工場やビル、店舗などで高圧電力を使っている会社にとって、電気代は大きな固定費です。料金の見直しを考えても、契約の仕組みが複雑で、どこから手をつければよいか分からないという声もよく聞かれます。
この記事では、高圧電力の契約を見直す方法を、料金の仕組み、契約電力と基本料金の関係、料金メニューの種類に分けて整理します。電力会社を切り替えるときの手順と確認点、契約の見直しが向かないケース、契約以外でできる削減策もまとめました。
高圧電力とは
電気の契約は、受け取る電気の電圧によって区分されています。電圧の区分は、国の省令で次のように定められています。
電圧は、次の区分により低圧、高圧及び特別高圧の三種とする。(中略)直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては六百ボルトを超え、七千ボルト以下のもの
出典:電気設備に関する技術基準を定める省令(e-Gov法令検索)
後半の部分が高圧の定義です。交流で600ボルト以下は低圧、7,000ボルトを超えるものは特別高圧とされています(出典:電気設備に関する技術基準を定める省令(e-Gov法令検索))。高圧で電気を受け取る事業所では、受け取った電気を自前の受変電設備で使える電圧に下げて使います。中小規模の工場やビル、病院、大型の店舗などの多くが、この高圧の契約にあたります。
高圧の契約は、早くから自由化されている
高圧の電気は、家庭向けの低圧よりも早く、電力会社を自由に選べるようになりました。資源エネルギー庁は、自由化の経緯を次のように説明しています。
その後、2004年4月・2005年4月には、小売自由化の対象が『高圧』区分の中小規模工場や中小ビルへと徐々に拡大していきました。
出典:資源エネルギー庁「料金の仕組みと料金メニュー例のご紹介」
最初の小売自由化は2000年3月に特別高圧の区分から始まり、2016年4月1日からは低圧の家庭や商店なども電力会社を選べるようになりました(出典:資源エネルギー庁「料金の仕組みと料金メニュー例のご紹介」)。高圧の契約は20年近く前から自由に選べる状態にあるため、長く同じ契約のままになっている事業所では、見直しの余地が残っていることがあります。

高圧電力の料金の仕組み
見直しの前に、毎月の請求書の中身を理解しておきます。高圧電力の料金は、主に次の要素でできています。
| 料金の要素 | 決まり方 | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力(kW)に単価をかけて決まる。力率による割引・割増がある | 契約電力を下げる、単価を比べる |
| 電力量料金 | 使った電力量(kWh)に単価をかけて決まる。季節や時間帯で単価が変わる契約もある | 単価を比べる、使い方を変える |
| 燃料費調整額など | 燃料の価格や市場の価格の変動に応じて加算・減算される | 調整の方式を確かめる |
| 再エネ賦課金 | 使った電力量に、国が定める単価をかけて決まる | 使用量を減らす |
基本料金と契約電力
基本料金は、契約電力に単価をかけて計算するのが一般的です。高圧の契約では、30分ごとの平均の使用電力のうち、月の中で最も大きい値を最大需要電力(デマンド値)として記録します。比較的規模の小さい高圧の契約では、過去1年間の最大需要電力をもとに契約電力が決まる仕組みが広く使われています。この仕組みでは、ある月に一度だけ使用電力が大きくなると、その後1年間の基本料金に影響します。
契約電力の決め方は、契約の規模や電力会社によって異なります。今の契約でどのように決まっているかは、契約している電力会社の約款や契約書で確かめてください。
力率による割引と割増
高圧の契約の基本料金には、力率による割引や割増が設けられていることが多くあります。力率は、受け取った電気のうち、実際に仕事に使われた割合を示す数値です。力率が高いほど電気を効率よく使えていることになり、基本料金が割り引かれる仕組みが一般的です。受変電設備に力率を改善する機器が付いている事業所では、その機器が正しく働いているかを点検の際に確かめておくと、思わぬ割増を防げます。
電力量料金と燃料費調整
