離職が続いている。社員が何に不満を持っているのか分からない。そうしたときに、まず検討されるのが従業員満足度調査です。

ただ、質問を並べて配るだけでは、本音は集まりません。結果を活かせなければ、次からは答えてもらえなくなります。この記事では、従業員満足度調査のやり方を7つの手順で整理し、質問の例、分析のコツ、よくある失敗、外部に任せるかどうかの判断基準まで解説します。

従業員満足度調査とは

従業員満足度調査は、社員が仕事、職場の環境、待遇、人間関係、会社の方針などにどの程度満足しているかを調べるものです。ES調査とも呼ばれます。ESは英語の「Employee Satisfaction」の略です。

目的は、社員の不満や改善してほしい点を数字と言葉で把握し、職場づくりに活かすことです。離職の兆しを早めにつかむ、施策の効果を確かめる、経営層に現場の状況を伝える、といった使い方があります。

社員が会社を離れる理由を知るうえで、公的な統計も参考になります。厚生労働省の調査では、令和7年に転職した人が前職を辞めた理由として、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.9%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.5%でした。男性は、定年・契約期間の満了などを除くと「給料等収入が少なかった」が9.9%で多くなっています(出典:厚生労働省「令和7(2025)年雇用動向調査結果の概況」)。

令和7年に転職した人が前職を辞めた主な理由の割合を男女別に示した表

労働条件、人間関係、給与は、いずれも従業員満足度調査で聞く分野と重なります。調査は、こうした離職の理由が自社で起きていないかを、辞める前に確かめる手段といえます。

似た調査との違い

従業員満足度調査と混同されやすい調査に、エンゲージメント調査、パルスサーベイ、ストレスチェックがあります。目的と頻度が異なるため、違いを整理しておきます。

調査主に測るもの頻度の例位置づけ
従業員満足度調査仕事や待遇、環境への満足の度合い年1回など会社が任意で行う
エンゲージメント調査会社や仕事への愛着、貢献したい気持ち年1〜2回など会社が任意で行う
パルスサーベイ短い質問で状態の変化を追う週1回〜月1回など会社が任意で行う
ストレスチェック心理的な負担の程度年1回労働安全衛生法にもとづく制度

このうちエンゲージメントについて、厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」は、ワーク・エンゲイジメントと新入社員の定着率や離職率の低下などに正の相関がみられると分析しています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」)。満足度調査とあわせて見ると、不満の解消と意欲の向上の両面から職場を点検できます。

ストレスチェックは、2015年から労働安全衛生法で事業者に実施が義務づけられています。現在は常時50人以上の労働者がいる事業場が対象ですが、2025年5月の法改正により、2028年4月1日からは50人未満の事業場でも義務になります(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」)。ストレスチェックの結果は本人の同意なく会社が見ることはできないため、従業員満足度調査とは分けて設計します。

結果の扱いについて、労働安全衛生法は次のように定めています。

この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の10第2項

従業員満足度調査にストレスチェックと同じ質問を混ぜると、個人の心身の状態を会社が直接集める形になりかねません。目的の異なる2つの調査は、実施する人も、結果を見る人も分けておくと安心です。

調査を始める前に決めておくこと

調査の質は、配る前の準備でほぼ決まります。次の5つを先に決めておきます。

  1. 目的:何を知り、結果を何に使うのか。離職の原因を探る、制度の見直しに使う、など
  2. 対象:正社員だけか、パートや契約社員も含めるか
  3. 頻度:年1回か、半年ごとか。前回と比べられるように続ける前提で決める
  4. 匿名性:個人が特定されないよう、どこまで属性を聞くか
  5. 結果を見る人:誰が回答のデータを見て、誰に何を共有するか

回答に氏名や社員番号などがひもづく場合、回答は個人情報になります。個人情報保護法は、個人情報を扱うときは利用目的をできる限り特定し、その範囲を超えて扱わないことを求めています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第17条・第18条)。具体的な考え方は個人情報保護委員会のガイドラインで確認できます(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。調査の案内では、回答を何に使うのかを明記しておきます。

特に目的は大切です。目的があいまいなまま始めると、質問が増えすぎたり、結果を見ても次に何をすればよいか分からなかったりします。「結果を見て、何を決めたいのか」を一文で書けるようにしておきます。

