事務所の移転や開業、社員の増加をきっかけに、光回線の契約を見直す会社は少なくありません。一方で、法人向けのプランには個人向けにない項目が多く、何を基準に比べればよいか迷いやすい分野でもあります。

この記事では、法人の光回線の選び方を、個人向けとの違いから順に整理します。必要な速度の考え方、固定IPアドレスが要る場合、サポートと保守、契約の条件、通信障害への備えまで、総務省やIPA(情報処理推進機構)などの資料をもとにまとめました。特定の事業者やプランを勧めるものではなく、比べるときの基準を示すことを目的としています。

法人の業務は、回線が止まると止まる

今の業務は、多くがインターネットにつながっていることを前提にしています。総務省の通信利用動向調査では、クラウドサービスを一部でも利用している企業は令和7年に83.5%でした(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。メール、会計、顧客管理、Web会議、予約やレジのシステムまで、回線が止まると使えなくなる業務は増えています。

IPAの中小企業向けのガイドラインも、情報システムに事故が発生して使用できなくなると、生産活動の遅れや営業機会の損失などにより業務が停滞すると説明しています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」)。光回線を選ぶときは、速さと料金だけでなく、止まったときにどうなるかまで含めて考える必要があります。

個人向けと法人向けの光回線の違い

光回線には、個人向けのプランと法人向けのプランがあります。会社で個人向けのプランを使うこともできますが、契約の名義や請求の方法、サポートの内容に違いがあります。一般的な違いは次のとおりです。

項目個人向けのプラン法人向けのプラン
契約の名義個人の名義が基本会社の名義で契約できる
請求・支払いクレジットカードや口座振替が中心請求書払いに対応するものが多い
固定IPアドレス付かないか、追加の契約が必要なことが多い1つまたは複数を選べるものがある
速度の考え方ベストエフォート型が中心ベストエフォート型のほか、帯域保証などを選べるものがある
サポート個人向けの窓口法人専用の窓口や、受付時間の長い窓口があるものがある
障害時の対応一般的な案内復旧の目標や連絡の方法を定めたものがある

内容は事業者やプランによって違うため、上の表は比べるときの観点として使います。法人向けのプランは、個人向けより月額料金が高くなるのが一般的です。その差に見合う項目が自社に必要かどうかが、選び方の出発点になります。

法人の光回線の選び方

光回線を比べるときは、先に自社の使い方を整理してから、条件に合うプランを探す順番で進めます。プランから先に見ると、要らない機能に費用を払うことになりがちです。

法人の光回線を選ぶ手順を、使い方の整理、必要な項目の確認、契約条件と費用の比較、障害への備えの4段階で示した図

使う人数と業務から、必要な速度を考える

必要な速度は、同時に使う人数と、どんな業務に使うかで変わります。メールや資料の作成が中心の事務所と、大きなファイルの送受信やWeb会議が多い事務所では、必要な速度が違います。

光回線の多くは、表示されている最大の速度を保証しないベストエフォート型です。時間帯や建物の配線、事務所の中の機器によって、実際の速度は変わります。比べるときは、最大の速度の数字だけで判断せず、次の点も確かめます。

  • 建物までの配線の方式と、建物の中の配線(マンションタイプか戸建てタイプか)
  • 夕方など混み合う時間帯に業務が集中するか
  • 社内のルーターや無線LANの機器が、回線の速度に見合っているか
  • Web会議を同時に何件行うか

今の回線が遅いと感じる場合は、回線そのものではなく、社内の機器や配線が原因のこともあります。乗り換えの前に、機器の古さや無線LANの混雑も確かめます。

固定IPアドレスが必要かを確かめる

固定IPアドレスは、いつも同じIPアドレスを使えるようにする仕組みです。社外から社内のサーバーに接続する、拠点の間をVPNでつなぐ、取引先のシステムが接続元のIPアドレスを制限している、といった場合に必要になります。

メールやWebの閲覧、クラウドサービスの利用が中心であれば、固定IPアドレスが要らないことも多くあります。必要かどうかは、社内のシステムの担当者や、システムを提供している会社に確かめます。

テレワークや拠点の間の接続を考える

社外から社内のシステムに接続する働き方がある場合は、その使い方も回線選びの条件になります。総務省の通信利用動向調査では、テレワークを導入している企業の割合は令和7年に50.1%でした(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。テレワークで社内のネットワークにVPNで接続する場合、事務所の回線には、社内で働く人の通信に加えて、外から接続する人の通信も流れます。

テレワークの方式やセキュリティの考え方は、総務省のテレワークセキュリティガイドライン(第5版)や、中小企業の担当者向けのチェックリストで確認できます(出典:総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」)。VPNの機器を置くのか、クラウドのサービスを使うのかによって、固定IPアドレスの要否や必要な速度が変わるため、回線の契約の前に方式を決めておきます。

