顧客管理のシステムに入った情報を、請求のシステムにもう一度入力している。勤怠の記録を、毎月表計算ソフトに写してから給与の計算をしている。こうした転記の作業を減らす方法として、API連携という言葉を目にする機会が増えています。
ただ、APIという言葉は技術的に聞こえ、自社に関係があるのか判断しにくいものです。
この記事では、API連携の意味と仕組みを、CSVの出し入れや手作業との違いと合わせて説明し、効率化できる業務の例、メリットと注意点、導入の進め方、費用の考え方を順に整理します。
API連携が向いていないケースや、導入の前に確かめたい項目もまとめました。社内で検討するときの材料として使ってください。
API連携とは|システム同士がデータを直接やり取りする仕組み
APIは、Application Programming Interfaceの略で、あるソフトウェアの機能やデータを、別のソフトウェアから呼び出して使うための窓口のようなものです。
API連携は、この窓口を使って、2つ以上のシステムやアプリの間でデータを自動で受け渡すことを指します。人が画面を見て入力し直す代わりに、システム同士が決まった形式でデータをやり取りします。
デジタル庁が公表している技術資料は、APIの役割を次のように説明しています。
API は、アプリケーション間のデータ共有を可能にする重要な技術です。(中略)異なるシステムやアプリケーションが効率的にデータを交換し、機能を共有できるようになります。
出典:デジタル庁「APIテクニカルガイドブック」
ここで大切なのは、APIはデータを受け渡すための「決まりごと」だという点です。決まりごとが公開されているシステム同士であれば、ゼロから仕組みをつくらなくても、既存の機能を組み合わせてつなげられます。
同じ資料は、APIの決まりに沿うことで、開発者が既存の機能を再利用し、新しいアプリケーションをより早く作れるようになるとしています(出典:デジタル庁「APIテクニカルガイドブック」)。
企業が使うクラウドサービスが増えるほど、サービスの間でデータを受け渡す場面も増えます。総務省の調査では、常用雇用者100人以上の企業のうち、クラウドサービスを一部でも利用している企業は83.5%、全社的に利用している企業は60.0%でした(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」)。

勤怠、会計、顧客管理、請求など、業務ごとに別のサービスを使っている企業では、サービスの間でデータをどう受け渡すかが、業務の効率を左右します。
手作業・CSV・API連携の違い
システムの間でデータを受け渡す方法は、API連携だけではありません。主な方法を比べると、次のようになります。

| 方法 | 仕組み | 向いている場面 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 手作業の転記 | 画面を見て、別のシステムに入力し直す | 件数が少なく、頻度も低い | 入力ミスと作業時間 |
| CSVの出し入れ | 一方からファイルを書き出し、もう一方に取り込む | 月に数回など、まとめて受け渡せばよい | 取り込みの手間と、受け渡しまでの時間差 |
| API連携 | システム同士が決まった形式で直接やり取りする | 件数が多く、頻繁に最新の情報を渡したい | 設計、権限の管理、仕様変更への対応 |
| 連携ツールを使う | 画面の設定で、複数のサービスをつなぐ | 開発の担当者がいないが、複数のサービスをつなぎたい | 利用料と、対応しているサービスの範囲 |
件数が少ない業務まで、すべてをAPI連携にする必要はありません。月に数件しか発生しない転記であれば、手作業やCSVの出し入れで十分なこともあります。
判断の目安は、転記の頻度、1回あたりの件数、ミスが起きたときの影響の大きさです。毎日発生し、件数が多く、ミスが請求や給与に影響する業務ほど、API連携を検討する価値があります。
API連携で効率化できる業務の例
API連携は、さまざまな業務に使われています。中小企業でよく見られる例を挙げます。
| 業務 | つなぐもの | 減らせる作業の例 |
|---|---|---|
| 勤怠と給与 | 勤怠管理と給与計算 | 勤怠の集計を給与計算に入力し直す作業 |
| 販売と会計 | 販売管理や請求と会計 | 請求や入金の情報を会計に入力し直す作業 |
| 問い合わせと顧客管理 | Webのフォームと顧客管理 | 問い合わせ内容を顧客管理に写す作業 |
| 受注と在庫 | ネットショップと在庫管理 | 受注のたびに在庫の数を直す作業 |
| 社内の連絡 | 業務システムとチャット | 更新があったことを手作業で知らせる作業 |
中小企業庁の2025年版中小企業白書は、デジタル化の取組段階が進んだ事業者とそうでない事業者の差が大きい取り組みとして、顧客データの一元管理や、営業活動や受発注管理のオンライン化を挙げています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節」)。
システムの間でデータが自動で受け渡されるようになると、同じ情報を複数の場所で管理する必要が減り、こうした一元管理にも近づきます。
API連携のメリットと注意点
主なメリット
- 転記の作業時間を減らせる:人が入力し直していた時間を、ほかの業務に回せる
- 入力ミスを減らせる:数字の打ち間違いや、写し忘れが起きにくくなる
- 最新に近い情報を使える:CSVのように取り込みを待つ必要がなく、情報の時間差が小さくなる
- 担当者に依存しにくくなる:転記の手順を知っている人が休んでも、業務が止まりにくくなる
気をつけたい点
一方で、API連携には注意したい点もあります。代表的なのが、認証と権限の管理です。IPAが公表しているAPIの設計ガイドは、セキュリティと認証について次のように説明しています。
