昼休みに自分の席で机に伏せて休む社員を見かけて、休める場所を用意したいと考える会社が増えています。一方で、仮眠を制度として認めると、勤務時間の扱いや、周りの目、場所の確保など、決めなければならないことが多くあります。
この記事では、仮眠制度を会社に導入するときの考え方を、法令の決まりから順に整理します。仮眠を休憩として扱うかどうか、場所の選び方、運用ルールの作り方、費用の考え方、導入しなくてよいケースまで、厚生労働省などの公的な資料をもとにまとめました。
仮眠制度とは何か
仮眠制度とは、勤務日の途中に、社員が短い時間眠ったり、横になって休んだりすることを会社として認める仕組みです。昼食後の時間帯に取り入れる例が多く、スペイン語の昼休みに由来する「シエスタ」や、「パワーナップ」と呼ぶ会社もあります。
法律で決まった制度の名前ではないため、中身は会社によって違います。休憩時間の中で仮眠してよいと認めるだけの会社もあれば、仮眠用の部屋を用意し、予約や利用時間のルールまで決めている会社もあります。導入を考えるときは、まず「どの時間に」「どこで」「どの扱いで」休むのかを決める必要があります。
なお、仮眠制度は睡眠不足を補うための仕組みではありません。厚生労働省の睡眠のガイドは、成人について次のように推奨しています。
適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
この推奨は夜の睡眠についてのものです。日中に休める場所を用意しても、長時間労働で睡眠時間が削られているなら、まず見直すべきは働き方のほうです。同じガイドは、勤務間インターバル制度について、交替制勤務などの勤務形態が不規則になりがちな職種で睡眠時間を確保するうえで有用だとしています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。仮眠制度は、こうした働き方の見直しとあわせて考える福利厚生の一つと位置づけるのが現実的です。
仮眠制度に関わる法令の決まり
仮眠制度そのものを定めた法令はありません。ただし、休憩時間、休憩の設備、睡眠や仮眠の場所については、労働基準法や労働安全衛生規則などに決まりがあります。制度を作る前に、次の点を押さえておきます。

休憩時間は自由に使わせる
労働基準法第34条は、休憩時間について次のように定めています。
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
出典:労働基準法(e-Gov法令検索)第34条第1項
同じ条文の第3項は、休憩時間を自由に利用させなければならないとしています(出典:労働基準法(e-Gov法令検索)第34条)。このため、休憩時間の中で仮眠するかどうかは、本来は社員が自由に決めることです。会社が「休憩時間には必ず仮眠をとること」と命じることはできません。仮眠制度は、休みたい人が休める環境を用意する仕組みとして考えます。
また、休憩時間は原則として一斉に与えることとされ、労使協定があれば一斉に与えなくてもよいとされています(出典:労働基準法(e-Gov法令検索)第34条第2項)。仮眠の時間帯を部署ごとにずらしたい場合は、休憩時間の与え方とあわせて確認します。
休憩の設備と、睡眠・仮眠の場所
労働安全衛生規則は、休憩の設備について、労働者が有効に利用できる休憩の設備を設けるよう努めなければならないとしています(出典:労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第613条)。事務所については、事務所衛生基準規則にも同じ趣旨の努力義務があります(出典:事務所衛生基準規則(e-Gov法令検索)第19条)。
さらに、就業の途中に仮眠の機会がある場合については、次の決まりがあります。
事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。
出典:労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第616条第1項
同じ条の第2項は、その場所に寝具などの必要な用品を備え、疾病感染を予防する措置を講じることを求めています(出典:労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第616条第2項)。この条文がどのような仮眠の機会に当てはまるかは、働き方によって判断が分かれることがあります。仮眠を制度として認める場合は、男女の区別や寝具の衛生管理まで含めて場所を考えておくと安心です。判断に迷う場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
休養室の設置義務
