表計算ソフトで管理している顧客の一覧や日報が、担当者ごとにばらばらになっている。紙の申請書を回すのに時間がかかる。こうした業務を、自社に合ったアプリにしたいと考える会社が増えています。

とはいえ、システム会社に開発を頼むと費用も時間もかかります。そこで注目されているのが、プログラムを書かずに業務アプリを作れる「ノーコード」です。

この記事では、ノーコードとは何か、ローコードとの違い、作れる業務アプリの例、メリットとデメリット、導入の進め方、セキュリティと管理のルールを順に整理します。

ノーコードが向いていないケースもあわせてまとめました。導入を考える前の確認に使ってください。

ノーコードとは|プログラムを書かずに業務アプリを作る方法

ノーコードとは、プログラムのコードを書かずに、画面の上で部品を並べたり、項目や条件を設定したりして、アプリや業務の仕組みを作る方法です。ノーコードのためのツールの多くはクラウドのサービスとして提供されていて、ブラウザから使えます。

入力の画面、一覧の表示、承認の流れ、通知といった業務アプリでよく使う機能が部品として用意されています。業務を知っている現場の担当者が、自分でアプリを作ったり直したりできる点が特徴です。

ノーコードやローコードの活用は、企業の間で広がりつつあります。情報処理推進機構(IPA)の調査の分析では、次のように報告されています。

ノーコード/ローコードの活用も広がりつつあり、「一部利用」を含めると、全体の約4割の企業がこれらの手法を取り入れている。

出典:情報処理推進機構(IPA)「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」

同じ分析では、開発の手法は依然としてウォーターフォール型が主流であるとも述べられています(出典:情報処理推進機構(IPA)「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」)。同じ分析では、パッケージソフトやノーコード・ローコードといった開発手法について、システムを使う側の企業でも比較的活用の意欲が高いとされています(出典:情報処理推進機構(IPA)「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」)。

ノーコードは、従来の開発をすべて置きかえるものではなく、選択肢の一つとして使われ始めている段階と考えるとよいでしょう。

ローコード・従来の開発との違い

ノーコードとよく比べられるのが「ローコード」です。ローコードは、画面の操作を中心にしながら、必要に応じて少しのプログラムを書いて機能を足せる方法です。

ノーコード、ローコード、従来の開発の違いを、プログラムの知識、作る人、自由度、期間、向いている業務で比べた表
比べる点ノーコードローコード従来の開発
プログラムの知識ほとんど不要一部で必要必要
作る人現場の担当者社内のIT担当者、開発会社開発会社、社内の開発者
作れるものの自由度ツールの機能の範囲内ノーコードより広い最も広い
作るまでの期間短い中くらい長い
向いている業務部署の中の定型的な業務複数の部署にまたがる業務会社の中心となる大きな業務

どれがよいかは、作りたいものの規模と、社内に誰がいるかで決まります。部署の中の小さな業務から始めるならノーコード、ほかのシステムとの複雑な連携が必要ならローコードや開発会社への依頼、という形で使い分けます。

ノーコードで作れる業務アプリの例

ノーコードで作られることが多いのは、データを入力し、一覧で見て、必要に応じて承認や通知をする業務アプリです。たとえば次のようなものがあります。

業務アプリの例
営業顧客の管理、商談の記録、見積もりの依頼
総務・人事備品の貸し出し、各種申請と承認、入社の手続きの管理
現場の作業日報、点検の記録、写真つきの作業報告
問い合わせ対応問い合わせの受付、対応の状況の管理、担当者への通知
社内の情報共有社内の手順書、よくある質問の一覧、案件の進み具合

表計算ソフトで管理している業務や、紙で回している申請は、ノーコードに置きかえやすい業務です。複数の人が同時に入力する、過去の記録を探すのに時間がかかる、といった困りごとがある業務から検討するとよいでしょう。

ノーコードのツールの中には、アプリを作るものだけでなく、すでに使っている複数のアプリをつなぎ、情報の受け渡しや通知を自動で行うものもあります。あるシステムの情報を別のシステムに手で入力し直している場合は、こうした仕組みも選択肢になります。

