書類を探すのに時間がかかる。押印のために出社している。保管の棚が足りない。紙で回る業務には、こうした手間がつきものです。

とはいえ、ペーパーレス化を一度に進めようとすると、現場が混乱したり、法令の要件を満たさない保存をしてしまったりすることがあります。

この記事では、ペーパーレス化の進め方を5つのステップで整理します。進める前に確かめたい法令とルール、紙を減らしやすい書類の順番、端末とシステムの選び方もまとめました。

急いで進めなくてよいケースもあわせて紹介します。自社の進め方を考えるときの確認に使ってください。

ペーパーレス化とは|目的と得られる効果

ペーパーレス化とは、紙で作成、回覧、保管していた書類を、データで扱う形に切り替えることです。紙をスキャンして保存するだけでなく、最初からデータで作り、データのまま回して保存する形に変えることまで含みます。

ペーパーレス化で期待できる効果には、次のようなものがあります。

  • 書類を探す時間が減る:保存場所と名前のつけ方を決めれば、検索で見つけられます。
  • 承認や回覧が早くなる:出社しなくても、離れた場所から確認と承認ができます。
  • 印刷、郵送、保管の手間と費用が減る:紙、インク、郵便、保管の場所にかかる負担が小さくなります。
  • 情報を共有しやすくなる:同じ書類を複数の人が同時に見られます。

ペーパーレス化は、会社全体のデジタル化の入り口でもあります。中小企業白書は、中小企業のデジタル化の取組状況を4つの段階に分け、段階1を「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態」としています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。紙の業務を減らすことは、この段階から次へ進むための第一歩です。

同じ白書では、取組の段階を問わず「費用の負担が大きい」または「DXを推進する人材が足りない」と答える事業者の割合が高いとされています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。ペーパーレス化も、費用と担当者の手当てを最初に考えておくことが欠かせません。

進める前に確かめたい法令とルール

書類の中には、法令で保存の方法や交付の方法が決められているものがあります。ペーパーレス化を進める前に、主なルールを確かめておきます。

国税庁の資料にもとづく電子帳簿等保存制度の3つの区分と、それぞれ対応が必要か希望者のみかをまとめた表

電子帳簿保存法と電子取引データの保存

国税庁は、電子帳簿等保存制度を「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つに分けて情報を掲載しています(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。このうち電子帳簿等保存とスキャナ保存は希望者のみが対象で、電子取引データの保存は法人・個人事業者ともに対応が必要とされています(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」)。

取引に関して、書面でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当する電子取引データを受領又は交付した場合、その電子取引データの電子保存が義務付けられています。

出典:国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」

メールで受け取った請求書のPDFや、インターネット上でダウンロードした領収書などは、紙に印刷して終わりにせず、データのまま保存する仕組みが必要です。原則のルールへの対応が間に合わない場合の猶予措置も設けられていますが、条件があります(出典:国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」)。

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などは、電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、検索の要件を満たす必要はないとされています(出典:国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」)。小規模な事業者は、こうした要件の違いも確かめて、必要以上に大がかりな仕組みにしないことが大切です。

国税庁は、優良な電子帳簿として備え付け・保存している場合に、過少申告加算税の割合を原則10%から5%に軽減する措置も案内しています(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」)。電子取引に関する最新の資料は、国税庁の電子取引関係のページにまとめられています(出典:国税庁「電子取引関係」)。制度は改正されることがあるため、最新の資料で確かめてから進めます。

契約書と押印

押印のために紙の契約書を残している会社もあります。内閣府・法務省・経済産業省がまとめた「押印についてのQ&A」は、契約の成立と押印について次のように説明しています。

私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。

出典:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」

つまり、多くの契約は押印がなくても成立します。ただし「特段の定めがある場合」は別です。電子契約に切り替えるときは、法令で書面が求められている契約でないか、取引先が対応できるかを確かめてから進めます(出典:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」)。

労務の書類

入社の手続きや労働条件の明示など、労務の書類にもルールがあります。厚生労働省は、労働条件の明示について、次のように案内しています。

ただし、労働者が希望した場合は、以下のような方法で明示することができるようになります。ただし、出力して書面を作成できるものに限られます。

出典:厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」

労働条件の明示は、平成31年4月から、労働者が希望した場合にFAX、電子メール、SNSなどでもできるようになりました(出典:厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」)。会社の都合だけで切り替えるのではなく、本人の希望を確かめる手順を決めておくことが必要です。