従業員満足度調査のやり方7ステップ

全体の流れを先に確認しておきます。7つの手順は、準備、案内、実施、改善の4つの段階に分けて考えると進めやすくなります。

従業員満足度調査の7つの手順を準備・実施・分析・共有の4段階にまとめた図

ステップ1:目的と仮説を決める

目的に加えて、「おそらくここに課題がある」という仮説を立てます。たとえば「若手の離職が多いのは、評価の基準が見えないからではないか」といった形です。仮説があると、聞くべき質問が絞り込めます。

ステップ2:質問をつくる

質問は、仕事内容、上司、人間関係、評価、待遇、働き方、成長、会社の方針などの分野に分けてつくります。回答に10分から15分ほどかかる量が一つの目安です。多すぎると後半の回答が雑になります。

聞き方は具体的にします。「職場に満足していますか」より、「上司は日頃からあなたの意見を聞いてくれますか」のように、行動や場面で聞く方が答えやすく、改善にもつなげやすくなります。回答は5段階などの尺度で選んでもらい、最後に自由記述欄を設けます。

ステップ3:実施の方法を決める

方法には、紙のアンケート、無料のフォーム作成ツール、調査専用のサービスがあります。人数が少なければ無料のフォームでも始められます。部署別の集計や前回との比較を続けたい場合は、専用のサービスの方が手間を抑えられます。

ステップ4:社員に目的を伝える

配る前に、経営者や人事から調査の目的を伝えます。「人事評価には使わない」「個人が特定される形では共有しない」「結果と改善の方針を必ず報告する」の3点を明言すると、安心して答えてもらいやすくなります。

ステップ5:実施する

回答の期間は1〜2週間ほど取ります。繁忙期は避け、勤務時間内に回答してよいことを伝えます。途中で回答率を確認し、低い部署には案内をもう一度送ります。

ステップ6:集計・分析する

まず全体の傾向を見てから、部署や年代、勤続年数ごとの違いを見ます。2回目以降は前回からの変化も確認します。分析のコツは次の章で詳しく解説します。

ステップ7:結果を共有し、改善につなげる

結果は、調査から1か月以内を目安に社員へ共有します。良かった点、課題、これから取り組むこと、今回は取り組まないことと理由までを伝えます。改善の取り組みを決めたら、担当者と期限を決め、次回の調査で変化を確かめます。

結果を共有しないまま次の調査を行うと、「答えても何も変わらない」と受け止められ、回答率が下がります。小さな改善でも、実行したことを伝えることが次の調査の信頼につながります。

従業員満足度調査の質問項目の例

分野ごとの質問の例を紹介します。すべてを使う必要はありません。目的と仮説に合わせて選び、自社の言葉に直して使います。

分野質問の例
仕事内容今の仕事にやりがいを感じますか。自分の能力を活かせていると感じますか
上司上司は日頃からあなたの意見を聞いてくれますか。仕事の進め方について適切な助言がありますか
人間関係困ったときに相談できる同僚がいますか。部署を越えて協力しやすいですか
評価評価の基準は分かりやすいですか。評価の結果に納得できていますか
待遇給与は仕事の内容に見合っていると感じますか。福利厚生は役に立っていますか
働き方残業の量は適切だと感じますか。休みを取りたいときに取れますか
成長新しいことを学ぶ機会がありますか。今後のキャリアを描けていますか
会社の方針会社の目指す方向を理解していますか。経営層の説明に納得していますか
総合この会社で働き続けたいと思いますか。親しい人にこの会社を勧めたいと思いますか

最後の「親しい人に勧めたいか」は、0から10の11段階で聞く方法がよく使われます。9〜10を付けた人の割合から、0〜6を付けた人の割合を引いた値は、eNPSと呼ばれる指標です。回を重ねて推移を見ると、全体の変化をつかみやすくなります。

質問づくりに使える公的な資料

一から質問を考えるのが難しい場合は、公的な資料を参考にする方法があります。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、職業性ストレス簡易調査票にもとづく57問のセルフチェックが公開されています。仕事の負担、周りの支え、満足度などの分野に分かれており、質問の分野や聞き方を考える参考になります(出典:厚生労働省 こころの耳「5分でできる職場のストレスセルフチェック」)。

ただし、これはストレスの状態を本人が確かめるためのものです。従業員満足度調査にそのまま流用するのではなく、自社の目的に合わせて分野や表現を選び直して使います。

属性の聞き方に注意する

部署、年代、勤続年数などの属性は分析に役立ちますが、細かく聞きすぎると個人が特定されます。たとえば社員が3人しかいない部署で年代まで聞くと、誰の回答か分かってしまいます。属性は大まかな区分にし、人数が少ない区分は集計の際にまとめます。

