オフィスの移転が決まると、内装やレイアウト、引っ越し業者の手配など、決めることが一気に増えます。その中で見落とされやすいのが、会社の電話番号です。

電話番号が変わると、名刺やホームページの修正、取引先への案内が必要になります。案内が行き届かなければ、問い合わせや注文の電話を取りこぼすおそれもあります。

この記事では、オフィス移転で電話番号が変わる条件、固定電話の番号ポータビリティ、050番号やクラウド電話を使う場合の考え方、移転前の確認と周知の手順を整理します。電話番号の仕組みは、総務省の公表資料をもとにしています。

実際に番号を使い続けられるかは、契約している電話会社と移転先の住所で決まります。最終的な判断は、必ず電話会社に確認してください。

オフィス移転で電話番号が変わる仕組み

市外局番から始まる固定電話の番号は、地域と結びついています。移転先によって番号が変わるのは、この仕組みのためです。

市外局番は地域、市内局番は交換機を示す

総務省によると、普通の固定電話の番号は「0-市外局番-市内局番-加入者番号」の形になっています。市外局番は1〜4桁で地域ごとに総務省告示で定められ、市内局番は1〜4桁で総務省が電話会社ごとに指定しています(出典:総務省「電話番号に関するQ&A」)。

市外局番は地域を、市内局番はその地域内にある営業所の電話交換機を示しています。電話会社は、営業所から一定の区域内の加入者まで電話線を計画的に引いています(出典:総務省「電話番号に関するQ&A」)。

移転先の営業所が変わると、番号が変わる

この仕組みから、移転で番号が変わるかどうかは、移転先がどの営業所の区域にあるかで決まります。総務省は次のように説明しています。

したがって、引っ越し先の営業所が引っ越し前と同じならば引き続き同じ電話番号を使える可能性がありますが、引っ越し前と違う場合には、番号は変わることとなります。

出典:総務省「電話番号に関するQ&A」Q9

ここで大事なのは「可能性があります」という表現です。同じ市区町村の中での移転でも、営業所の区域が違えば番号が変わることがあります。逆に、市区町村が変わっても、同じ区域なら番号を使い続けられる場合もあります。住所だけで判断せず、電話会社に移転先の住所を伝えて確かめることが欠かせません。

移転先が同じ営業所の区域、同じ市外局番の別の区域、市外局番が変わる地域の3つの場合で電話番号が変わるかを整理した図
移転先番号の扱い(固定電話の場合)確かめること
同じ営業所の区域内同じ番号を使い続けられる可能性がある移転先の住所で、今の番号が使えるか
同じ市外局番で、別の営業所の区域番号が変わることがある番号を変えずに移せる方法があるか
市外局番が変わる地域原則として新しい番号になる新しい番号の取得時期と、旧番号の案内の方法

市外局番と地域の対応は、総務省の「市外局番の一覧」で確かめられます(出典:総務省「市外局番の一覧」)。移転先の市外局番が今と違う場合は、市外局番から始まる番号をそのまま使うことは、原則として難しいと考えておきます。

固定電話の番号ポータビリティとは

番号に関係する制度として、固定電話の番号ポータビリティがあります。オフィス移転と同時に電話会社を見直す場合に関係します。

電話会社を変えても、番号を変えずに使える仕組み

総務省は、固定電話番号の番号ポータビリティを次のように説明しています。

固定電話番号の番号ポータビリティとは、利用者が固定電話番号を変更することなく、固定電話サービスの提供を行う会社を変更できる仕組みです。

出典:総務省「固定電話の番号ポータビリティ」

総務省によると、令和7年1月末日以降、固定電話番号を使ったサービスを提供する全ての事業者は、原則として番号ポータビリティを可能とする必要があります。ただし、技術的な困難性などを勘案して総務大臣が特に認める場合は例外とされています(出典:総務省「固定電話の番号ポータビリティ」)。

