人手が足りない、社内にない専門性がほしいといった理由で、他社で働く人を副業として受け入れる会社が増えています。一方で、副業人材の受け入れは、通常の採用とは確認すべきことが違います。雇用で受け入れるか、業務委託で受け入れるかによって、守るべきルールも大きく変わります。
この記事では、副業人材を受け入れる側の会社が注意すべき点を、厚生労働省のガイドラインなどの公的な資料をもとに整理します。雇用と業務委託の選び方、労働時間の通算、健康の確保、保険の扱い、フリーランス法の義務、情報管理、受け入れ前のチェックリストまでまとめました。
副業をする人は増えている
総務省の就業構造基本調査によると、2022年に副業がある非農林業従事者は305万人で、5年前の2017年に比べて60万人増え、245万人から増加しました。非農林業従事者に占める副業者の比率は4.8%で、5年前に比べて0.9ポイント上昇しています(出典:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」)。
同じ調査では、今の仕事のほかに別の仕事もしたいと考える追加就業希望者は493万人で、5年前の400万人から93万人増えています(出典:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」)。副業を希望する人は、実際に副業をしている人より多いことが分かります。

国も副業・兼業の環境づくりを進めています。厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を平成30年1月に作成し、令和2年9月と令和4年7月に改定しています(出典:厚生労働省「副業・兼業」)。受け入れる側の会社にとっても、このガイドラインが基本の資料になります。
まず決める:雇用で受け入れるか、業務委託で受け入れるか
副業人材の受け入れで最初に決めるべきなのは、契約の形です。雇用(労働契約)で受け入れるのか、業務委託で受け入れるのかによって、労働時間の管理、保険、適用される法律が変わります。
| 項目 | 雇用で受け入れる | 業務委託で受け入れる |
|---|---|---|
| 仕事の進め方 | 会社が指示し、勤務時間を管理する | 成果や業務の内容を決め、進め方は相手に任せる |
| 労働時間の通算 | 必要(労働時間規制が適用される場合) | 不要 |
| 割増賃金・36協定 | 対象になる | 対象外 |
| 労災・雇用保険・社会保険 | 要件に応じて対象になる | 原則として対象外 |
| 主に関わる法律 | 労働基準法、労働契約法など | フリーランス法、下請法など |
| 向いている仕事 | 社内の業務に組み込んで継続的に担当してもらう仕事 | 範囲がはっきりした専門的な仕事 |
ガイドラインは、労働時間が通算されない場合として、労働基準法が適用されない働き方を挙げています。その例は次のとおりです。
労基法が適用されない場合(例 フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等)
出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)
ただし、契約書の名前を業務委託にしても、実態として会社が細かく指示し、勤務時間を拘束しているなら、労働者として扱われる可能性があります。業務委託で受け入れる場合は、仕事の進め方や時間の使い方を相手に任せられる仕事かどうかを先に確かめます。社内の業務に組み込み、日々の指示を出しながら働いてもらうなら、雇用で受け入れるほうが実態に合います。
雇用で受け入れるときの注意点
労働時間は本業と通算する
雇用で受け入れる場合、もっとも注意が必要なのが労働時間の通算です。労働基準法第38条第1項は、次のように定めています。
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(労働基準法第38条第1項)
ガイドラインによると、この「事業場を異にする場合」には、事業主が異なる場合も含まれます。副業として受け入れる人については、本業の会社での労働時間と、自社での労働時間を通算して、法定労働時間や時間外労働の上限を管理します(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
後から契約した会社が割増賃金を払う場合が多い
受け入れる側が特に知っておきたいのが、通算の順序です。ガイドラインは、副業を始める前の段階では、各社の所定労働時間を労働契約を結んだ順に通算し、法定労働時間を超える部分は、後から契約した使用者の時間外労働になるとしています。その時間外労働は、後から契約した使用者の36協定の範囲で行う必要があります(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
副業人材を受け入れる会社は、多くの場合「後から契約した使用者」にあたります。たとえば本業の所定労働時間が1日8時間の人を、同じ日に自社で2時間働いてもらうと、自社の2時間は時間外労働として扱われ、割増賃金の支払いが必要になると考えられます。割増賃金は各使用者が自社で働かせた時間について支払い、1か月の通算の時間外労働が60時間を超えた部分は5割以上の率になるとされています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
本業の働き方を申告してもらう
通算するには、本業の働き方を知る必要があります。ガイドラインは、届出制などで副業・兼業の内容を確認する方法を示しています。通算の対象になる場合は、他社との契約の期間、所定労働日と所定労働時間、始業・終業の時刻、所定外労働の見込み、実際の労働時間の報告の方法などを確認し、合意しておくことが望ましいとされています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。厚生労働省は、届出様式例や合意書様式例も公開しています(出典:厚生労働省「副業・兼業」)。
