求人票や求人広告を作るとき、「この書き方は問題ないか」と迷う場面は少なくありません。「男性歓迎」「30歳まで」のように、以前は見かけた表現でも、いまは法律で認められないものがあります。

求人票のNG表現は、主に3つの法律で決まっています。性別は男女雇用機会均等法、年齢は労働施策総合推進法、労働条件の表示は職業安定法です。違反すると、ハローワークで求人を受理してもらえなかったり、行政から指導を受けたりするおそれがあります。

この記事では、求人票で使えない表現を分野ごとに整理し、言い換えの例を示します。年齢制限が認められる例外、虚偽や誤解を生む表示、固定残業代の書き方、掲載前のチェックリストもまとめました。

求人原稿の魅力的な書き方ではなく、「書いてはいけないこと」を確かめるための記事です。掲載前の最終確認に使ってください。

求人票のNG表現を決めている3つの法律

求人票のNG表現は、思いつきで決まっているわけではありません。どの法律が何を禁じているかを先に押さえると、迷ったときに判断しやすくなります。

分野主な法律求人票で問題になること
性別男女雇用機会均等法一方の性別に限る、優遇する、条件を変える表現
年齢労働施策総合推進法例外に当たらない年齢制限、年齢での選別
労働条件の表示職業安定法虚偽の表示、誤解を生じさせる表示、明示事項の漏れ
選考の考え方(厚生労働省の公正な採用選考の考え方)適性・能力と関係のない事項での選別

このほか、新卒者を募集するときは若者雇用促進法、上限年齢を設ける場合は高年齢者雇用安定法も関係します。いずれも、求人を出すのが中小企業でも対象になります。

自社の求人票を見直すときは、まず「性別」「年齢」「労働条件の表示」の3つの観点で読み直すと、漏れを減らせます。

性別に関するNG表現と言い換え例

最初に確認したいのが性別です。男女雇用機会均等法は、募集と採用について次のように定めています。

事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

出典:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」第5条

この条文は「均等な機会を与える」ことを求めています。そのため、男性だけ、女性だけを募集することはもちろん、一方の性別を優遇する書き方も問題になります。

求人票の性別に関するNG表現と、性別を含まない言い換えの例を並べた図

職種名の書き方

厚生労働省は、男女のいずれかを表す職種名を募集で使う例として、「ウエイター」「○○レディ」などを挙げています(出典:厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」)。

職種名は「ホールスタッフ」「販売スタッフ」「営業職」のように、性別を含まない名称に言い換えます。社内で慣れた呼び方があっても、求人票では性別を連想させない名称にそろえると安全です。

「男性歓迎」「女性向き」などの表現

同じ資料では、「男性歓迎」「女性向きの職種」といった表現も、男女のいずれかを優遇する例として示されています(出典:厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」)。

「力仕事が多いので男性向き」と書きたくなる場合は、性別ではなく仕事の内容を書きます。たとえば「10kg程度の荷物を運ぶ作業が1日に数回あります」のように、実際の作業を具体的に示します。

女性だけに付ける条件

女性に対してのみ、未婚であること、子どもがいないこと、自宅から通勤することなどを条件にすることも、男女で異なる条件として挙げられています(出典:厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」)。

求人票に直接書いていなくても、面接で女性にだけ結婚の予定を聞くといった運用は同じ問題を生みます。求人票と面接の質問はセットで見直すことが大切です。

身長・体重・転勤などの要件

性別を書いていなくても、結果として一方の性別が不利になる要件には注意が必要です。厚生労働省は、業務に必要がないのに一定の身長・体重・体力を要件にすることや、全国転勤に応じられることを要件にすることを挙げています(出典:厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」)。

こうした要件を入れるときは、「その業務に本当に必要か」を説明できるかが分かれ目です。説明できない場合は外します。

性別を限定できる例外

例外もあります。芸術・芸能の分野で表現の真実性などの要請がある職務や、守衛・警備員などのうち防犯上の要請から男性に従事させる必要がある職務です。また、男女の格差を解消するために女性を対象とする取組(ポジティブ・アクション)は、法違反にはならないとされています(出典:厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」)。

ただし、例外に当たるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。迷う場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確認してから掲載すると安心です。

年齢に関するNG表現と、認められる例外

次に年齢です。労働施策総合推進法は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを定めています。

事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第9条

条文は少し読みにくいですが、実務では「年齢制限は原則として禁止。省令が定める例外に当たる場合だけ認められる」と理解しておけば足ります。厚生労働省も、募集・採用で年齢を理由とした制限を設けることを禁止していると説明しています(出典:厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」)。

