新しいお客さまは来るのに、二度目の来店につながらない。チラシや広告を出し続けないと、売上が安定しない。店舗を運営していると、こうした悩みに行き当たります。

リピーターが増えると、広告に頼らなくても来店が見込めるようになり、売上の見通しが立てやすくなります。とはいえ、割引やポイントを配るだけでは、お客さまが価格だけで店を選ぶようになり、利益を削ることにもなりかねません。

この記事では、店舗のリピーターを増やす方法を、現状の数字のつかみ方から、初回の体験、再来店のきっかけ、つながりの保ち方、口コミの活用まで順に整理します。

特典やメール配信、口コミの依頼で守るべきルールと、リピーター施策が向いていないケースもまとめました。自店の取り組みを見直すときの確認に使ってください。

リピーターを増やす前に|新規の集客だけに頼らない理由

店舗の売上は、来店するお客さまの数と、1回あたりの購入額、来店の回数で決まります。新規のお客さまを増やすことも大切ですが、一度来たお客さまにもう一度来てもらうことも、売上を支える大きな柱です。

新規のお客さまを集めるには、広告やチラシ、地図検索での表示の対策など、継続的な費用と手間がかかります。一方で、一度来たお客さまは、店の場所も雰囲気も知っています。次の来店のきっかけさえあれば、足を運んでもらえる可能性があります。

リピーターを増やす取り組みは、新規の集客の代わりではありません。新規のお客さまを、次の来店につなげる仕組みをつくることです。新規の集客とリピーターの施策を、両方そろえて考えます。

まず現状を数字でつかむ

施策を始める前に、いまの状態を数字で確かめます。数字がないと、施策の効果があったのかどうかが分かりません。

見る数字意味調べ方の例
再来店の割合一定の期間に来たお客さまのうち、2回以上来た人の割合会員の記録、予約の記録、レジの顧客の記録
来店の間隔前回の来店から次の来店までの日数予約の記録、会員の来店の履歴
離れたお客さましばらく来店がないお客さまの数最後の来店から一定の日数が過ぎた会員の数
1回あたりの購入額お客さま1人の1回の支払いの額売上を来店の人数で割る
来店のきっかけ何を見て来たか、なぜまた来たか会計時の聞き取り、アンケート

すべての数字を最初からそろえる必要はありません。会員の仕組みや予約の記録がない店舗では、まず「初めてですか」と聞いて記録するだけでも、再来店の割合の見当がつきます。

業種によって、来店の間隔は大きく違います。美容室や整体院のように数週間から数か月おきに来る業種と、飲食店や小売店のように週に何度も来る可能性がある業種とでは、施策の打ち方も変わります。自店のお客さまの来店の間隔を知ることが、施策を考える出発点です。

リピーターを増やす方法

リピーターを増やす取り組みは、大きく4つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。

店舗のリピーターを増やす流れを、初回の体験を整える、再来店のきっかけをつくる、つながりを保つ、声を聞いて直すの4段階で示した図

初回の体験を整える

お客さまが二度目に来るかどうかは、初回の体験で大きく左右されます。接客、待ち時間、店内の清潔さ、商品やサービスの質など、基本の部分に不満があれば、どんな特典を用意しても再来店にはつながりにくくなります。

初回のお客さまに、店のこだわりや、次に来たときに楽しめることを伝えるのも効果的です。「また来たい理由」を一つ持ち帰ってもらうことを意識します。

再来店のきっかけをつくる

満足したお客さまでも、きっかけがなければ次の来店を忘れてしまいます。帰る前に、次の来店につながる案内をしておきます。

  • 次回の予約を、その場で受け付ける
  • 会員登録やLINEの友だち登録を案内する
  • 季節の商品や次回のおすすめを伝える
  • 次の来店の目安の時期を伝える

特典を用意する場合は、値引きの大きさよりも、また来る理由になるかどうかを考えます。値引きだけを理由に来たお客さまは、もっと安い店があればそちらへ移ってしまうことがあります。

つながりを保つ

来店の間隔が空くお客さまには、店からの連絡で思い出してもらいます。LINE、メール、ダイレクトメール(DM)など、お客さまの年代や好みに合った手段を選びます。

連絡の内容は、割引の案内ばかりにならないようにします。新しい商品、季節の使い方、お手入れの方法など、受け取って役に立つ情報を混ぜると、連絡を受け取り続けてもらいやすくなります。送る回数が多すぎると、登録を外されるきっかけになるため、頻度にも気を配ります。

