電気代の請求書を見ると、基本料金や電力量料金のほかに、燃料費調整額という項目があります。月によって金額が大きく変わり、マイナスになっている月もある。何がこの金額を決めているのか、分かりにくいと感じる担当者は少なくありません。

燃料費調整額は、法人の電気代の中でも、会社の努力だけでは動かしにくい部分です。一方で、契約の内容によって、計算の方法や上限の有無が違います。仕組みを知っておくと、電気代が上がった理由を説明しやすくなり、契約を見直すときの判断材料にもなります。

この記事では、燃料費調整額とは何かを、電気代の内訳、計算の仕組み、上限の違い、再エネ賦課金との違いの順に整理します。

資源エネルギー庁と電力・ガス取引監視等委員会の資料をもとに、契約を見直すときに確かめたい点もまとめました。特定の電力会社の比較や推奨はしていません。

燃料費調整額とは|燃料価格の変動を電気代に反映する仕組み

燃料費調整額は、火力発電に使う燃料の価格の変動を、電気料金に反映するための金額です。資源エネルギー庁は、燃料費調整を次のように説明しています。

燃料費調整:火力発電の燃料価格(LNG・石炭・原油)の変動分を自動で電気料金に反映する仕組み。

出典:資源エネルギー庁「電気料金の改定について(2023年6月実施)」

日本の電気は、多くを火力発電でまかなっています。火力発電の燃料の多くは輸入に頼っているため、為替や国際的な燃料の価格が動くと、発電にかかる費用も変わります。燃料費調整は、この変動を、料金の改定の手続きを経ずに毎月の電気代へ反映させるための仕組みです。

燃料の価格が上がれば燃料費調整額は増え、下がれば減ります。電力会社が燃料の価格の変動で大きな損失や利益を抱えないようにすると同時に、利用者にとっても、燃料の価格が下がったときには電気代が下がる仕組みになっています。

法人の電気代の内訳

法人の電気代は、一般的に次の要素の合計で計算されます。

項目決まり方会社が工夫できる余地
基本料金契約電力などに応じて決まる契約電力の見直し、ピークの抑制
電力量料金使用量(kWh)に応じて決まる使用量の削減、料金単価の見直し
燃料費調整額燃料価格に応じた単価×使用量使用量の削減、契約の算定方法の確認
再エネ賦課金全国一律の単価×使用量使用量の削減

資源エネルギー庁も、電気料金は一般的に、基本料金に、毎月の使用量に応じた電力量料金や再エネ賦課金を加えた合計で計算されると説明しています(出典:資源エネルギー庁「電気料金の改定について(2023年6月実施)」)。燃料費調整額は、電力量料金の単価を毎月調整する形で加わります。

燃料費調整額の計算の仕組み

燃料費調整額は、燃料の輸入価格をもとにした単価に、その月の使用量をかけて計算します。電力・ガス取引監視等委員会は、単価のもとになる燃料の価格について、次のように説明しています。

燃料費調整制度では、財務省が公表している「財務省貿易統計」における各燃料(原油、LNG、LPG及び石炭価格)の輸入価格の平均値に基づいて、電気料金を算出しています。

出典:電力・ガス取引監視等委員会「規制料金の改定と調達効率化への取組」

つまり、燃料費調整額のもとになるのは、電力会社が実際に買った燃料の値段ではなく、国の統計で公表される輸入価格の平均です。誰でも同じ統計を確かめられるため、計算の透明性が保たれています。

燃料費調整額の計算の流れとして、平均燃料価格を出す、基準燃料価格と比べる、燃料費調整単価を決める、使用量をかけるの4段階を示した図

計算の流れ

  1. 燃料の輸入価格の平均を出す:一定の期間の原油、LNG、石炭などの輸入価格から、平均燃料価格を計算します。
  2. 基準燃料価格と比べる:平均燃料価格が、料金を設定したときの基準燃料価格より高いか低いかを比べます。
  3. 燃料費調整単価を決める:差の大きさに応じて、1kWhあたりの燃料費調整単価が決まります。
  4. 使用量をかける:燃料費調整単価に、その月の使用量(kWh)をかけた金額が燃料費調整額です。

