受注の内容を、販売管理のシステムと会計ソフトの両方に入力している。紙の申請書を見ながら、同じ内容を表計算ソフトに打ち直している。こうした「二重入力」は、多くの会社で日常の仕事に溶け込んでいます。

一つひとつは数分の作業でも、毎日、何人もが繰り返すと、大きな時間になります。打ち間違いや入力漏れが起きると、後から確認や修正の手間も増えます。

この記事では、二重入力が起きる原因と、それが生む問題を整理したうえで、解消する6つの方法と進め方を紹介します。方法ごとの向き不向きや、無理に解消しなくてよいケースもまとめました。

二重入力とは|同じ情報を複数の場所に入力すること

二重入力とは、同じ情報を、複数のシステムや書類に繰り返し入力することです。2回とは限らず、3回、4回と同じ内容を打ち込んでいることもあります。

よくある場面入力している場所の例
受注から請求まで受注の台帳、販売管理、請求書、会計ソフト
顧客の情報名刺の管理、顧客管理の表、請求先の一覧
勤怠と給与タイムカードの集計、勤怠の表、給与計算のソフト
社内の申請紙の申請書、承認の記録、経費の一覧
商品の情報商品の一覧、ネットショップの管理画面、在庫の表

どの場面にも共通しているのは、情報の「元」が1つなのに、それを使う場所が複数あり、場所と場所がつながっていないことです。

二重入力が起きる主な原因

二重入力は、誰かが怠けているから起きるわけではありません。仕組みの側に原因があることがほとんどです。

システムが部署ごとに入っている

営業は顧客管理、経理は会計ソフト、総務は勤怠のシステムと、部署ごとに必要なものを入れていくと、システム同士がつながらないまま増えていきます。それぞれは便利でも、部署をまたぐ情報は人が運ぶことになります。

紙や口頭の業務が残っている

申請や報告が紙で回っていると、どこかで誰かがその内容をデータに打ち直す必要があります。中小企業庁の中小企業白書では、デジタル化の取組の段階を4つに分けており、最も初期の段階を次のように定義しています。

紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態

出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」

同じ白書では、この段階1と回答する事業者の割合は前回の調査から大きく減ったとしています。ただし、調査の対象が異なるため単純には比べられないとの注意書きもあります(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。デジタルのツールを入れても、紙とデータが混ざっている間は、打ち直しが残りやすくなります。

取引先ごとに書式が違う

注文書や請求書がPDFや紙で届くと、内容を読み取って自社のシステムに入力する必要があります。取引先が多いほど書式もばらばらになり、入力の手間が増えます。

入力のルールが決まっていない

どのシステムを正とするか、誰がいつ入力するかが決まっていないと、念のために複数の場所へ入力する習慣が生まれます。結果として、同じ情報が少しずつ違う形で、あちこちに残ります。

二重入力が生む4つの問題

二重入力の問題は、時間がかかることだけではありません。

  • 時間がかかる:同じ作業を何度も行うため、本来の仕事に使える時間が減ります。
  • ミスが増える:打ち間違いや入力漏れの機会が、入力の回数だけ増えます。
  • どれが正しいか分からなくなる:場所ごとに内容が少しずつ違うと、確認に時間がかかります。
  • 人に頼る:特定の人しか手順を知らないと、休んだときや辞めたときに仕事が止まります。

特に3つ目は見落とされがちです。顧客の住所や担当者が、顧客管理の表と請求先の一覧で違っていると、どちらを使うべきかを毎回確かめることになります。

手間を数字でつかむ

二重入力の手間は、数字にすると社内で共有しやすくなります。たとえば、1件の打ち直しに3分かかる作業を、1日に20件、月に20日行っている場合、3分×20件×20日で、月に1,200分、つまり20時間になります。これはあくまで計算の例ですが、同じ計算を作業ごとに行うと、どこから手をつけるべきかの判断材料になります。

時間だけでなく、打ち間違いを直すのにかかった時間や、確認のための問い合わせの回数も記録しておくと、解消した後に効果を比べられます。

二重入力を解消する6つの方法

二重入力を解消する方法は、大きく6つに分けられます。かかる手間と費用、向いている場面がそれぞれ違います。

二重入力を解消する6つの方法として、入口を1つに決める、入口をデジタルにする、システム同士をつなぐ、RPAで自動化する、システムをまとめる、取引先とデータで交換するを示した図

