健康経営優良法人の認定を取りたいと考えても、「中小企業はどこから申請するのか」「何を満たせば認定されるのか」「いつまでに何を準備すればよいのか」が分かりにくいと感じる担当者は少なくありません。申請は年に1回で、締め切りを過ぎると受け付けてもらえません。
この記事では、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の申請方法を、最新の健康経営優良法人2027の資料をもとに整理します。申請の流れ、認定要件、申請料、スケジュール、準備の進め方、取り組みを選ぶときの判断の基準まで、順を追って解説します。
健康経営優良法人とは
健康経営優良法人は、経済産業省が進める健康経営の顕彰制度です。経済産業省は、健康経営を次のように説明しています。
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。
出典:経済産業省「健康経営」
健康診断や福利厚生を「費用」としてだけ見るのではなく、従業員の健康を経営の課題として計画的に扱う考え方です。認定制度の狙いについては、同じページで次のように書かれています。
優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。
出典:経済産業省「健康経営」
つまり、認定は「取り組みを外から分かる形にする」ためのしくみです。認定を受けると、認定のロゴマークを使えるようになります(出典:全国健康保険協会京都支部「健康経営優良法人2027ガイドブック(中小規模法人部門)」)。
制度は大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれています。10回目となる健康経営優良法人2026では、全国で大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人が認定されました(出典:全国健康保険協会京都支部「健康経営優良法人2027ガイドブック(中小規模法人部門)」、令和8年3月9日発表時点)。
中小規模法人部門の対象になる会社
どちらの部門で申請するかは、業種と従業員数、資本金で決まります。会社法上の会社などの場合、次のどちらかに当てはまれば中小規模法人部門です(出典:全国健康保険協会京都支部「健康経営優良法人2027ガイドブック(中小規模法人部門)」)。

| 業種 | 従業員数 | 資本金または出資金額 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 1人以上100人以下 | 1億円以下 |
| 小売業 | 1人以上50人以下 | 5,000万円以下 |
| サービス業 | 1人以上100人以下 | 5,000万円以下 |
| 製造業その他 | 1人以上300人以下 | 3億円以下 |
特定非営利活動法人、医療法人、社会福祉法人、社団法人や財団法人などは、従業員数だけで区分されます。自社の法人格がどれに当たるかは、申請の前に資料で確かめておきます。
さらに、特に小規模な事業者には「小規模事業者向け特例」があります。会社法上の会社等では、卸売業・小売業・サービス業で常時使用する従業員数が5人以下、製造業その他で20人以下が対象です(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。特例の対象かどうかは申請書の回答から自動で判定され、認定のロゴマークは通常の中小規模法人部門と同じです。
申請の流れ
中小規模法人部門の申請は、大きく次の順で進みます(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。

- 健康宣言事業に参加する:加入している保険者(協会けんぽや健康保険組合など)が行う健康宣言事業に参加する
- IDを発行する:ポータルサイト「ACTION!健康経営」からID発行サイトに進み、法人番号や法人名、メールアドレスを登録する
- 申請書を入手する:届いた案内に従って申請サイトにアクセスし、Excelの申請書をダウンロードする
- 記入してアップロードする:取り組みの状況を記入し、締め切りまでに申請サイトへアップロードする
- 審査と認定:申請内容をもとに審査され、認定委員会での審議を経て、日本健康会議が認定する
最初の関門は健康宣言事業への参加
協会けんぽや健康保険組合に加入している場合は、加入している保険者が実施している健康宣言事業への参加が必要です。国保組合や共済組合などに加入していて、保険者が健康宣言事業を行っていない場合は、自治体の健康宣言事業への参加や自社独自の健康宣言で代えられるとされています(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。
同じ資料では、健康保険組合に加入していて組合が健康宣言事業を行っていない場合は、健康保険組合連合会の都道府県連合会が運営する健康宣言事業への参加が必須で、自社独自の宣言だけでは不認定になると注意されています。自社がどの保険者に加入しているかによって準備が変わるため、最初に確認しておきます。
過去に申請したことがある場合
過去に申請したことがある法人には、申請サイトのURLとID、パスワードの案内が担当者宛てに届くため、ID発行の手順を飛ばして申請書の入手から進められます。担当者が替わっている会社は、案内のメールが前任者に届いていないかを確認しておきます。
2027の日程と認定申請料
健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の回答・申請期間は、2026年8月17日から2026年10月16日17時まででした(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。資料では、回答の締め切りは一切延長を受け付けないと明記されています。2026年10月の時点で、2027の申請受付はすでに終わっています。これから取り組む会社は、次の回の申請に向けて準備を進めることになります。認定の発表は令和9年3月頃と案内されています(出典:全国健康保険協会京都支部「健康経営優良法人2027ガイドブック(中小規模法人部門)」)。
