研修を実施したものの、本当に効果があったのかを説明できない。アンケートの満足度は高いが、現場で何が変わったのかは分からない。研修を担当する人の多くが、こうした悩みを抱えています。
この記事では、研修の効果測定の方法を、広く使われている4段階の考え方に沿って整理します。段階ごとの測り方と時期、アンケートやテストの作り方、行動や成果の指標の決め方、よくある失敗と、測定を仕組みにするための工夫もまとめました。
研修の効果測定とは
研修の効果測定は、研修によって受講者や職場に何が起きたかを確かめ、次の研修の改善や、続けるかどうかの判断に生かす取り組みです。満足度を聞くことだけが効果測定ではありません。知識が身についたか、仕事の進め方が変わったか、職場の成果につながったかまで、段階を分けて確かめます。
効果測定が求められる背景
研修には、受講者の時間と費用がかかります。厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査によると、教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は54.4%でした。OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額は2.0万円(令和6年度実績)で、前回より0.5万円増えています(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査の結果について」(令和8年7月31日))。
かけた費用と時間に見合う効果があったかを説明できないと、翌年の予算や、受講者の上司の協力を得にくくなります。
人材への投資を外部に示す動きもあります。内閣官房の人的資本可視化指針では、人材育成に関連する開示事項の例として、研修時間、研修費用、研修参加率、複数分野の研修受講率が挙げられています(出典:内閣官房 非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」(令和4年8月30日))。上場企業でなくても、研修の実績を数字で把握しておくことは、採用や社内への説明に役立ちます。
法律が求める計画的な能力開発
職業能力開発促進法は、事業主に計画的な能力開発に努めるよう求めています。
事業主は、その雇用する労働者に係る職業能力の開発及び向上が段階的かつ体系的に行われることを促進するため、第九条から第十条の四までに定める措置に関する計画を作成するように努めなければならない。
出典:職業能力開発促進法(e-Gov法令検索)
同じ法律は、計画の作成や実施を担当する職業能力開発推進者を選任するよう努めることも定めています(出典:職業能力開発促進法(e-Gov法令検索))。計画を立てて研修を行い、その結果を確かめて次の計画に生かす流れの中で、効果測定は欠かせない役割を持ちます。
人材育成の現場が抱える課題
効果測定の方法を考える前に、多くの職場がどのような課題を抱えているかを見ておきます。

同じ調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%でした(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査の結果について」(令和8年7月31日))。問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」が59.5%、「人材を育成しても辞めてしまう」が51.6%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%です。「人材育成の方法がわからない」と回答した事業所も10.0%ありました(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。
指導する人や時間が限られている中では、効果の出ている研修と出ていない研修を見分け、限られた資源を効果のある研修に振り向けることが大切です。効果測定は、そのための判断材料になります。
効果測定の4段階の考え方
研修の効果測定では、効果を4つの段階に分けて考える方法が広く使われています。段階が上がるほど、測るのに時間と手間がかかります。

| 段階 | 測るもの | 主な方法 | 時期の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 反応 | 受講者の満足度や、役に立つと感じたか | 研修直後のアンケート | 研修の直後 |
| 2 学習 | 知識やスキルが身についたか | 理解度テスト、演習、レポート | 研修の直後〜数日後 |
| 3 行動 | 職場で仕事の進め方が変わったか | 上司の観察、本人の振り返り、面談 | 研修の1〜3か月後 |
| 4 成果 | 職場や組織の成果につながったか | 業務の指標の変化 | 研修の数か月〜1年後 |
4つの段階は、下の段階が上の段階の前提になっていると考えると理解しやすくなります。内容に納得していなければ学ぶ意欲が生まれにくく、学んだことが身についていなければ職場での行動は変わりません。上の段階で効果が見えないときは、下の段階にさかのぼって原因を探します。
すべての研修で4段階すべてを測る必要はありません。研修の目的と費用に応じて、どの段階まで測るかを決めます。例えば、新しいルールを周知する短い研修であれば、理解度テストまでで十分なことが多いでしょう。管理職研修のように時間と費用をかける研修では、行動の段階まで確かめる価値があります。
段階ごとの測り方
段階1:反応をアンケートで測る
研修の直後に、受講者にアンケートを取ります。満足度だけでなく、「仕事で使えそうか」「明日から試したいことは何か」も聞くと、次の段階につなげやすくなります。