方法1:入力の入口を1つに決める

まず取り組みやすいのが、情報ごとに「最初に入力する場所」を1つに決めることです。顧客の情報なら顧客管理、商品の情報なら商品の一覧、というように、正とする場所を決めます。ほかの場所では、その情報を見に行くか、写すだけにします。

これだけでも、どれが正しいか分からない問題はかなり減ります。システムを新しく入れなくても始められます。

方法2:紙やメールの入口をデジタルにする

申請書や報告書が紙やメールで届く場合は、入力フォームに置き換えます。最初からデータで受け取れば、打ち直しが要らなくなります。

紙の書類に押印が必要だから、という理由で紙が残っていることもあります。内閣府・法務省・経済産業省がまとめた押印についてのQ&Aでは、契約は当事者の意思の合致で成立し、特段の定めがある場合を除いて、押印をしなくても契約の効力に影響は生じないとされています(出典:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日))。社内の申請では、押印の代わりにシステム上の承認の記録で足りる場合も多いため、紙を残す理由を見直します。

方法3:システム同士をつなぐ

使っているシステムやアプリ同士をつなぎ、一方に入力した内容が、もう一方に自動で反映されるようにします。システムに用意された連携の機能を使う方法、APIと呼ばれる接続の仕組みを使う方法、複数のアプリをつなぐ専用のツールを使う方法があります。

一度つないでしまえば、人が運んでいた情報が自動で流れるようになります。ただし、連携できる項目や、つなげるシステムの組み合わせには制限があるため、導入前に確認が必要です。

方法4:RPAで画面の操作を自動化する

システム同士を直接つなげない場合は、RPA(パソコンの定型作業を自動化するツール)で、人が行っていた画面の操作をそのまま自動化する方法があります。表計算ソフトの内容を読み取って、別のシステムの画面に入力するといった作業に向いています。

一方で、画面の見た目や項目の並びが変わると、動かなくなることがあります。作った手順を誰が管理するかを決めておくことが大切です。

方法5:システムをまとめる

販売、在庫、会計など、つながりの深い業務を1つのシステムにまとめれば、そもそも二重入力が起きにくくなります。効果は大きい一方で、費用と期間がかかり、業務のやり方も合わせて変える必要があります。

方法6:取引先とデータでやり取りする

注文書や請求書を、紙やPDFではなくデータでやり取りすれば、読み取って入力する手間が減ります。請求書については、デジタル庁が日本でのデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)を管理しています(出典:デジタル庁「JP PINT」)。

データでやり取りした書類の保存にもルールがあります。電子帳簿保存法では、電子取引の取引情報の保存について、次のように定めています。

電子取引を行った場合には、一定の要件の下で、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないこととされています

出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要」

データで受け取った請求書を印刷して紙で保存し、さらに会計ソフトに入力する、という運用では、手間が残るうえに保存のルールにも合わない可能性があります。具体的な保存の要件は、国税庁の一問一答で確認できます(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」)。

二重入力を解消する進め方|5つのステップ

いきなりツールを選ぶのではなく、どこで二重入力が起きているかを確かめるところから始めます。

二重入力を解消する進め方を、入力している場所を書き出す、情報の流れをつなげて見る、正とする場所を決める、手間の大きい所から方法を選ぶ、手順を残して見直すの5段階で示した図

ステップ1:入力している場所を書き出す

部署ごとに、どの情報を、どこに、誰が、どのくらいの頻度で入力しているかを書き出します。担当者に聞き取ると、本人も意識していなかった打ち直しが見つかります。

ステップ2:同じ情報の流れをつなげて見る

書き出した内容を、情報ごとに並べ直します。受注の情報が、受注の台帳から販売管理、請求書、会計ソフトへと流れていく様子を図にすると、どこで人が運んでいるかが分かります。

ステップ3:正とする場所を決める

情報ごとに、最初に入力する場所と、正とする場所を決めます。この段階で、方法1の「入口を1つに決める」を実行できます。

ステップ4:手間の大きい所から方法を選ぶ

回数が多い、ミスが起きやすい、特定の人しかできない、といった所から順に、6つの方法のどれを使うかを決めます。最初から全部を自動化しようとせず、1か所で試して効果を確かめます。

