社では紹介の数が限られるため、求人広告などと並行して進めるのが現実的です。
紹介した社員への報酬は違法?|職業安定法の考え方
リファラル採用で最も注意したいのが、紹介してくれた社員への報酬です。職業安定法は、募集に関わる人への報酬について、次のように定めています。
労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
出典:e-Gov法令検索「職業安定法」
これは職業安定法第40条の「報酬の供与の禁止」です。厚生労働省の業務取扱要領も、募集主は募集に従事する人に対して、賃金、給料その他これに準ずるものなどを除き、報酬を与えてはならないと説明しています(出典:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領 第4 労働者募集の原則」)。
つまり、社員に紹介の報酬を払うこと自体がすべて禁止されているわけではありません。「賃金、給料その他これらに準ずるもの」として払うのであれば、例外にあたると考えられます。

賃金として払うための考え方
労働基準法は、賃金を次のように定義しています。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」
実務では、紹介の報酬を「紹介手当」などの名前で就業規則や賃金規程に定め、給与と一緒に賃金として支払う形をとる会社が多くあります。常時10人以上の労働者を使用する会社は就業規則の作成と届出が必要で、臨時の賃金などを定める場合はその事項も記載することとされています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」)。
賃金として払う以上、所得税や社会保険料の扱いも給与と同じように考える必要があります。現金や商品券を個別に手渡すような払い方は、賃金として扱われているかがあいまいになるため避けます。
厚生労働省の資料で確かめられること・確かめられないこと
業務取扱要領には、報酬の供与の禁止の原則は書かれていますが、社員紹介の報酬が例外にあたるかどうかを個別に示した記述は見当たりません(出典:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領 第4 労働者募集の原則」)。制度の作り方によって判断が変わる可能性もあります。
金額が高すぎる場合や、社員以外の人(退職者、取引先、社外の知人など)に報酬を払う場合は、特に慎重な検討が必要です。社員以外の人に募集を任せて報酬を払う形は、委託募集の許可などの別の論点にもつながります(出典:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」)。
また、社外の人が会社と求職者の間に立って雇用関係の成立をあっせんし、その対価を受け取る形になると、職業紹介事業として厚生労働大臣の許可が必要になる場合があります(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」)。紹介の謝礼のつもりでも、形によっては別の規制の対象になりうる点に注意が必要です。制度を作る前に、都道府県労働局の職業安定部に相談することをおすすめします。
リファラル採用の進め方|6つのステップ
リファラル採用は、社員に「誰かいたら紹介して」と声をかけるだけでは、なかなか広がりません。次の順番で、仕組みとして整えていきます。

- 目的と採りたい人を決める:どの職種で、どんな人を、いつまでに何人採りたいかを決めます。
- ルールを決める:紹介の対象、選考の流れ、報酬の有無と条件、不採用時の伝え方を決め、必要に応じて就業規則や賃金規程に定めます。
- 社員に伝える:制度の目的、募集している職種、紹介の方法を説明会や社内の案内で伝えます。
- 紹介を受け付ける:紹介の窓口を一つに決め、紹介者と候補者の情報を記録します。
- カジュアルな面談と選考:まずは気軽な面談で仕事内容を伝え、応募の意思を確かめてから選考に進みます。
- 振り返って改善する:紹介の数、選考に進んだ数、入社した数、入社後の定着を確かめ、ルールや伝え方を見直します。
特に大切なのは、2つ目のルールづくりです。報酬を払うかどうか、払うならいつ(入社時か、一定期間の勤務後か)、いくらにするかを決め、社員全員に同じ条件で示します。
報酬の金額を高くすれば紹介が増えるとは限りません。知人を紹介して報酬を受け取ることに抵抗を感じる社員もいます。報酬を設けず、紹介者との会食の費用を会社が負担するなどの形をとる会社もあります。
制度を作るときに決めておくこと
リファラル採用の制度は、社内の規程として文章にしておくと、運用がぶれにくくなります。最低限、次の項目を決めておきます。