管理を簡単にする「管理モデル」
本業の残業時間を毎月把握するのは、受け入れる側にも本人にも負担です。そこでガイドラインは「管理モデル」という方法を示しています。副業を始める前に、先に契約した会社と後から契約した会社が、それぞれの事業場で働かせる時間の上限を決めておく方法です。上限の合計は、単月100時間未満、複数月平均80時間以内に収める必要があります。各社がその上限の範囲内で働かせていれば、他社の実際の労働時間を把握しなくても労働基準法を守れるとされています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
管理モデルでも、後から契約した会社は自社で働かせた時間について割増賃金を支払います。受け入れの前に、本人と本業の会社の双方と、上限の時間をどう決めるかを話し合っておきます。
健康の確保に配慮する
副業人材は、本業と合わせると長く働いていることがあります。ガイドラインは、使用者が副業の有無にかかわらず、健康診断や長時間労働者への面接指導、ストレスチェックなどの健康確保措置を実施する必要があるとしています。また、副業を行う人を使用するすべての使用者は安全配慮義務を負うとされています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。受け入れる側も、本人から体調や働き方の相談を受けられる窓口を決めておきます。
労災・雇用保険・社会保険の扱い
保険の扱いも、通常の採用とは違う点があります。ガイドラインによると、労災保険では、複数の会社で働く人について、災害が起きていない会社の賃金も合算して給付額を算定します。雇用保険は、原則として主たる賃金を得ている一つの雇用関係でのみ被保険者になり、65歳以上の人は本人の申出により二つの事業所の労働時間を合算できる制度があります。社会保険は、適用の要件を事業所ごとに判断します(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。自社の所定労働時間や賃金によって手続きが変わるため、受け入れ前に社会保険労務士などに確認すると安心です。
業務委託で受け入れるときの注意点
業務委託で副業人材を受け入れる場合は、労働時間の通算は不要ですが、別のルールがあります。令和6年11月1日に、フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)が施行されました(出典:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」)。会社員が副業として個人で仕事を受ける場合も、従業員を使わずに個人で受けているなら、この法律の対象になることがあります。

パンフレットによると、従業員を使用する会社が個人に業務を委託する場合は、取引条件の明示、報酬の支払期日の設定、募集情報の的確な表示、ハラスメント対策の体制整備が求められます。1か月以上の委託では受領拒否や報酬の減額などの禁止行為が加わり、6か月以上の委託では育児・介護などとの両立への配慮や、中途解除などの事前予告も求められます(出典:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット)。
取引条件は書面かメールで示す
取引条件の明示では、業務の内容、報酬の額と支払期日、納品や作業の期日などを、書面や電子メールなどで示します。口頭だけの明示は認められません(出典:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット)。報酬は、給付を受け取った日から原則60日以内に支払います(出典:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」)。
6か月以上続けるなら中途解除の予告に注意
6か月以上の業務委託を途中で解除したり、更新しなかったりする場合は、原則として30日前までに予告する必要があります。予告のあと、相手から理由を求められたときは、遅滞なく開示します(出典:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット)。副業人材との契約を、試しに短く始めて更新していく形にする場合は、更新を重ねて6か月以上になる場合も含めて管理します。
情報管理と、本業の会社との関係
副業人材を受け入れるときは、情報の扱いにも注意します。ガイドラインは、労働者が使用者の業務上の秘密を守る義務や、在職中に使用者と競合する業務を行わない競業避止義務について説明しています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。これは本業の会社に対する義務ですが、受け入れる側にも関係します。
- 本業の会社の秘密や顧客の情報を、自社の仕事に持ち込ませない
- 本業の会社と競合する仕事を依頼しない、または本業の会社の規程で許されているか本人に確かめてもらう
- 自社の情報を扱う範囲を決め、秘密保持の契約や誓約を交わす
- 仕事で使う端末やアカウント、データの保存場所を決める
- 契約が終わったときのデータの返却や削除の方法を決める
本業の会社が副業を許可制にしている場合は、本人に許可を得てもらってから契約します。ガイドラインは、企業が副業・兼業の許容状況を公表することを次のように求めています。
