「営業の情報が担当者ごとに散らばっている」「問い合わせはあるのに、その後のフォローが続かない」。中小企業の営業やマーケティングでは、こうした悩みがよく聞かれます。

ツールを使えば解決できそうだと考えても、種類が多く、どれから入れればよいか分かりにくいものです。

この記事では、中小企業が使う営業・マーケティングのツールを種類別に整理し、選び方の基準、導入の順番、費用の考え方、補助金の確認先までを順に解説します。

自社に必要なツールを見極める材料として使ってください。

中小企業が営業・マーケティングのツールで解決したいこと

中小企業では、営業やマーケティングの担当者が少なく、一人が多くの役割を兼ねていることが一般的です。

2025年版中小企業白書では、紙や口頭による業務が中心の段階にある事業者の割合が前回の調査より減った一方で、デジタル化を進めるうえでの問題点について、次のように整理されています。

いずれの取組段階でも「費用の負担が大きい」又は「DXを推進する人材が足りない」と回答する事業者の割合が高い。

出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」

費用と人材の2つが壁になるのは、営業・マーケティングのツールでも同じです。費用をかけすぎず、少ない人数でも使い続けられるかが、中小企業のツール選びの中心になります。

そのため、ツールに求められるのは、高度な分析よりも、次のような基本的な課題の解決です。

  • 顧客や見込み客の情報を一か所にまとめ、担当者が変わっても引き継げるようにする
  • 問い合わせや商談の状況を見える化し、フォローの漏れを防ぐ
  • メールの送信や記録の入力など、手作業を減らす
  • Webサイトから問い合わせを受ける仕組みを整える
  • どの施策から受注が生まれているかを数字で確かめる

どの課題を最初に解決したいかで、選ぶべきツールが変わります。ツールの機能から考えるのではなく、自社の課題から考えることが出発点です。

営業・マーケティングツールの主な種類

営業・マーケティングのツールの多くは、インターネット経由で使うクラウド型です。総務省の調査では、クラウドサービスを全社的に利用している企業の割合は令和7年に60.0%となり、前年の53.1%から6.9ポイント増えました(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」)。

クラウドサービスを全社的に利用している企業の割合を示す棒グラフ。令和6年53.1%、令和7年60.0%

同じ調査では、クラウドサービスを使う理由として「場所、機器を選ばずに利用できるから」を挙げた企業が50.7%で最も多くなっています(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」)。外出の多い営業担当者が、スマートフォンから記録を入力できる点も、クラウド型のツールが選ばれる理由の一つです。主な種類は次のとおりです。

種類主な役割解決しやすい課題向いている段階
CRM(顧客管理)顧客や見込み客の情報、やり取りの履歴をまとめる情報が担当者ごとに散らばっている最初に整えたい土台
SFA(営業支援)商談の進み具合、営業活動の記録、売上の見込みを管理する商談の状況が見えない、売上の予測が立たない営業担当者が複数いる
MA(マーケティングオートメーション)見込み客の行動に応じて、メールの配信などを自動化する問い合わせ後のフォローが続かない見込み客の数が一定以上ある
メール配信メールマガジンやお知らせを一斉に送る見込み客との接点が途切れるリストがある程度たまってきた
Webサイト作成・LP作成会社のサイトや、問い合わせを受けるページをつくるWebからの問い合わせがない集客の入口を整えたい
アクセス解析サイトに来た人の数や行動を測るどのページが成果につながっているか分からないサイトの改善を始めたい
日程調整・オンライン商談商談の日程を決め、オンラインで面談する日程調整のやり取りに時間がかかる商談の数が増えてきた

CRMとSFAは、一つのツールにまとまっていることも多くあります。また、CRM・メール配信・Webサイト作成などを一つにまとめたツールもあります。

それぞれのツールの関係

ツールは単独で使うより、つながっている方が役に立ちます。

たとえば、Webサイトの問い合わせフォームから入った見込み客の情報がCRMに自動で登録され、メール配信で情報を届け、反応のあった人を営業がSFAで追いかける、という流れです。

