取引先への依頼、お詫び、日程の調整。ビジネスメールを書く時間は、一日の中で意外に大きな割合を占めます。生成AIで下書きを作れば、その時間を減らせるのではないかと考える方も多いでしょう。

生成AIは、メールの下書きづくりに向いた道具です。ただし、指示の出し方で文面の質が大きく変わり、そのまま送ると事実と違う内容や、入力してはいけない情報の扱いが問題になることがあります。

この記事では、生成AIでビジネスメールを作るときのプロンプトの書き方を、場面別の例とともに整理します。送る前に確かめること、個人情報や機密の扱い、社内ルールのつくり方もまとめました。

生成AIに任せないほうがよいメールや、社内に広げる進め方の判断の基準も取り上げます。特定のツールの比較ではなく、どのツールを使う場合にも共通する考え方としてお読みください。

生成AIでビジネスメールはどこまで作れるか

生成AIを業務に使う会社は増えています。総務省の情報通信白書では、生成AIの活用方針を定めている日本企業の割合が示されています。

生成AIの活用方針を定めている日本企業の割合が、全体で68.9%、大企業74.0%、中小企業58.1%、前年度の全体49.7%であることを示した棒グラフ

白書は、その割合を次のように示しています。

「積極的に活用する方針である」及び「活用する領域を限定して利用する方針である」と回答した割合の合計は、日本において68.9%であった。

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの活用方針等」

この割合は、前年度の調査の49.7%から上がっています。企業規模別では、大企業が74.0%、中小企業が58.1%でした(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの活用方針等」)。どちらも前年度より上がり、特に中小企業で大きく伸びたとされています(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの活用方針等」)。

使われている業務では、メールの作成が上位に入っています。同じ白書は、業務の種類ごとの活用状況を次のようにまとめています。

業務類型ごとの生成AIの活用状況をみると、日本においては「議事録・メール作成補助」での活用を回答した割合が約7割と最も高く、次に「営業・販売」で約6割、「社内ヘルプデスク」で約5割と続いた。

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの業務利用状況」

メールの作成は、生成AIを業務に取り入れる最初の題材として選ばれやすい仕事だといえます。具体的には、次のような使い方があります。

  • 新しいメールの下書きを作る
  • 受け取ったメールへの返信の下書きを作る
  • 長いメールのやりとりを要約する
  • 書いた文面の敬語や誤字を見直す
  • 外国語のメールを訳す、外国語で下書きを作る

生成AIに向いているメール、向いていないメール

生成AIは、決まった型があるメールの下書きを得意とします。一方、判断や交渉が中心のメールは、人が考えて書く部分が大きくなります。

メールの種類生成AIの使い方人が担うこと
依頼・お礼・案内下書きをそのまま土台にしやすい日付や条件などの事実の確認
日程の調整候補日を渡して文面を作る候補日の正しさ、相手の都合への配慮
お詫び構成と言い回しの案を出す事実関係、責任の範囲、今後の対応の判断
問い合わせへの返信回答の方針を渡して文面を整える回答の内容が正しいかの確認
価格や契約条件の交渉言い回しの見直しにとどめる条件の判断と、約束の範囲の決定

お詫びや交渉のメールでは、生成AIが書いた丁寧な文面に、会社として約束できないことが入り込むことがあります。こうしたメールは、生成AIを言い回しの見直しに使い、中身は人が決めます。

プロンプトの書き方|6つの要素

生成AIへの指示(プロンプト)があいまいだと、当たり障りのない文面になりがちです。メールの作成では、次の6つの要素を入れると、手直しの少ない下書きになります。

生成AIでメールを作るときのプロンプトに入れる、目的、相手と関係、伝える事実、トーン、長さと形式、入れないことの6つの要素を示した図
  1. 目的:依頼、お礼、お詫び、日程調整など、何のためのメールかを書きます。
  2. 相手と関係:社外か社内か、初めての相手か、付き合いが長いかを書きます。
  3. 伝える事実:日付、数量、条件など、メールに入れる事実をすべて書きます。AIに推測させないことが大切です。
  4. トーン:丁寧さの度合い、やわらかさ、簡潔さを指定します。
  5. 長さと形式:文字数の目安、件名を作るか、箇条書きにするかを指定します。
  6. 入れないこと:約束できないこと、使わない言い回しを書きます。

依頼のメールのプロンプト例

「取引先の担当者に、資料の提出をお願いするメールを書いてください。相手とは何度かやりとりがあります。提出してほしい資料は、来期の見積書です。期限は来週の金曜日です。丁寧ですが、かたすぎない文面にしてください。件名もつけてください。本文は300字程度にしてください。」

期限の日付は、曜日だけでなく実際の日付で渡すと、AIが日付を推測して書く心配が減ります。

お詫びのメールのプロンプト例

「納品が予定より2日遅れたことについて、取引先にお詫びするメールの構成案を作ってください。遅れた理由は、部品の入荷の遅れです。新しい納品日は、こちらで確定してから書き込みます。今後の対策は書かず、空欄にしておいてください。」