常時50人以上、または常時女性30人以上の労働者を使用する場合は、横になって休める休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けることとされています(出典:事務所衛生基準規則(e-Gov法令検索)第21条)。休養室は、体調が悪くなった人が休むための場所として設けるものです。仮眠用の部屋と兼ねる場合は、体調の悪い人がすぐに使えなくなる運用にならないよう注意します。
快適な職場環境づくりの指針
労働安全衛生法第71条の2により、快適な職場環境の形成は事業者の努力義務とされています。厚生労働大臣が公表した快適職場指針には、作業環境の管理、作業方法の改善、疲労回復支援施設、職場生活支援施設の4つの事項が示されています(出典:東京労働局「快適職場づくりを進めましょう」)。休憩や仮眠の場所を整えることは、この中の疲労回復支援施設にあたる取り組みとして考えられます。
仮眠の時間を「休憩」と「勤務」のどちらで扱うか
仮眠制度で最初に決めるべきなのが、仮眠の時間の扱いです。扱いによって、賃金の計算や、仮眠中の呼び出しの可否が変わります。
休憩時間の中で仮眠する
もっとも始めやすいのは、今の休憩時間の中で仮眠してよいことにする形です。賃金や労働時間の計算は変わりません。休憩時間は自由に使わせる必要があるため、仮眠中の社員に電話の取り次ぎや来客の対応をさせないことが前提になります。
勤務時間中の一定時間を仮眠にあてる
勤務時間の途中に、昼食後などに短い仮眠の時間を認める会社もあります。この場合、その時間を休憩として扱うのか、勤務時間の一部として扱うのかを決めます。休憩として扱うなら、休憩時間の合計や始業・終業の時刻に影響します。勤務時間として扱うなら、賃金は控除しない一方で、仮眠の時間の長さや回数の上限を決めておかないと、運用がばらつきます。
仮眠中も対応を求めるなら労働時間になりうる
夜勤や当直などで、仮眠中も電話や警報に対応することを求めている場合は注意が必要です。厚生労働省のガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と説明しています(出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。仮眠中でも対応の義務があり、自由に過ごせない時間は、労働時間にあたる可能性があります。日中の仮眠制度とは分けて、夜勤の仮眠時間の扱いを確認してください。
| 扱い | 賃金・労働時間 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 休憩時間の中で仮眠 | 変わらない | まず小さく始めたい会社 | 仮眠中に仕事を頼まない |
| 勤務時間中に仮眠の時間を認める | 勤務時間として扱う場合は控除しない | 仮眠の時間帯をそろえたい会社 | 時間と回数の上限を決める |
| 仮眠の時間を休憩として追加 | 休憩時間が増え、終業が遅くなることがある | 拘束時間が延びても問題の少ない会社 | 始業・終業時刻への影響を説明する |
| 夜勤・当直の仮眠 | 対応の義務があれば労働時間になりうる | 夜間の業務がある会社 | 日中の制度と分けて扱う |
仮眠制度を導入する目的と、起こりやすい問題
仮眠制度を検討する理由として多いのは、社員が休める場所がない、働く環境を良くしたいといったものです。経済産業省は、健康経営を、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することと説明しています(出典:経済産業省「健康経営」)。同じページによると、健康経営優良法人認定制度の申請数は、令和6年度に約2万4000件にのぼりました(出典:経済産業省「健康経営」)。働く環境への取り組みを、採用や社外への説明に生かそうとする会社は少なくありません。休憩や仮眠の場所を整えることも、その取り組みの一つとして考えられます。
ただし、仮眠制度に特定の健康効果や生産性の向上を期待して導入するのは避けたほうがよいでしょう。眠りの感じ方には個人差があり、仮眠が合わない人もいます。制度の目的は「休みたい人が、気兼ねなく休める環境を用意すること」に置くほうが、社員にも説明しやすくなります。
導入後に起こりやすい問題には、次のようなものがあります。
- 「仮眠はさぼり」という見方が残り、使いにくい雰囲気になる
- 管理職によって、仮眠を認めるかどうかの対応が分かれる
- 一部の人が仮眠の場所を長く使い、ほかの人が使えない
- 仮眠の場所が電話や私語の場になり、休めない
- 顧客対応の時間帯と重なり、電話や来客に応じられない
- 仮眠から戻るのが遅れ、会議や作業の開始がずれる