平均燃料価格が基準燃料価格より高ければ単価はプラスに、低ければマイナスになります。計算に使う係数や基準燃料価格は、契約する電力会社の約款や料金表で定められています。

たとえば、仮に燃料費調整単価が1kWhあたり2円で、その月の使用量が1万kWhなら、燃料費調整額は2万円です。使用量が多い事業所ほど、単価のわずかな変化が金額に大きく響きます。

3か月平均と反映までの時間差

燃料費調整の仕組みは、平成21年に見直されました。総合資源エネルギー調査会の報告は、燃料の価格を料金に反映する方法として、3か月の平均をもとに毎月調整し、反映までの時間差を短くする仕組みを示しています(出典:総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会「第1次報告~燃料費調整制度の見直しについて~」)。

このため、燃料の価格が動いてから、実際の電気代に反映されるまでには数か月の時間差があります。燃料の価格が急に上がった後、しばらくしてから電気代が上がるのはこのためです。予算を立てるときは、この時間差を考えておく必要があります。

燃料費は電気料金の費用の一つ

資源エネルギー庁は、電気料金の設定の仕組みを説明する中で、燃料費を電気料金の費用の内訳の一つとして挙げています。自社の電源から電気を調達する場合の燃料費は、事業者の裁量で算定される費目に含まれるとされています(出典:資源エネルギー庁「料金設定の仕組みとは?」)。

燃料費調整額は、こうした費用のうち、燃料の価格の変動にあたる部分を、毎月の料金で調整するものと考えると分かりやすくなります。

燃料費調整額がマイナスになるのはなぜか

請求書で、燃料費調整額がマイナスになっている月があります。これは、平均燃料価格が基準燃料価格を下回っているときに起こります。マイナスの分は、電気代から差し引かれます。

基準燃料価格は、料金を設定したときの燃料価格の水準です。料金を改定して基準燃料価格が変わると、同じ燃料価格でも、燃料費調整単価のプラスとマイナスが入れ替わることがあります。

そのため、燃料費調整額がマイナスだからといって、電気代が安いとは限りません。電力量料金の単価が高く設定されていれば、合計の電気代は高くなります。燃料費調整額だけでなく、合計の金額で比べることが大切です。

上限はあるのか|規制料金と自由料金の違い

燃料費調整額の上限の有無は、契約が規制料金か自由料金かで違います。

項目規制料金(経過措置料金)自由料金
主な対象家庭など低圧の一部のメニュー高圧・特別高圧の法人契約、低圧の自由料金メニュー
料金の決まり方経済産業大臣の認可を受けた約款電力会社が独自に設定
燃料費調整の上限上昇分に上限がある契約によって違い、上限がない契約もある

規制料金は、電力小売の全面自由化の後も、時限的な経過措置として残されている料金で、経済産業大臣の認可を受けています(出典:電力・ガス取引監視等委員会「規制料金の改定と調達効率化への取組」)。規制料金では、燃料価格の上昇分に上限があり、下落分は下限なく反映されます(出典:資源エネルギー庁「電気料金の改定について(2023年6月実施)」)。資源エネルギー庁の資料は、この上限を1.5倍としています(出典:資源エネルギー庁「今後の小売政策について(燃料価格の情勢を踏まえた対応)」)。

一方、高圧や特別高圧で契約する法人の電気代は、自由料金です。自由料金の燃料費調整の上限について、国の資料は次のように述べています。

上限に到達した事業者が上限を見直すか否かは自らの経営判断であるが、供給約款の変更は民法の定型約款変更のルールに則ったものである必要がある。

出典:資源エネルギー庁「今後の小売政策について(燃料価格の情勢を踏まえた対応)」

燃料の価格が大きく上がった時期には、上限を見直したり、撤廃したりする電力会社もありました。自社の契約に上限があるのか、あるとしてどう定められているのかは、契約書や約款で確かめておく必要があります。