お詫びのメールでは、理由や対策をAIに考えさせず、人が決めた事実だけを渡します。決まっていない部分は空欄にするよう指示しておくと、AIが推測で埋めるのを防げます。

受け取ったメールへの返信のプロンプト例

「次の問い合わせへの返信を書いてください。回答の方針は、来月から対応できること、詳しい条件は打ち合わせで説明することの2点です。問い合わせの本文は、氏名と連絡先を消してから貼り付けます。」

返信の下書きを作るときは、受け取ったメールの本文を貼り付ける前に、個人情報や社外秘が含まれていないかを確かめます。

下書き以外の使い方

生成AIは、新しいメールの下書きを作るだけでなく、メールにかかわるほかの作業にも使えます。どの使い方でも、入力してよい情報の範囲は同じルールで判断します。

長いやりとりを要約する

何往復も続いたメールのやりとりを、決まったこと、残っている課題、次に誰が何をするかに分けて要約させる使い方です。担当の引き継ぎや、上司への報告の準備に役立ちます。要約は元のメールと照らし合わせ、抜けている論点がないかを確かめます。

自分で書いた文面を見直す

自分で書いたメールを渡し、敬語の誤り、誤字、分かりにくい文を指摘させる使い方です。文面の中身は自分で決めているため、事実と違う内容が入り込む心配が小さく、最初に試しやすい使い方です。「指摘だけをして、書き直しはしないでください」と指示すると、直す箇所を自分で判断できます。

外国語のメールを読む・書く

外国語のメールを日本語に訳したり、日本語で考えた内容を外国語の下書きにしたりする使い方です。訳された文面は、意図と違う意味になっていないかを確かめにくいため、重要なメールは外国語が分かる人に確認してもらいます。

生成AIで作ったメールを送る前の確認

生成AIは、事実と違う内容をもっともらしく書くことがあります。こうした誤りはハルシネーションと呼ばれます。国のAI事業者ガイドラインでも、検索拡張生成(RAG)の活用などによってハルシネーションを抑えることが期待されていると触れられていますが、誤りがなくなるわけではありません(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)本編」)。送る前に、必ず人が読んで確かめます。

生成AIで作ったメールを送る前に、宛先、日付や金額などの事実、約束の追加、敬語、個人情報、自社の言い回しを確かめる6項目のチェックリスト
  • 宛先とCCが正しいか
  • 日付・金額・数量・固有名詞が事実と合っているか
  • 書いていない約束や条件が加わっていないか
  • 相手との関係に合った敬語と距離感か
  • 個人情報や社外秘が含まれていないか
  • 自社の言い回しや署名になっているか

特に注意したいのは、プロンプトに書いていない約束や条件が加わっていないかです。「すぐに対応いたします」「無償で対応いたします」のような一文は、会社として約束できるかを確かめてから残します。

生成AIの文章をそのまま使うことに、不安を感じる相手もいます。生成AIはあくまで下書きの道具であり、最後に読んで責任を持つのは送る人です。

情報漏えいと個人情報の注意点

メールには、取引先の名前や担当者の連絡先、取引の条件など、外に出してはいけない情報が多く含まれます。生成AIに入力する前に、何を入れてよいかを決めておく必要があります。

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について注意喚起を出しています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。その中で、個人情報取扱事業者の注意点として、次のように示しています。

個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

同じ資料では、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することになると注意しています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」)。個人情報保護法では、個人情報を扱うときは利用目的をできる限り特定し(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)、本人の同意なく、その目的の達成に必要な範囲を超えて扱ってはならないとされています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。

入力した内容がサービス側でどのように扱われるかは、サービスや契約の種類によって違います。社内で使うサービスを決めるときは、入力した内容が学習に使われるかどうか、保存される期間などを、利用規約や設定で確かめます。

国のAI事業者ガイドラインでも、事業活動でAIを使う事業者は「AI利用者」と位置づけられ、AIを適正に利用する役割を担うとされています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)本編」)。ガイドラインは、AIの利用にあたってプライバシーを尊重し保護することが重要であるとしています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)本編」)。最新の版と関連資料は、経済産業省のページにまとめられています(出典:経済産業省「AI事業者ガイドライン」)。

生成AIが作った文章に、ほかの人の文章とよく似た表現が含まれる可能性もあります。AIと著作権の考え方については、文化審議会の小委員会が令和6年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめ、文化庁が関連資料とあわせて公表しています(出典:文化庁「AIと著作権について」)。宣伝の文章などを外部に出すときは、特に注意します。

社内ルールに入れておくこと

  • 使ってよい生成AIのサービスと、その設定
  • 入力してはいけない情報(個人情報、取引の条件、社外秘など)
  • 個人情報を入力してよい場合の条件と、事前に消す項目
  • 送る前の確認の手順と、確認する人
  • 外部に出す文章で、生成AIを使ったことを示すかどうか
  • 困ったときの相談の窓口