ノーコードのメリット

ノーコードを使うと、次のような利点があります。

  • 業務を知っている人が、自分で作れる:現場の担当者が作るため、使う人の困りごとを反映しやすくなります。
  • 早く作れて、すぐ直せる:小さく作って使いながら直す進め方がしやすく、業務の変化にも合わせやすくなります。
  • 開発を外部に頼む費用を抑えられることがある:小さな業務であれば、開発会社に頼まずに済む場合があります。
  • 情報が一か所に集まる:担当者ごとにばらばらだった表計算のファイルを、一つのアプリにまとめられます。

社内でシステムを作る力は、公的な調査でも取り上げられています。IPAは「DX動向2025」で、DXを進める人材の量と質の充足状況や、システム開発の内製化について課題も含めて取り上げています(出典:情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」)。IPAの調査の分析でも、内製化を進めるうえでの課題として、人材の確保や新しい技術への対応が挙げられています(出典:情報処理推進機構(IPA)「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」)。ノーコードは、こうした内製化の入り口の一つになります。

ノーコードのデメリットと注意点

便利な一方で、ノーコードには注意したい点もあります。導入してから困らないよう、先に確かめておきます。

作った人しか分からないアプリが増える

現場の担当者が自由に作れる反面、誰が何のために作ったか分からないアプリが社内に増えることがあります。作った人が異動や退職をすると、直せる人がいなくなります。

経済産業省のDXレポートは、老朽化や複雑化、ブラックボックス化したシステムを「レガシーシステム」と呼び、その課題を指摘しています(出典:経済産業省「DXレポート(サマリー)」)。同じレポートは、この課題を克服できない場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性を「2025年の崖」として示しました(出典:経済産業省「DXレポート(サマリー)」)。ノーコードで作ったアプリも、管理のルールがなければ、小さなブラックボックスになりかねません。

ツールの機能の範囲でしか作れない

ノーコードで作れるのは、ツールが用意している機能の範囲内です。業務が複雑になるほど、ツールに合わせて業務を変えるか、ほかの方法を使うかを判断する必要が出てきます。

利用の人数やデータの量で費用が変わる

ノーコードのツールは、使う人の数や、作れるアプリの数、データの量などで料金が決まるものが多くあります。小さく始めたときは安くても、使う人が増えると費用も増えます。料金の決まり方は製品によって違うため、将来の利用人数も見込んで比べます。

ツールを替えにくい

作ったアプリやデータは、そのツールの中でしか動かないことがほとんどです。ほかのツールに移ろうとすると、作り直しが必要になります。データを書き出せるか、書き出した形式はほかでも使えるかを、導入前に確かめておきます。

導入の前に|自社のデジタル化の段階を確かめる

ノーコードを導入する前に、自社の業務がどこまでデジタル化できているかを確かめておくと、何から始めればよいかが見えてきます。中小企業白書は、中小企業のデジタル化の取組状況を4つの段階に分けて示しています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。

中小企業白書が示す中小企業のデジタル化の取組状況の4つの段階をまとめた表
段階状態
段階1紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態
段階2アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態
段階3デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態
段階4デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態

白書では、2023年の調査と比べて、段階1と答えた事業者の割合が大きく減っているとされています。ただし、調査の対象が異なるため、単純には比べられないとの注意書きもあります(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。

ノーコードは、段階2から段階3に進むときに力を発揮しやすい方法です。紙や口頭の業務が多い段階1の会社では、ツールを入れる前に、業務の流れを書き出して整理することが先になります。

同じ白書では、どの取組段階でも「費用の負担が大きい」または「DXを推進する人材が足りない」と答える事業者の割合が高いとされています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第1部第1章第5節 デジタル化・DX」)。ノーコードは人材の不足を補う手段の一つですが、作る人と管理する人を社内で決めておかなければ、同じ壁に当たります。

経済産業省は、企業のDXに関する自主的な取組を促すため、経営者に求められる対応を「デジタルガバナンス・コード」としてまとめています(出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」)。DXレポートやDX推進指標など、DXに関する国の資料は、経済産業省のページにまとめて掲載されています(出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーション(DX)」)。ノーコードの導入も、現場任せにせず、経営として何を目指すのかを決めておくことが大切です。