サポートと保守の内容を比べる

法人で回線を使う場合は、止まったときに誰に連絡し、どのくらいで直るかが重要です。比べるときは、問い合わせの受付時間(平日のみか、土日や夜間もか)、障害の連絡の方法、訪問での対応の有無を確かめます。

回線とあわせて、社内のネットワークの情報も整理しておきます。IPAのガイドラインは、次のように勧めています。

本社や事業所等、各拠点におけるネットワークについて、構成機器や保守事業者の情報を整理しましょう。

出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」

同じガイドラインは、主要な機器の配置などを記載したネットワーク図を作成し、構成を変えるたびに更新することも勧めています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」)。回線の契約番号、問い合わせ先、ルーターの設置場所がすぐ分かるようにしておくと、障害のときに慌てずに済みます。

セキュリティの対策も一緒に考える

回線を新しくするときは、社内のネットワークを守る対策も見直す機会です。IPAのガイドラインは、内部のネットワークを守るために不正アクセス対策の機能を設定しているか、無線LANに適切な暗号化方式を設定しているかを確認項目に挙げています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」)。回線の事業者が、ルーターやセキュリティの機器をあわせて提供している場合は、その内容と費用も比べます。

工事と開通までの期間、契約の条件

光回線は、申し込みから開通までに工事が必要なことがあります。建物の状況によっては時間がかかるため、移転や開業の日から逆算して早めに申し込みます。賃貸の事務所では、工事に建物の所有者や管理会社の承諾が必要な場合もあります。

契約の条件では、最低利用期間、途中で解約したときの費用、工事費の分割の残りの扱い、移転のときの手続きを確かめます。月額料金だけで比べると、解約や移転のときに思わぬ費用がかかることがあります。

通信障害に備える

どれだけ条件の良い回線を選んでも、回線が止まる可能性はなくなりません。総務省によると、令和4年度に報告された四半期ごとの報告を要する電気通信事故は7,500件で、重大な事故は10件でした。重大な事故は令和3年度の7件から増え、令和元年度以降増加傾向にあるとされています(出典:総務省「電気通信サービスの事故発生状況(令和4年度)」)。令和7年版の情報通信白書によると、2023年度の重大な事故は18件でした(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。

電気通信サービスの重大な事故の件数を、令和3年度、令和4年度、2023年度で比べた棒グラフ

令和4年度の事故の発生要因をみると、他の事業者の障害や第三者の工事、停電、自然災害などの外的要因が61%、設備の故障やソフトウェアの不具合などの設備要因が36%、作業ミスや設定誤りなどの人為要因が1%でした(出典:総務省「電気通信サービスの事故発生状況(令和4年度)」)。原因の多くは、利用する会社の側では防げないものです。

回線が止まったときの計画を立てておく

中小企業庁は、BCP(事業継続計画)を次のように説明しています。

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

出典:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」1.1 BCP(事業継続計画)とは

回線の障害は、この「緊急事態」の一つとして考えられます。回線が止まったときに、どの業務を優先して続けるのか、誰が事業者に連絡するのか、顧客にどう伝えるのかを決めておきます。内閣府の事業継続ガイドラインに関するページも、BCPの対策の例としてバックアップシステムの整備やバックアップオフィスの確保などを挙げています(出典:内閣府「事業継続ガイドライン」)。

予備の回線を用意する

回線が止まると営業ができなくなる会社では、予備の回線を用意する方法があります。予備の回線は、メインの回線とは別の方式(モバイル回線など)や、別の事業者の回線にすると、同じ原因で両方が止まる可能性を下げられます。

予備の回線を自前で用意すると、契約と機器の管理が二重になり、切り替えの操作も必要です。通信障害に備える、インターネット回線のバックアップのように、メインの回線が止まったときに自動で予備の回線に切り替えるサービスもあります。今の回線に追加する形で導入できるものが一般的で、レジや予約システムなど、止まると業務が止まる仕組みを使っている会社が検討の対象になります。

費用の考え方

法人の光回線の費用は、プランの内容と、追加する項目で変わります。一律の相場はないため、次の項目に分けて比べます。

  • 月額料金:回線の利用料と、接続サービスの料金が分かれている場合はその合計
  • 初期費用:工事費、契約の事務手数料
  • 追加の項目:固定IPアドレス、帯域保証などの上位のプラン、法人向けのサポート
  • 機器の費用:ルーター、セキュリティの機器、無線LANの機器の購入やレンタル
  • 解約や移転の費用:途中で解約したときの費用、工事費の残り、移転の工事費
  • 予備の回線の費用:予備の回線の月額料金と、切り替えの機器の費用