これらは、ルールと場所の決め方である程度防げます。次の章で、導入の手順と決めておくことを整理します。
導入の手順と、決めておくこと
仮眠制度は、最初から全社で始めるより、対象を絞って試すほうが失敗が少なくなります。一般的には、次の流れで進めます。

- 目的と対象を決める:なぜ導入するのか、どの部署・どの働き方の社員を対象にするのかを決めます。
- 扱いとルールを決める:休憩か勤務か、時間帯、1回の長さ、回数、予約の有無を決めます。
- 場所を用意して試す:空いている会議室などで、期間を区切って試します。
- 声を集めて見直す:利用した人と、利用しなかった人の両方から理由を聞き、ルールや場所を直します。
運用ルールに入れておきたい項目
仮眠制度のルールは、短くても文書にしておきます。就業規則に関わる内容を変える場合は、厚生労働省のモデル就業規則などを参考に、自社の実情に合わせて定めます(出典:厚生労働省「モデル就業規則について」)。
- 仮眠を認める時間帯と、1回の長さの上限
- 休憩時間として扱うか、勤務時間として扱うか
- 予約の方法と、1人が続けて使える回数
- 仮眠中の電話や来客の取り次ぎの扱い
- 場所の使い方(私語や通話の禁止、照明、私物の扱い)
- 寝具や設備の清掃と、衛生管理の担当
- 体調が悪い人が休養室を優先して使えること
- 利用を強制しないこと、利用しないことで評価に影響しないこと
管理職への説明が欠かせない
仮眠制度が使われなくなる理由として多いのが、職場の雰囲気です。ルールを作っても、上司が良い顔をしなければ、社員は使いにくくなります。導入時には、制度の目的とルールを管理職にも説明し、部署によって対応が分かれないようにします。経営層が制度の目的を発信することも効果的です。
仮眠の場所の選び方
仮眠の場所は、会社の広さや人数、予算によって選び方が変わります。主な選択肢を比べると、次のとおりです。
| 場所 | 費用の考え方 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 空いている会議室を時間で使う | 大きな費用はかからない | まず試したい会社 | 会議の予定と重ならないよう予約を管理する |
| 休憩室の一角を区切る | 家具や仕切りの費用 | 休憩室に余裕がある会社 | 食事や会話をする人と場所を分ける |
| 専用の仮眠室を作る | 内装・家具の費用と、部屋の確保 | 社員が多く、利用が見込める会社 | 男女の区別や衛生管理を考える |
| 箱型の設備を置く | 本体の購入、またはレンタル・リースの費用 | 部屋を新しく作りにくい会社 | 設置の広さ、床の強さ、電源の条件を確かめる |
部屋を新しく作りにくい会社では、オフィスの中に置ける箱型の設備を、休憩の場所の一つとして検討する方法もあります。たとえば、会議もできる酸素ボックスのように、休憩の場所としても、少人数の打ち合わせのスペースとしても使える設備があります。休憩の場所が足りない会社にとっては、場所を二つの用途で使える点が検討の材料になります。健康への効果を目的にするのではなく、休憩の場所を増やす手段として、ほかの選択肢と同じ条件で比べることが大切です。
どの場所を選ぶ場合も、照明を落とせるか、話し声や電話の音が届かないか、出入りが気にならないかを確かめます。仮眠の場所と、休憩しながら会話をする場所は分けたほうが、どちらも使いやすくなります。
費用の考え方
仮眠制度の費用は、場所の用意の仕方で大きく変わります。一律の相場はないため、次の項目に分けて見積もります。
- 場所の費用:会議室を使うならほぼ不要。専用の部屋を作るなら内装や家具の費用、設備を置くなら本体やレンタル・リースの費用
- 備品の費用:リクライニングできる椅子、アイマスク、ブランケット、タイマーなど
- 衛生管理の費用:寝具や設備の清掃、交換の費用と手間
- 運用の手間:予約の管理、ルールの周知、利用状況の確認
- 撤去や原状回復の費用:賃貸のオフィスで内装を変える場合や、設備を契約期間の途中でやめる場合
設備を契約する場合は、本体の費用だけでなく、保守や点検の費用、契約期間、撤去のときの費用まで含めて比べます。まずは会議室などで試し、利用の見込みが立ってから、専用の場所や設備を検討する順番にすると、無駄な費用を抑えやすくなります。
仮眠制度が向いていないケース
仮眠制度は、どの会社にも向いているわけではありません。次のような場合は、導入を急がず、ほかの取り組みを先に考えるほうがよいことがあります。
- 長時間労働や休日出勤が多く、そもそも夜の睡眠時間が足りていない
- 少人数で電話や来客の対応を回しており、誰かが抜けると業務が止まる
- 今の休憩時間が、業務の都合で十分にとれていない