申請には認定申請料がかかります。中小規模法人部門の認定申請料は、1件あたり15,000円(税込16,500円)で、申請受付の締め切り後に請求書が届く流れです(出典:全国健康保険協会京都支部「健康経営優良法人2027ガイドブック(中小規模法人部門)」)。次の回の日程や申請料は、ポータルサイトで公表される最新の情報を必ず確認してください。
認定要件のポイント
認定要件は、全員が満たす必須の項目と、いくつかの中から選んで満たす項目に分かれています(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。
必須の項目
- 健康宣言の社内外への発信と、経営者自身の健診受診
- 健康づくり担当者の設置
- 求めに応じた、40歳以上の従業員の健診データの提供
- 健康課題に基づいた、健康経営の具体的な推進計画
- 受動喫煙対策に関する取り組み
- 健康経営の取り組みに対する評価・改善
- 法令遵守・リスクマネジメント(定期健診の実施、50人以上の事業場でのストレスチェックの実施、労働基準法や労働安全衛生法の違反で送検されていないことなど)

選んで満たす項目
選択の項目は3つのまとまりに分かれ、それぞれ決まった数以上を満たす必要があります。
| まとまり | 主な評価項目の例 | 中小規模法人部門 | 小規模事業者向け特例 |
|---|---|---|---|
| 従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討 | 健康診断の実施、受診勧奨、50人未満の事業場でのストレスチェック | 2項目以上 | 2項目以上 |
| 健康経営の実践に向けた土台づくり | 教育機会の設定、ワークライフバランス、両立支援、コミュニケーションの促進、女性や高年齢の従業員への配慮 | 2項目以上 | 2項目以上 |
| 従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策 | 保健指導、食生活の改善、運動機会の増進、長時間労働の予防と事後対応、心の健康、感染症予防、喫煙率低下 | 4項目以上 | 2項目以上 |
2027では、長時間労働に関する設問が「予防と事後対応」を問う形に改められ、今年度はどちらかを実施していれば適合、次年度からは両方の実施で適合となると説明されています(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。要件は毎年見直されるため、前の年の申請書をそのまま使うのではなく、改定のポイントを必ず確認します。
ストレスチェックの扱いに注意
ストレスチェックは、50人以上の事業場では労働安全衛生法第66条の10に基づく義務で、認定要件の法令遵守の項目にも含まれます。50人未満の事業場でのストレスチェックは、選択の項目の一つです。なお、労働者数50人未満の事業場にも、令和10年4月1日からストレスチェックが義務化されます(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」)。今のうちに実施の体制を作っておくと、認定の準備と法令への対応を同時に進められます。
申請までの準備の進め方
半年前から逆算する
申請書の記入そのものは、取り組みがそろっていれば大きな負担ではありません。時間がかかるのは、要件を満たす取り組みを実際に始め、記録を残すことです。次の順で準備すると、締め切り前に慌てずに済みます。
- 加入している保険者を確かめ、健康宣言事業に参加する
- 健康づくり担当者を決め、経営者の健診受診と健康宣言の発信を済ませる
- 健診結果などから自社の健康課題を整理し、目標と推進計画を作る
- 計画に沿って選択の項目の取り組みを始め、実施したことが分かる資料を保存する
- 申請期間に入ったら申請書を入手し、最新の要件と照らし合わせて記入する
認定事務局の資料では、申請にあたって保存すべき資料の例が申請書の中のシートに示されており、事務局から提出を求められた場合は1週間以内に提出するよう求めています(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。社内通知、研修の資料、実施の記録など、取り組みを示せるものは日付が分かる形で残しておきます。
アップロードの前に確かめること
申請書のExcelには、回答していない設問や条件に合っていない回答があると、赤字のエラーメッセージが出る場合があります。同じ資料では、アップロードの前にエラーメッセージと認定基準の適合状況の簡易評価を確認するよう求めています。簡易評価は認定を保証するものではなく、回答漏れで不認定になった場合は再審査を行わないとされています(出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請書・認定要件・改定ポイント解説」)。締め切りの直前に記入を始めると、こうした確認の時間がとれません。記入は余裕をもって終え、社内の別の人にも見てもらうと、抜け漏れを防げます。
取り組みを選ぶときの判断の基準
選択の項目は、数を満たすことだけを目的に選ぶと、続かない取り組みになりがちです。次の点で考えると、自社に合ったものを選びやすくなります。
- 健診結果や社員の声から見えている課題に、直接つながっているか
- 一部の人だけでなく、多くの社員が参加できるか
- 担当者が替わっても続けられる手間か
- 実施したことを記録や資料で示せるか
- かかる費用と、社員の利用の見込みが釣り合っているか