| 項目 | 決めておくこと | 決め方の例 |
|---|---|---|
| 対象になる人 | 紹介できる社員の範囲 | 役員や採用担当者を報酬の対象から外すかどうか |
| 対象の職種 | 紹介を受け付ける職種 | いま募集している職種に限る |
| 選考の流れ | 紹介から内定までの手順 | カジュアルな面談の後、通常の選考に進む |
| 報酬 | 報酬の有無、金額、支払いの時期 | 賃金規程に手当として定め、一定期間の勤務後に支給する |
| 不採用のとき | 結果の伝え方 | 会社から本人に伝え、紹介者には結果だけを伝える |
| 個人情報 | 候補者の情報の受け取り方 | 紹介の前に本人の了解を得てもらう |
報酬を就業規則や賃金規程に定める場合は、労働基準法の手続きにも従う必要があります。就業規則を変えるときは、労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがない場合は労働者の過半数を代表する人の意見を聴くことが定められています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」)。
規程を作ったら、社内の案内とあわせて、社員がいつでも見られる場所に置いておきます。
紹介を増やす工夫|社員が紹介しやすい材料を用意する
社員が紹介をためらう理由の多くは、「何を伝えればよいか分からない」ことです。仕事の内容、働き方、給与の目安、職場の雰囲気などを、社員が知人に見せられる形でまとめておくと、紹介しやすくなります。
このとき、募集の情報は正確に伝える必要があります。職業安定法第5条の4は、広告などで求人の情報を出すときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています(出典:厚生労働省「労働者の募集広告に関する表示の注意」)。社員が口頭で伝える内容も、会社の説明と食い違わないよう、伝える材料をそろえておくと安心です。
厚生労働省は、求人の広告などには、募集主の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を表示する必要があると案内しています(出典:厚生労働省「労働者の募集広告に関する表示の注意」)。社員に渡す紹介用の資料にも、これらの項目を入れておくと、伝える内容の抜けを防げます。
社員の実際の声を集め、採用ページや求人の紹介文に生かす方法もあります。会社が書く文章とは違う現場の言葉は、応募を考える人が職場を想像する手がかりになります。社員の声を採用の発信に使う仕組みを検討したい場合は、ツナグバ掲載の社員の口コミを活用した採用マーケティングも比較の候補になります。
紹介の状況を定期的に社内で共有することも効果があります。「先月は何人の紹介があり、何人が入社した」と伝えると、制度が動いていることが社員に伝わります。
トラブルを防ぐルールづくり
リファラル採用では、社員の人間関係が採用に関わるため、ほかの採用方法とは違うトラブルが起きることがあります。次の点を、事前にルールとして決めておきます。
選考は同じ基準で行う
紹介があっても、選考の基準はほかの応募者と同じにします。厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重することと、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことを示しています(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。紹介者から候補者の家族のことや思想・信条などを聞き出すことは避けます。
不採用の伝え方を決めておく
不採用になったとき、誰がどのように伝えるかを決めておきます。結果は会社から候補者本人に伝え、紹介者には「選考の結果、今回は見送りになった」という事実だけを伝えるのが基本です。選考の詳しい理由を紹介者に話すと、紹介者と候補者の関係を損ねるおそれがあります。
候補者の個人情報の扱いに気をつける
紹介を受けると、候補者の名前や経歴などの個人情報を会社が受け取ります。職業安定法第5条の5は、労働者の募集を行う者に対し、求職者などの個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲で収集・保管・使用することなどを求めています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」)。個人情報保護法も、個人情報を取り扱うときは利用目的をできる限り特定するよう定めています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。
