営業や現場の連絡、勤怠の打刻、チャットでのやり取りなど、業務でスマートフォンを使う場面は増えています。社員の私物のスマートフォンを使ってもらうか、会社で用意して貸与するかは、多くの会社が一度は迷うところです。
この記事では、社用スマホを社員に貸与するときのルールの作り方を整理します。貸与と私物利用の違い、規程に入れておきたい項目、私的利用と費用・税の扱い、セキュリティと紛失時の対応、勤務時間外の連絡まで、厚生労働省、国税庁、IPA(情報処理推進機構)、個人情報保護委員会の資料をもとにまとめました。
社用スマホを貸与するか、私物を使ってもらうか
最初に決めるのは、会社の端末を貸与するのか、社員の私物の端末を業務に使ってもらうのか(BYOD)です。どちらにも利点と注意点があります。
| 項目 | 会社の端末を貸与する | 私物の端末を使ってもらう |
|---|---|---|
| 端末の費用 | 会社が負担する | 会社の負担は少ない |
| 管理のしやすさ | 設定やアプリを会社でそろえやすい | 端末ごとに設定がばらばらになりやすい |
| 情報の管理 | 業務の情報を会社の端末に限定しやすい | 私的なデータと業務のデータが混ざりやすい |
| 退職のとき | 端末を返してもらえばよい | 業務のデータやアカウントの削除を本人に頼む必要がある |
| 社員の負担 | 持ち歩く端末が増える | 通信費などの負担が生じることがある |
私物の端末を使ってもらう場合は、特にルールを明確にしておく必要があります。IPAの中小企業向けのガイドラインは、個人所有の情報機器を業務で利用する場合のセキュリティ対策を明確にしているかを、自社診断の項目に挙げています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」)。テレワークについては、次のように勧めています。
テレワークを実施する場合は、使用を許可する機器の申請・承認の方法、個人所有端末にダウンロード可能なファイルの機密区分・種類等を規定し、従業員に周知しましょう。
出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」
顧客の情報を多く扱う、退職者の端末に情報を残したくないといった会社では、貸与を選ぶほうが管理しやすくなります。一方で、連絡の手段としてだけ使う、扱う情報が少ないといった場合は、私物の利用をルールで認める方法もあります。
貸与ルールに入れておきたい項目
社用スマホのルールは、貸与の開始から返却までの流れに沿って作ると漏れが少なくなります。規程や誓約書に入れておきたい項目は、次のとおりです。

- 目的と対象者:どの業務のために、誰に貸与するか
- 貸与と返却:貸与の手続き、異動や退職のときの返却の期限、返却のときの初期化
- 使ってよい範囲:業務以外の利用(私的な通話やアプリの追加)を認めるか、認める場合の範囲
- 設定とアプリ:画面ロック、OSの更新、会社が許可したアプリだけを入れること
- 情報の扱い:顧客の情報や業務のデータを保存してよい場所、写真の扱い
- 持ち出しと保管:持ち歩くときの注意、自宅での保管、海外への持ち出し
- 紛失・盗難のとき:連絡先、連絡の期限、会社が行う対応
- 費用の負担:通信費の上限、私的な利用で生じた料金の扱い、故障や紛失の弁償の考え方
- 管理と確認:会社が端末の利用状況や位置情報を確認する場合の目的と範囲
- 勤務時間外の扱い:時間外の連絡や対応のルール
費用の負担は就業規則に定める
社員に費用の一部を負担してもらう場合は、就業規則との関係に注意します。厚生労働省のテレワークのガイドラインは、次のように説明しています。
特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされている(労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)第 89 条第5号)。
出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
同じガイドラインは、費用負担の取扱いは企業ごとに様々であるため、労使のどちらがどのように負担するか、使用者が負担する場合の限度額、請求の方法などを、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則などに規定しておくことが望ましいとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。社用スマホでも、通信費の上限や私的な利用の料金をどう扱うかを、事前に決めておきます。
弁償のルールは慎重に決める
紛失や故障のときに社員に弁償を求めるルールを作る場合は、内容に注意が必要です。業務で使っている中での故障や、通常の注意をしていても起きた紛失まで一律に負担させると、トラブルの原因になります。どのような場合に、どの範囲で負担してもらうのかは、社会保険労務士などの専門家に確認したうえで定めます。端末の保険や、メーカーの保証で補える範囲も確かめておきます。
私的利用と費用・税の扱い
社用スマホを私的に使ってよいかどうかは、会社の判断で決められます。私的な利用を認めない、通話は認めずアプリの追加も禁止する、一定の範囲で認めるなど、会社の情報管理の方針に合わせて決めます。
税の扱いも確かめておきます。国税庁の在宅勤務に関するFAQは、企業が所有する事務用品等を従業員に貸与する場合は給与として課税する必要はない一方、事務用品等を支給して所有権が従業員に移る場合は現物給与として課税する必要があるとしています(出典:国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」)。端末を「貸す」のか「渡す」のかで扱いが変わるため、貸与であることを規程や貸与の記録で明確にしておきます。