社内に広げる進め方

生成AIのメール作成は、一人ひとりが自己流で使うと、品質も情報の扱いもばらつきます。次の順で進めると、社内に広げやすくなります。

  1. 対象のメールを決める:社内の案内や、定型の依頼メールなど、リスクの小さいメールから始めます。
  2. ルールを決める:入力してよい情報と、送る前の確認の手順を決めます。
  3. プロンプトの型をつくる:よく使うメールの種類ごとに、6つの要素を埋めた型を用意します。
  4. 少人数で試す:数人で試し、手直しにかかった時間や、確認で見つかった問題を記録します。
  5. 型とルールを直して広げる:試した結果をもとに直してから、ほかの部署にも広げます。

プロンプトの型は、社員の間で共有できる形にしておくと、使う人による差が小さくなります。指示文の書き方を体系的に学びたい場合は、ツナグバ掲載の業務効率化のためのAIプロンプト研修も比較の候補になります。

判断の基準|どこまで生成AIに任せるか

生成AIをどこまで使うかは、メールの種類と、社内の体制で決めます。次の点を目安にします。

  • 定型のメールが多く、書く時間が負担になっている場合は、下書きに使う効果が大きくなります。
  • 一通ごとに判断や交渉が必要なメールが中心の場合は、言い回しの見直しにとどめます。
  • 送る前の確認を担う人を決められない場合は、社外へのメールに使う前に体制を整えます。

費用は、使うサービスの料金のほか、ルールづくりや研修にかかる社内の時間も含めて考えます。料金の決まり方は、利用する人数や機能でサービスごとに違うため、利用する人数を決めてから比べます。

効果は、試す前と後で、1通を書くのにかかった時間と、送る前の確認で見つかった手直しの数を比べると確かめやすくなります。時間が減っても、確認での手直しが増えている場合は、プロンプトの型か、対象のメールの選び方を見直します。

生成AIを使わなくてよいケース

  • メールの数が少なく、いまの書き方で困っていない
  • 扱うメールのほとんどに、入力できない機密や個人情報が含まれる
  • 社内で使えるサービスと、入力のルールがまだ決まっていない

最後の場合は、使い始める前にルールを決めることが先です。社員が個人のアカウントで業務のメールを入力することがないよう、使ってよいサービスを先に示しておきます。

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ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

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社員の力を育てるか、使う仕組みを整えるか。両方の資料を比べて、自社に合う進め方を検討してください。

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こんな課題に向いています。

  • 生成AIを使ってみたが、思うような答えが返ってこない
  • 一部の社員しかAIを使っておらず、社内に広がらない
  • AIに社内の情報を入れてよいのか判断できない

主な特徴は次のとおりです。

  • 指示文(プロンプト)の書き方を基礎から学べる:AIに何をどう伝えればよいかを、例を使って学びます。目的に合った答えを引き出す考え方を身につけます。
  • 自社の業務に合わせた題材で練習できる:メール作成や資料のまとめなど、日々の仕事を題材にした演習を行うものが一般的です。題材を調整できるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 安全な使い方のルールにも触れる:入れてはいけない情報や、答えをそのまま使わず確認する大切さを学びます。社内ルールづくりのきっかけになります。

資料で確かめたいことの例です。

  • 研修の形式(対面かオンラインか)と時間
  • 受講人数ごとの費用と、追加費用の有無
  • 社内で使っているAIツールに合わせた内容か

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主な特徴は次のとおりです。

  • 業務ごとに指示文(プロンプト)が用意されている:議事録やメールの下書きなど、業務ごとに使える指示文が用意されています。指示の書き方に慣れていない社員も使い始めやすくなります。
  • 社内で使い方を共有できる:よく使う指示文を社内で共有できるものが一般的です。うまくいった使い方を広げやすくなります。
  • 会社として利用を管理できる:誰がどのように使っているかを管理者が確認できる製品があります。管理機能や情報の扱いは製品によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいことの例です。

  • 利用人数ごとの料金と、利用量による追加費用の有無
  • 入力した情報がAIの学習に使われないか、保存先はどこか
  • 自社の業務に合った指示文を追加・編集できるか

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よくある質問

生成AIで書いたメールだと、相手に分かりますか?

文面だけで見分けられるとは限りません。ただし、相手との関係に合わない丁寧すぎる表現や、どこかで見たような言い回しが続くと、違和感を持たれることがあります。下書きを土台に、自分の言葉で手直しすることをおすすめします。

取引先の名前を入力してもよいですか?

社内ルールで認められた範囲で判断します。ルールがない場合は、名前や連絡先を「取引先A」のように置きかえて入力し、送る前に正しい名前に戻す方法が安全です。

英語のメールにも使えますか?

使えます。ただし、外国語の文面は、意図と違う意味になっていないかを確かめにくいものです。重要なメールは、外国語が分かる人に確認してもらいます。

社員が個人で使っている生成AIを、業務に使ってもよいですか?

入力した内容の扱いや設定を会社が確かめられないため、業務のメールには使わないよう社内ルールで示しておくのが安全です。会社として使ってよいサービスと設定を決めて、案内します。

生成AIで作ったメールに、AIを使ったことを書くべきですか?

社外に出す文章でAIを使ったことを示すかどうかは、取引先との関係や業界の慣行も踏まえて、社内ルールで方針を決めておくと迷いません。

参考資料