集計・分析のコツ

全体、属性、推移の順に見る

最初に全体の平均や分布を見て、どの分野の満足度が低いかを確かめます。次に部署や年代ごとの差を見ます。2回目以降は前回からの変化を見ると、施策の影響を確かめやすくなります。

満足度と重要度を組み合わせる

満足度が低い項目すべてに手を打つのは現実的ではありません。そこで、各項目について「どのくらい大切か」もあわせて聞き、満足度と重要度の2軸で整理します。重要度が高いのに満足度が低い項目が、優先して取り組むべき課題です。

この整理の仕方は、総務省統計局が顧客満足度調査の分析手法として紹介している「CSポートフォリオ分析」と同じ考え方です。統計局の解説では、手法の目的を次のように説明しています。

より効率的に顧客満足を高めていくためには、顧客の満足な点と不満な点を把握した上で、満足な点はより伸ばし、不満な点に対してはどの不満について優先的に対応するかなどを判断することが必要になります。

出典:総務省統計局「なるほど統計学園 顧客満足度の把握」

「顧客」を「社員」に置き換えると、従業員満足度調査にもそのまま使えます。統計局の解説では、重要度を総合満足度と各項目の満足度との相関係数で求める方法が紹介されています。重要度を別の質問で聞く方法と比べて、質問数を増やさずに済む点が利点です。

自由記述は分類して読む

自由記述には、数字では見えない具体的な不満や提案が書かれます。一つずつ読むだけでなく、評価、上司、働き方などの分野に分けて件数を数えると、傾向がつかめます。厳しい意見も、書いた人を探そうとせず、内容に向き合うことが大切です。

結果を共有するときの伝え方

結果の共有は、数字を並べるだけでは伝わりません。次の順で伝えると、社員が受け止めやすくなります。

  1. 回答へのお礼と、回答率
  2. 満足度が高かった分野と、その理由として考えられること
  3. 満足度が低かった分野と、自由記述で多かった声の要約
  4. これから取り組むことと、担当者、時期
  5. 今回は取り組まないことと、その理由

部署ごとの結果は、まず部署の責任者と共有し、責任者から部署のメンバーに伝える形にすると、現場での話し合いにつながりやすくなります。責任者を責める材料にしないことも、事前に確認しておきます。

よくある失敗と、調査を急がなくてよいケース

調査は、準備の段階でつまずくと結果を活かせません。配る前に確かめたい点を、先に図で確認しておきます。

従業員満足度調査を実施する前に確認したい8項目のチェックリスト

よくある失敗

  • 質問が多すぎて、後半の回答が雑になる
  • 匿名と言いながら属性を細かく聞き、本音が書かれない
  • 結果を社員に共有せず、次の回答率が下がる
  • 毎回質問を大きく変えてしまい、前回と比べられない
  • 課題が見つかっても、担当や期限を決めずに終わる

調査を急がなくてよいケース

次のような状況では、調査を急ぐより先にやることがあります。

  • 結果を受けて改善に動ける担当者や予算がない
  • 大きな組織変更の直後で、職場が落ち着いていない
  • 社員が10人未満で、一人ひとりと面談した方が早く本音を聞ける
  • 前回の調査結果をまだ社員に共有していない

人数の少ない会社では、アンケートよりも定期的な1対1の面談の方が向いていることがあります。調査は、人数が増えて全員の声を直接聞くのが難しくなった段階で取り入れても遅くありません。

実施前のチェックリスト

  • 調査の目的と、結果を何に使うかを一文で書ける
  • 質問は15分以内で答えられる量に収まっている
  • 属性の区分で、個人が特定されないことを確認した
  • 人事評価に使わないことを社員に伝える準備がある
  • 回答のデータを見る人を限定した
  • 結果を共有する日程を決めた
  • 改善に取り組む担当者を決めた
  • 次回の実施時期を決め、同じ質問で比べられるようにした

