法人向けの電気料金プランを比べていると、「市場連動型」と呼ばれる料金メニューを目にすることがあります。卸電力市場の価格に合わせて電気料金の単価が変わる仕組みで、市場の価格が安いときは電気代を抑えられる一方、価格が高くなったときは電気代が大きく上がるおそれがあります。
この記事では、法人が市場連動型の料金プランを検討するときに知っておきたいことを整理します。固定単価型との違い、料金の仕組み、2020年度冬の価格高騰から分かるリスク、向いている事業者の判断基準、契約前に確かめたいことまで、電力・ガス取引監視等委員会などの公的な資料をもとにまとめました。特定の電力会社やプランを比べたり、すすめたりするものではありません。
市場連動型の料金プランとは
市場連動型の料金プランは、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場の価格を参照して、電気料金の単価を変える料金メニューです。電力・ガス取引監視等委員会の資料は、大手電力が提供する料金単価固定のメニューとは異なる料金メニューとして説明しています(出典:電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合「市場連動型小売電気料金の説明・情報提供について」(第63回 資料6))。
スポット市場は、翌日に受け渡す電気を取引する市場です。日本卸電力取引所の説明によると、一日を30分単位に区切った48の商品について取引が行われ、約定の方式はブラインド・シングルプライスオークションです(出典:日本卸電力取引所「取引概要」)。つまり、市場の価格は30分ごとに決まり、その日の需要と供給の状況によって変わります。過去の価格の推移は、日本卸電力取引所の市場情報で確かめられます(出典:日本卸電力取引所「市場情報(スポット市場)」)。
市場連動型の料金プランでは、この30分ごとの価格の動きが、電気料金に反映されます。固定単価型との主な違いを表にまとめます。
| 比べる点 | 固定単価型 | 市場連動型 |
|---|---|---|
| 単価の決まり方 | 契約時に決めた単価が基本 | 市場価格に合わせて変わる |
| 市場価格が安いとき | 単価は変わらない | 電気代が下がりやすい |
| 市場価格が高いとき | 単価は変わらない | 電気代が大きく上がるおそれがある |
| 予算の立てやすさ | 立てやすい | 立てにくい |
| 向いている事業者 | 毎月の費用を安定させたい | 価格の変動を受け入れ、使い方を調整できる |
なお、固定単価型でも、燃料の価格などに応じて単価が調整される仕組みを持つメニューがあります。固定単価型だから料金がまったく変わらない、というわけではない点に注意してください。
市場連動型の料金の仕組み
市場連動型の料金は、メニューによって計算の方法が違います。ここでは、契約の説明を読むときに見ておきたい構成要素を整理します。

- 基本料金:契約電力などに応じてかかる料金です。市場価格とは関係なく、毎月かかるのが一般的です。
- 市場価格に連動する部分:30分ごとの市場価格に、使った電力量を掛けて計算する部分です。どのエリアの価格を参照するか、月の平均を使うか30分ごとの価格を使うかは、メニューによって違います。
- 事業者の手数料など:市場価格に上乗せされる、事業者の費用や利益にあたる部分です。
- そのほかの費用:再生可能エネルギーの賦課金など、メニューの種類にかかわらずかかる費用があります。
説明を読むときは、市場価格をどのように料金に反映させるのか、上乗せされる金額はいくらか、価格が高くなったときに上限があるかを確かめます。特に、30分ごとの価格をそのまま反映するメニューでは、価格が高い時間帯にどれだけ電気を使ったかで、料金が大きく変わります。
2020年度冬の価格高騰から分かるリスク
市場連動型のリスクを考えるうえで参考になるのが、2020年度冬に起きたスポット市場の価格の高騰です。

資源エネルギー庁の審議会の資料によると、2021年1月13日にはスポット市場の1日平均の価格が154.6円/kWhとなり、1月15日には30分ごとの価格で過去最高の251円/kWhを記録しました(出典:総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会「スポット市場価格の動向等について」(資料7))。同じ資料では、2020年度(2月17日まで)の平均価格は11.8円/kWhと示されています(出典:総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会「スポット市場価格の動向等について」(資料7))。平均の10倍を超える価格が、数日にわたって続いたことになります。
電力・ガス取引監視等委員会の資料によると、2021年1月には、100円/kWhを超えたコマが合計350コマありました。高騰の直接の原因については、売り切れが続く中で、買い入札の価格が徐々に上がったことと分析しています(出典:電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合「2020年度冬期スポット市場価格の高騰について」(資料3-2))。
この高騰で、市場連動型の料金メニューを契約していた需要家に影響が出ました。電力・ガス取引監視等委員会は、当時の状況を次のように整理しています。
市場連動型の小売料金については、価格が高騰するリスクもあることから、需要家がそのメリット・デメリット等について、十分に理解をしたうえで選択することが重要。