アンケートの質問の例です。
- 研修の内容は、自分の仕事に関係があると感じたか(5段階)
- 説明は分かりやすかったか(5段階)
- 研修の内容を、仕事で使えそうか(5段階)
- 明日から試したいことを1つ書いてください(自由記述)
- 分かりにくかった点、もっと知りたい点(自由記述)
満足度が高いことは、学んだことが身についたことと同じではありません。アンケートの結果は、研修の進め方の改善に使うものと考えます。
段階2:学習をテストや演習で測る
知識を学ぶ研修では、理解度テストを行います。研修の前と後に同じ水準の問題を解いてもらうと、研修でどれだけ身についたかを比べやすくなります。スキルを学ぶ研修では、演習やロールプレイで、決めた手順どおりにできるかを確かめます。
合格の基準は、研修の目的から決めます。例えば、社内のルールを学ぶ研修では、全問正解を求めることもあります。基準に届かなかった人には、復習の教材を渡すなど、補う方法も決めておきます。
段階3:行動を職場で確かめる
研修の1〜3か月後に、職場で行動が変わったかを確かめます。本人の振り返りに加え、上司が観察した結果や面談での聞き取りを組み合わせます。
行動を確かめるには、研修の前に「研修のあとに、どのような行動ができればよいか」を具体的に決めておく必要があります。「報告を早める」ではなく「トラブルが起きたら当日中に上司に報告する」のように、観察できる言葉にします。行動の基準を言葉にするときは、公的な基準も参考になります。
「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したものです。
出典:厚生労働省「職業能力評価基準」
職務行動例は、研修のあとに職場で確かめたい行動を言葉にするときの手本になります。厚生労働省は、この基準を人材育成や人事評価などの基準書として活用できるものとしています(出典:厚生労働省「職業能力評価基準」)。自社の仕事に合わせて言葉を調整して使います。
段階4:成果を業務の指標で確かめる
最後の段階では、職場の成果の変化を確かめます。営業研修であれば商談の数や成約率、品質の研修であれば不良やミスの件数など、研修の目的に合った指標を選びます。
成果の変化には、研修以外の要因も影響します。研修を受けた人と受けていない人を比べる、研修の前後の変化を同じ時期の前年と比べるなど、研修の影響を見分ける工夫が必要です。それでも完全に切り分けるのは難しいため、成果の数字は判断の材料の一つとして扱います。
費用対効果の考え方
研修の費用対効果を数字で示したい場合は、研修にかかった費用と、研修によって得られた効果を金額に置き換えて比べます。費用には、講師料や教材費だけでなく、受講者が研修に使った時間の人件費も含めて考えます。
効果を金額に置き換えるのは簡単ではありません。作業時間の短縮やミスの削減など、金額に換算しやすい効果から試算し、前提を明記したうえで社内で共有すると、議論の材料にしやすくなります。
研修の種類ごとの測り方の例
研修の目的によって、測る段階や指標は変わります。代表的な研修ごとに、測り方の例をまとめます。
| 研修の種類 | 主に測る段階 | 指標の例 |
|---|---|---|
| 社内ルール・コンプライアンス研修 | 学習 | 理解度テストの正答率、受講の完了率 |
| 新入社員研修 | 学習・行動 | 基本動作のチェック表、配属先の上司の評価 |
| 営業研修 | 行動・成果 | 商談の件数、提案書の提出数、成約率 |
| 管理職研修 | 行動 | 部下との面談の実施回数、部下へのアンケート |
| 業務システムの操作研修 | 学習・成果 | 操作テストの結果、問い合わせの件数 |
表の指標は一例です。自社の研修の目的に照らして、研修で変えたいことが最もよく表れる指標を1つか2つ選びます。指標を選ぶときは、すでに職場で記録している数字を使えないかを先に確かめると、測定の手間を抑えられます。
OJTも効果測定の対象にする
研修というと集合研修やeラーニングを思い浮かべがちですが、職場での指導も人材育成の大きな柱です。同じ調査で、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は60.6%、正社員以外に対して実施した事業所は25.1%でした(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査の結果について」(令和8年7月31日))。OFF-JTについては、正社員に実施した事業所が70.9%、正社員以外は30.7%です(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。
OJTでも、指導の前に身につけてほしいことを決め、一定期間ごとに上司と本人で到達の度合いを確かめると、集合研修と同じように効果を確かめられます。集合研修とOJTの記録を同じ形でまとめておくと、一人ひとりの育成の状況を把握しやすくなります。
効果測定を成功させるためのポイント
効果測定は、研修のあとに考え始めると、比べる基準がなく測れないことがあります。研修を企画する段階で、測り方まで決めておくことが大切です。

研修の目的と指標を先に決める
研修の企画書に、目的、研修のあとにできるようになること、どの段階まで測るか、使う指標を書きます。受講者の上司にも事前に共有し、行動の確認に協力してもらいます。
研修の前の状態を記録する
変化を確かめるには、研修の前の状態が必要です。理解度テストを事前にも行う、業務の指標を研修の前に記録しておくなど、比べる基準を残します。
記録を残し、次の計画に生かす