声を聞いて直す

お客さまの声は、リピーターを増やすためのいちばんの手がかりです。口コミ、アンケート、会計時の会話などから、満足している点と不満な点を集めます。

不満の声は、改善の材料になります。指摘された点を直し、直したことを伝えると、お客さまとの信頼の関係を築きやすくなります。

業種ごとの工夫

リピーターを増やす基本の考え方は同じでも、業種によって効きやすい工夫は違います。来店の間隔と、お客さまが店を選ぶ理由に合わせて考えます。

飲食店

飲食店は、近くに競合の店が多く、気分で店を選ばれやすい業種です。季節の限定メニューや、次回に試してほしい料理の案内など、また来る楽しみを伝える工夫が向いています。常連のお客さまの好みを覚えておき、次の来店のときに声をかけることも、店を選ぶ理由になります。

美容室・サロン・整体院

数週間から数か月おきに来店する業種では、次の来店の時期を逃さないことが大切です。施術の後に、次の来店の目安の時期を伝え、その場で予約を受け付けます。来店の間隔が空いたお客さまには、季節の悩みに合わせた案内を送るなど、思い出してもらう連絡が効果的です。

小売店

小売店では、新しい商品の入荷や、使い方の提案がまた来るきっかけになります。購入した商品の使い方やお手入れの方法を伝えると、お客さまの満足が高まり、次の買い物でも店を思い出してもらいやすくなります。

情報発信と口コミの活用

お客さまとのつながりを保つ手段として、SNSは欠かせないものになっています。総務省の調査では、SNSの利用は幅広い年代に広がっていることが示されています。

総務省の令和7年通信利用動向調査による、インターネット利用者に占める年齢階層別のSNS利用者の割合を示した棒グラフ

令和7年の調査では、インターネット利用者のうちSNSの利用者の割合は82.3%とされています(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。年齢階層別では、6〜12歳が42.8%、13〜19歳が92.9%、20〜29歳が93.1%、30〜39歳が90.6%、40〜49歳が91.3%、50〜59歳が86.4%、60〜69歳が78.3%、70〜79歳が67.9%、80歳以上が54.3%です(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。同じ調査は、年齢による違いについて次のように述べています。

年齢階層別にみると、50歳以上は、年齢階層が上がるごとに利用割合が下がっていく傾向にあるが、80歳以上でも5割を上回っている。

出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」

同じ調査では、SNSの利用目的として「従来からの知人とのコミュニケーションのため」が86.6%と最も高く、次いで「知りたいことについて情報を探すため」が66.0%とされています(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。お客さまが店の情報を探すときにも、SNSが使われていると考えられます。ただし、年齢が高いお客さまが多い店舗では、SNSだけに頼らず、DMや店頭での案内も組み合わせます。

口コミは、新しいお客さまが店を選ぶときの判断の材料になるだけでなく、既存のお客さまの声を知る手がかりにもなります。口コミには、良い評価にも悪い評価にも、ていねいに返信します。返信を続けることで、お客さまの声を大切にしている店だと伝わります。

口コミの管理や地図検索での表示の対策を、ほかの店舗の運営の作業とまとめて効率化したい場合は、ツナグバ掲載の店舗の口コミ管理と集客をまとめて効率化するツールも比較の候補になります。

特典・口コミ・メール配信で守るべきルール

リピーターを増やす施策には、法律のルールが関わるものがあります。知らずに違反しないよう、主なルールを確かめておきます。

消費者庁の景品規制の概要にもとづく、総付景品と一般懸賞、共同懸賞の景品類の限度額をまとめた表

来店や購入の特典と景品表示法

来店や購入のお礼に品物を渡す場合、景品表示法の景品の規制が関わることがあります。消費者庁は、景品表示法について、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽る表示を規制するとともに、景品類の最高額を制限することなどで、消費者がより良い商品やサービスを選べる環境を守るものと説明しています(出典:消費者庁「景品表示法」)。景品規制の目的は、次のように説明されています。

このため、景品表示法では、景品類の最高額、総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止しています。

出典:消費者庁「景品規制の概要」

たとえば、購入したお客さま全員に渡す景品(総付景品)の最高額は、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2とされています(出典:消費者庁「景品規制の概要」)。抽選で当たる景品(一般懸賞)は、取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円が最高額で、総額は売上予定総額の2%までです(出典:消費者庁「景品規制の概要」)。複数の事業者が共同で行う懸賞(共同懸賞)は、取引価額にかかわらず最高額が30万円、総額は売上予定総額の3%までとされています(出典:消費者庁「景品規制の概要」)。ポイントや値引きの扱いは条件で変わることがあるため、特典を設計するときは消費者庁の資料で確かめます。