比べるときは、月額料金だけでなく、契約期間の合計でいくらになるかを計算します。そのうえで、回線が止まったときに失う売上や作業の時間と比べて、予備の回線やサポートにどこまで費用をかけるかを決めます。

法人向けの契約が要らないケース

法人向けのプランが、どの会社にも必要なわけではありません。次のような場合は、個人向けのプランや、今の契約の見直しで足りることもあります。

  • 社員が数人で、メールやWebの閲覧、クラウドサービスの利用が中心
  • 固定IPアドレスを使うシステムがない
  • 請求書払いや会社名義の契約にこだわらない
  • 回線が数時間止まっても、スマートフォンのテザリングなどで最低限の業務を続けられる

ただし、個人向けのプランを会社で使う場合は、利用規約で事業での利用が認められているかを確かめます。また、社員の個人の名義で契約すると、その社員が退職したときに手続きが難しくなることがあります。

法人の光回線を比べるチェックリスト

契約の前に、次の項目を確かめます。

法人の光回線を比べるときに確かめたい項目を、人数と業務、配線と機器、固定IP、サポート、開通、契約条件、費用、障害への備えで示したチェックリスト
  • 同時に使う人数と、主な業務(Web会議、大きなファイルの送受信など)を整理した
  • 実際の速度に影響する建物の配線と、社内の機器を確認した
  • 固定IPアドレスが必要かを、システムの担当者に確かめた
  • 問い合わせの受付時間と、障害のときの連絡の方法を確認した
  • 開通までの期間と、建物の工事の承諾を確認した
  • 最低利用期間、解約の費用、移転の手続きを確認した
  • 契約期間の合計の費用で比べた
  • 回線が止まったときの対応と、予備の回線の要否を決めた

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ツナグバで、通信障害への備えのサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

通信・IT機器の分野では、通信障害に備える、インターネット回線のバックアップを掲載しています。メインの回線が止まったときに、自動で予備の回線に切り替えるサービスで、回線が止まると業務が止まる企業や店舗に向いています。

光回線の選び直しとあわせて、障害のときの備えを考えたい場合に比べられます。予備の回線の種類や費用、今の回線との組み合わせ方は、資料で確認できます。

こんな課題があれば

  • 回線が止まるとレジや予約システムが使えず、営業ができなくなる
  • 通信障害が起きたとき、復旧を待つ以外に手がない
  • 回線を二重に契約するのは費用や管理が負担になりそうで踏み切れない

掲載サービスでできること

  • メイン回線が止まると予備の回線に切り替わる:障害を検知すると、予備の回線へ自動で切り替える仕組みです。業務が止まる時間を短くすることを目指します。
  • 回線が戻ればメイン回線に戻せる:メイン回線が復旧した後に、元の回線へ戻す仕組みを持つものが一般的です。切り替えの動き方は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 今の回線に追加する形で導入できる:メインの回線を変えずに、予備の回線と機器を追加する形が一般的です。今の環境に合わせて検討できます。

資料で確かめたいこと

  • 予備回線の種類と、通信の速さ・容量の上限
  • 月額料金と、機器の費用の内訳
  • 今の回線や機器と組み合わせられるか
  • 障害時の問い合わせ窓口と対応時間
  • 契約期間と、途中で解約したときの費用

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よくある質問

個人向けの光回線を会社で使ってもよいですか?

利用規約で事業での利用が認められていれば使えます。ただし、固定IPアドレス、請求書払い、法人向けのサポートなどが必要な場合は、法人向けのプランが合います。契約の前に、利用規約と必要な項目を確かめます。

法人向けの光回線は、個人向けより速いですか?

法人向けだから速いとは限りません。どちらもベストエフォート型が中心で、実際の速度は時間帯や建物の配線、社内の機器によって変わります。速度を重視する場合は、帯域保証などのプランの有無や、社内の機器の見直しもあわせて検討します。

固定IPアドレスは必ず必要ですか?

必ずではありません。社外から社内のサーバーに接続する、拠点の間をVPNでつなぐ、接続元のIPアドレスで制限されたシステムを使うといった場合に必要になります。メールやクラウドサービスの利用が中心であれば、要らないことも多くあります。

光回線を乗り換えるときに気をつけることは何ですか?

新しい回線が開通してから、古い回線を解約する順番にすると、業務が止まる期間をつくらずに済みます。固定IPアドレスを使っている場合は、IPアドレスが変わることで、取引先のシステムやVPNの設定の変更が必要になることがあります。乗り換えの日程は、関係する設定の担当者と事前に調整します。

回線が止まったときは、どうすればよいですか?

まず、ルーターなど社内の機器に問題がないかを確かめ、回線の事業者の障害情報を確認します。そのうえで、問い合わせ窓口に連絡します。業務を止められない会社では、予備の回線やスマートフォンのテザリングなど、つなぎの手段を前もって決めておきます。

参考資料