受講した人、受講日、テストの結果、アンケートの結果を、一つの場所にまとめて記録します。研修の記録は、助成金の申請にも関わることがあります。
人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」
計画に沿って研修を行い、その記録を残しておくことは、助成金を検討する場合にも役立ちます。助成金のコースには、人材育成支援コースや人への投資促進コースなどがあります(出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」)。要件はコースごとに異なるため、申請を考える場合は最新の要件を確かめてください。
結果を報告する
測定の結果は、研修ごとに短い報告にまとめ、経営者や受講者の上司に共有します。報告には、研修の目的、受講者数、アンケートとテストの結果、行動の確認の結果、次の研修で変えることを入れます。うまくいかなかった点も書いておくと、翌年の計画を立てるときの材料になります。数字だけでなく、受講者や上司の声を添えると、研修の様子が伝わりやすくなります。
効果測定のよくある失敗
効果測定がうまくいかない会社には、共通する失敗があります。
- 測ることが目的になり、結果を研修の改善に使っていない
- アンケートの満足度だけを見て、研修の良し悪しを判断している
- 研修の前の状態を記録しておらず、変化が分からない
- 受講者の上司が研修の目的を知らず、職場での行動を確かめられない
- 測る項目が多すぎて、受講者や上司の負担が大きい
特に多いのが、測る項目を増やしすぎる失敗です。人材育成の時間がないという事業所は45.5%にのぼります(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。最初は研修1つにつき、アンケートと理解度テストに加え、行動の確認を1つ決めるくらいの小さな形から始めます。
効果測定を仕組みにする方法
研修の数が増えると、受講の管理やテストの集計を手作業で行うのは負担になります。受講の状況やテストの結果を一つの仕組みで管理できると、効果測定を続けやすくなります。
自社で管理する場合
受講者が少なく、研修の数も限られている場合は、表計算ソフトで受講の記録とテストの結果を管理する方法で十分です。記録する項目を決めて、担当者が変わっても同じ形で続けられるようにしておきます。
eラーニングを使う場合
社員が多い、拠点が分かれている、同じ研修を繰り返し行うといった場合は、eラーニングの仕組みを使うと、受講の管理や理解度テストの記録をまとめやすくなります。研修動画の配信や受講管理ができるeラーニングサービスでは、用意された講座と自社独自の研修の両方を扱えるものもあります。
一方で、受講者が少なく、対面での演習が中心の研修では、仕組みを入れる手間に見合わないこともあります。導入を考える場合は、受講者数、研修の種類、記録したい項目を整理してから比べます。
費用の考え方
eラーニングの費用は、利用する人数、用意された講座を使うかどうか、自社の研修を載せるかどうかで変わります。料金の体系はサービスによって異なるため、受講者数と使いたい機能を決めたうえで、複数の資料を比べると判断しやすくなります。
あわせて読みたい
ツナグバで、eラーニングのサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
人材育成・研修の分野では、研修動画の配信や受講管理ができるeラーニングのサービスを掲載しています。研修の受講の記録や理解度の確認を仕組みにして、効果測定を続けやすくしたい場合の選択肢になります。
受講者の人数や、今行っている研修の種類をまとめたうえで、資料で詳細を確認してください。
こんな課題があれば
- 新人研修を毎回担当者が対面で行っていて、時間を取られている
- 誰がどの研修を受けたか、管理できていない
- 拠点や勤務時間が違う社員に、同じ研修を受けてもらうのが難しい
掲載サービスでできること
- 研修動画を配信できる:研修の動画を配信し、社員が自分の都合のよい時間に受講できます。同じ内容を繰り返し説明する手間を減らせます。
- 受講の状況を管理できる:誰がどの講座を受けたか、どこまで進んだかを確認できます。受講の促しや記録の管理に使えます。
- 用意された講座と自社の研修を両方使える:ビジネスの基本などの講座が用意されていて、自社で作った研修も載せられます。講座の内容や数は製品によって違うため、資料で確認してください。
資料で確かめたいこと
- 利用人数ごとの料金と、講座の追加費用
- 自社の研修動画や資料を載せられるか、その方法
- スマートフォンで受講できるか
- テストや修了の記録を残せるか
- 導入時の設定や運用の相談ができるか
よくある質問
研修の効果測定は、すべての研修で行うべきですか?
すべての研修で同じように測る必要はありません。アンケートはどの研修でも行い、行動や成果の段階まで確かめるのは、時間や費用をかける研修に絞る方法が現実的です。
研修直後のアンケートの満足度が低かったら、研修は失敗ですか?
満足度だけでは判断できません。満足度が低くても、理解度テストの結果や職場での行動が変わっていれば、研修の目的は果たせていることがあります。アンケートの自由記述から、改善できる点を探します。
行動の変化は、誰が確かめればよいですか?
受講者の上司が中心になります。研修の担当者は、上司が確かめやすいように、研修のあとに期待する行動を事前に伝え、確認の時期や方法を決めておきます。
研修の成果を数字で示すことはできますか?
業務の指標の変化で示すことはできますが、研修以外の要因も影響します。研修を受けた人と受けていない人を比べるなどの工夫をしたうえで、判断の材料の一つとして扱うことをおすすめします。