企業は、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、職業選択に資するよう、副業・兼業を許容しているか否か、また条件付許容の場合はその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましい。
出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)
これは主に自社の社員の副業について書かれたものですが、受け入れる側の会社にとっても参考になります。自社が副業人材をどの条件で受け入れているかを募集の段階ではっきり示すと、本業の会社の規程と合うかを応募者が判断しやすくなります。
副業人材の募集と、仕事の切り出し方
副業人材は、本業の合間に働くため、使える時間が限られます。うまくいく受け入れでは、任せる仕事の範囲と成果を先に決めていることが多くあります。
- 任せる仕事の目的、範囲、成果物をはっきりさせる
- 週に何時間くらい、どの時間帯に働いてもらうかを決める
- 打ち合わせの頻度と、連絡に使うツールを決める
- 社内の誰が窓口になり、誰が判断するかを決める
- 試しの期間を設け、続けるかどうかを判断する時期を決める
通勤がいらない在宅でできる仕事は、副業人材の力を借りやすい分野です。在宅で働きたい人の多くは、本業の前後や休日など、決まった時間に作業します。在宅でできる仕事の人材を探すなら、在宅ワークに特化した求人サイトへの掲載のように、在宅で働きたい人が集まる場で募集する方法もあります。住んでいる地域に縛られずに募集できるため、近くでは見つからない経験を持つ人に出会える可能性があります。
募集の費用は、掲載期間ごとに払うか、成果に応じて払うかなど、募集の方法によって変わります。一律の相場はないため、募集したい職種、期間、契約の形(雇用か業務委託か)をそろえて比べます。
副業人材の受け入れが向いていないケース
副業人材の受け入れは、どの仕事にも向いているわけではありません。次のような場合は、正社員の採用や、外部の会社への委託のほうが合うことがあります。
- 平日の日中にすぐ対応することが求められる仕事
- 毎日決まった時間に、長い時間の勤務が必要な仕事
- 任せる範囲や成果をはっきり決められない仕事
- 本業の会社と競合しやすい業界の仕事
- 社内に受け入れの窓口や、指示を出す担当者を置けない
とくに雇用で受け入れる場合は、労働時間の通算や割増賃金の管理が必要です。短い時間の仕事を雇用で頼むと、手続きの負担が仕事の量に比べて大きくなることもあります。仕事の性質と管理の手間を合わせて考えます。
副業人材の受け入れ前チェックリスト
受け入れの前に、次の項目を確かめます。

- 雇用と業務委託のどちらで受け入れるかを、仕事の進め方の実態で決めた
- 雇用の場合、本業の所定労働時間と所定外労働の見込みを確認した
- 雇用の場合、通算の方法(原則の方法か管理モデルか)と割増賃金の扱いを決めた
- 雇用の場合、36協定の範囲で働かせられることを確かめた
- 業務委託の場合、取引条件を書面か電子メールで示す準備をした
- 業務委託の場合、報酬の支払期日と、6か月以上続く場合の予告のルールを確認した
- 本業の会社の副業の規程に沿っていることを本人に確認してもらった
- 秘密保持と、情報や端末の扱いのルールを決めた
- 体調や働き方の相談を受ける窓口を決めた
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- 在宅でできる仕事なのに、通勤できる範囲の人からしか応募が来ない
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掲載サービスでできること
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- 住んでいる地域に縛られずに募集できる:通勤がないため、遠方に住む人からの応募も考えられます。採用できる人の範囲を広げることにつながります。
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資料で確かめたいこと
- 掲載料金の考え方(掲載期間ごとか、成果に応じてか)
- 募集したい職種の求職者がどのくらいいるか
- 応募者とのやり取りの方法
- 雇用か業務委託かなど、契約の形に合った掲載ができるか
よくある質問
副業人材を雇用で受け入れると、必ず割増賃金がかかりますか?
必ずではありません。本業と自社の労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分が時間外労働になります。本業の所定労働時間が短い場合や、自社で働く日が本業の休日である場合などは、時間外労働にならないこともあります。本業の働き方を確認したうえで判断します。
業務委託なら、労働時間を気にしなくてよいですか?
労働時間の通算は不要ですが、契約の名前だけで判断されるわけではありません。会社が細かく指示を出し、勤務時間を拘束している場合は、労働者として扱われる可能性があります。また、ガイドラインは、通算されない場合でも、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。
本業の会社に、副業のことを伝える必要はありますか?
本業の会社の就業規則で、副業を届出制や許可制にしている場合は、本人が手続きをする必要があります。受け入れる側は、本人が本業の会社のルールに沿っているかを確認してから契約すると、あとのトラブルを防げます。
副業人材との契約は、どのくらいの期間で結ぶのがよいですか?
法律で決まった期間はありません。最初は短い期間で試し、仕事の進め方が合うかを確かめてから更新する形が一般的です。業務委託では、更新を重ねて6か月以上になると中途解除の予告などの義務が加わるため、契約期間の管理をしておきます。