口コミの依頼とステルスマーケティング

お客さまに口コミの投稿をお願いすること自体は、よくある取り組みです。ただし、店が関わった広告であるのに、そのことが分からない形で発信することには注意が必要です。消費者庁は、令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となると案内しています(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)。規制されるのは、広告であって、一般消費者が広告であることを分からないものとされています(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)。

特典と引き換えに良い口コミを書いてもらう、店の関係者がお客さまのふりをして投稿する、といったやり方は避けます。口コミは、お客さまが自由に書けるようにお願いするのが基本です。

メール配信と特定電子メール法

メールで店の案内を送る場合は、特定電子メール法のルールが関わります。総務省は、次のように案内しています。

広告・宣伝メールを送信する場合、当該メールは原則、特定電子メール法の規制対象となります。

出典:総務省「迷惑メール対策」

広告や宣伝のメールは、原則として、あらかじめ同意した相手にだけ送ることができます(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。同意を得ていることを示す記録を残すこと、送信者の氏名や名称、受信を拒否するための連絡先を表示することも求められています(出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。詳しい内容は、総務省の「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」で確かめられます(出典:総務省「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」)。

会員の登録などでお客さまの情報を集めるときは、個人情報保護法のルールにも従います(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。何のために情報を使うのかを示し、目的の範囲で使うこと、情報を安全に管理することが基本です。

施策の選び方と費用の考え方

リピーターを増やす施策は数多くあります。すべてを一度に始める必要はありません。次の点を確かめながら、自店に合うものから選びます。

  • 自店のお客さまの来店の間隔に合っているか
  • お客さまの年代に合った連絡の手段か
  • スタッフが無理なく続けられるか
  • 効果を数字で確かめられるか
  • 法律のルールを守った形で運用できるか

費用は、使う手段と規模で大きく変わります。店頭での声かけや次回の予約の受付は、費用をかけずに始められます。DMは、印刷と郵送の費用が送る数に応じてかかります。会員管理や口コミ管理のツールを使う場合は、月ごとの利用料がかかることが多く、店舗の数や機能で料金が変わります。

施策の効果は、再来店の割合や来店の間隔の変化で確かめます。施策を始める前の数字と比べ、効果が見えないものは続けるかどうかを見直します。

SNSの運用やチラシの作成など、手が回らない作業は、外部に任せる方法もあります。任せる場合も、何を目的に、どの数字を見て判断するのかは、店側で決めておきます。

リピーター施策が向いていないケース

リピーターを増やす取り組みは、どの店舗にも同じように効くわけではありません。次のような場合は、ほかの課題を先に解決したほうがよいことがあります。

  • 観光地の店舗など、お客さまの多くが一度きりの来店になる
  • 接客や商品の質に、不満の声が多く寄せられている
  • 人手が足りず、いまの来店客への対応で手一杯になっている
  • そもそも新規のお客さまが少なく、再来店を促す相手が少ない

特に、不満の声が多い場合は、特典や連絡を増やす前に、初回の体験を見直すことが先です。体験に満足していないお客さまに連絡を増やしても、再来店にはつながりにくくなります。

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よくある質問

リピーターを増やすには、まず何から始めればよいですか?

まず、いまの再来店の割合や来店の間隔を確かめます。そのうえで、初回の体験に不満の声がないかを確認し、帰る前に次の来店のきっかけを案内することから始めます。費用をかけずに始められる取り組みから試すのが基本です。

割引のクーポンを配ればリピーターは増えますか?

一時的に来店が増えることはあります。ただし、割引だけを理由に来たお客さまは、もっと安い店があれば移ってしまうことがあります。割引は、また来たい理由をつくる取り組みと組み合わせて使います。景品の提供に当たる場合は、景品表示法の上限も確かめてください。

口コミを書いてもらうお願いをしてもよいですか?

お客さまに自由に書いてもらうお願いは、よくある取り組みです。ただし、特典と引き換えに良い評価を書いてもらう、関係者がお客さまのふりをして投稿する、といったやり方は避けてください。広告であることが分からない形の発信は、景品表示法のステルスマーケティングの規制の対象になります。

お客さまにメールで案内を送るときの注意点は何ですか?

広告や宣伝のメールは、原則として、あらかじめ同意した相手にだけ送ることができます。同意の記録を残し、送信者の名称や受信を拒否するための連絡先を表示します。詳しくは、総務省の資料で確かめてください。

リピーターの施策は、どのくらいで効果が分かりますか?

お客さまの来店の間隔によって変わります。月に1回ほど来る業種なら、数か月は続けて、再来店の割合や来店の間隔の変化を確かめます。短い期間で判断せず、始める前の数字と同じ方法で比べることが大切です。

参考資料