ツールがばらばらだと、同じ情報を何度も入力することになり、入力の漏れも起こりやすくなります。

なお、メール配信ツールで広告や宣伝のメールを送る場合は、特定電子メール法のルールを守る必要があります。原則として、あらかじめ同意を得た相手にしか送れず、送信者の名称や受信拒否の連絡先などの表示も求められます(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。条文はe-Gov法令検索で確認できます(出典:e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)。

ツールを選ぶときは、配信の同意を記録できるか、受信拒否の手続きを自動で受け付けられるかも確認しておくと安心です。

中小企業がツールを選ぶときの判断基準

候補を比べる前に、次の6つの基準を社内で確認しておきます。基準が決まっていないと、機能の多さや月額の安さだけで選んでしまいがちです。

中小企業が営業・マーケティングツールを選ぶときの6つの判断基準を示すチェックリスト

1. 解決したい課題に合っているか

最初に「何に困っているか」を一つ決め、それを解決できるかで選びます。

機能が多いツールほど費用も設定の手間も大きくなります。使わない機能のために費用を払うことにならないよう注意してください。

2. 担当者が使い続けられるか

ツールは、入力されなければ役に立ちません。

画面が分かりやすいか、スマートフォンから入力できるか、入力の項目を減らせるかを、無料の試用期間などで実際に確かめます。

3. 他のツールとつながるか

すでに使っているメール、表計算ソフト、会計ソフト、Webサイトなどと情報を連携できるかを確認します。

後から別のツールを足すことを考えると、連携の仕組みがあるかどうかは重要です。

4. 導入と活用の支援があるか

中小企業では、ツールの設定や使い方を社内だけで整えるのが難しいことがあります。

初期設定の支援、使い方の研修、問い合わせの窓口など、導入後の支援の範囲を確認します。

5. 費用が規模に合っているか

利用する人数、登録する顧客の数、送るメールの数などで、費用が変わるツールが多くあります。

今の規模だけでなく、1〜2年後の規模で費用がどうなるかも確かめておくと安心です。

6. セキュリティとデータの管理に不安がないか

CRMやメール配信のツールには、顧客や見込み客の氏名・連絡先が登録されます。こうした情報は個人情報保護法の個人情報にあたり、本人の氏名や、氏名と組み合わせた連絡先・所属などが例として挙げられています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。

個人情報を扱う事業者には、漏えいなどを防ぐための安全管理の措置が求められます(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。ツールを選ぶときは、ログインの認証の方法、利用者ごとの権限の設定、データの保存場所、解約したときのデータの扱いを確認します。

情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」には、付録として「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」が用意されています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。クラウド型のツールを選ぶ前の確認項目として使えます。

導入の順番の考え方

複数のツールを一度に入れると、設定と定着に時間がかかり、どれも使われなくなることがあります。

営業・マーケティングツールを導入する順番を4段階で示す図

中小企業では、次のような順番で段階的に整えていく方法が現実的です。

  1. 顧客の情報をまとめる:CRMや表計算ソフトで、顧客と見込み客の一覧と、やり取りの記録を一か所に集める
  2. 問い合わせの入口を整える:Webサイトや問い合わせフォームを整え、問い合わせが一覧に入る流れをつくる
  3. フォローの仕組みをつくる:メール配信で、見込み客に定期的に情報を届ける
  4. 商談を管理する:営業担当者が複数になったら、SFAで商談の進み具合を共有する
  5. 自動化と分析を加える:見込み客が増えてきたら、MAやアクセス解析で、フォローの自動化と改善を進める

すでに表計算ソフトで顧客を管理できている場合は、無理にツールへ移す必要はありません。件数や担当者が増えて、管理が追いつかなくなった時点で検討すれば十分です。

定着させるための工夫

  • 導入の目的と、使う場面を社内で共有する
  • 入力する項目を最小限から始める
  • 入力された情報を、会議や日々の報告で実際に使う
  • 担当者を一人決め、使い方の質問を受ける