セキュリティと認証は API の利用者を適切に認証し、不正なアクセスを防ぐための仕組みを設計・実装する。
出典:IPA「API 標準設計ガイド・基礎編」
API連携では、システムにアクセスするための鍵(APIキーなど)を使います。この鍵が漏れると、外部からデータを読み書きされるおそれがあります。鍵を誰が管理し、退職や異動のときにどう変えるかを決めておく必要があります。
同じガイドは、APIへの過剰なリクエストを防ぐため、一定時間内に許可されるリクエスト数を制限するという考え方も示しています(出典:IPA「API 標準設計ガイド・基礎編」)。利用するサービスによっては、1日や1時間あたりに呼び出せる回数に上限があるため、件数の多い業務では事前に確かめておきます。
ほかにも、次の点に注意が必要です。
- 連携できる機能が、上位の料金プランに限られていることがある
- サービス側の仕様変更で、連携が止まることがある
- 通信の障害などで、データが届かないことがある
- どちらのシステムの情報を正とするかを決めないと、データが食い違う
API利用者に更新の履歴や最新版の情報を伝える方法も、設計ガイドの中で触れられています(出典:IPA「API 標準設計ガイド・基礎編」)。利用する側としては、サービスからの仕様変更のお知らせを受け取る担当者を決めておくと安心です。
API連携の進め方|転記の多い業務から順につなぐ
API連携は、つなげられるものから順につなぐのではなく、減らしたい作業から逆算して進めます。次の4つの手順が基本です。

手順1:転記の多い業務を洗い出す
どの業務で、どのシステムからどのシステムへ、どれくらいの件数を写しているかを書き出します。1か月あたりの作業時間も合わせて記録すると、効果を比べる基準になります。
手順2:連携の方法を確かめる
使っているサービスがAPIを公開しているか、どの料金プランで使えるか、連携ツールが対応しているかを確かめます。サービスの公式の資料や、問い合わせの窓口で確認できます。
社内で開発の担当者がいない場合は、画面の設定でつなげる連携ツールを使う方法もあります。社内で使っている複数のアプリやシステムを連携させ、手作業での転記や連絡を自動化したい場合は、ツナグバ掲載の社内のアプリをつなぎ、業務を自動化するツールも比較の候補になります。
手順3:小さく試す
最初は、1つの業務と2つのシステムに絞って試します。いきなり多くの業務をつなぐと、問題が起きたときに原因を探しにくくなります。
試す期間には、データが正しく受け渡されているかを、手作業の結果と照らし合わせて確かめます。
手順4:運用のルールを決める
連携が動き始めたら、運用のルールを文書にします。担当者、連携が止まったときの対応、手作業に戻す方法、APIキーなどの管理の方法を決めておきます。
API連携でよくある失敗と防ぎ方
API連携は、つないだ直後よりも、しばらく使ったあとに問題が表に出やすい仕組みです。よく見られる失敗と、防ぎ方を整理します。
つないだ人しか仕組みを分からない
社内の詳しい担当者が一人で設定し、その人が異動や退職をすると、どこで何がつながっているか誰にも分からなくなることがあります。
防ぐには、つないでいるシステム、受け渡すデータの項目、実行のタイミング、使っているAPIキーの保管場所を一覧にして、複数の人が見られる場所に置きます。
止まっていることに気づかない
連携が止まっても、画面上は何も変わらないことがあります。数日たってから、請求や在庫の数字が合わないことで気づくケースもあります。
防ぐには、連携が失敗したときに担当者へ通知が届くようにするか、週に一度など決まった間隔で、両方のシステムの件数を照らし合わせる作業を入れておきます。
片方の修正がもう片方に反映されない
連携の向きが一方通行の場合、受け取った側で情報を直しても、元のシステムには反映されません。次に連携が動いたとき、直した内容が元に戻ってしまうこともあります。
防ぐには、項目ごとにどちらのシステムで修正するかを決め、受け取った側では修正しないルールにします。
入力の項目が増えて、かえって手間が増える
連携のためにデータの形式をそろえようとして、入力する項目が増えることがあります。項目が増えると、現場の入力の負担が重くなり、使われなくなるおそれがあります。
連携に必要な項目だけに絞り、本当に必要かを現場と一緒に確かめることが大切です。
個人情報を含むデータを扱う場合は、受け渡す項目を必要なものに限ることも安全管理につながります。個人情報保護法は、個人データの漏えいなどを防ぐための安全管理の措置を事業者に求めています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。
費用の考え方と補助金の確認先
API連携の費用は、つなぐ方法によって大きく変わります。費用は次のように分けて考えると整理しやすくなります。
- サービスの利用料:APIを使える料金プランへの変更が必要な場合の差額
- 連携ツールの利用料:連携ツールを使う場合の月額など
- 開発費:自社や外部の開発者に、連携の仕組みをつくってもらう場合の費用
- 保守の費用:仕様変更への対応や、障害時の調査にかかる費用
金額は、つなぐシステムの数、データの件数、開発の範囲によって変わるため、一律の相場は示しにくいのが実情です。複数のサービスや開発会社から見積もりや資料を取り寄せ、削減できる作業時間と比べて判断してください。
費用の負担を減らす方法として、国の補助金を確かめておく価値があります。中小企業基盤整備機構は、デジタル化・AI導入補助金の目的を次のように説明しています。
中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
出典:中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金 制度概要」