ペーパーレス化の進め方|5つのステップ

ペーパーレス化は、全社で一度に始めるのではなく、書類や部署を絞って試し、効果を確かめながら広げるのが基本です。次の5つのステップで進めます。

ペーパーレス化の進め方を、紙の現状を洗い出す、対象の書類と順番を決める、道具とルールを決めて試す、全社に広げて見直すの4段階で示した図
  1. 目的と担当者を決める:何のためにペーパーレス化するのか(探す時間を減らす、出社を減らす、保管の場所を減らすなど)を決め、推進する担当者を置きます。経営者や管理職が目的を伝えると、現場の協力を得やすくなります。
  2. 紙の現状を洗い出す:どの書類を、誰が、どのくらいの量作り、どこに保管しているかを一覧にします。効果を測るため、印刷の枚数や保管の場所など、いまの状態を記録しておきます。
  3. 対象の書類と順番を決める:法令の確認が必要な書類と、社内だけで変えられる書類を分けます。最初は、社内で完結し、関わる人が少ない書類から始めます。
  4. 道具とルールを決めて試す:使う端末やシステム、保存の場所、ファイルの名前のつけ方、承認の流れを決め、1つの部署や書類で試します。
  5. 広げて見直す:試した結果、使いにくい点を直してから、ほかの書類や部署に広げます。紙と電子が混ざる期間は、どちらを正とするかを決めておきます。

取引先とやりとりする書類は、相手の都合もあります。請求書や契約書を電子に切り替えるときは、移行の期間を設け、紙を希望する相手への対応も決めておくと混乱が少なくなります。

紙を減らしやすい書類と順番

どの書類から手をつけるかで、進めやすさは大きく変わります。社内で完結する書類は、取引先の同意がいらず、ルールも自社で決められるため、最初の対象に向いています。

ペーパーレス化しやすい書類の例を、社内の文書、労務の書類、経理の書類、現場の記録の4つに分けて示した図
書類の種類電子化の方法の例先に確かめること
会議資料、回覧、規程、マニュアル共有のフォルダや文書管理の仕組みで配る最新版がどれか分かる管理のしかた
社内の申請と承認ワークフローの仕組みや申請のフォーム承認の流れ、代理の承認のルール
入退社の手続き、年末調整、給与明細労務管理のシステムでデータで受け渡す本人の同意や希望を確かめる手順
請求書、領収書、経費の精算電子取引データの保存、会計の仕組みとの連携電子帳簿保存法の要件
契約書電子契約のサービス法令で書面が必要でないか、取引先の対応
点検表、日報、作業の報告タブレットなどの端末で入力して共有現場での入力のしやすさ、端末の管理

規程やマニュアルのように、社内で読むだけの書類は、PDFにして共有のフォルダに置くだけでも効果があります。ただし、古い版が残ると混乱のもとになるため、最新版の置き場所を1か所に決めます。

労務の書類は、入社や年末調整など、時期が決まっている作業が多くあります。忙しい時期の直前に切り替えるのは避け、余裕のある時期に試すと安心です。

端末とシステムの選び方

ペーパーレス化には、書類をデータで扱うための端末とシステムが必要です。何を選ぶかは、対象の書類と、使う人の場所で決まります。

現場で使う端末

店舗や工場、建設の現場など、パソコンを置きにくい場所では、タブレットが向いています。点検表や日報、作業の報告を、その場で入力して共有できます。

端末の台数が多い場合は、費用が負担になります。新品だけでなく、点検や整備を済ませた端末を選ぶ方法もあります。費用は、台数、機種、保証の内容、通信の契約の有無で変わります。端末の価格だけでなく、紛失に備えた管理の方法や、故障したときの交換の手順も含めて比べます。

労務と経理のシステム

労務の書類は、入退社の手続き、年末調整、給与明細など、種類が多くあります。すべてを一度にシステムに載せる必要はありません。必要な機能だけを選べる仕組みであれば、困りごとの大きい業務から始められます。たとえばツナグバ掲載の必要な機能だけを選べる労務管理システムは、入退社の手続き、年末調整、給与明細など、労務の機能を必要な分だけ選んで導入できます。

経理の書類は、電子帳簿保存法の要件を満たして保存できるかを確かめます。国税庁は、請求書などの電子取引データを自動で保存し、帳簿へ自動で連携する仕組みについての優遇措置も案内しています(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」)。

選ぶときの判断基準

  • 対象の書類の法令の要件を満たして保存できるか
  • 現場の人が、説明を受けながらでも使えそうか
  • いま使っている会計や労務の仕組みとつなげられるか
  • 利用人数や端末の台数が増えたときに、費用がどう変わるか
  • データを書き出せるか、ほかの仕組みに移せるか
  • 試用できるか、導入の相談や問い合わせに対応しているか

セキュリティと保管のルール

紙の書類がデータになると、なくす心配は減りますが、情報が一度に漏れるおそれは増えます。特に、顧客や社員の個人情報を含む書類は、管理のルールを決めてから電子化します。

