工事や仕事を予定どおりに進めるには、何を、いつ、誰が、どの順番で行うかを関係者で共有する必要があります。その道具になるのが工程表です。

一方で、工程表にはいくつもの種類があり、どれを使えばよいか迷うこともあります。作ったものの更新されず、現場の実態と合わなくなっている工程表もよく見かけます。

この記事では、工程表の種類と作り方を、表し方による違い、期間による使い分け、作成の手順の順に整理します。

建設工事については、国の工期に関する基準や、2024年4月から適用されている時間外労働の上限規制を踏まえた注意点もまとめました。工程表をExcelで作るか、専用のツールを使うかの判断の基準も解説します。

工程表とは|目的と使われる場面

工程表は、作業の順番と期間を一覧にした計画表です。建設工事のほか、製造、システム開発、イベントの準備など、複数の作業を期日までに終わらせる仕事で広く使われています。

工程表の目的は、大きく3つあります。全体の期間の中で、いつ何をするかを決めること。関係者の間で予定を共有すること。予定と実績を比べ、遅れに早く気づいて手を打つことです。

建設工事では、工程表は発注者と受注者、元請と協力会社をつなぐ共通の資料になります。中央建設業審議会の工期に関する基準も、民間工事の発注者、工事監理者、受注者がそれぞれ、工程表の円滑な運用を心掛けることを求めています(出典:国土交通省「工期に関する基準 新旧対照表」)。

工程表の種類|表し方による違い

工程表は、表し方によっていくつかの種類に分けられます。目的と工事の規模に合わせて選ぶことが大切です。

工程表の主な種類として、バーチャート、ガントチャート、曲線式、ネットワーク式の表し方と向いている使い方をまとめた図
種類表し方向いている使い方
バーチャート縦に作業、横に日付をとり、作業の期間を横棒で示す作業の数が多くない工事、日々の予定の共有
ガントチャート縦に作業、横に進み具合(%)をとり、達成度を横棒で示す各作業の進み具合の確認
グラフ式作業ごとの進み具合を、時間の経過に沿った線で示す作業ごとの進み方の比較
曲線式(出来高累計曲線)全体の出来高の累計を、時間の経過に沿った曲線で示す全体の進み具合と予定の差の確認
ネットワーク式作業の順番とつながりを、矢印と丸でつないで示す作業が多く、前後の関係が複雑な工事

バーチャート

最もよく使われる形です。作業ごとの開始日と終了日が一目で分かり、作る手間も比較的かかりません。一方で、作業どうしのつながりが分かりにくく、ある作業の遅れが全体にどう響くかを読み取りにくい面があります。

ガントチャート

建設の分野では、横軸に日付ではなく進み具合をとる表をガントチャートと呼ぶことがあります。各作業がどこまで進んでいるかは分かりやすい一方、いつ終わるかは読み取りにくくなります。

なお、IT分野などでは、横軸に日付をとった横棒の表をガントチャートと呼ぶことが多く、建設の分野のバーチャートとほぼ同じ意味で使われています。社内で言葉の意味をそろえておくと、行き違いを防げます。

曲線式とネットワーク式

曲線式は、全体の出来高が予定どおりに積み上がっているかを確かめるのに向いています。ネットワーク式は、作業の前後の関係を示すため、どの作業が遅れると全体の工期が延びるのか、つまりクリティカルパスを見つけやすいのが特長です。

ネットワーク式は作るのに知識と手間がかかります。大規模な工事や、作業が並行して進む工事で、バーチャートと組み合わせて使われることが多い方式です。

期間による種類|全体・月間・週間の使い分け

工程表は、扱う期間の長さによっても分けられます。

種類扱う期間主な使い方
全体工程表着工から完成まで工期全体の計画、発注者との共有
月間工程表1か月資材の手配、協力会社の調整
週間工程表1週間日々の作業の段取り、人員の割り当て

全体工程表で大きな流れを決め、月間、週間と細かくしていくのが一般的な進め方です。週間工程表は、現場の作業員や協力会社と日々の予定を合わせるための資料になります。

3つの工程表の内容がずれていると、現場が混乱します。週間工程表を変えたときは、月間工程表や全体工程表に影響がないかも確かめます。期間の短い工程表ほど、変更の回数が多くなります。変更をすぐに関係者へ伝えられる仕組みを用意しておくことが、運用のうえで大切です。