独自の調整項目がある契約もある

自由料金の中には、燃料費調整のほかに、電力の市場価格の変動を反映する項目を設けている契約もあります。名称は電力会社によって違います。

燃料費調整額の計算方法が、大手電力会社の方法と同じとは限りません。請求書の項目名が同じでも、中身が違うことがあるため、契約の際に計算の方法を確かめてください。

市場の価格に連動する項目がある契約は、電力の市場の価格が下がっている時期には電気代を抑えられることがあります。一方で、市場の価格が高くなった時期には、電気代が大きく上がることがあります。どちらの動きもありうることを理解したうえで選ぶことが大切です。

再エネ賦課金との違い

燃料費調整額と並んで、請求書に載っているのが再エネ賦課金です。どちらも使用量に応じて金額が決まりますが、仕組みは違います。

再エネ賦課金は、固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギーの電気の買い取りに要した費用を、電気の使用者から広く集めるものです(出典:資源エネルギー庁「制度の概要|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー」)。単価は全国で統一されています。

経済産業省が設定した2026年度の再エネ賦課金の単価1kWhあたり4.18円と適用期間、燃料費調整額との違いをまとめた表

2026年度の再エネ賦課金の単価は1kWhあたり4.18円で、2026年5月の検針分から2027年4月の検針分まで適用されます(出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」)。

項目燃料費調整額再エネ賦課金
目的燃料価格の変動を電気代に反映する再エネの電気の買い取り費用をまかなう
単価の決まり方燃料の輸入価格をもとに毎月変わる国が年度ごとに決める
電力会社による違い契約によって計算方法や上限が違う全国一律
マイナスになるかなることがあるならない

電力会社を切り替えても、再エネ賦課金の単価は変わりません。電気代を比べるときは、どの項目が会社や契約によって変わり、どの項目が変わらないのかを分けて考えると、比較の見通しがよくなります。

法人が燃料費調整額で確かめたいポイント

燃料費調整額は、会社の側で単価を動かすことはできません。それでも、契約の内容を知っておくことで、予算の立て方や見直しの判断が変わります。

法人が燃料費調整額について確かめたいポイントとして、請求書の金額、計算方法と基準燃料価格、上限の有無、市場価格の調整項目、合計の推移、契約期間と解約条件の6点をまとめたチェックリスト
  • 請求書で、燃料費調整額が毎月いくらになっているか
  • 契約している料金の燃料費調整の計算方法と、基準燃料価格
  • 燃料費調整に上限があるか、ないか
  • 燃料費調整のほかに、市場価格の変動を反映する項目があるか
  • 燃料費調整額を含めた、合計の電気代の推移
  • 契約の期間と、解約するときの条件

請求書の1年分を並べ、燃料費調整額と使用量の推移を見ると、電気代の変化のうち、燃料価格による部分と、使い方による部分を分けて考えられます。

燃料費調整額を踏まえた予算の立て方

電気代の予算を立てるとき、前年と同じ金額を置いておくだけでは、燃料価格の変動に対応できません。燃料費調整額の分を、使用量と分けて見積もっておくと、予算と実績の差の理由を説明しやすくなります。

具体的には、月ごとの使用量の見込みと、燃料費調整単価の想定を分けて置きます。燃料費調整単価は、反映までに数か月の時間差があるため、直近に公表された単価を参考にすると、数か月先までの見込みを立てやすくなります。

燃料の価格が大きく動いている時期は、単価の想定を複数用意しておくと安心です。上限のない契約では、燃料の価格が上がった分がそのまま電気代に反映されるため、余裕を持った予算を組む必要があります。