この仕組みは、「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」(令和7年1月30日策定)でも整理されています。ガイドラインは、令和7年1月に双方向番号ポータビリティが実現することを踏まえ、事業者が守るべき事項を示したものです(出典:総務省「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」)。

番号ポータビリティは「場所」を移す制度ではない

注意したいのは、番号ポータビリティが「電話会社を変える」ための仕組みだという点です。オフィスの場所が変わっても番号を使えることを保証する制度ではありません。

市外局番が変わる地域への移転では、電話会社を変えても、市外局番から始まる番号を移転先でそのまま使えるとは限りません。番号ポータビリティを使う場合も、移転先の住所で番号が使えるかを、移転先の電話会社に確かめます。

手続きと費用の注意点

総務省によると、番号ポータビリティの手続きは、これから契約する電話会社に申し込むだけで完了するワンストップ方式です。一方で、変更前の電話会社とは解約となり、変更後の会社と新たに契約することになります。そのため、解約や新規契約に伴う費用、残っている工事費の精算、インターネット回線や付帯サービスの別途の解約手続きが必要になる場合があります(出典:総務省「固定電話の番号ポータビリティ」)。

移転と電話会社の変更を同時に進めると、工事の日程や解約の時期が重なり、手続きが複雑になります。どちらを先に進めるか、電話会社と相談して決めてください。

電話の方式による違い

電話番号が変わるかどうかは、電話の方式によっても変わります。主な方式ごとの考え方は次のとおりです。

方式番号の種類移転したときの考え方
アナログ回線・ISDNなどの固定電話市外局番から始まる番号移転先の営業所の区域で、使えるかどうかが決まる
光回線を使う固定のIP電話市外局番から始まる番号回線を引く場所と結びつくため、移転先の地域で確認が必要
050から始まるIP電話050番号地域と結びつかないため、場所が変わっても使えることが多い
クラウド電話(クラウドPBX)サービスにより市外局番の番号や050番号使える番号の種類と、移転先の地域での扱いをサービスごとに確認

050番号は地域に縛られにくい

総務省によると、0A0から始まる番号は、携帯電話やIP電話などに電話するときに使います(出典:総務省「電話番号に関するQ&A」)。050から始まるIP電話の番号は、市外局番のように地域を示すものではないため、オフィスの場所が変わっても使い続けられることが多い番号です。

一方で、050番号は、取引先によっては市外局番から始まる番号ほどなじみがない場合があります。サービスを変えると番号が変わることもあるため、契約の条件を確かめておきます。

クラウド電話という選択肢

クラウド電話は、インターネットを通じて電話の機能を使うサービスです。スマートフォンやパソコンで会社の電話番号を使える形が一般的で、オフィスに大きな電話設備を置かずにすみます。

移転を機に、電話の環境そのものを見直す企業もあります。たとえば中小企業向けのクラウド電話サービスのように、スマートフォンやパソコンで会社の電話番号を使い、電話機や工事の費用を抑えられるサービスがあります。

ただし、クラウド電話で市外局番から始まる番号を使えるか、今の番号を引き継げるか、移転先の地域でどう扱われるかは、サービスによって違います。資料や問い合わせで、移転先の住所を伝えて確かめてください。

移転前に確認する手順

電話の切り替えは、移転日の直前に慌てて手配すると、工事が間に合わないことがあります。移転日の2〜3か月前から始めると、余裕を持って進められます。

番号が使えるか確認する、電話の方式を決める、工事と切り替えの日程を組む、新しい番号を周知するというオフィス移転時の電話の4つの手順を示した図

ステップ1 今の番号が使えるかを確認する

まず、契約している電話会社に、移転先の住所で今の番号が使えるかを問い合わせます。代表番号だけでなく、ファクス、ダイヤルインの番号など、契約しているすべての番号を一覧にして確かめます。

あわせて、契約の名義、請求先の住所、支払い方法の変更が必要かも確かめます。電話会社への移転の申し込みと、契約者の情報の変更が、別々の手続きになっていることもあります。