工程表の作り方|6つの手順

工程表は、次の手順で作ると、抜けや無理のない計画になりやすくなります。

工程表の作り方として、期日と条件を確かめる、作業を洗い出して順番を決める、日数を見積もって落とし込む、関係者と確認して共有するの4段階を示した図
  1. 完成の期日と条件を確かめる:工期、施工できない日や時間帯、発注者の希望を確認します。
  2. 作業を洗い出す:必要な作業を書き出し、大きな作業を細かい作業に分けます。
  3. 作業の順番を決める:どの作業が終わらないと次に進めないか、前後の関係を整理します。
  4. 作業ごとの日数を見積もる:作業量、人員、機械、天候の影響を踏まえて日数を見積もります。
  5. 工程表に落とし込む:日付に沿って作業を並べ、全体の期間に収まるかを確かめます。
  6. 関係者と確認し、共有する:発注者、協力会社、現場の担当者と内容を確かめます。

日数の見積もりで考えておくこと

国土交通省の資料は、工期を準備、施工、後片付けの3段階に分けて考えることを示しています。準備では資材の調達や人材の確保の時間を、後片付けでは完了検査や清掃、借地の原形復旧の期間を見込むとされています(出典:国土交通省「建設工事における適正な工期の確保に向けて」)。

同じ資料は、すべての工程で考えるべき事項として、降雨・降雪などの自然要因、週休2日の確保などの休日、年末年始やお盆、近接施工などの現場条件、行政への申請期間を挙げています(出典:国土交通省「建設工事における適正な工期の確保に向けて」)。

仕上げや塗装、設備の工事は、前の工程の遅れのしわ寄せを受けやすい工程です。後半の作業に余裕を持たせておくと、全体の工期を守りやすくなります。

雨の日の見込み方の例として、中央建設業審議会のワーキンググループでは、土木工事の工期を、準備期間、施工の実日数に1.14をかけた日数(降雨の割増)、後片付けの期間で算定する東京都の取り組みが紹介されています(出典:国土交通省「中央建設業審議会 工期に関する基準の作成に関するワーキンググループ(第2回)」)。自社でも、過去の工事の実績から、天候による遅れをどの程度見込むかを決めておくと、見積もりのぶれを減らせます。

工程表に書いておきたい項目

工程表には、作業名と期間のほかに、次の項目を書いておくと、関係者が同じ情報で動けるようになります。

  • 作業ごとの担当(自社の担当者、協力会社)
  • 作業を始めるために必要な前の作業
  • 資材の搬入日や、検査・立会いの予定日
  • 作業をしない日(休日、施工できない日や時間帯)
  • 工程表の作成日と版の番号

特に作成日と版の番号は、最新の工程表がどれかを見分けるために欠かせません。古い工程表で作業してしまうことを防げます。

建設工事の工程表で押さえたい工期のルール

建設工事の工程表は、社内の計画であると同時に、契約の工期と結びついています。国の基準や法令のルールを知っておくことが欠かせません。

中央建設業審議会は、令和2年7月に工期に関する基準を作り、令和6年3月に改定しています。基準の位置づけは、次のように示されています。

本基準は、適正な工期の設定や見積りにあたり発注者及び受注者(下請負人を含む)が考慮すべき事項の集合体であり、建設工事において適正な工期を確保するための基準である。

出典:中央建設業審議会「工期に関する基準」(令和6年3月27日最終改定)

この基準は、数値で工期を決めるものではなく、休日、天候、準備や後片付けの期間など、考慮すべき事項をまとめたものとされています(出典:国土交通省「中央建設業審議会 工期に関する基準の作成に関するワーキンググループ(仮称)の設置について」)。工程表を作るときのチェックリストとしても使えます。

著しく短い工期の禁止

建設業法は、通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間を工期とする請負契約を禁じています。国土交通省のガイドラインは、受注者の側も、著しく短い工期で請負契約を結んではならないことを示しています(出典:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」)。

著しく短いかどうかは、工期に関する基準などに照らして個別に判断されるとされています(出典:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」)。根拠のある工程表を作っておくことは、適正な工期を説明する材料にもなります。

工程ごとの日数を見積もる

建設業者は、見積りの際に、工程の細目ごとの作業とその準備に必要な日数を明らかにするよう努めることとされています(出典:国土交通省 九州地方整備局「民間発注者の皆様へ~建設工事発注時の留意事項及び改正建設業法等の概要~」)。作業ごとの日数を見積もった工程表は、そのまま見積りの根拠として使えます。

時間外労働の上限規制と工程表

建設業では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。工程表の作り方にも影響する大きな変化です。

厚生労働省による建設業の時間外労働の上限として、原則月45時間・年360時間、特別な事情がある場合の年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間、年6か月までの条件をまとめた表

厚生労働省によると、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)とされ、原則を超えられるのは年6か月までです。災害時の復旧・復興の事業には、月100時間未満と複数月平均80時間以内の規制は適用されません(出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)。