私物のスマートフォンを業務に使ってもらい、通話料を会社が負担する場合については、同じFAQに次の記述があります。
通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できますので、その金額を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
出典:国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」
同じFAQの例では、基本使用料やデータ通信料については、業務で使った部分を除いた金額が給与として課税される例が示されています(出典:国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」)。私物の端末に手当を一律に払う場合などは扱いが変わることがあるため、精算の方法を決める前に、税理士や税務署に確認すると安心です。
セキュリティと紛失時の対応
スマートフォンは持ち歩くため、パソコンより紛失や盗難の危険が高い端末です。IPAのガイドラインは、パソコンやスマートフォンなど情報機器のOSやソフトウェアを常に最新の状態にしているかを、自社診断の最初の項目に挙げています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」)。あわせて、長く複雑なパスワードの設定や、重要なシステムを使う場合の多要素認証などの認証強化機能の利用も挙げています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」)。
社用スマホでは、次の設定を貸与の前にそろえておきます。
- 画面ロックを設定し、短い時間で自動的にロックされるようにする
- OSとアプリを自動で更新する
- 会社が許可したアプリだけを入れる
- 業務のアカウントに多要素認証を設定する
- 紛失したときに、遠隔で端末をロックしたりデータを消したりできるようにしておく
台数が多い場合は、端末の設定やアプリを一括で管理する仕組みを使うと、設定のばらつきを防げます。テレワーク全般のセキュリティの考え方は、総務省のテレワークセキュリティガイドラインでも確認できます(出典:総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」)。
紛失したときの手順を決めておく
紛失や盗難が起きたときに慌てないよう、手順を決めて社員に伝えておきます。

- すぐに会社へ連絡する:連絡先と、夜間や休日の連絡方法を決めておきます。
- 端末を止める:遠隔でのロックやデータの消去、通信の停止を行います。
- 情報の影響を確かめる:端末に保存されていた情報、ログインしていたアカウントを確認し、パスワードを変更します。
- 必要な報告をする:警察への届け出や、個人情報の漏えいのおそれがある場合の報告を行います。
個人情報を含む端末を紛失した場合は、個人情報の保護に関する法律に基づく報告が必要になることがあります。個人情報保護委員会は、報告が義務となる場合として、要配慮個人情報を含む場合、財産的被害が生じるおそれがある場合、不正の目的をもって行われたおそれがある場合、本人の数が1,000人を超える場合の4つを示しています。不正の目的のおそれがある行為には、盗難も含まれます。報告の期限は、速報が発覚日から3〜5日以内、確報が30日以内(不正の目的のおそれがある場合は60日以内)です(出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」)。顧客の連絡先などを端末に保存しない運用にしておくと、紛失のときの影響を小さくできます。
勤務時間外の連絡と労働時間
社用スマホを持たせると、勤務時間の外でも連絡が届くようになります。厚生労働省のテレワークのガイドラインは、長時間労働が生じる要因として、時間外や休日、深夜に業務に関する指示や報告がメールなどで行われることを挙げています。また、時間外などのメールに対応しなかったことを理由に不利益な人事評価を行うことは、適切な人事評価とはいえないとしています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。
社用スマホのルールには、次のような点を入れておきます。
- 勤務時間外の連絡は、緊急の場合に限ることと、緊急の例
- 勤務時間外に電源を切ったり、通知を止めたりしてよいこと
- 勤務時間外に対応した場合の、労働時間としての扱いと申告の方法
- 上司や同僚からの時間外の連絡を控えること
厚生労働省のガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間にあたるとしています(出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。勤務時間外に業務の対応を求める場合は、その時間が労働時間にあたることがあります。当番を決めて対応する場合は、手当や労働時間の扱いを決めておきます。
端末の選び方と導入の費用
社用スマホの費用は、端末の費用と通信の費用に分けて考えます。一律の相場はないため、次の点を比べます。
- 端末の調達の方法:購入、レンタル、リースのどれにするか
- 端末の状態:新品か、点検・整備を済ませた端末か