ステップ2 電話の方式を決める

今の回線をそのまま移すのか、別の方式に変えるのかを決めます。番号が変わる場合は、新しい番号をどの方式で取るかも合わせて考えます。電話機や設備の入れ替えが必要か、社員がテレワークでも会社の番号を使えるようにしたいかなども、判断の材料です。

ステップ3 工事と切り替えの日程を組む

回線の工事や電話設備の移設は、引っ越しの日程と合わせて組みます。電話が使えない時間をなるべく短くするため、切り替えの日時と、その間の連絡手段を決めておきます。

ステップ4 番号が変わるなら周知を進める

番号が変わる場合は、新しい番号が決まりしだい周知を始めます。旧番号への着信に、新しい番号を案内する方法があるかも、電話会社に確かめておきます。

移転時に起こりやすい電話のトラブル

移転のときの電話のトラブルは、番号のことだけではありません。よくあるのは次のようなものです。

工事の日程が取れない

回線の工事は、希望の日に予約できるとは限りません。移転先のビルで配線の工事が必要な場合は、ビルの管理会社との調整も加わります。引っ越しの日程が決まったら、すぐに工事の予約を進めます。

ファクスや電話以外の回線を忘れる

代表番号だけ手配して、ファクスの番号や、警備の機器、エレベーターの非常通報など、電話回線を使う別の機器を忘れることがあります。今の契約の明細を見て、回線と番号をすべて書き出してから手配すると、漏れを防げます。

電話機や複合機の設定が移転先で合わない

電話設備を移設したあと、内線の番号、着信の順番、留守番電話の案内などの設定が元に戻っていないことがあります。複合機のファクスの設定も、回線が変わると見直しが必要です。切り替えの当日に、代表番号への着信、内線の転送、ファクスの送受信を一通り試します。

移転とあわせて、働き方も見直す

移転は、席数や電話の使い方を見直すよい機会でもあります。総務省の令和7年通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は50.1%でした(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。社員が在宅や外出先で働くことが増えているなら、移転後の席数を減らし、会社の番号をスマートフォンで受けられる仕組みに変える、といった選択肢もあります。

席の数と電話機の台数を同じにする必要はありません。移転後の働き方を先に決めてから、電話の方式を選ぶと、無駄な設備を減らせます。

番号が変わるときの周知と変更先

番号が変わると、思った以上に多くの場所を直す必要があります。漏れやすいのは、社外のサービスに登録している情報です。

電話番号が変わるときに変更や周知が必要な先をまとめたチェックリスト
  • 取引先・顧客への案内(文書、メール、ホームページのお知らせ)
  • 名刺、封筒、パンフレット、請求書の書式
  • ホームページ、メールの署名、問い合わせフォームの自動返信
  • 求人票や求人媒体の掲載情報
  • 地図サービスや業界団体などの登録情報
  • 金融機関や取引サイトの登録情報
  • 官公庁や保険などの届出・登録情報
  • 社内の内線表、緊急連絡網、警備会社などへの連絡先

周知の時期と方法

新しい番号は、移転の1〜2か月前には取引先に案内し、移転の直前にもう一度知らせると、行き届きやすくなります。ホームページのお知らせ、メールの署名への一文、請求書への同封など、取引先が目にする場所に複数回載せるのが効果的です。

移転のあとも、旧番号に電話をかけてくる人はいます。旧番号の案内や転送のサービスを一定期間使えるか、電話会社に確かめておきます。

番号を変えないことにこだわりすぎない

番号を変えないことには大きな価値があります。ただし、番号を残すために移転先の選択肢を狭めたり、割高な方式を続けたりするのは本末転倒です。番号が変わる場合の周知の手間と、番号を残すための費用を比べて判断してください。

判断の基準と費用の考え方

移転時の電話について判断するときは、次の点を基準にします。

  • 移転先の住所で、今の番号が使えるか
  • 番号が変わる場合、周知にかかる手間と期間はどのくらいか
  • 電話設備の移設や入れ替えに、どれだけの工事と費用がかかるか
  • テレワークや外出先でも会社の番号を使いたいか
  • 移転後の席数や電話の本数は、今と同じか