項目上限
原則月45時間・年360時間
特別の事情がある場合の年間年720時間以内
単月100時間未満(休日労働を含む)
複数月の平均80時間以内(休日労働を含む)
原則を超えられる月年6か月まで

令和6年3月の工期に関する基準の改定では、当初の契約と変更の契約のどちらでも、時間外労働の規制を守れる人員や工程ごとの工期を前提とすることが求められています(出典:国土交通省「工期に関する基準 新旧対照表」)。

残業や休日の作業で遅れを取り戻すことを前提にした工程表は、規制のもとでは成り立ちにくくなっています。週休2日を前提にした日数で工程を組み、遅れたときの対応を早めに話し合える体制をつくることが大切です。

工程表を運用するコツ|共有と更新

工程表は、作ったときよりも、運用している間に価値が出ます。工期に関する基準は、工程の考え方の共有について次のように述べています。

公共工事においては発注者が発注時に参考資料として概略工程表を提示し、受注者と工期の設定の考え方を共有する取組が行われているところであり、公共工事、民間工事を問わず、このような工程管理に資する取組を推進する。

出典:中央建設業審議会「工期に関する基準」(令和6年3月27日最終改定)

発注者と受注者が、工期の前提をそろえておくと、遅れや変更が起きたときの話し合いが進めやすくなります。同じ基準は、工程に遅れを生じさせるような事象が起きた場合に、受注者が速やかに発注者へ報告することも求めています(出典:国土交通省「工期に関する基準 新旧対照表」)。

運用のチェックリスト

  • 最新版の工程表がどれか、関係者のだれもが分かる
  • 予定の変更が、その日のうちに現場と協力会社に伝わる
  • 予定と実績を、週に1回は比べている
  • 遅れが出たときに、だれに、いつ報告するかが決まっている
  • 天候や資材の遅れなど、遅れの理由を記録している

現場ごとの予定と人員の割り当てを電話や紙で調整していると、変更が伝わらず、現場で行き違いが起きがちです。予定と人の割り当てを一つの画面で共有したい場合は、ツナグバ掲載の現場の予定管理に特化したスケジュール管理システムも比較の候補になります。

Excelで作るか、ツールを使うか|判断の基準

工程表は、Excelなどの表計算ソフトでも作れます。どちらが合うかは、現場の数と、変更の多さで考えると判断しやすくなります。

比べる点表計算ソフト専用のツール
始めやすさすぐに始められる導入と設定の手間がかかる
変更の共有ファイルを送り直す必要がある変更が関係者の画面に反映されるものが一般的
現場からの確認ファイルを開ける端末が必要スマートフォンで見られるものが多い
費用ソフトの費用のみ利用料がかかる

Excelで十分なケース

  • 現場の数が少なく、工程の変更があまりない
  • 工程表を見る人が、社内の数人に限られている
  • まずは工程表を作る習慣を社内に定着させたい

ツールを検討したいケース

  • 複数の現場が同時に動き、人員の割り当てが重なりやすい
  • 予定の変更が多く、電話での連絡に時間がかかっている
  • 写真や図面、工程表の最新版がどれか分からなくなることがある

ツールを入れても、工程の考え方が整理されていなければ効果は出ません。まずは手順に沿って工程表を作り、どこに手間がかかっているかを確かめてから、ツールを比べてください。

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  • 協力会社など社外の人も使えるか、その場合の費用はどうなるか
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よくある質問

バーチャートとガントチャートは、どう違いますか?

建設の分野では、横軸に日付をとるものをバーチャート、横軸に進み具合をとるものをガントチャートと呼び分けることがあります。IT分野などでは、日付を横軸にとる表をガントチャートと呼ぶことが一般的です。社内で呼び方をそろえておくと安心です。

工程表は、だれが作るものですか?

建設工事では、施工を受け持つ受注者が作るのが一般的です。発注者が工期の考え方を示すために、概略の工程表を示す取り組みもあります。

工程が遅れたときは、どうすればよいですか?

遅れの理由と影響の範囲を確かめ、速やかに発注者や関係者に報告します。発注者の責めに帰すべき理由による遅れであれば、工期の変更について協議することが求められています。

工程表のテンプレートは使ってもよいですか?

使ってかまいません。ただし、作業の洗い出しや日数の見積もりは、工事ごとに行う必要があります。テンプレートの日数をそのまま使うと、天候や休日の条件が反映されないことがあります。

工程表は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?

週間工程表は毎週、月間工程表は毎月、全体工程表は大きな変更があったときに見直すのが目安です。天候や資材の遅れで予定が変わったときは、その都度、関係する工程表を直し、版の番号を更新して共有します。

参考資料