会社の状況別:ツールの組み合わせの例

必要なツールの組み合わせは、営業の進め方と担当者の人数で変わります。代表的な例を整理します。

会社の状況まず整えたいもの次に加えるもの後回しでよいもの
社長が一人で営業している顧客の一覧とやり取りの記録日程調整、メール配信SFA、MA
営業担当者が2〜5人いるCRMで情報を共有SFAで商談を管理MA
Webからの問い合わせが中心Webサイトと問い合わせフォーム、CRMメール配信、アクセス解析SFAの細かい分析
展示会や紹介で名刺がたまる名刺の情報をCRMに集約メール配信で定期的に連絡MA
見込み客が数百件以上あるCRMとメール配信MAでフォローを自動化—

あくまで一例です。自社の課題と照らし合わせて、最初の一歩を決める参考にしてください。

ツールを比較して選ぶ手順

  1. 課題と目的を書き出す:「問い合わせ後のフォロー漏れをなくす」など、一文で書く
  2. 必要な機能を絞る:必ず必要な機能と、あればよい機能に分ける
  3. 候補を3つ程度に絞る:必要な機能を満たすものの中から選ぶ
  4. 資料と見積もりを取り寄せる:利用人数と登録件数を伝え、総額で比べる
  5. 試用する:実際に使う担当者が、普段の作業で試す
  6. 導入後の体制を決める:管理する担当者、入力のルール、見る数字を決める

候補を比べるときは、月額の安さだけでなく、初期設定にかかる時間や、支援の範囲も含めて比べます。担当者が使いこなせないツールは、月額が安くても結果的に高くつきます。

ツール選びでよくある失敗

失敗起こること防ぎ方
機能の多さで選ぶ設定が複雑で、使われない課題に必要な機能だけで選ぶ
一度に多くのツールを入れるどれも定着しない優先する課題から一つずつ始める
担当者が試さずに決める現場で使いにくく、入力が止まる使う人が試用してから決める
データの移行を考えていない過去の顧客情報が使えない移行の方法と手間を事前に確認する
導入後の担当者がいない設定の見直しや質問への対応が止まる社内の管理担当者を決める

費用の考え方

営業・マーケティングツールの費用は、種類・利用人数・登録件数・機能の範囲によって大きく変わります。ここでは、費用の内訳と、判断の考え方を整理します。

費用の種類内容金額が変わる主な条件
初期費用アカウントの開設、初期設定、データの移行設定を自社で行うか、支援を受けるか
月額・年額の利用料ツールの利用料利用人数、登録件数、送信数、機能のプラン
導入・活用の支援費設定の代行、研修、運用の相談支援の範囲と期間
社内の作業時間設定、データの入力、使い方の習得担当者の人数、既存データの量

判断のための計算

ツールの費用は、「減らせる作業時間」と「増やせる受注」の両面で考えます。

たとえば、営業担当者3人が、報告書の作成や顧客情報の検索に1日30分ずつ使っているとします。ツールでこれを半分にできれば、1か月(20日稼働)で合計15時間の時間が生まれます。この時間を商談に回せるなら、ツールの費用と比べて判断できます。

費用だけで比べず、無料の試用で実際の作業時間がどれだけ減るかを確かめることが大切です。

補助金を確認する

中小企業がITツールを導入する場合、国の補助金の対象になることがあります。2025年版中小企業白書でも、デジタル化の問題点として費用の負担の大きさが挙げられており、補助金はその負担を軽くする手段の一つです(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。

中小企業基盤整備機構が運営する「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧:IT導入補助金)の制度概要では、補助金の目的が次のように説明されています。