ステップ5:手順を残して見直す

変えた後の手順を書き残し、担当者が変わっても続けられるようにします。数か月ごとに、新しい二重入力が生まれていないかを確かめます。

方法の選び方

6つの方法の向き不向きを整理すると、次のようになります。

二重入力を解消する6つの方法について、向いている場面と気をつけたい点を比べた表
方法向いている場面気をつけたい点
入口を1つに決めるどの会社でも最初にルールを守る仕組みが要る
入口をデジタルにする紙やメールの申請・報告が多い使う人への説明と定着
システム同士をつなぐ使っているシステムが連携に対応している連携できる項目の範囲
RPAで自動化するシステムを直接つなげない画面が変わると止まる
システムをまとめる業務全体を見直す時期費用・期間・業務の変更
取引先とデータで交換取引先からの書類が多い取引先の対応状況

中小企業白書では、デジタル化の取組の段階が進んだ企業の割合を見ると、顧客データの一元管理や、営業活動・受発注管理のオンライン化で、段階2と段階3の差が大きいとしています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。同じ白書で段階3は、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態と定義されています。情報を1か所にまとめ、つなぐことが、次の段階に進む手がかりになっていると読めます。

また、同じ白書では、取組の段階にかかわらず、DXの課題として費用の負担の大きさと、推進する人材の不足が多く挙げられています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。費用と人手が限られる中では、方法1と方法2のように、ツールに頼らずに始められることから手をつけるのが現実的です。

システムをつなぐときに確かめたいこと

方法3から方法5のように、システムやツールを使う場合は、次の点を確かめます。

  • 連携できるシステムと項目:使っているシステムが連携に対応しているか、どの項目が反映されるか
  • 止まったときの対応:連携やRPAが止まったときに、誰が気づき、どう直すか
  • 権限の管理:誰がどのデータを見られ、変えられるか
  • 費用の決まり方:利用する人数、連携の数、処理の回数など、何で料金が変わるか

権限の管理は、情報セキュリティの面でも大切です。IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインは、経営者が認識し実施すべき指針と、社内で対策を実践する際の手順や手法をまとめたもので、中小企業での利用を想定しています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。システムをつなぐと、一か所の設定の誤りがほかのシステムにも広がるため、権限と設定の変更の記録を残しておきます。

経済産業省のDXのページでは、中堅・中小企業等向けDX推進の手引きなどの資料が紹介されています(出典:経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」)。IPAの「DX動向2025」では、日本企業のDXの取組が「内向き・部分最適」にとどまりがちな点が課題として挙げられています(出典:IPA「DX動向2025」)。二重入力の解消も、部署ごとの部分的な改善で終わらせず、情報の流れ全体を見て進めることが大切です。

無理に解消しなくてよいケース

二重入力は、すべてをなくす必要はありません。次のような場合は、今のままでよいこともあります。

  • 入力の回数が月に数回など少なく、仕組みを作る手間のほうが大きい
  • 近いうちにシステムの入れ替えが決まっていて、今つないでも無駄になる
  • 確認のために、あえて別の人が入力し直している(ダブルチェックの役割がある)
  • 取引先が少なく、書式を合わせる交渉の手間が見合わない

自社でできることとしては、入力している場所の書き出しと、正とする場所の決定が挙げられます。この2つは費用がかからず、どの方法を選ぶにしても必要な準備です。

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よくある質問

二重入力の解消は、まず何から始めればよいですか?

部署ごとに、どの情報を、どこに、誰が入力しているかを書き出すことから始めます。そのうえで、情報ごとに正とする場所を決めると、ツールを入れなくても、どれが正しいか分からない問題を減らせます。

システム連携とRPAは、どちらを選べばよいですか?

使っているシステムが連携の機能に対応しているなら、システム連携のほうが安定しやすい傾向があります。直接つなげないシステムや、画面での操作しかできない作業には、RPAが向いています。両方を組み合わせることもあります。

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必ずしも必要ではありません。入口を1つに決める、紙の申請を入力フォームに変える、といった方法は、新しいツールを入れなくても始められます。手間が大きい作業が残ったときに、ツールを検討します。

取引先から届くPDFの請求書は、どうすればよいですか?

まず、データで受け取った請求書を、電子帳簿保存法のルールに沿って保存しているかを確かめます。そのうえで、会計ソフトの読み取りの機能を使う、取引先とデータでやり取りする方法を相談する、といった対策を検討します。

二重入力をなくすと、確認の機会が減ってミスが増えませんか?

入力し直すことが確認の役割を果たしている場合は、その点を別の方法で補います。たとえば、入力の画面で必須の項目や形式をチェックする、月に一度、元の情報と照らし合わせる、といった方法です。

参考資料