広報の必要性は感じていても、専任の担当者を置く余裕がない中小企業は多くあります。社長や総務の社員が片手間で対応し、ホームページやSNSの更新が止まったままになっている、という話もよく聞かれます。

この記事では、広報担当者がいない中小企業が、何から手をつければよいかを整理します。広報の仕事の分け方、兼任・採用・外部委託の選び方、兼任で始める手順、外部に任せるときの契約の注意点、守るべき法令のルールまでまとめました。

広報担当者がいない中小企業で起きやすいこと

広報は、会社の取り組みや考え方を社外や社内に伝え、信頼を積み上げる仕事です。担当者がいないと、次のようなことが起きやすくなります。

  • ホームページの情報が古いまま残り、取引先や求職者に誤解される
  • SNSのアカウントを作ったものの、更新が止まって放置されている
  • 新しい取り組みやサービスを始めても、社外に知られない
  • 取材の依頼や問い合わせに、誰が答えるか決まっていない
  • 社員が自社の方針や他部署の仕事を知らず、一体感が生まれにくい

特に影響が出やすいのが採用です。中小企業白書は、求職者の多くが求職活動でインターネットを使っていることを示したうえで、次のように述べています。

求人サイトや自社ホームページの充実化を進め、求職者へのアプローチを行うことが重要である可能性が示唆される。

出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第2部第3章第1節 人材確保の取組(採用)

白書によると、60歳代以上を除く各年代で、求職活動でインターネットを利用しなかった人は2〜3割程度にとどまっています(出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第2部第3章第1節 人材確保の取組(採用))。一方で、40歳代以上の転職入職者は、広告よりハローワークを経由する割合が高いことも示されています(出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第2部第3章第1節 人材確保の取組(採用))。採用したい年代によって、情報を届ける場所を変える必要があります。

ホームページを開設している企業の割合は、常用雇用者100人以上の企業で93.3%です(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」)。開設しているかどうかより、載っている情報が最新で、求職者や取引先が知りたいことに答えているかで差がつく時代になっています。

まず、広報の仕事を分けて考える

「広報」と一言でいっても、中身はいくつかの仕事に分かれます。全部を一度にやろうとすると続きません。自社に必要なものから選ぶために、まず仕事を分けて考えます。

広報の仕事を、社外広報、ホームページとSNS、採用広報、社内広報、問い合わせと危機対応、効果の確認の6つに分けて示した図
仕事主な内容目安の頻度社内でやりやすいか
社外広報ニュースの発信、プレスリリース、取材対応新しい取り組みがあるとき題材集めは社内、文章や配信は外部に任せることもある
ホームページ・SNS情報の更新、記事や投稿の作成週1回〜月数回題材は社内、作成は外部でも可
採用広報会社や仕事の紹介、社員の声、求人原稿採用の時期に合わせて社員の協力が必要なため、社内が中心
社内広報方針の共有、社内報、表彰や取り組みの紹介月1回〜四半期ごと社内でやりやすい
問い合わせ・危機対応取材や問い合わせの窓口、不祥事や事故の際の発表発生時判断は経営者、窓口は社内で決める

このうち、外部に任せやすいのは文章やデザインの制作、SNSの投稿作成など、手を動かす部分です。逆に、何を伝えるかの判断や、社員への取材、危機のときの発表は、社内が中心になります。

兼任・採用・外部委託のどれを選ぶか

担当者がいない状態を解消する方法は、大きく3つあります。社内の誰かが兼任する、専任の担当者を採用する、外部に任せる、です。組み合わせることもできます。

方法向いている会社注意点
社内の兼任発信する題材はあり、まずは小さく始めたい本業が忙しい時期に止まりやすい
専任の採用発信の量が多く、社外との窓口を常に置きたい採用に時間がかかり、経験者は見つけにくい
外部委託制作やSNS運用の手が足りない、経験者がいない伝える内容の判断と確認は社内に残る
兼任と外部委託の組み合わせ判断は社内で持ち、作業を減らしたい役割分担と確認の流れを先に決める

判断の基準は、次の3つです。

  • 発信の題材を社内で集められるか:集められないなら、まず社内の情報共有の仕組みから作る
  • 毎月どのくらいの作業が発生するか:量が少なければ兼任、多ければ採用や外部委託を考える
  • 社内に経験者がいるか:いなければ、外部の知見を借りながら社内に知識を残す