- 通信の契約:通話が必要か、データ通信だけでよいか、データ量の上限
- 管理の費用:端末を一括で管理する仕組みの費用、設定の手間
- 故障や紛失への備え:保証や保険の費用、予備の端末
業務の内容によっては、スマートフォンではなくタブレットのほうが合うこともあります。現場での点検の記録、図面や写真の確認、店舗の受付や注文の入力など、画面の大きさが必要で、通話をあまり使わない業務です。台数が多いと端末の費用がかさむため、整備済みの法人向けタブレット端末のように、点検・整備を済ませた端末を法人向けに導入する方法もあります。新品より費用を抑えやすいのが一般的ですが、使う業務アプリが動くか、保証の期間、電池の状態などの品質の基準を確かめて選びます。
社用スマホを貸与しなくてよいケース
社用スマホは、すべての会社や社員に必要なわけではありません。次のような場合は、貸与しない選択もあります。
- 業務での連絡が少なく、会社の固定電話やパソコンで足りる
- 扱う情報が少なく、私物の利用をルールで認めれば管理できる
- 外出や現場の業務がなく、社内のパソコンで業務が完結する
- 通話は不要で、チャットや業務アプリだけを使う(タブレットや共用の端末で足りることがある)
貸与しない場合でも、私物の端末を業務に使ってもらうなら、使ってよい範囲や情報の扱い、費用の精算の方法をルールにしておく必要があります。
社用スマホの貸与前チェックリスト
貸与を始める前に、次の項目を確かめます。

- 貸与するか、私物を使ってもらうかを、扱う情報の量で決めた
- 貸与の目的と対象者を決めた
- 私的な利用の範囲と、私的な利用で生じた料金の扱いを決めた
- 社員に費用を負担してもらう場合、就業規則に定めた
- 端末が貸与であることを、規程や貸与の記録で明確にした
- 画面ロック、OSの更新、許可したアプリなどの設定をそろえた
- 紛失のときの連絡先と手順を社員に伝えた
- 勤務時間外の連絡のルールを決めた
- 退職や異動のときの返却と初期化の手順を決めた
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通信・IT機器の分野では、整備済みの法人向けタブレット端末を掲載しています。点検・整備を済ませたタブレット端末を、法人向けに提供するサービスで、新品より費用を抑えて、業務のデジタル化を進められます。端末の導入費用を抑えたい企業に向いています。
スマートフォンの貸与とあわせて、タブレットで足りる業務がないかを見直したいときに比べられます。端末の状態や保証、支払いの形は、資料で確認できます。
こんな課題があれば
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掲載サービスでできること
- 点検・整備を済ませた端末を使える:動作の確認や初期化などを行った端末が提供されます。点検の内容は製品によって違うため、資料で確認してください。
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- 端末の型番と、使う業務アプリが動くか
- 保証の期間と、故障したときの交換・修理の流れ
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- 購入かレンタルか、支払いの形
- 初期設定や管理の支援があるか
よくある質問
社用スマホを私的に使うことを禁止してもよいですか?
会社の端末なので、私的な利用を禁止することは会社の判断で決められます。禁止する場合は、規程や誓約書に明記し、貸与のときに説明します。一定の範囲で認める場合は、その範囲と、私的な利用で生じた料金の扱いを決めておきます。
社員が社用スマホを紛失したら、弁償させてもよいですか?
一律に弁償させるルールは、トラブルの原因になりやすいため慎重に考えます。どのような場合に、どの範囲で負担してもらうのかは、専門家に確認したうえで就業規則などに定めます。保険や保証で補える範囲も確かめておきます。
社用スマホの位置情報を確認してもよいですか?
勤怠の確認や安全の確保などの目的で使うことは考えられますが、確認する目的と範囲、時間帯を決め、社員に伝えておくことが大切です。勤務時間の外まで確認しない、見られる人を限るなど、必要な範囲にとどめます。
私物のスマートフォンの通信費を会社が負担する場合、税金はかかりますか?
国税庁のFAQでは、通話明細書などで業務のための通話の料金が確認でき、その金額を支給する場合は給与として課税する必要はないとされています。一律の手当として払う場合などは扱いが変わることがあるため、精算の方法を決める前に確認します。
参考資料
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
- 労働基準法(e-Gov法令検索)(第89条 作成及び届出の義務)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
- 国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(2026年3月27日)
- 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」
- 総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(令和3年5月)
- 総務省「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)(第3版)」(令和4年5月)
- 厚生労働省「モデル就業規則について」
