生成AIで作った文章や画像を、資料や広告、社内の文書に使いたい。けれども、著作権の問題がないのかが気になる。業務で生成AIを使い始めた会社から、よく聞かれる悩みです。
生成AIと著作権の関係は、文化庁が考え方や確認の手順を資料にまとめて公表しています。ポイントは、学習、生成、利用のどの段階の話なのかを分けて考えることです。
この記事では、文化庁の資料をもとに、ビジネスで生成AIを使うときの著作権の注意点を整理しました。侵害かどうかの判断の基準、生成物に著作権が生じる条件、社内で確かめたいチェック項目、問題を指摘されたときの対応もまとめています。
個別の事案が著作権侵害にあたるかどうかは、最終的には裁判所が判断します。この記事は一般的な考え方の整理です。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
生成AIと著作権|まず押さえたい3つの論点
生成AIと著作権の話は、大きく3つの論点に分かれます。AIを開発するときに著作物を学習させてよいか、AIで作ったものを使うと侵害になるか、AIで作ったものに著作権が生じるか、の3つです。

業務で生成AIを使う会社にとって、特に関係が深いのは2つ目の生成・利用の段階です。AIの開発をしていない会社でも、AIで作った文章や画像を社外に出せば、この段階の考え方が当てはまります。
文化庁は、こうした論点について、文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」を令和6年3月15日に公表し、令和6年7月31日には「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表しています(出典:文化庁「AIと著作権について」)。
著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものです。アイデアそのものや、ありふれた表現、事実やデータは、著作物として保護されません。生成AIと著作権を考えるときも、この前提は変わりません(出典:e-Gov法令検索「著作権法」)。
開発・学習の段階|原則と例外
AIの開発や学習のために著作物を使うことについて、文化庁は、著作物に表現された思想や感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく行うことができると説明しています。これは著作権法第30条の4の権利制限規定によるものです(出典:文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」)。
ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この規定の対象になりません(法第30条の4ただし書)(出典:文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」)。
自社でAIを開発しない会社でも、この段階の考え方は無関係ではありません。たとえば、社内の文書や他社の資料をAIサービスに読み込ませて回答させる使い方では、入力する目的が問われます。文化庁のチェックリストでは、既存の著作物を入力して、その著作物と類似する生成物を生成させる目的がある場合は、権利者の許諾が必要になる場合があるとされています(出典:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」)。
権利制限規定の考え方は、文化庁が令和元年10月24日に公表した基本的な考え方の資料で詳しく説明されています(出典:文化庁「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」)。
生成・利用の段階|侵害かどうかの判断
AIで作った文章や画像を使うときに、著作権侵害になるかどうかは、どのように判断されるのでしょうか。文化庁は、次のように説明しています。
AIを利用して画像等を生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの、通常の場合と同様に判断されます。
出典:文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」
つまり、AIを使ったから特別に許される、あるいは特別に厳しくなる、ということはありません。人が作ったものと同じく、既存の著作物と似ているか(類似性)と、既存の著作物をもとにして作ったか(依拠性)の2つで判断されます。

類似性|創作的な表現が似ているか
類似性は、既存の著作物の創作的な表現と似ているかどうかで判断されます。表現ではなく、アイデアにとどまる部分が似ているだけでは、著作権侵害にはなりません。
依拠性|知らなくても認められることがある