- 横になれる場所を確保できず、席で休むのと変わらない
- 社員から休める場所を求める声がなく、目的がはっきりしない
とくに最初の二つに当てはまる場合は、仮眠制度より先に、業務の分担や人員配置、休憩時間のとり方を見直します。休憩時間をきちんととれるようにすることで、職場の負担が軽くなることもあります。
仮眠制度の導入前チェックリスト
導入の前に、次の項目を確かめます。当てはまらない項目があれば、その点を先に決めてから始めます。

- 仮眠制度を導入する目的を、社員に一言で説明できる
- 仮眠の時間を、休憩と勤務のどちらで扱うか決めた
- 休憩時間を自由に使える状態が守られている
- 仮眠の時間帯、1回の長さ、予約の方法を決めた
- 仮眠中の電話や来客の対応を、誰が代わるか決めた
- 場所の男女の区別、衛生管理、清掃の担当を決めた
- 体調の悪い人が使う休養室と、仮眠の場所の関係を整理した
- 利用を強制しないこと、評価に影響しないことを伝えた
- 試す期間と、見直しの時期を決めた
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ツナグバで、休憩の場所づくりのサービスを比べる
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福利厚生の分野では、会議もできる酸素ボックスを掲載しています。オフィスに設置できる酸素ボックスで、休憩や打ち合わせのスペースとしても使えます。働く環境づくりに力を入れたい企業に向いています。
仮眠や休憩の場所を新しく用意したいものの、部屋を作るのが難しい場合に、選択肢の一つとして比べられます。設置の条件や費用、利用するときの注意点は、資料で確認できます。
こんな課題があれば
- 社員が休憩できる場所がオフィスになく、席で休んでいる
- 働く環境を良くしたいが、何から手をつければよいか分からない
- 少人数の打ち合わせに使える場所が足りていない
掲載サービスでできること
- オフィスに置ける休憩の場所:オフィスの中に設置できる箱型の設備です。社員が休憩する場所の一つとして使えます。
- 打ち合わせのスペースとしても使える:中で少人数の打ち合わせができる大きさのものがあります。使える人数や広さは製品によって違うため、資料で確認してください。
- 働く環境づくりの取り組みとして:休憩の場所を整えることは、働く環境への配慮を社員に示す取り組みの一つになります。健康への効果を約束するものではありません。
資料で確かめたいこと
- 本体の価格、またはレンタル・リースの月額費用
- 設置に必要な広さ、床の強さ、電源の条件
- 保守や点検の内容と費用
- 使うときの注意点や、利用を控えるべき人の条件
- 契約期間と、撤去のときの費用
よくある質問
仮眠制度は法律で義務になっていますか?
仮眠制度そのものを義務とする法令はありません。ただし、休憩時間の与え方、休憩の設備、常時50人以上などの場合の休養室、就業の途中に仮眠の機会がある場合の場所などについては、労働基準法や労働安全衛生規則などに決まりがあります。
仮眠の時間は何分くらいにすればよいですか?
法令で決まった長さはありません。会社としては、業務への影響や場所の数を考えて、1回の長さの上限を決めて運用します。眠りの感じ方には個人差があるため、長さを一律に指示するより、上限だけを決めて使い方は本人に任せるほうが運用しやすくなります。
休憩時間中に仮眠している社員に、電話を取り次いでもよいですか?
休憩時間は自由に利用させる必要があるため、仮眠中の社員に仕事を頼むのは避けます。電話や来客の対応は、仮眠をとる人以外が担当するように決めておきます。
仮眠の場所は、休養室と兼ねてもよいですか?
兼ねることは考えられますが、体調の悪い人がすぐに使えなくなる運用は避けます。予約で埋まっていても、体調の悪い人を優先するルールを決めておきます。
参考資料
- 労働基準法(e-Gov法令検索)(第34条 休憩)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)(第613条 休憩設備、第616条 睡眠及び仮眠の設備、第618条 休養室等)
- 事務所衛生基準規則(e-Gov法令検索)(第19条 休憩の設備、第21条 休養室等)
- 東京労働局「快適職場づくりを進めましょう」
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 厚生労働省「睡眠対策」(令和6年9月18日一部修正)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
- 経済産業省「健康経営」
- 厚生労働省「モデル就業規則について」