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。

出典:中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金制度概要」

営業・マーケティングのツールも、業務効率化につながるものとして登録されていれば対象になり得ます。公式サイトでは、通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠などの申請枠が案内されています(出典:中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026」)。申請の枠や対象となるツール、補助の内容は公募回ごとに変わるため、公式サイトで最新の情報を確認してください。

補助金は、登録された支援事業者とツールを通じて申請する仕組みです(出典:中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026」)。導入を急いで契約してしまうと対象外になることがあるため、契約の前に確認します。

ツールを入れても成果が出にくいケース

ツールは、仕組みを支える道具です。次のような状態では、ツールを入れても成果につながりにくくなります。

  • 誰に、何を売るかが決まっていない
  • 見込み客の数が少なく、管理する情報そのものが少ない
  • 入力や運用を担う担当者がいない
  • ツールを入れること自体が目的になっている

ツールを入れなくてもよいケース

  • 顧客が数十社程度で、表計算ソフトで十分に管理できている
  • 営業担当者が1人で、情報の共有が必要ない
  • 新しい顧客をあまり増やす予定がない

こうした場合は、まず表計算ソフトの一覧を整え、問い合わせの対応やフォローの手順を決めることから始める方が効果的です。

担当者がいない場合は、運用を任せる方法もある

ツールを入れても、メールの文面を書く、Webサイトを更新する、SNSに投稿するといった作業を担う人がいなければ、仕組みは動きません。

社内にマーケティングの担当者がいない場合は、マーケティング、制作物の作成、SNS運用などを定額で依頼できる業務代行サービスを使う方法もあります。ツールの導入と、運用を担う人の確保は、分けて考えることが大切です。

ツールと導入支援をまとめて検討する

ツールを一つずつ選ぶと、連携の確認や設定に時間がかかります。

Webサイト作成、メール配信、顧客管理など、営業とマーケティングに使う複数のツールを、導入と活用の支援と合わせて検討したい場合は、ツナグバ掲載の営業とマーケティングを支えるツール群と導入支援も比較の候補になります。

まとめて導入する場合も、最初から全部を使おうとせず、優先する課題から順に使い始めると定着しやすくなります。

導入前のチェックリスト

  • 最初に解決したい課題を一つに決めている
  • ツールを使う担当者と、使う場面を決めている
  • 今使っているツールや表計算ソフトとの連携を確認している
  • 無料の試用などで、担当者が使えるかを確かめている
  • 1〜2年後の規模で費用がどうなるかを確認している
  • 初期設定や研修など、導入支援の範囲を確認している
  • 補助金の対象になるかを、契約の前に確認している
  • 導入後に見る数字(問い合わせ数、商談数、作業時間など)を決めている

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資料で確かめたいことの例です。

  • 定額に含まれる作業の範囲と、範囲外の作業の費用
  • 依頼できる量の上限や、修正の回数
  • 担当者とのやり取りの方法と、連絡の頻度

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よくある質問

CRMとSFAはどちらを先に入れるべきですか?

中小企業では、まず顧客の情報をまとめるCRMから始めることが多く見られます。

営業担当者が複数いて、商談の進み具合を共有する必要が出てきたら、SFAの機能を加えます。一つのツールで両方を備えているものもあります。

MAは中小企業にも必要ですか?

見込み客の数が少ないうちは、メール配信と手作業のフォローで十分なことが多くあります。

見込み客が増え、一人ひとりに手作業で対応するのが難しくなった段階で検討するとよいでしょう。

無料のツールから始めてもよいですか?

無料のプランや試用期間から始めることは、使い勝手を確かめる意味でも有効です。

ただし、登録件数や機能に制限があることが多いため、有料のプランに移るときの費用とデータの移行方法も確認しておいてください。

ツールを入れたのに使われません。どうすればよいですか?

入力の項目を減らし、入力した情報を会議や報告で実際に使う場面をつくることが基本です。

使う目的が共有されていない場合は、導入の目的を改めて説明し、担当者を一人決めて質問を受ける体制を整えてください。

参考資料