ノーコード導入の進め方|5つのステップ

ノーコードは、いきなり会社全体で使い始めるのではなく、小さな業務から試すのが基本です。次の順番で進めます。

ノーコード導入の進め方を、業務を一つ選ぶ、業務の流れを書き出す、試作する、少人数で使って直す、管理のルールを決めて広げるの5段階で示した図
  1. 業務を一つ選ぶ:手作業が多く、困っている人が多い業務を一つ選びます。最初は、1つの部署の中で完結する業務が向いています。
  2. 業務の流れを書き出す:誰が、いつ、何を入力し、誰が確認するのかを紙に書き出します。ここを飛ばすと、使いにくいアプリになります。
  3. 無料の試用などで試作する:ツールの試用期間などを使って、実際の業務の一部を作ってみます。
  4. 少人数で使って直す:数人で実際に使い、入力しにくい項目や足りない機能を直します。
  5. 管理のルールを決めて広げる:作る人、管理する人、データの扱い方を決めてから、ほかの部署にも広げます。

アプリを作るだけでなく、すでに使っているアプリ同士をつないで、転記や連絡を自動で行いたい場合もあります。社内のアプリの連携と業務の自動化を検討したい場合は、ツナグバ掲載の社内のアプリをつなぎ、業務を自動化するツールも比較の候補になります。

パソコンの画面の上で行う決まった操作をくり返す作業であれば、RPA(パソコン作業を自動で行うソフト)も選択肢です。ノーコードは新しい業務アプリを作る方法、RPAはいまの画面の操作をそのまま自動にする方法、と考えると使い分けやすくなります。

セキュリティと管理のルール

ノーコードのツールには、顧客の情報や社員の情報など、大切なデータを入れることになります。誰でもアプリを作れるからこそ、管理のルールが欠かせません。

IPAの中小企業向けのガイドラインは、その位置づけを次のように説明しています。

「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」(以下「本ガイドライン」)は、情報セキュリティ対策に取り組む際の、(1)経営者が認識し実施すべき指針、(2)社内において対策を実践する際の手順や手法をまとめたものです。

出典:情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」

このガイドラインには、付録として「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」が用意されています(出典:情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。クラウドで提供されるノーコードのツールを使うときの確認にも役立ちます。

顧客や社員の個人データを扱う場合は、個人情報保護法の安全管理措置にも気をつける必要があります。

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」

ノーコードを社内で使うときは、少なくとも次のルールを決めておきます。

  • アプリを作ってよい人と、作る前に相談する窓口
  • 作ったアプリの一覧と、それぞれの管理者
  • アプリごとに、データを見られる人と編集できる人の範囲
  • 個人情報を入れてよいアプリと、入れてはいけないアプリ
  • 社員の異動や退職のときに、アカウントと管理者を引き継ぐ手順
  • 外部のサービスとつなぐときの確認の手順

ツール選びのチェックポイント

ノーコードのツールは数多くあり、得意な分野もそれぞれ違います。比べるときは、次の点を確かめます。

確かめる点見るポイント
作りたいアプリ作りたい業務のアプリが、用意されている機能で作れるか
使いやすさ現場の担当者が、説明を受けながらでも作れそうか
連携いま使っている表計算ソフトやメール、ほかのシステムとつなげられるか
料金利用人数、アプリの数、データの量で料金がどう変わるか
権限の管理アプリごと、項目ごとに、見られる人と編集できる人を分けられるか
データの書き出しデータを一般的な形式で書き出せるか
サポート日本語での問い合わせや、導入の相談ができるか

試用期間があるツールでは、実際に選んだ業務で試作してから決めるのが確実です。画面の見た目や機能の多さよりも、自社の業務を無理なく載せられるかを重視します。

ノーコードが向いていないケース

ノーコードは万能ではありません。次のような場合は、ほかの方法を検討したほうがよいことがあります。

  • 会社の中心となる大きな業務で、複雑な処理や大量のデータを扱う
  • 法令や取引先の決まりに合わせて、細かな仕様が求められる
  • アプリを作る人も、管理する人も、社内に置けない
  • 業務の流れがまだ決まっておらず、人によってやり方が違う
  • いま使っている表計算ソフトの管理で、特に困っていない