注意したいのは依拠性です。人が作る場合は、既存の著作物を知らずに偶然似たものを作ったのであれば、依拠性は認められません。しかし、生成AIの場合は事情が違います。
また、生成AIの開発・学習段階で当該既存の著作物が学習されていた場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していない場合でも、通常、依拠性があったと推認される
出典:文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について【概要】」
利用者が知らなくても、AIが学習していれば依拠性があると推認されるということです。生成物が既存の著作物と似ていれば、侵害と判断される可能性があります。だからこそ、使う前に似たものがないかを確かめる作業が大切になります。
また、文化庁のチェックリストでは、作家名や作品の題号、キャラクター名などの固有名詞を指示に入力すると、既存の著作物を認識していたことを示す事情となり、依拠性が認められやすくなると説明されています(出典:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」)。
侵害した場合に起こり得ること
生成物が著作権を侵害していた場合、著作権者は、侵害行為の停止や予防の措置を求めたり、損害の賠償を求めたりできます。著作権侵害は、刑事罰の対象にもなります(出典:文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」)。
生成AIの場合、権利者は、新たな侵害物の生成の差止めや、既に生成された侵害物のインターネット配信などの利用の差止めを求めることができ、侵害物の廃棄を求めることもできるとされています(出典:文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について【概要】」)。
会社として影響が大きいのは、作ったものを使えなくなることです。広告やWebサイト、商品のパッケージなどに使っていた場合、差し替えの費用や、取引先への説明が必要になります。公開する前の確認が、もっとも費用のかからない対策です。
著作権以外にも、商標や肖像など、別の権利が関わる場合があります。人物の顔や他社のロゴが入った生成物は、著作権の確認とは別に注意が必要です。
よくある誤解と、正しい考え方
生成AIと著作権については、社内で誤った理解が広まっていることがあります。よく見られる誤解を、文化庁の資料の考え方に沿って整理します。
- 「AIが作ったものだから、著作権の問題は起きない」:侵害かどうかは、人が作った場合と同じ考え方で判断されます。AIを使ったことは、侵害を否定する理由になりません。
- 「元の作品を知らなかったので、責任はない」:AIが既存の著作物を学習していた場合、利用者が知らなくても、通常は依拠性が推認されます。
- 「有料のAIサービスなら、何に使っても安全」:利用料を払っていても、生成物が既存の著作物と似ていれば侵害になり得ます。利用規約で、サービス事業者がどこまで責任を持つかも確かめます。
- 「社内で使うだけなら、何を入力してもよい」:入力の目的によっては、権利者の許諾が必要になる場合があります。社外秘の情報や個人情報の扱いも、別に決めておく必要があります。
- 「少し手を加えれば問題ない」:手を加えても、元の著作物の創作的な表現が残っていれば、類似性が認められる可能性があります。
誤解の多くは、生成AIを特別な道具として考えることから生まれます。基本は、人が作る場合と同じように、似ていないか、もとにしていないかを確かめることです。
AIで作ったものに著作権は生じるか
AIで作った文章や画像を自社の制作物として扱いたい場合、そこに著作権が生じるかどうかも気になる点です。
文化庁は、人がAIを道具として使ったといえるかどうかは、人の創作意図があるか、そして人が創作的寄与と認められる行為を行ったかによって判断されると説明しています(出典:文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」)。
指示(プロンプト)が長いだけでは、創作的寄与があるとはいえません。長い指示であっても、創作的な表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示であれば、創作的寄与の判断には影響しないとされています(出典:文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について【概要】」)。
実務では、AIが出したものを人が選び、手を加え、組み合わせた部分があるかが一つの目安になります。AIの出力をそのまま使った部分には、自社の著作権を主張しにくいと考えておくのが安全です。取引先に納品する制作物では、契約でAIの利用と権利の扱いを決めておきます。