少人数の会社では、伝える内容の判断を社長や役員が持ち、文章の作成やSNSの投稿は外部や兼任の社員が担う、という分担が現実的なことが多くあります。

兼任で広報を始める手順

専任がいなくても、手順を決めれば少ない時間で続けられます。次の順番で進めます。

兼任で広報を始める手順を、目的を1つに絞る、発信する場所を決める、題材と確認の流れを決める、月に1回振り返るの4つで示した図
  1. 目的を1つに絞る:採用、取引先への信頼づくり、新サービスの認知など、まず何のために発信するかを決める
  2. 発信する場所を決める:ホームページのお知らせ、SNS、求人サイトなど、目的に合う場所を1〜2か所に絞る
  3. 題材を集める仕組みを作る:各部署から月に1つ、出来事や取り組みを共有してもらう
  4. 担当と確認の流れを決める:誰が書き、誰が確認して公開するかを決め、公開前の確認を必ず入れる
  5. 振り返る:問い合わせや応募の数、閲覧数などを月に1回見て、題材や頻度を直す

続けるうえでは、完成度より頻度を優先します。月に1回でも、決まった時期に更新されていれば、会社が動いていることは伝わります。兼任の担当者には、広報に使う時間を業務として認め、ほかの仕事を減らす配慮も必要です。

効果の確かめ方

広報は、売上のようにすぐ数字に表れにくい仕事です。そのため、目的ごとに見る数字を先に決めておきます。

目的見る数字の例
採用採用ページの閲覧数、応募数、面接で「ホームページを見た」と答えた人の数
取引先への信頼づくり問い合わせの数、商談で話題に出た回数
新サービスの認知紹介ページの閲覧数、資料請求の数
社内の一体感社内報の閲覧状況、社員への簡単なアンケート

数字は月に1回、同じ時期に記録します。数か月続けると、どの題材や発信の場所に反応があるかが見えてきます。

発信する題材の見つけ方

担当者がいない会社で広報が止まる一番の理由は、時間よりも「書くことがない」ことです。実際には、社内の日常の中に題材は多くあります。

  • 新しい設備、サービス、取り組みを始めた
  • 資格を取った社員、表彰された社員がいる
  • 地域の行事や学校での授業に協力した
  • 取引先からよく聞かれる質問と、その答え
  • 仕事の一日の流れ、現場の工夫、使っている道具
  • 新しく入った社員の紹介、入社の理由

題材を集めるには、各部署に「今月あったこと」を1つずつ出してもらうのが手軽です。朝礼や月例の会議で一言ずつ話してもらい、担当者がメモするだけでも集まります。

題材には、社外に出してよい情報かどうかの確認が必要です。取引先の名前、顧客の情報、社員の個人的な情報は、本人や相手の了解なしに出さないことを、題材を集める段階で共有しておきます。

外部に任せるときに決めておくこと

制作やSNS運用を外部に任せる場合、依頼の前に決めておくべきことがあります。決めないまま始めると、思っていた内容と違う、権利の扱いがはっきりしない、といったトラブルにつながります。

依頼の範囲と確認の流れ

何を、どのくらいの量、どの頻度で依頼するかを決めます。投稿の題材を誰が出すか、公開前に誰が確認するか、トラブルが起きたときの連絡先も決めておきます。例えば、マーケティング・制作・SNS運用を定額で任せられるサービスのように、社内に担当者がいない企業向けに、マーケティング、制作物の作成、SNS運用などをまとめて依頼できるものもあります。

個人に依頼するときの取引条件の明示

個人で活動するフリーランスに業務を委託する場合は、取引の条件を明示する義務があります。フリーランスと発注事業者の取引に関する法律は、令和6年11月1日に施行されました(出典:公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」)。法律は、次のように定めています。

業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、(中略)特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(中略)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

出典:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」

口頭やチャットの会話だけで依頼を始めず、依頼する内容、金額、支払日を書面やメールで伝えるようにします(出典:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)。法律の対象になるかどうかは相手の働き方によって変わるため、依頼先が個人か会社かを確認しておきます。

制作物の権利の扱い

外部に作ってもらった文章、写真、デザインには著作権があります。文化庁の著作権テキストは、著作者の権利について次のように説明しています。

著作者の権利は、他人が「無断で○○すること」を止めることができる権利であり、(以下略)

出典:文化庁「令和8年度 著作権テキスト」

会社の社員が仕事として作ったものは、要件を満たせば会社が著作者になる場合があります。ただし、その要件には「業務に従事する者」が「職務上」作ることなどが含まれます(出典:文化庁「令和8年度 著作権テキスト」)。外部に依頼した制作物は、これに当たらないことが多いため、納品物を自社でどこまで使えるか、修正や再利用をしてよいかを、契約で決めておきます。

広報で守るべき法令のルール

広報の発信は、会社の表示として扱われます。担当者がいない会社ほど、確認の仕組みがないまま発信してしまいがちです。次のルールは、社内で兼任する場合も外部に任せる場合も共通です。

広報で守るべきルールとして、ステルスマーケティング規制、誇大な表示の禁止、著作権、フリーランスへの依頼、個人情報の取り扱いの5つを示した表

ステルスマーケティングの規制

広告であることを隠した宣伝、いわゆるステルスマーケティングは、令和5年10月1日から景品表示法違反となりました(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)。規制の対象は、商品やサービスを供給する事業者、つまり広告主です(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)。