たとえば、昼食をコンビニで済ませる社員が多い会社であれば、食生活の改善に向けた取り組みとして、オフィスで食事を購入できる置き型の社食サービスを検討する方法があります。会社が食事の費用を補助する場合は、税務上の扱いにも注意が必要です。国税庁は、役員や使用人に支給する食事について、本人が食事の価額の半分以上を負担し、会社の負担額が1か月あたり7,500円(消費税等を除く)以下であれば給与として課税されないとしています(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2594 食事を支給したとき」)。
費用の考え方
認定にかかる直接の費用は、認定申請料です。それとは別に、取り組みにかかる費用は内容によって大きく変わります。社内の通知や研修、ノー残業デーの設定のように、費用をほとんどかけずに始められる取り組みもあります。外部のサービスを使う場合は、月額の費用、利用する人数、契約期間を確かめ、認定のためだけでなく、認定後も続ける前提で判断します。
申請を急がなくてよいケース
次のような場合は、無理に次の回の申請を目指さず、まず社内の健康管理の基本を整えるほうがよいこともあります。
- 定期健康診断の受診がまだ徹底できていない
- 健康づくりを担当できる人が社内にいない
- 経営者が健康経営に取り組む方針をまだ決めていない
認定は取り組みを外に示すしくみであり、それ自体が目的ではありません。基本ができていない段階で認定だけを急ぐと、担当者の負担が増えるだけになりかねません。
認定を受けたあとに気をつけること
認定は「健康経営優良法人2027」のように年ごとの名称で行われ、認定要件も毎年見直されています。認定を受けた年の取り組みを続け、要件の見直しに合わせて内容を更新していきます。ポータルサイトでは、健康経営の取り組みと利益率や採用との関係を示した調査なども紹介されていますが、効果は会社ごとに違います(出典:ACTION!健康経営「健康経営のメリット」)。認定を採用活動などで伝える場合は、具体的に何に取り組んでいるかを合わせて説明すると、求職者に伝わりやすくなります。
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ツナグバで、健康経営の取り組みに使えるサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
福利厚生の分野では、健康経営の取り組みを考えるときの材料になるサービスを掲載しています。専属の医師に健康の相談ができる予防医療の会員サービス、オフィスに設置できて休憩や打ち合わせのスペースとしても使える酸素ボックス、オフィスで野菜やサラダ、総菜などを購入できる置き型の社食サービスです。
どの取り組みが合うかは、自社の健康課題と社員の働き方によって変わります。認定要件のどの項目に関わるか、続けられる費用かを考えながら、資料を取り寄せて比べてみてください。
専属の医師に相談できる予防医療の会員サービス
主な特徴は次のとおりです。
- 医師に健康の相談ができる:気になる症状や健康診断の結果について、医師に相談できます。病院に行くべきかを考える手がかりになります。
- 予防の視点で健康管理を続けられる:体調を崩してからではなく、日ごろから健康を見直すきっかけになります。相談の方法や頻度は製品によって違うため、資料で確認してください。
- 経営者や社員の福利厚生として使える:会員の範囲を経営者に限るか、社員にも広げるかを選べるものがあります。対象の範囲は製品によって違うため、資料で確認してください。
会議もできる酸素ボックス
主な特徴は次のとおりです。
- オフィスに置ける休憩の場所:オフィスの中に設置できる箱型の設備です。社員が休憩する場所の一つとして使えます。
- 打ち合わせのスペースとしても使える:中で少人数の打ち合わせができる大きさのものがあります。使える人数や広さは製品によって違うため、資料で確認してください。
- 働く環境づくりの取り組みとして:休憩の場所を整えることは、働く環境への配慮を社員に示す取り組みの一つになります。健康への効果を約束するものではありません。
社員に健康的な食事を届ける、置き型の社食サービス
主な特徴は次のとおりです。
- オフィスで食事を購入できる:冷蔵庫などを設置し、野菜やサラダ、総菜を社内で購入できるようにします。外に出ずに食事をとれます。
- 社食の設備を作らずに始められる:調理場や専任の人員を用意せずに導入できる形が一般的です。必要な設置場所や設備は製品によって違うため、資料で確認してください。
- 福利厚生として社内外に伝えられる:食事の支援は、社員が日々の中で利用しやすい福利厚生です。採用の場で職場環境の一つとして伝えることができます。
よくある質問
中小企業が健康経営優良法人の申請をするのに費用はかかりますか?
中小規模法人部門の認定申請料がかかります。健康経営優良法人2027では1件あたり15,000円(税込16,500円)でした。次の回の金額は、ポータルサイトで公表される情報を確認してください。
申請の締め切りを過ぎてしまった場合はどうなりますか?
締め切り後は受け付けられません。2027の資料では、回答の締め切りは一切延長を受け付けないと明記されています。次の回に向けて、健康宣言事業への参加や取り組みの準備を進めておきます。
従業員が数人の会社でも認定を受けられますか?
中小規模法人部門は従業員1人以上が対象です。特に小規模な事業者には、選択の項目の数を少なくした小規模事業者向け特例があります。特例で認定された場合も、ロゴマークは通常の中小規模法人部門と同じです。
認定は一度取れば続きますか?
認定は年ごとの名称で行われ、要件も毎年見直されています。継続して認定を受けたい場合は、ポータルサイトでその年の申請の案内と改定のポイントを確認して申請します。