同じページでは、相談対応などのサポート費用やクラウドサービスの利用料なども補助の対象に含まれるとしています(出典:中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金 制度概要」)。対象となるツールや補助率、申請の時期は年度や枠によって変わるため、最新の公募要領で確認してください。
中小企業庁の白書では、デジタル化のどの取組段階でも、費用の負担が大きいことや、推進する人材が足りないことを問題として挙げる事業者の割合が高いとされています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節」)。補助金と、設定の負担が小さい方法を組み合わせて考えることが現実的です。
API連携が向いていないケースと、導入前のチェックリスト
次のようなケースでは、API連携を急がなくてもよいことがあります。
- 転記の件数が少なく、月に数回のCSVの出し入れで足りている
- 業務の手順がまだ固まっておらず、入力する項目が頻繁に変わる
- 使っているサービスがAPIを公開しておらず、乗り換えの予定もない
- 連携の担当者を置けず、止まったときに誰も対応できない
導入を決める前に、次の項目を確かめておきます。
- 減らしたい作業と、1か月あたりの作業時間を把握している
- どちらのシステムの情報を正とするか決めている
- 使うサービスのAPIの有無と、対応する料金プランを確かめた
- APIキーや権限を管理する担当者を決めている
- 連携が止まったときに手作業に戻す方法を決めている
- 仕様変更のお知らせを受け取る担当者を決めている
顧客の情報など個人情報を受け渡す場合は、扱いのルールにも注意が必要です。個人情報保護委員会のガイドラインは、個人データの安全管理や、委託先の監督などについて定めています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。社内の情報管理のルールは、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も参考になります(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。
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ITツール・SaaSの分野では、社内で使っている複数のアプリやシステムを連携させ、手作業での転記や連絡を自動化するツールを掲載しています。システム間の手作業が多い企業に向いています。
対応しているサービスや料金は、資料で確認できます。資料を取り寄せ、自社で使っているシステムとつなげられるかを確かめてください。
こんな課題があれば
- あるシステムの情報を、別のシステムに手で入力し直している
- 問い合わせが届くたびに、担当者へ手作業で連絡している
- 社内で使うアプリが増え、情報がどこにあるか分からなくなっている
掲載サービスでできること
- 複数のアプリやシステムをつなげる:社内で使っているアプリ同士を連携させ、情報を受け渡せます。どのアプリと連携できるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
- 転記や連絡を自動で行える:ある操作をきっかけに、決まった処理を自動で行う設定ができます。手作業の転記や、関係者への連絡の手間を減らせます。
- 画面上で処理の流れを組み立てられる:プログラムを書かずに、画面上で処理の流れを設定できるものが一般的です。ただし設定には、業務の流れを整理しておくことが欠かせません。
資料で確かめたいこと
- いま使っているアプリやシステムと連携できるか
- 料金が処理の回数や件数で変わるか、上限はあるか
- 設定を社内の担当者が行えるか、支援を受けられるか
- 情報の取り扱いや、アクセスできる人の管理の仕組み
- 連携先のアプリの仕様が変わったときの対応
よくある質問
API連携には、プログラミングの知識が必要ですか?
APIを使って自社で仕組みをつくる場合は、プログラミングの知識が必要です。
一方で、画面の設定でサービス同士をつなげる連携ツールや、あらかじめ連携の機能を備えたサービスを使えば、プログラミングをしなくても始められることがあります。
API連携とCSV連携は、どちらがよいですか?
受け渡しの頻度と件数で判断します。月に数回、まとめて受け渡せばよい業務ならCSVで足りることが多く、毎日多くの件数を受け渡す業務ではAPI連携のほうが手間を減らせます。
API連携が止まったら、業務はどうなりますか?
連携が止まると、データが受け渡されず、片方のシステムの情報が古いままになります。
止まったことに気づける仕組みと、手作業やCSVで一時的に受け渡す方法を、あらかじめ決めておくことが大切です。
API連携に補助金は使えますか?
デジタル化・AI導入補助金では、ITツールの導入にかかる費用が対象になります。連携の仕組みやツールが対象になるかは、登録されているツールや枠によって異なるため、最新の公募要領と、ツールの提供元に確認してください。
参考資料
- デジタル庁「APIテクニカルガイドブック」(デジタル社会推進実践ガイドブック DS-464-2)(2024年9月30日)
- IPA「API 標準設計ガイド・基礎編」(2025年3月26日初版)
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」(2026年5月29日公表)
- 中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金 制度概要」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(令和8年6月一部改正)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」(第4.0版、2026年3月27日公開)