自社で行うか、外部に任せるか

従業員満足度調査は、自社だけでも実施できます。一方で、外部のサービスを使うと、設問づくりや分析の手間を減らせます。主な違いを整理します。

方法向いている会社費用の考え方注意点
自社で無料のフォームを使う人数が少なく、まず試したいツールの費用はほぼかからないが、設計と集計に社内の時間がかかる担当者が回答を見られるため、匿名性への不安が出やすい
調査専用のサービスを使う部署別の分析や継続的な比較をしたい人数や機能に応じた月額や年額が多い使いこなすための時間が必要
調査と分析を外部に任せる社内に分析できる人がいない、第三者の視点がほしい調査の範囲、人数、報告の内容で変わる任せきりにせず、改善は自社で進める

料金は提供会社や内容によって異なるため、ここでは考え方だけを示しています。見積もりを取るときは、対象人数、設問の設計を任せるかどうか、報告書や報告会の有無をそろえて比べます。

外部に任せる利点は、回答を社外の第三者が扱うことで、社員が本音を書きやすくなる点にもあります。従業員の声だけでなく、顧客の声もあわせて見たい場合は、顧客と従業員へのアンケートを集めて分析し、満足度や改善点を見える化するサービスのように、両方を扱えるサービスを選ぶ方法もあります。

外部サービスを選ぶときの判断基準

  1. 匿名性の守り方:回答のデータを誰が見られるか、どう管理するかが説明されているか
  2. 設問の柔軟さ:自社の課題に合わせて質問を変えられるか
  3. 分析の分かりやすさ:結果が、経営層や現場に共有しやすい形で出てくるか
  4. 改善への支援:結果をもとにした施策の相談ができるか
  5. 続けやすさ:毎年同じ条件で実施し、推移を比べられるか

回答データの取扱いを外部の会社に任せる場合、任せる側の会社は委託先に対して必要かつ適切な監督を行う必要があります(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第25条)。契約の前に、データの保管場所、保存期間、削除の方法を確かめておきます。

あわせて読みたい

ツナグバで、従業員満足度調査のサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスの資料を無料でまとめて請求できるサイトです。気になるサービスを選ぶと、資料を一度に取り寄せられます。

調査の分野では、顧客や従業員へのアンケートを集めて分析し、満足度や改善点を見える化するサービスを掲載しています。顧客満足と従業員満足を高めたい企業に向けたサービスです。調査の進め方や報告の形を、資料で確かめてみてください。

こんな課題があれば

  • お客様の不満が、解約やクレームになってから初めて分かっている
  • 社員の満足度を聞く機会がなく、退職の理由を後から知ることが多い
  • アンケートを取っても集計に手間がかかり、結果を改善に生かせていない

掲載サービスでできること

  • アンケートの作成から回収までをまとめて行える:質問の作成、配信、回答の回収を一つの仕組みで行えます。紙や手作業の集計に比べて、回収後の手間を抑えられます。
  • 結果をグラフなどで見える化できる:回答結果を、部署別や時期別などに分けて見られます。どのような分析ができるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 改善点を見つける材料になる:満足度の変化や、不満の多い項目を把握できます。何から手を付けるかを社内で話し合う材料として使えます。

資料で確かめたいこと

  • 顧客向けと従業員向けのどちらに使えるか、両方使えるか
  • 質問を自社で自由に作れるか、決まった設問を使うのか
  • 匿名で回答できる仕組みがあるか
  • 回答者数や配信回数による料金の違い
  • 結果の読み方や改善の進め方を相談できるか

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

従業員満足度調査はどのくらいの頻度で行えばよいですか

年1回が一般的です。変化を細かく追いたい場合は、年1回の調査に加えて、短い質問のパルスサーベイを月1回ほど行う方法もあります。大切なのは、同じ質問で続けて比べられるようにすることです。

質問の数はどのくらいが適切ですか

回答に10分から15分ほどで終わる量が一つの目安です。初めて行う場合は、目的に関係の深い分野に絞り、少なめの質問から始めると回答の質を保ちやすくなります。

ストレスチェックの結果を満足度調査に使えますか

ストレスチェックの個人の結果は、本人の同意なく会社が見ることはできません(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の10)。目的も異なるため、従業員満足度調査とは別のものとして設計します。集団ごとの分析結果を職場の改善に使う方法はあります。厚生労働省は2026年6月に、集団分析の実施方法について労働安全衛生規則を改正しています(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」)。

回答率を上げるにはどうすればよいですか

調査の目的と、人事評価に使わないことを事前に伝えます。勤務時間内に答えてよいことも明言します。何より効くのは、前回の結果と改善の取り組みを共有することです。答えた意味があると感じてもらえると、次の回答率は上がりやすくなります。

参考資料