紹介者が本人の了解を得ずに情報を会社に渡すことがないよう、紹介の前に本人の了解を得てもらうルールにしておきます。
入社後の人間関係にも目を配る
紹介者と入社した人が親しい場合、同じ部署に固まると、ほかの社員との間に壁ができることがあります。配属は、本人の適性と職場の状況を見て決めます。紹介者の評価が、紹介した人の働きぶりで左右されることがないようにしておくことも大切です。
リファラル採用が向いている会社・向いていないケース
リファラル採用は、どの会社にも向くわけではありません。次の目安で、自社に合うかを考えます。
| 向いている会社 | 向いていないケース |
|---|---|
| 社員が自社の仕事や職場をすすめられる状態にある | 社員の不満が多く、職場をすすめにくい状態にある |
| 専門職など、求人広告で出会いにくい人を採りたい | 短い期間に多くの人を採りたい |
| 入社後のずれによる早期の退職を減らしたい | 社員数が少なく、紹介できる人脈が限られている |
| 採用の基準や選考の流れが決まっている | 選考の基準があいまいで、紹介者の意見で決まりやすい |
社員が自社をすすめにくい状態のまま制度だけを作っても、紹介は増えません。その場合は、先に職場の課題を聞き取り、働き方や待遇を見直すことが近道です。リファラル採用は、職場の状態を映す鏡でもあります。
あわせて読みたい
ツナグバで、採用の発信を支えるサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
採用支援の分野では、社員の口コミを活用した採用マーケティングのサービスを掲載しています。社員が仕事や職場について感じていることを集め、採用ページや求人の紹介文などに使える形で整える仕組みです。求職者が入社前に職場を具体的に想像しやすくなり、入社後のずれを減らす材料になります。
社員の声の集め方、掲載前に社内で内容を確認できるか、料金や契約期間は、資料で確認できます。
こんな課題があれば
- 求人票に書ける内容が限られ、職場の雰囲気が求職者に伝わっていない
- 社員に採用への協力を頼んでも、何を発信すればよいか分からないと言われる
- 内定を出しても、入社前に思っていた職場と違うという理由で辞退や早期退職が起きている
掲載サービスでできること
- 社員の声を集める仕組みがある:社員が仕事や職場について感じていることを、定期的に集める仕組みを持つものが一般的です。会社側が書く文章とは違う、現場の言葉が集まります。
- 集めた声を採用の発信に使える:集めた声を、採用ページや求人の紹介文などに使える形で整えられます。どこに掲載できるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
- 入社後のずれを減らす材料になる:良い点と合わせて、実際の働き方が伝わる情報を出せます。求職者が入社前に職場を具体的に想像しやすくなります。
資料で確かめたいこと
- 社員の声をどのような方法で集めるのか(アンケート、投稿など)
- 集めた声を掲載する前に、社内で内容を確認できるか
- いま使っている採用ページや求人媒体に載せられるか
- 月額料金と初期費用、社員数による料金の違い
- 契約期間の縛りと、途中で解約するときの条件
よくある質問
リファラル採用の報酬の相場はいくらですか?
公的な統計で示された相場はありません。会社によって、報酬を設けないところから、入社時に手当を払うところまでさまざまです。金額を決めるときは、賃金として払うことを前提に、ほかの手当とのつり合いや社員の受け止め方も考えて決めてください。
報酬は入社したときに払えばよいですか?
支払いの時期は会社が決められます。入社時に払う会社もあれば、一定期間勤務した後に払う会社もあります。どちらの場合も、条件を就業規則や賃金規程に明記し、社員全員に同じ条件で示しておきます。
退職した元社員に紹介をお願いしてもよいですか?
紹介をお願いすること自体はできますが、元社員は自社の社員ではないため、報酬を払う場合は職業安定法上の扱いが社員とは異なります。報酬を払う前に、都道府県労働局に相談してください。
紹介された人を不採用にしてもよいですか?
はい。リファラル採用でも、ほかの応募者と同じ基準で選考します。不採用の場合は、会社から本人に結果を伝え、紹介者には詳しい理由を伝えないなど、関係を損ねない配慮をします。
社員が少ない会社でもリファラル採用はできますか?
できます。ただし、紹介できる人脈が限られるため、紹介の数は多くは見込めません。求人広告やハローワークなどと並行して進め、紹介があったときにすぐ面談できる準備をしておくのが現実的です。