「年齢不問」と書けば済むわけではない

求人票に「年齢不問」と書いても、応募者を年齢で断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に不採用にしたりすれば、年齢制限をしているのと同じです。厚生労働省のパンフレットも、年齢を理由に採否を決めることはできないとしています(出典:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」)。

「若手」「20代が活躍中」のように、特定の年齢層を求めていると受け取れる書き方にも注意が必要です。職場の年齢構成を伝えたい場合は、事実として「社員の平均年齢」を示すなど、応募を年齢で絞る意図が出ない書き方にします。

年齢制限が認められる例外

例外は省令で6つに整理されています。主なものは次の表のとおりです(出典:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」)。

募集・採用で年齢制限が認められる6つの例外事由の内容を一覧にした表
例外内容の要点
1号定年年齢を上限に、期間の定めのない労働契約で募集する
2号労働基準法など法令で年齢制限がある業務
3号イ長期勤続によるキャリア形成のため、若年者等を期間の定めのない労働契約で募集する
3号ロ技能・ノウハウの継承のため、労働者数が相当程度少ない年齢層に限り、期間の定めのない労働契約で募集する
3号ハ芸術・芸能の分野で表現の真実性などの要請がある
3号ニ60歳以上の高年齢者など、国の施策の対象者に限って募集する

よく使われる3号イでも、条件があります。期間の定めのない労働契約であること、職務経験を問わないことなどです。同じパンフレットでは、契約期間1年の有期契約で「30歳未満」とする例や、「○○の経験者」を条件にしながら年齢を限る例は認められないとされています(出典:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」)。

上限年齢を設けるときの理由の提示

例外に当たる場合でも、65歳未満の上限年齢を定めるときは、その理由を求職者に示すことが求められます。パンフレットでは、高年齢者雇用安定法第20条第1項にもとづき、書面や電子媒体で理由を示す必要があると説明しています(出典:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」)。

求人票では「35歳未満(長期勤続によるキャリア形成のため。高卒以上・職務経験不問)」のように、年齢と理由、条件をセットで書くのが基本です。

労働条件の書き方で起きるNG|虚偽・誤解を生む表示

性別や年齢の表現に問題がなくても、労働条件の書き方でつまずく求人は少なくありません。職業安定法は、広告などで募集の情報を出すときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。あわせて、募集の情報を正確かつ最新の内容に保つことも求めています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の4)。

「虚偽の表示」とは何かについて、厚生労働省の資料は職業安定法の運用の考え方を次のように紹介しています。

虚偽の表示とは、事実と異ならせた表示のことをいい、募集の内容と実際の労働条件を意図的に異ならせた場合や、全く根拠なく採用実績が高い旨を表示する場合等には、虚偽の表示に該当すること。

出典:厚生労働省「参考資料集(募集情報の的確表示など)」

意図的にうそを書くケースだけが問題になるわけではありません。古い情報を放置して、結果として実態と違う表示になっている場合も、「正確かつ最新の内容に保つ」という義務の観点から見直しが必要です。

誤解を生みやすい表示の例

厚生労働省のリーフレットでは、虚偽や誤解を生じさせる表示の例として、「正社員」とうたいながら実際はアルバイト・パートの求人であることや、実際より高い賃金を掲載していることなどが挙げられています(出典:厚生労働省「募集情報等提供事業者の皆さまへ」)。

同じく、すでに廃止した手当を募集時に支給すると書いていた事例や、モデルケースにすぎない金額を最低保障のように見せた事例も紹介されています(出典:厚生労働省「参考資料集(募集情報の的確表示など)」)。

求人票でよく見かける「月給30万円以上可」「年収例600万円」のような表現は、どの条件でその金額になるかを書かないと誤解を招きます。「入社3年目・主任・残業月20時間の場合」のように、前提をそろえて示します。

固定残業代の書き方

固定残業代(みなし残業代)を賃金に含める場合は、書き方が決まっています。厚生労働省は、次の3つを明示するよう求めています(出典:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」)。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
  3. 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

「月給28万円(固定残業代含む)」だけでは、基本給がいくらで、何時間分の残業代が入っているのかが分かりません。3つの項目を分けて書くことで、入社後のトラブルも防げます。

明示が必要な労働条件

求人で示す労働条件には、法令で明示が必要な事項があります。職業安定法施行規則は、業務の内容とその変更の範囲、就業の場所とその変更の範囲、労働時間、賃金、社会保険の適用、受動喫煙を防止するための措置などを挙げています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」第4条の2)。