費用の考え方

移転時の電話の費用は、回線の移転工事、電話設備の移設や入れ替え、番号が変わる場合の印刷物の作り直しなどで構成されます。金額は、回線の本数、電話機の台数、工事の内容、移転先の建物の配線の状況によって大きく変わります。

見積もりを比べるときは、初期費用だけでなく、月額の基本料、通話料、保守の費用を含めた数年単位の総額で比べてください。電話設備の入れ替えの時期が近いなら、移転と同時に方式を見直すほうが、まとめて費用を抑えられることもあります。

今の方式のままでよいケース

同じ営業所の区域内での移転で番号を使い続けられ、電話設備もまだ新しい場合は、今の方式のまま回線と設備を移すのが現実的です。移転と方式の変更を同時に進めると、社内の負担が大きくなることもあります。

一方で、番号が変わることが避けられない、電話設備が古い、テレワークでも会社の番号を使いたい、といった場合は、移転を機に電話の方式を見直す価値があります。

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使える番号の種類や、移転先での扱い、料金の体系は、資料で確認できます。移転の時期と、今の電話の使い方に合うかを比べてください。

こんな課題があれば

  • 会社の電話に出るために、誰かが事務所にいなければならない
  • 社員の個人の携帯電話で、取引先とやり取りしている
  • 事務所の移転や増員のたびに、電話の工事や機器の費用がかかる

掲載サービスでできること

  • スマートフォンやパソコンで会社の番号を使える:外出先や自宅からでも、会社の電話番号で発信や着信ができます。事務所にいなくても電話対応がしやすくなります。
  • 電話機や工事の費用を抑えやすい:インターネットを使う仕組みのため、専用の電話機や配線工事が要らないものが一般的です。必要な機器は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 人数や拠点の変化に合わせやすい:利用者の追加や削除を管理画面で行えるものが多くあります。事務所の移転や増員にも対応しやすくなります。

資料で確かめたいこと

  • 今の電話番号を引き継げるか
  • 利用者1人あたりの月額料金と、通話料・初期費用
  • 通話の品質と、必要なインターネット環境
  • 転送や録音、内線など、必要な機能がそろっているか
  • 契約期間と、解約するときの条件

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よくある質問

同じ市内での移転なら、電話番号は変わりませんか?

同じ市内でも、移転先が別の営業所の区域にあれば、番号が変わることがあります(出典:総務省「電話番号に関するQ&A」)。住所だけでは判断できないため、契約している電話会社に移転先の住所で確かめてください。

番号ポータビリティを使えば、遠くに移転しても番号を使えますか?

番号ポータビリティは、電話会社を変えても番号を変えずに使うための仕組みです(出典:総務省「固定電話の番号ポータビリティ」)。場所が変わっても番号を使えることを保証する制度ではありません。市外局番が変わる地域への移転では、番号をそのまま使うのは原則として難しいと考えてください。

移転のどのくらい前から電話の手配をすればよいですか?

工事や設備の移設が必要な場合は、日程の調整に時間がかかることがあります。移転日の2〜3か月前には、電話会社への確認を始めると余裕があります。番号が変わる場合は、周知の期間も見込んでおきます。

クラウド電話にすれば、移転しても番号は変わりませんか?

サービスと番号の種類によります。050番号のように地域と結びつかない番号は、場所が変わっても使えることが多い一方、市外局番から始まる番号の扱いはサービスごとに違います。移転先の住所を伝えて、事前に確かめてください。

番号が変わったあと、旧番号にかけた人はどうなりますか?

旧番号への着信に、新しい番号を案内するサービスを用意している電話会社もあります。案内の期間や費用は電話会社によって違うため、移転の手配とあわせて確かめてください。案内の期間が終わったあとも旧番号にかけてくる人がいる前提で、ホームページや印刷物の更新を早めに済ませておくことが大切です。

参考資料