業務で生成AIを使う前のチェック項目
文化庁のチェックリスト&ガイダンスは、資料の目的を次のように説明しています。
著作権と生成AIとの関係で生じるリスクを低減させる上で、また、自らの権利を保全・行使する上で望ましいと考えられる取組みを、生成AIに関係する当事者(ステークホルダー)の立場ごとに分かりやすい形で紹介するものです。
出典:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」
この資料では、AIを開発する人、AIサービスを提供する人、AIを使う人など、立場ごとに取組みが整理されています。業務で生成AIを使う会社は、AI利用者の項目が中心になります。主な項目を、社内で確かめやすい形にまとめました(出典:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」)。

- 使う生成AIサービスの仕組みや利用規約を確認し、社員の著作権制度への理解を確かめる
- 社内ルールの策定などで予防の措置を講じ、侵害が生じたときの対応を事前に決めておく
- 他人の著作物を入力するときは、その目的が似たものを作らせることにないかを確かめる
- 生成すること自体が認められる場合でも、公開や配布をすると判断が変わり得ることに注意する
- 生成物を使う前に、インターネットの検索などで既存の著作物と似ていないかを確かめる
- 生成に使った指示文など、生成の過程を確認できる状態にしておく
指示文を残しておくのは、依拠性がないことを説明する材料になるからです。誰が、いつ、どのサービスで、どのような指示で作ったかを記録しておくと、問題を指摘されたときに説明しやすくなります。
私的な使用の範囲で生成することは認められる場合がありますが、生成物を公開したり配布したりする場合は、権利制限の範囲外となることが多いと考えられるとされています(出典:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」)。社内の検討用に作ったものを、そのまま社外向けの資料に転用するときは、改めて確認します。
場面別の注意点
業務の場面ごとに、確認しておきたい点をまとめます。
| 場面 | 主な注意点 | 確認すること |
|---|---|---|
| 広告・Webサイトの画像 | 既存のキャラクターや作品に似ていないか | 画像検索で似たものを探す。固有名詞を指示に入れない |
| 資料・記事の文章 | 既存の文章と同じ表現が続いていないか | 特徴的な言い回しを検索する。引用には出典を付ける |
| 他社の資料の要約 | 入力の目的と、要約の公開の範囲 | 社内の検討用か、社外に出すかを分ける |
| 商品のデザイン | 著作権以外の権利も関わる | 商標や意匠も含めて確認する |
| 取引先への納品物 | 権利の帰属とAI利用の説明 | 契約でAIの利用と権利の扱いを決める |
表は一般的な整理です。実際の判断は、生成物の内容や使い方によって変わります。
社内で進めるときの体制づくり
著作権の確認を、使う社員一人ひとりの判断に任せると、確認の程度がばらつきます。社内で次のような体制を整えておくと、確認が漏れにくくなります。
- 使ってよいAIサービスと、入力してはいけない情報を決める
- 社外に出す生成物は、公開の前に別の担当者が確認する流れにする
- 指示文と生成物を残す場所を決める
- 問題を指摘されたときの窓口と、公開を止める手順を決める
- 社員向けに、著作権の基本と確認の手順を学ぶ場を設ける
国のAI事業者ガイドラインでも、AIを使う事業者が取り組みたい事項が示されています(出典:経済産業省「AI事業者ガイドライン」)。著作権だけでなく、情報の管理や誤った出力への対応もあわせて考えると、社内のルールをまとめやすくなります。
社員が生成AIを正しく使えるようにするには、ルールを配るだけでなく、実際の業務を題材に学ぶ機会が役立ちます。ツナグバ掲載の生成AIの活用を学ぶ社員研修は、代表的な生成AIツールの使い方を、業務での活用例とあわせて学ぶ研修サービスです。
外部の研修やサービスを使わなくてよいケース
- 生成AIを使うのが一部の社員だけで、社外に出す生成物がない
- 社内の文書の下書きや要約など、社内で完結する使い方にとどまる
- 社内に、著作権や契約に詳しい担当者がいて、確認の流れを回せている
こうした場合は、まず文化庁のチェックリストを社内で読み合わせ、確認の手順を決めるところから始めても構いません。
あわせて読みたい
ツナグバで、生成AI活用のサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
人材育成・研修の分野では、代表的な生成AIツールの使い方を、業務での活用例とあわせて学ぶ社員研修のサービスを掲載しています。