電気代を見直すときの注意点

燃料費調整額が上がって電気代が増えたときは、契約の見直しを考えるきっかけになります。ただし、料金の比べ方には注意が必要です。

電力・ガス取引監視等委員会は、燃料費調整額の計算方法が比較先と違うのに、比較の結果にその違いを考慮せず、自社の料金が有利に見えるように表示している例を、誤解を招くものとして注意を呼びかけています(出典:電力・ガス取引監視等委員会「需要家の誤解を招く電気料金シミュレーションや料金説明について【注意喚起】」)。同じ資料は、燃料費調整額を含まない比較であると書き添えていても、誤解を招くおそれがあるとしています。燃料費調整額に上限がないことを説明していない例や、試算の条件が分からない例も、注意の対象として挙げられています。

見積もりや試算を受け取ったら、燃料費調整額を含めた比較になっているか、試算の前提の使用量や単価の時期はいつか、燃料費調整に上限がないことの説明があるかを確かめます。

検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算してもらい、見直しの余地を確かめる方法もあります。ツナグバ掲載の法人向けの電力切り替えによる電気代の見直しも、比較の材料を集めるときの候補になります。

見直しを急がなくてよいケース

  • 今の契約の期間が残っており、解約の費用が見直しの効果を上回る
  • 燃料費調整に上限があるなど、今の契約の条件が自社に合っている
  • 使用量が少なく、契約を変えても差がほとんど出ない

契約の見直しで迷ったときは、電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口に問い合わせることもできます(出典:電力・ガス取引監視等委員会「相談窓口」)。

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ツナグバで、法人向けの電気代の見直しを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

コスト削減の分野では、法人向けの電力切り替えによる電気代の見直しのサービスを掲載しています。検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算するもので、電気代の負担が大きい事業所や店舗に向いています。電気は同じ送電網を通じて届くため、切り替えで品質が変わることは一般的にありません。

試算の方法や、必要な手続きは、資料で確認できます。資料を取り寄せ、燃料費調整額を含めた条件で比べてください。

こんな課題があれば

  • 電気代が上がり続けているが、何を見直せばよいか分からない
  • 今の電力会社のまま契約内容を一度も確認していない
  • 切り替えたいが、停電や手続きの手間が心配で踏み出せない

掲載サービスでできること

  • 現在の使用状況から見直しの余地を確認できる:検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算します。見直す前に比較の材料を得られます。
  • 電気の品質は切り替え前と変わらない:電気は同じ送電網を通じて届くため、切り替えで品質が変わることは一般的にありません。停電時の復旧の対応も地域の送配電会社が行います。
  • 工事なしで切り替えられる場合が多い:この種の切り替えは、大がかりな工事を伴わないものが一般的です。必要な手続きは契約の内容によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいこと

  • 料金単価の内訳と、燃料費などで変わる部分の仕組み
  • 契約期間と、途中で解約したときの費用
  • 今の契約(容量や契約の種類)に合ったプランがあるか
  • 試算の前提となる使用量が実態に合っているか
  • 問い合わせ先と、請求書の受け取り方

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よくある質問

燃料費調整額は、会社の努力で下げられますか?

燃料費調整単価は、燃料の輸入価格によって決まるため、会社の側で動かすことはできません。使用量を減らせば、単価に使用量をかけた燃料費調整額は小さくなります。

燃料費調整額の単価は、どこで確かめられますか?

契約している電力会社のウェブサイトや、請求書の明細で確かめられます。多くの電力会社は、月ごとの燃料費調整単価を公表しています。

電力会社を切り替えると、燃料費調整額はなくなりますか?

なくなるとは限りません。多くの契約で燃料費調整の仕組みがあり、計算の方法や上限の有無は電力会社や契約によって違います。切り替えの前に、燃料費調整額を含めた条件で比べてください。

再エネ賦課金も、燃料費調整額と同じように毎月変わりますか?

再エネ賦課金の単価は、国が年度ごとに決め、全国で統一されています。燃料費調整単価のように毎月変わるものではありません。

契約に燃料費調整の上限があるかは、どう確かめればよいですか?

契約書や電気需給約款、料金表で確かめます。分からない場合は、契約している電力会社に問い合わせてください。高圧や特別高圧の契約は自由料金のため、上限の有無は契約ごとに違います。

参考資料