出典:電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合「市場連動型小売電気料金の説明・情報提供について」(第63回 資料6)
同じ資料は、事業者へのヒアリングによる数字として、市場連動型の料金メニューの需要家の件数を約69万件(全契約数の約0.78%、2021年2月時点)と示しています(出典:総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会「市場連動型小売電気料金の説明・情報提供について」(資料3-2))。件数としては一部ですが、高騰の影響は、契約していた需要家にとって大きなものでした。
市場の価格は、天候、燃料の調達、発電所の稼働状況など、多くの要因で変わります。過去と同じ規模の高騰がまた起きるかは分かりませんが、起きる可能性があることを前提に考える必要があります。
事業者に求められている説明
価格の高騰を受けて、市場連動型の料金メニューの説明のしかたについても見直しが行われました。電力・ガス取引監視等委員会は、「電力の小売営業に関する指針」の改定を建議し、次の点を明確にしています。
メリットしか説明しないような誤解を招く説明は、「問題となる行為」であることの明確化を行う。
出典:電力・ガス取引監視等委員会「『電力の小売営業に関する指針』の改定の建議について」
同じ建議では、過去の市場の高騰の例を示して高騰のリスクを分かりやすく説明することや、需要家が翌日の電気料金の単価を確認できる仕組みを用意することが、望ましい行為として挙げられています(出典:電力・ガス取引監視等委員会「『電力の小売営業に関する指針』の改定の建議について」)。
また、電気事業法は、小売電気事業者や、契約の媒介・取次ぎ・代理を行う事業者に対し、契約を結ぶ前に、料金その他の供給条件について説明することを求めています(出典:電気事業法(第2条の13 供給条件の説明等))。説明を受けるときは、価格が下がった場合の話だけでなく、高騰した場合にどうなるかを具体的に聞くことが大切です。
契約の前に確かめたいこと
市場連動型を検討する場合は、説明を受けるときに次の項目を一つずつ確かめます。口頭の説明だけでなく、契約書や重要事項の説明の書面で確認することが大切です。
単価の計算方法
市場価格をどのように料金に反映させるのかを確かめます。30分ごとの価格を使うのか、一定の期間の平均を使うのか、どのエリアの価格を参照するのかによって、同じ使用量でも料金が変わります。市場価格に上乗せされる手数料などの金額も、あわせて確認します。
高騰したときの備え
単価に上限があるか、一定の価格を超えたときに固定の単価に切り替える仕組みがあるかを確かめます。上限がない場合は、過去の高騰と同じ水準の価格になったときの試算を出してもらいます。
単価の知らせ方
翌日の単価や、その月の見込みの電気代を、どこでいつ確認できるのかを聞きます。価格が上がりそうなときに知らせてくれる仕組みがあるかも、確認しておきたい点です。
契約期間と解約
契約期間、自動で更新されるかどうか、途中で解約したときの費用を確かめます。価格の動きを見て契約を見直したいと考えたときに、どのくらいの期間で切り替えられるかも大切です。
社内で決めておくこと
契約する場合は、社内でも対応のルールを決めておきます。市場の価格を誰がいつ確かめるのか、価格が一定の水準を超えたら電気の使い方をどう変えるのか、契約の見直しを誰が判断するのかを、あらかじめ決めておくと、高騰したときに慌てずに済みます。
メリットとデメリット
ここまでの内容をもとに、市場連動型の料金プランのメリットとデメリットを整理します。
メリット
- 市場の価格が安い時期や時間帯は、固定単価型より電気代を抑えられる可能性がある
- 価格が安い時間帯に電気を使うよう調整できれば、その分の効果が出やすい
- 料金の仕組みが市場価格に結びついているため、単価の根拠が分かりやすい
デメリット
- 市場の価格が高騰すると、電気代が大きく上がるおそれがある
- 毎月の電気代が読みにくく、予算を立てにくい
- 価格の動きを確かめ、使い方を調整する手間がかかる
メリットは、使い方を調整できる事業者ほど生かしやすくなります。逆に、使う時間帯を変えられない事業者は、デメリットの影響をそのまま受けやすくなります。
法人が市場連動型を選ぶかの判断基準
市場連動型が合うかどうかは、事業の内容と、電気の使い方で決まります。次の点を確かめてください。

- 電気代が月によって大きく変わっても、資金繰りに影響しないか
- 電気を使う時間帯を、価格が安い時間に移せる設備や業務があるか
- 市場の価格を定期的に確かめ、使い方を判断できる担当者がいるか
- 価格が高騰したときに、単価の上限や固定単価への切り替えといった備えがあるか
- 契約期間と、途中で解約したときの費用が分かっているか
- 夏や冬など、電気を多く使う時期と、価格が高くなりやすい時期が重なっていないか
- 社内で、価格が上がった場合の対応を事前に決められるか
これらの多くにあてはまらない場合は、市場連動型は避け、固定単価型を中心に比べるほうが安全です。
費用の考え方と試算のしかた
市場連動型と固定単価型を比べるときは、平均的な月だけでなく、価格が上がった月を想定して試算することが大切です。
仮の例で考えます。ある事業所が1か月に1万kWhの電気を使うとします。市場に連動する部分の単価が1kWhあたり10円上がれば、その月の電気代は10万円増える計算になります。上がり幅が大きい時期が続けば、影響はさらに大きくなります。これはあくまで計算の考え方を示すための仮の数字で、実際の料金はメニューの計算方法と使い方で決まります。
試算を依頼するときは、次の点を伝えると、比べやすい結果を得られます。