個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対し、個人データの漏えいなどを防ぐための安全管理の措置を求めています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。IPAは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組む際の指針と手順をまとめた「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を公開しています(出典:情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。

少なくとも、次のルールは決めておきます。

  • 書類ごとに、見られる人と編集できる人の範囲
  • 保存の場所と、ファイルの名前のつけ方
  • タブレットなど持ち出す端末の、紛失したときの手順
  • 社員の異動や退職のときに、アカウントを止める手順
  • データのバックアップの方法
  • 電子化した後の紙の原本を、いつ、どう廃棄するか

紙の原本の廃棄は、法令で保存が求められている書類では特に注意が必要です。スキャナ保存の要件を満たしていない場合は、紙の原本を残す必要があることもあります。廃棄する前に、要件を確かめます。

ペーパーレス化を急がなくてよいケース

ペーパーレス化は、どの会社にも同じ速さで必要なものではありません。次のような場合は、急いで進めなくてもよいことがあります。

  • 書類の量が少なく、探す時間や保管の場所に困っていない
  • 取引先の多くが紙でのやりとりを求めていて、切り替えても二重の手間になる
  • 推進する担当者を置けず、ルールを決める余裕がない
  • 繁忙期の直前で、新しいやり方を覚える時間がない

ただし、電子取引データの保存のように、法令で対応が求められているものは別です(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」)。急がないと決めた場合でも、法令で必要な対応だけは先に済ませておきます。

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ツナグバで、ペーパーレス化に役立つサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

通信・IT機器の分野では、整備済みの法人向けタブレット端末を掲載しています。点検・整備を済ませたタブレット端末を法人向けに提供するもので、新品より費用を抑えて、業務のデジタル化を進められます。端末の導入費用を抑えたい企業に向いています。

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  • 新品より費用を抑えて導入できる:整備済みの端末は、新品に比べて導入費用を抑えやすいのが一般的です。台数が多い場合ほど費用の差が出やすくなります。
  • 法人向けの購入・契約ができる:法人としてまとめて導入できる形が一般的です。請求書での支払いなど、会社の手続きに合わせやすくなります。

資料で確かめたいことの例です。

  • 端末の型番と、使う業務アプリが動くか
  • 保証の期間と、故障したときの交換・修理の流れ
  • 電池の状態などの品質基準

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  • 入退社の手続きのたびに書類を作り、役所に出す作業に時間を取られている
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主な特徴は次のとおりです。

  • 必要な機能を選んで導入できる:入退社の手続きや年末調整など、使う機能を選んで契約できます。使わない機能の費用を抑えやすくなります。
  • 手続きの書類をまとめて作成できる:社員の情報をもとに、手続きに必要な書類を作る機能が一般的です。同じ情報を何度も書き写す手間を減らせます。
  • 社員とのやり取りを画面上で行える:社員が自分の情報を入力したり、明細を確認したりできます。紙の回収や配布の手間を減らせます。

資料で確かめたいことの例です。

  • 機能ごとの料金と、社員数による料金の変わり方
  • いま使っている給与計算や勤怠管理のツールと連携できるか
  • 電子申請(オンラインでの役所への届け出)に対応しているか

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よくある質問

ペーパーレス化は、どの書類から始めればよいですか?

社内で完結し、関わる人が少ない書類から始めるのが基本です。会議資料、回覧、規程、マニュアル、社内の申請などが向いています。取引先の同意や法令の確認が必要な書類は、社内の書類で進め方に慣れてから取り組むと混乱が少なくなります。

メールで受け取った請求書は、印刷して保存すればよいですか?

国税庁の資料では、書面でやりとりしていれば保存が必要な書類に相当する電子取引データは、電子で保存することが義務付けられているとされています。印刷して終わりにせず、データのまま保存する仕組みを整えてください。要件の詳細は、国税庁の最新の資料で確かめます。

契約書を電子にするとき、押印がなくても問題はありませんか?

内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」では、契約は当事者の意思の合致により成立し、特段の定めがある場合を除き、押印は必要な要件とされていないと説明されています。ただし、法令で書面が求められる契約もあるため、契約の種類ごとに確かめてください。

ペーパーレス化の費用は、どのくらいかかりますか?

対象の書類、使う人数、端末の台数、選ぶシステムで大きく変わるため、一律には言えません。共有のフォルダを使うだけなら新たな費用がかからないこともあります。システムや端末を入れる場合は、初期の費用だけでなく、月ごとの費用や保守、社内への説明の手間も含めて比べます。

現場ではタブレットとパソコンのどちらを使えばよいですか?

立ったまま入力する、持ち歩いて写真を撮る、といった現場の作業にはタブレットが向いています。長い文章の作成や表の編集が多い業務は、パソコンのほうが効率的です。業務ごとに使い分け、どちらからも同じデータを見られるようにしておくと便利です。

参考資料