電力量料金は、使った電力量に応じてかかる料金です。これに加えて、燃料の価格の変動を反映する燃料費調整額や、卸電力市場の価格に連動する調整額が加わる契約があります。同じ単価に見えても、調整の方式が違うと、燃料や市場の価格が動いたときの請求額は大きく変わります。
再エネ賦課金
請求書には、再エネ賦課金も含まれています。資源エネルギー庁は、その仕組みを次のように説明しています。
固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用は、電気の使用者から広く集められる再エネ賦課金によってまかなわれます。
出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電促進賦課金」
再エネ賦課金は使った電力量に応じてかかり、単価は国が年度ごとに定めます。どの電力会社と契約しても同じ考え方でかかるため、電力会社を切り替えても、この部分は下がりません。比べるときは、基本料金と電力量料金、調整額の部分に注目します。
高圧電力の契約を見直す4つの方法
高圧電力の見直しには、大きく分けて4つの方法があります。

方法1:契約電力を下げる
最大需要電力が下がれば、契約電力が下がり、基本料金が下がります。使用電力が一時的に大きくなる時間帯を把握し、設備の運転の時間をずらす、同時に動かす機器を減らすといった工夫で、ピークを抑えます。使用電力を監視して、設定した値を超えそうなときに知らせる装置を使う方法もあります。
方法2:料金メニューを見直す
同じ電力会社の中でも、使い方に合ったメニューに変えると料金が下がることがあります。例えば、夜間や休日に多く使う事業所では、時間帯によって単価が変わるメニューが合うことがあります。
方法3:電力会社を切り替える
今の電力会社とは別の小売電気事業者と契約する方法です。高圧の契約では、事業所ごとの使い方に応じて個別に見積もりが出されることが多いため、複数の見積もりを比べます。
方法4:使う電力量を減らす
設備の更新や運用の改善で、使う電力量そのものを減らす方法です。契約の見直しとあわせて取り組むと、効果を確かめやすくなります。詳しくは後の章で紹介します。
料金メニューの種類と向き・不向き
電力会社を比べるときは、単価だけでなく、料金の決まり方の違いを理解しておくことが大切です。
| メニューの種類 | 特徴 | 向いている事業所 |
|---|---|---|
| 燃料費調整型 | 燃料の価格の変動を、燃料費調整額として反映する | 毎月の請求額の変動をある程度抑えたい |
| 市場連動型 | 卸電力市場の価格を、電力量料金や調整額に反映する | 市場の価格の変動を受け入れられる、使う時間を調整できる |
| 固定単価型 | 一定の期間、電力量料金の単価を固定する | 予算を立てやすくしたい |
市場連動型の契約は、市場の価格が下がったときは料金が下がる一方、価格が大きく上がったときは請求額も大きくなります。どの種類が有利かは、その時々の市場の状況と、自社の使い方によって変わります。見積もりを比べるときは、過去1年分の使用量で試算した金額だけでなく、価格が変動したときにどうなるかの説明も受けておきます。
電力会社を切り替える手順
電力会社の切り替えは、次の流れで進めるのが一般的です。
- 過去1年分の請求書や使用量のデータを集める
- 今の契約の契約期間、更新の時期、解約の条件を確かめる
- 複数の電力会社や代理店から見積もりを取る
- 料金の内訳と契約条件を比べて、契約先を決める
- 新しい電力会社と契約し、切り替えの日を決める
見積もりを依頼するときに用意するもの
高圧の契約の見積もりは、事業所ごとの使い方をもとに作られます。次の資料をそろえておくと、試算が正確になり、比べやすくなります。
- 直近1年分の電気料金の請求書(使用量の明細を含むもの)
- 30分ごとの使用量のデータ(入手できる場合)
- 今の契約書と、料金メニューの名前
- 営業日や稼働時間、今後の設備の増設や移転の予定
見積もりを比べるときは、各社に同じ資料を渡し、同じ前提で試算してもらうことが大切です。前提がそろっていないと、金額の差が料金の差なのか、前提の違いなのかが分からなくなります。