- 直近12か月の、月ごとの使用量と電気代(検針票や請求書)
- 契約電力と、今の契約の種類
- 電気を多く使う時間帯と、その時間帯を動かせるかどうか
- 価格が上がった場合の試算も出してほしいこと
試算の結果は、前提となる使用量や市場価格によって変わります。前提が実態に合っているかを、必ず確かめてください。
市場連動型を選ばなくてよいケース
次のような事業者は、市場連動型を選ぶ必要は低いと考えられます。
- 24時間営業の店舗や工場など、電気を使う時間帯を変えにくい
- 毎月の費用を一定に保つことを重視している
- 電気代の変動を確かめる担当者を置けない
電気代を見直したい場合でも、選択肢は市場連動型だけではありません。今の契約の内容を確かめ、固定単価型のメニューも含めて比べることから始められます。契約電力が実態より大きくなっていないかを見直すことも、自社でできる取り組みです。複数のメニューを同じ条件で比べたい場合は、現在の使用状況をもとに電力の切り替えによる見直しの余地を確認できるサービスを使う方法もあります。
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ツナグバで、法人の電気代の見直しサービスを比べる
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コスト削減の分野では、法人向けの電力切り替えによる電気代の見直しサービスを掲載しています。電力会社の切り替えで電気代の削減を図るサービスで、現在の使用状況をもとに、見直しの余地を確認できます。電気代の負担が大きい事業所や店舗に向いています。
資料を取り寄せるときは、提案される料金メニューが固定単価型か市場連動型か、市場連動型ならリスクの説明があるかもあわせて確かめてください。
こんな課題があれば
- 電気代が上がり続けているが、何を見直せばよいか分からない
- 今の電力会社のまま契約内容を一度も確認していない
- 切り替えたいが、停電や手続きの手間が心配で踏み出せない
掲載サービスでできること
- 現在の使用状況から見直しの余地を確認できる:検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算します。見直す前に比較の材料を得られます。
- 電気の品質は切り替え前と変わらない:電気は同じ送電網を通じて届くため、切り替えで品質が変わることは一般的にありません。停電時の復旧の対応も地域の送配電会社が行います。
- 工事なしで切り替えられる場合が多い:この種の切り替えは、大がかりな工事を伴わないものが一般的です。必要な手続きは契約の内容によって違うため、資料で確認してください。
資料で確かめたいこと
- 料金単価の内訳と、燃料費などで変わる部分の仕組み
- 契約期間と、途中で解約したときの費用
- 今の契約(容量や契約の種類)に合ったプランがあるか
- 試算の前提となる使用量が実態に合っているか
- 問い合わせ先と、請求書の受け取り方
よくある質問
市場連動型と固定単価型は、どちらが安いですか?
どちらが安いかは、市場の価格の動きと、電気を使う時間帯によって変わります。市場の価格が安い時期が続けば市場連動型が安くなることがありますが、高騰した場合は固定単価型より高くなるおそれがあります。過去の価格の動きを踏まえて、高騰した場合の試算も見たうえで判断してください。
市場連動型の単価は、事前に確認できますか?
メニューによって違います。電力・ガス取引監視等委員会の建議では、需要家が翌日の電気料金の単価を確認できる仕組みを用意することが、望ましい行為として挙げられています(出典:電力・ガス取引監視等委員会「『電力の小売営業に関する指針』の改定の建議について」)。契約の前に、単価をどこでいつ確認できるのかを聞いておきます。
価格が高騰したときに、すぐに固定単価型へ切り替えられますか?
契約の内容によります。契約期間や、途中で解約したときの費用、切り替えにかかる期間を事前に確かめておきます。高騰してから慌てて切り替えようとしても、すぐに切り替えられない場合があります。
電力会社を切り替えると、停電が増えますか?
電気は同じ送電網を通じて届くため、切り替えによって電気の品質が変わることは一般的にありません。停電時の復旧も、地域の送配電会社が対応します。心配な点は、契約の前に事業者に確認してください。
参考資料
- 電力・ガス取引監視等委員会「『電力の小売営業に関する指針』の改定の建議について」(令和3年9月15日)
- 電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合「市場連動型小売電気料金の説明・情報提供について」(第63回 資料6)(令和3年7月30日)
- 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会「市場連動型小売電気料金の説明・情報提供について」(資料3-2)(2021年9月24日)
- 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会「スポット市場価格の動向等について」(資料7)(令和3年2月17日)
- 電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合「2020年度冬期スポット市場価格の高騰について」(資料3-2)(2021年4月28日(6月14日改訂))
- 日本卸電力取引所「取引概要」
- 日本卸電力取引所「市場情報(スポット市場)」
- 電気事業法(第2条の13 供給条件の説明等)(e-Gov法令検索)