インフルエンサーや他社に投稿を依頼する場合は、広告であることが分かる表示を入れてもらいます。社員に自社の商品を紹介する投稿を頼む場合も、会社との関係が分かるようにしておくと安心です。

誇大な表示の禁止

景品表示法は、商品やサービスの内容について、実際のものより著しく優良であると示す表示などを禁じています(出典:e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」)。「業界初」「満足度No.1」のような表現を使うときは、根拠となる資料があるかを公開前に確かめます。

個人情報の取り扱い

資料請求や問い合わせのフォームで連絡先を集める場合、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知するか公表する必要があります(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。ホームページに個人情報の取り扱いを掲載し、集めた情報の使い道と一致しているかを確認します。社員の写真や名前を載せるときも、本人の了解を得てから公開します。

費用の考え方と、外部委託が向いていないケース

費用の考え方

外部委託の費用は、依頼する範囲、制作物の量、SNSの運用の有無、契約期間によって変わります。月ごとの定額で依頼できるもの、制作物ごとに費用がかかるものなど、料金の形もさまざまです。

比べるときは、次の点をそろえて見積もりを取ります。

  • 毎月の作業量(記事、投稿、デザインの数)
  • 題材の取材や原稿の作成まで含むか、社内で用意した原稿を整えるだけか
  • 修正の回数、公開作業、効果の報告が含まれるか
  • 契約期間と、途中でやめる場合の条件

あわせて、兼任の社員が広報に使っている時間も費用として数えると、外部に任せるかどうかを判断しやすくなります。

外部委託が向いていないケース

次のような場合は、外部に任せる前に社内の準備を進めたほうがよいことがあります。

  • 発信の目的が決まっておらず、何を伝えたいかを社内で説明できない
  • 公開前の確認を担う人が社内にいない
  • 発信する題材が社内からまったく出てこない

外部の担当者は、社内の出来事を自分で見つけることはできません。題材を出す人と確認する人を社内に置くことが、外部に任せる場合でも前提になります。

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ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

営業支援の分野では、マーケティング、制作物の作成、SNS運用などを定額で依頼できる、社内に担当者がいない企業向けの業務代行サービスを掲載しています。

発信の目的、依頼したい作業の範囲と量、社内で確認を担う人を整理したうえで、資料で依頼できる内容を確かめてください。

こんな課題があれば

  • マーケティングの担当者がおらず、社長が片手間で対応している
  • チラシやホームページの更新を、どこに頼めばよいか分からない
  • SNSを始めたものの、投稿が続かず止まっている

掲載サービスでできること

  • 幅広い業務を一つの窓口に頼める:マーケティングの相談、制作物の作成、SNS運用などをまとめて依頼できます。複数の外注先とやり取りする手間を減らせます。
  • 定額で費用の見通しを立てやすい:毎月の費用が決まっているため、予算を組みやすくなります。定額に含まれる作業の範囲は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 社内に担当者がいなくても進められる:外部の担当者が作業を進め、社内では確認や判断を中心に関わります。社内の負担を抑えながら取り組めます。

資料で確かめたいこと

  • 定額に含まれる作業の範囲と、範囲外の作業の費用
  • 依頼できる量の上限や、修正の回数
  • 担当者とのやり取りの方法と、連絡の頻度
  • 作った制作物やアカウントの権利が誰のものになるか
  • 契約期間と、途中で解約するときの条件

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よくある質問

広報担当者がいない会社は、まず何から始めればよいですか?

発信の目的を1つに絞り、発信する場所を1〜2か所に決めるところから始めます。採用が課題なら、ホームページの採用情報や求人原稿の見直しから手をつけると、効果を確かめやすくなります。

広報は社長が兼任してもよいですか?

問題ありません。少人数の会社では、伝える内容の判断を社長が持つほうが、発信がぶれにくいこともあります。ただし、作業まで抱えると止まりやすいため、文章の作成や投稿は社員や外部と分担します。

SNSの運用を外部に任せても、炎上しないか心配です。

外部に任せる場合でも、公開前に社内で確認する流れを入れておきます。投稿してはいけない内容、問い合わせやコメントへの対応方法、問題が起きたときの連絡先を、依頼の前に取り決めておくと安心です。

広報と広告は、何が違いますか?

広告は、費用を払って枠を買い、伝えたい内容をそのまま載せる方法です。広報は、会社の取り組みを伝え、報道や口コミ、ホームページなどを通じて理解してもらう活動を指すことが多く、掲載されるかどうかや内容は相手の判断に委ねられます。小さな会社では、両方を組み合わせて使うのが一般的です。

外部に作ってもらった写真やデザインは、自由に使えますか?

契約の内容によります。著作権がどちらにあるか、自社でどこまで使えるか、修正や再利用をしてよいかを、依頼の前に契約で決めておいてください。

参考資料