供給条件の説明を受ける
小売電気事業者や、その契約の媒介・取次ぎ・代理を行う者は、契約の締結にあたり、料金その他の供給条件を説明しなければならないと定められています。原則として、供給条件を記載した書面の交付も求められています(出典:電気事業法(e-Gov法令検索))。説明を受けたら、料金の計算方法、調整額の決まり方、契約期間、解約の条件を書面で確かめます。
送配電の仕組みは変わらない
電力会社を切り替えても、電気を届ける送配電網は、地域の一般送配電事業者が引き続き運用します。一般送配電事業者は、正当な理由がなければ、供給区域における託送供給を拒んではならないとされています(出典:電気事業法(e-Gov法令検索))。
切り替え前に確かめたいこと
見積もりの金額だけで契約先を決めると、思わぬ負担が生じることがあります。契約前に、次の点を確かめておきます。

- 料金の計算に、燃料費調整や市場価格の連動がどのように入っているか
- 調整額に上限があるか
- 契約期間と、自動更新の有無
- 契約期間の途中で解約した場合の違約金
- 今の契約の解約の条件と、解約の申し出の期限
- 見積もりの前提にした使用量と、実際の使用量の差
- 電力会社が事業から撤退した場合の取り扱い
電力会社が撤退した場合の備え
過去には、電力の市場価格の高騰をきっかけに、事業から撤退する小売電気事業者が相次いだ時期がありました。小売電気事業者と契約できない需要家には、一般送配電事業者による最終保障供給という仕組みがあります。一般送配電事業者は、正当な理由がなければ最終保障供給を拒んではならないとされています(出典:電気事業法(e-Gov法令検索))。
電力・ガス取引監視等委員会の資料では、最終保障供給は、小売電気事業者と契約できない需要家に対する一時的な供給を想定した制度とされています。同じ資料によると、2022年4月15日時点の最終保障供給の契約は約4,000件、約92万kWでした。当時の料金は標準的な料金メニューの約2割増しの水準とされていました(出典:電力・ガス取引監視等委員会 第72回制度設計専門会合 資料10「最終保障供給料金の在り方について」(令和4年4月21日))。
最終保障供給は、あくまで一時的な受け皿です。契約先を選ぶときは、料金の安さだけでなく、事業の継続性や、撤退する場合の通知の時期なども確かめておくと安心です。
契約の見直しが向かないケース
契約の見直しは、どの事業所でも大きな効果が出るとは限りません。次のような場合は、効果が限られたり、先に別の対応が必要になったりします。
- すでに直近で見積もりを比べ、条件の良い契約に切り替えている
- 今の契約の期間が長く残っており、途中で解約すると違約金がかかる
- 使用量が少なく、料金の差が手間に見合わない
- 近いうちに設備の更新や移転を予定していて、使い方が大きく変わる
また、今の電力会社との関係で、設備の保守や緊急時の対応などの付帯サービスを受けている場合は、切り替えによってそれらがどうなるかも確かめておきます。
特に設備の更新や移転を控えている場合は、新しい使い方が見えてから契約を見直すほうが、試算と実際の料金のずれを小さくできます。
費用の考え方
電力会社の切り替え自体には、手数料がかからない契約もありますが、条件は契約先によって異なります。削減できる金額は、今の契約の条件、使用量、使う時間帯、契約先の料金の決まり方によって大きく変わるため、一律の目安はありません。過去1年分の使用量で試算した見積もりを複数比べることが、判断の出発点になります。
契約の見直し以外にできる削減策
契約の見直しとあわせて、使う電力そのものを減らす取り組みも検討します。資源エネルギー庁は、事業者向けに省エネの支援制度をまとめています(出典:資源エネルギー庁「事業者向け 省エネ関連情報」)。
省エネ診断を受ける
少額の負担で省エネ診断と再エネの提案を受けられる事業や、中小企業などの工場・ビルを現地調査や機器を使って分析する事業があります。費用のかからない運用の改善を優先して提案する診断もあります(出典:資源エネルギー庁「省エネ関連情報 各種支援制度」)。自社でどこから手をつければよいか分からない場合の入り口になります。