ITツール・SaaSの分野では、業務ごとに用意された指示文(プロンプト)を使い、社員が生成AIを手軽に活用できるようにする業務プラットフォームも掲載しています。
社員の使い方をそろえたい会社は、資料で内容と進め方を確かめてください。
生成AIの活用を学ぶ社員研修
こんな課題に向いています。
- 生成AIに関心はあるが、業務でどう使えばよいか分からない社員が多い
- 社員によってAIの知識に差があり、社内で話がかみ合わない
- 生成AIを使うときの注意点を、社内で教えられる人がいない
主な特徴は次のとおりです。
- 代表的な生成AIツールの使い方を学べる:よく使われている生成AIツールの基本的な操作を学びます。初めて使う社員でも、基礎から順に進められる内容が一般的です。
- 業務での活用例とあわせて学べる:文章の下書きや情報の整理など、業務での使い方を例に学びます。学んだ内容を自分の仕事に当てはめて考えやすくなります。
- 使うときの注意点も学べる:誤った答えが出ることや、情報の扱いなどの注意点を学びます。社内で安全に使うための基礎になります。
資料で確かめたいことの例です。
- 研修の形式(対面かオンラインか、集合か個別か)
- 受講人数ごとの費用と、教材費などの追加費用
- 自社の業務に合わせて内容を調整できるか
社員全員が生成AIを使いこなせる業務プラットフォーム
こんな課題に向いています。
- 生成AIを導入したが、使っているのは一部の社員にとどまっている
- 社員がAIにどう指示を書けばよいか分からず、活用が進んでいない
- 社員が個人で生成AIを使っていて、情報の扱いに不安がある
主な特徴は次のとおりです。
- 業務ごとに指示文(プロンプト)が用意されている:議事録やメールの下書きなど、業務ごとに使える指示文が用意されています。指示の書き方に慣れていない社員も使い始めやすくなります。
- 社内で使い方を共有できる:よく使う指示文を社内で共有できるものが一般的です。うまくいった使い方を広げやすくなります。
- 会社として利用を管理できる:誰がどのように使っているかを管理者が確認できる製品があります。管理機能や情報の扱いは製品によって違うため、資料で確認してください。
資料で確かめたいことの例です。
- 利用人数ごとの料金と、利用量による追加費用の有無
- 入力した情報がAIの学習に使われないか、保存先はどこか
- 自社の業務に合った指示文を追加・編集できるか
よくある質問
生成AIで作った画像は、商用で使ってもよいですか?
使うこと自体が禁止されているわけではありません。ただし、既存の著作物と似ていて、依拠性が認められれば著作権侵害になり得ます。使う前に似たものがないかを確かめ、使うAIサービスの利用規約で商用利用の条件も確認してください。
「〇〇風に」と指示して作ってもよいですか?
作風や画風のように、表現に至らないアイデアにとどまる部分は、一般に著作権では保護されません。ただし、作家名や作品名などの固有名詞を指示に入れると、依拠性が認められやすくなると文化庁は説明しています。社外に出すものでは避けるのが安全です。
AIで作った文章に、自社の著作権はありますか?
人の創作意図と創作的寄与があれば、著作物と認められる可能性があります。AIの出力をそのまま使った場合は、著作物と認められにくいと考えておくのが安全です。人が選び、手を加えた部分を記録しておくと説明しやすくなります。
社外から著作権侵害を指摘されたら、どうすればよいですか?
まず、指摘された生成物の公開や配布を止め、指示文などの記録を確認します。そのうえで、弁護士などの専門家に相談し、対応を決めます。あらかじめ窓口と手順を決めておくと、慌てずに対応できます。
社員が個人で契約したAIサービスを業務に使ってもよいですか?
会社として使ってよいサービスを決めておくことをおすすめします。サービスごとに利用規約や、入力した情報の扱いが違います。会社が把握していないサービスで作られた生成物は、指示文や生成の過程を確認できず、問題を指摘されたときに説明しにくくなります。
参考資料
- 文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」(令和5年6月19日開催の講義資料)
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について【概要】」
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)
- 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)
- 文化庁「AIと著作権について」
- 文化庁「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」(令和元年10月24日)
- e-Gov法令検索「著作権法」
- 経済産業省「AI事業者ガイドライン」