特に最後の場合は、無理に導入する必要はありません。表計算ソフトのファイルの置き場所や名前のつけ方を決めるだけで、困りごとが解決することもあります。ノーコードは、困りごとがはっきりしている業務に使ってこそ効果が出やすい手段です。

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ツナグバで、業務の自動化のサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

ITツール・SaaSの分野では、社内のアプリをつなぎ、業務を自動化するツールを掲載しています。プログラムを書かずに画面上で処理の流れを設定でき、手作業の転記や関係者への連絡の手間を減らせます。あわせて、パソコンの定型作業を自動化する国産のRPAツールも掲載しています。作った自動化の手順を複数の人で共有・管理でき、担当者が変わっても引き継ぎやすいものです。

連携できるアプリ、料金の決まり方、設定の支援の有無は、資料で確認できます。

社内のアプリをつなぎ、業務を自動化するツール

こんな課題に向いています。

  • あるシステムの情報を、別のシステムに手で入力し直している
  • 問い合わせが届くたびに、担当者へ手作業で連絡している
  • 社内で使うアプリが増え、情報がどこにあるか分からなくなっている

主な特徴は次のとおりです。

  • 複数のアプリやシステムをつなげる:社内で使っているアプリ同士を連携させ、情報を受け渡せます。どのアプリと連携できるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 転記や連絡を自動で行える:ある操作をきっかけに、決まった処理を自動で行う設定ができます。手作業の転記や、関係者への連絡の手間を減らせます。
  • 画面上で処理の流れを組み立てられる:プログラムを書かずに、画面上で処理の流れを設定できるものが一般的です。ただし設定には、業務の流れを整理しておくことが欠かせません。

資料で確かめたいことの例です。

  • いま使っているアプリやシステムと連携できるか
  • 料金が処理の回数や件数で変わるか、上限はあるか
  • 設定を社内の担当者が行えるか、支援を受けられるか

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複数人で使える国産のRPAツール

こんな課題に向いています。

  • 毎日の転記や集計に時間を取られ、本来の仕事に手が回らない
  • 自動化を試したいが、社内に専門知識を持つ人がいない
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主な特徴は次のとおりです。

  • パソコンの定型作業を自動化できる:RPA(パソコン作業を自動で行うソフト)を使い、決まった手順のくり返し作業を任せられます。入力や転記、ファイルの整理などが対象になります。
  • 複数人で使うことを前提にしている:作った自動化の手順を、複数の人で共有したり管理したりできます。担当者が変わっても、仕組みを引き継ぎやすくなります。
  • 国産のため日本語で使える:画面や説明書、問い合わせ窓口が日本語に対応しています。サポートの範囲や対応時間は製品によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいことの例です。

  • 自動化したい作業に、いま使っているソフトが対応しているか
  • 料金が利用人数ごとか、パソコンの台数ごとか
  • 専門知識のない担当者が手順を作れるか、デモで確かめられるか

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よくある質問

ノーコードとローコードは、どちらを選べばよいですか?

部署の中の小さな業務を、現場の担当者が作るならノーコードが向いています。ほかのシステムとの複雑な連携や、細かな機能が必要な場合は、ローコードや開発会社への依頼を検討します。まずは作りたい業務を一つ決め、どちらで作れるかを試すのが確実です。

プログラムの知識がまったくなくても使えますか?

プログラムの知識は、ほとんど必要ありません。ただし、業務の流れを整理し、どんな項目を入力し、誰が確認するかを考える力は必要です。業務の流れを書き出すところから始めると、アプリを作りやすくなります。

無料で使えるノーコードツールでも十分ですか?

少人数で試すだけであれば、無料の範囲で足りることもあります。ただし、無料の範囲では利用人数や機能に制限があることが多く、会社の情報を入れる場合は、権限の管理やデータの扱いを確かめてから使ってください。

作ったアプリの管理は、誰がすればよいですか?

アプリごとに管理者を決め、社内で一覧にしておきます。あわせて、会社全体のルールを決め、相談を受ける窓口を一つにしておくと、管理されないアプリが増えるのを防げます。

参考資料