設備の更新に補助金を使う
工場全体の省エネ、製造工程の電化・燃料転換、機器の更新、エネルギーマネジメントシステムの導入などを支援する補助金があります(出典:資源エネルギー庁「省エネ関連情報 各種支援制度」)。公募の時期や要件は年度ごとに変わるため、最新の情報を確かめてください。
省エネ法の対象かどうかを確かめる
原油換算で年間1,500キロリットル以上のエネルギーを使う事業者は、省エネ法の特定事業者として、エネルギーの使用状況の定期報告などが求められます(出典:資源エネルギー庁「省エネ法の概要」)。対象となる事業者は、電気の契約の見直しとあわせて、法律に沿った取り組みの計画も確かめておきます。
見直しを進めるときの社内の体制
電気の契約は、総務や経理、設備の担当など、複数の部署にまたがることが多い分野です。請求書を受け取る部署と、設備を管理する部署が違うと、使用量の変化に気づきにくくなります。
見直しを始めるときは、担当者を決め、請求書と使用量のデータを一か所に集めます。毎月の使用量と最大需要電力を記録しておくと、契約の見直しの効果や、ピークを抑える取り組みの結果を確かめやすくなります。比較の手間をかけられない場合は、現在の使用状況をもとに見直しの余地を確認できる、法人向けの電力切り替えによる電気代の見直しのようなサービスを使う方法もあります。
あわせて読みたい
ツナグバで、電気代の見直しのサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
コスト削減の分野では、電力会社の切り替えで電気代の削減を図るサービスを掲載しています。高圧の契約を長く見直していない場合や、比べる手間をかけられない場合の選択肢になります。
過去1年分の請求書と、今の契約の期間や解約の条件をまとめたうえで、資料で詳細を確認してください。
こんな課題があれば
- 電気代が上がり続けているが、何を見直せばよいか分からない
- 今の電力会社のまま契約内容を一度も確認していない
- 切り替えたいが、停電や手続きの手間が心配で踏み出せない
掲載サービスでできること
- 現在の使用状況から見直しの余地を確認できる:検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算します。見直す前に比較の材料を得られます。
- 電気の品質は切り替え前と変わらない:電気は同じ送電網を通じて届くため、切り替えで品質が変わることは一般的にありません。停電時の復旧の対応も地域の送配電会社が行います。
- 工事なしで切り替えられる場合が多い:この種の切り替えは、大がかりな工事を伴わないものが一般的です。必要な手続きは契約の内容によって違うため、資料で確認してください。
資料で確かめたいこと
- 料金単価の内訳と、燃料費などで変わる部分の仕組み
- 契約期間と、途中で解約したときの費用
- 今の契約(容量や契約の種類)に合ったプランがあるか
- 試算の前提となる使用量が実態に合っているか
- 問い合わせ先と、請求書の受け取り方
よくある質問
高圧電力の契約は、いつ見直すのがよいですか?
今の契約の更新の時期に合わせて検討するのが一般的です。解約の申し出には期限があることが多いため、更新の数か月前から見積もりの準備を始めると余裕を持って進められます。
電力会社を切り替えると、停電が増えることはありますか?
電気を届ける送配電網は、切り替え後も地域の一般送配電事業者が運用します。切り替えたことを理由に送配電の仕組みが変わるわけではありません。
契約電力を下げるには、何から始めればよいですか?
まず、毎月の最大需要電力と、それがどの時間帯に記録されたかを確かめます。ピークが生じる時間帯に動いている設備が分かれば、運転の時間をずらすなどの対策を考えられます。
市場連動型の契約は、避けたほうがよいですか?
一概には言えません。市場の価格が落ち着いている時期は料金が下がることもありますが、価格が上がったときは請求額も大きくなります。予算の立てやすさを重視するか、変動を受け入れられるかで判断します。