業務や就業場所の「変更の範囲」は、令和6年4月から募集時に明示すべき事項に加わりました(出典:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」)。転勤や配置転換の可能性がある会社は、「会社の定める業務」「会社の定める営業所」のように範囲を書いておく必要があります。

応募者の適性と関係のない条件もNG

法律の条文に直接書かれていなくても、応募者の適性や能力と関係のない事項で選別する書き方は避けるべきです。厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力に基づいた基準で行うことの2点を示しています(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。

同じページでは、配慮すべき事項として、本籍・出生地、家族に関すること、住宅状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、購読新聞・愛読書などを挙げています。これらを求人票の応募条件にしたり、応募書類で書かせたりしないようにします。

求人票で見落としやすい表現

  • 「地元出身の方」「○○市在住の方に限る」:出身地や住所で選別していると受け取られます。通勤手段や勤務時間を具体的に書く方が適切です
  • 「健康な方」「体力に自信のある方」:何が必要かが分かりません。作業内容を具体的に書きます
  • 「明るく元気な方」:人柄の表現は自由ですが、それを選考基準にするなら、仕事に必要な行動として説明できるかを確認します
  • 「家族の同意が得られる方」:家族に関する事項は、本人の適性と関係がありません
  • 「主婦(主夫)歓迎」「学生歓迎」:性別を限定していなければ直ちに禁止ではありませんが、ほかの人が応募しにくくならないかを確認します

ここに挙げたものは、すべてが一律に違法になるわけではありません。ただ、「この条件は仕事に必要か」を説明できないものは、外すか具体的な仕事の内容に置き換えるのが基本です。

求人票を出す前のチェックリスト

最後に、求人票を掲載する前に確認したい項目をまとめます。社内で原稿を作った人とは別の人が読むと、見落としに気づきやすくなります。

求人票を掲載する前に確認したい性別・年齢・労働条件の表示に関するチェック項目の一覧
  • 職種名に性別を表す言葉が入っていない
  • 「男性歓迎」「女性向き」など、一方の性を優遇する表現がない
  • 年齢制限がある場合、例外の号と理由、条件を書いている
  • 「若手」「20代中心」など、年齢で応募を絞る表現がない
  • 雇用形態、賃金、勤務時間が実態と一致している
  • 年収例や月給例に、前提の条件を書いている
  • 固定残業代がある場合、3つの項目を分けて書いている
  • 業務と就業場所の変更の範囲を書いている
  • 出身地、家族、思想・信条に関わる条件がない
  • 掲載後に条件が変わったら、すぐに原稿を直す担当を決めている

判断に迷ったときの基準

迷ったときは、「その条件がないと仕事ができないか」「その表現で応募をためらう人がいないか」の2つを問い直します。どちらかに引っかかる場合は、性別や年齢ではなく、仕事の内容や必要な資格で書き直します。

ハローワークに求人を出す場合は、受理の段階で表現を確認してもらえます。民間の求人媒体に出す場合も、媒体側の審査がありますが、最終的な責任は募集する会社にあります。

自社でできること、外部に頼むこと

NG表現の確認そのものは、このチェックリストを使えば社内でもできます。費用をかけて外注しなくても、原稿を作った人と別の人が読み合わせるだけで防げるミスは多くあります。

一方で、表現を直しても応募が集まらない場合は、原稿の中身や媒体の使い方を見直す段階かもしれません。たとえば、求人媒体の運用代行による採用支援のように、広告費を増やすのではなく運用の見直しで応募数を増やすサービスもあります。高校生の新卒採用であれば、学校やハローワークを通じた独自の手順があるため、その流れに詳しい支援を使う方法もあります。

外部に頼む必要がないのは、応募は集まっていて表現の確認だけしたい場合です。その場合は、労働局やハローワークの窓口に相談する方が早く確実です。

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よくある質問

「男女不問」と書けば、職種名はそのままでもよいですか?

「ウエイター(男女不問)」のように書く方法もありますが、性別を含まない職種名に言い換える方が誤解を生みません。「ホールスタッフ」など、仕事の内容が分かる名称にするのがおすすめです。

「未経験歓迎」は年齢制限に当たりますか?

「未経験歓迎」は経験の有無についての表現で、それだけで年齢制限にはなりません。ただし、「未経験歓迎・20代活躍中」のように年齢層を強調すると、年齢で応募を絞っていると受け取られることがあります。

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