会議のたびに議事録を書くのは、時間のかかる仕事です。録音を聞き直しながら発言をまとめ、決まったことと宿題を整理する。担当者によっては、会議の時間と同じくらいの時間を議事録にかけていることもあります。

生成AIを使うと、文字起こしから要点の整理、決定事項と宿題の抜き出しまでを短い時間で下書きできます。ただし、出力をそのまま配ると、聞き間違いや事実と違う内容が混じるおそれがあります。会議の中身によっては、入力してはいけない情報もあります。

この記事では、生成AIで議事録を作成する方法を、準備、文字起こし、指示文(プロンプト)の書き方、出力の確認の順に解説します。

あわせて、生成AIに向いていない会議、情報の扱いで決めておきたい社内ルール、ツールの選び方も整理しました。公的なガイドラインをもとにしたチェックリストも載せています。

生成AIで議事録を作成する企業は増えている

生成AIを業務に使う企業は増えています。総務省の情報通信白書によると、日本の企業で何らかの業務で生成AIを使用していると回答した割合は55.2%でした(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状)。

業務別では、「メールや議事録、資料作成等の補助」に生成AIを使用していると回答した割合が、日本で47.3%でした(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状)。議事録は、生成AIが使われることの多い業務の一つです。

日本の企業における生成AIの利用状況として、業務での使用率、議事録などの補助での使用率、活用方針を定めている企業の比率を示した棒グラフ

一方で、活用の方針づくりは途中の段階です。同じ白書では、生成AIの活用方針を定めている企業の比率は2024年度調査で49.7%と、2023年度調査の42.7%から増えたものの、中小企業では「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占めるとされています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状)。

個人の利用も広がっています。生成AIサービスを使ったことがあると回答した個人の割合は、2023年度調査の9.1%から2024年度調査では26.7%に増えました(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」個人におけるAI利用の現状)。社員が個人の判断で使い始める前に、会社としての使い方を決めておくことが大切です。

国の動きとしては、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)が2025年6月に公布、9月に全面施行されました(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編」)。総務省と経済産業省は、AIを活用する事業者向けの指針として「AI事業者ガイドライン」を公表しており、令和8年3月31日に第1.2版が出ています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」)。

生成AIで議事録を作るメリットと限界

生成AIを議事録に使うメリットは、主に次の3つです。

  • 文字起こしから要点の整理までの時間を短くできる
  • 決定事項、宿題、担当者、期限を、決まった形で抜き出せる
  • 議事録の書き方が担当者によってばらつくのを抑えられる

一方で、限界もあります。生成AIは、聞き取れなかった部分や文脈から、もっともらしい文章を作ってしまうことがあります。数字や日付、人名、固有名詞は特に間違いが起きやすい部分です。

また、会議の場の空気や、発言の裏にある意図までは読み取れません。「誰がどこまで同意したのか」「保留にしたのか、却下したのか」といった判断は、会議に出ていた人が確かめる必要があります。

総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインは、AIを利用する事業者の役割について次のように述べています。

また、人間の判断を介在させることにより、人間の尊厳及び自律を守りながら予期せぬ事故を防ぐことも可能となる。

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編」

議事録は、会議で決まったことの記録として、あとから参照される文書です。生成AIは下書きを作る道具と位置づけ、最終的な内容は人が責任を持って確かめる形にします。

議事録の種類と、生成AIで作りやすいもの

議事録には、目的に応じていくつかの形があります。生成AIを使う前に、どの形の議事録が必要かを決めておくと、指示文が書きやすくなります。

  • 発言録:誰が何を話したかを、発言の順に記録する。正確さが求められる会議で使う
  • 要点録:議題ごとに、話し合った内容の要点をまとめる。社内の定例会議などで多い
  • 決定事項の記録:決まったこと、宿題、担当者、期限だけを短くまとめる

生成AIが得意なのは、要点録と決定事項の記録です。長い文字起こしから要点を抜き出し、決まった形に並べる作業は、短い時間で下書きできます。

発言録は、発言を正確に残すことが目的のため、要約が入ると目的に合わなくなります。発言録が必要な会議では、生成AIは文字起こしの誤りを直す補助にとどめ、要約はさせない使い方が向いています。

生成AIで議事録を作成する手順

生成AIで議事録を作る流れは、大きく5つの手順に分けられます。

生成AIで議事録を作る流れとして、準備と録音、文字起こし、指示文で要約、人が確かめるの4段階を示した図

1. 会議の前に準備する

会議の前に、議題、出席者、配布資料を整理しておきます。議題が分かっていると、生成AIに渡す指示文で「この議題ごとに整理する」と指定でき、出力の精度が上がります。

録音や録画をする場合は、会議の冒頭で出席者に伝え、了承を得ます。社外の人が参加する会議では、特に丁寧に確認します。

2. 録音して文字起こしをする

会議を録音し、文字起こしのツールでテキストにします。オンライン会議のツールに文字起こしの機能がついている場合は、それを使う方法もあります。

文字起こしの精度は、録音の質で大きく変わります。マイクを話す人の近くに置く、発言が重ならないようにする、発言の前に名前を言ってもらうといった工夫で、あとの修正が少なくなります。

3. 文字起こしを整える

文字起こしのテキストには、言いよどみや聞き間違い、話者の取り違えが含まれます。生成AIに渡す前に、明らかな聞き間違いや、社内でしか使わない略語、製品の名前などを直しておくと、出力の精度が上がります。

4. 指示文(プロンプト)で要約させる

整えたテキストと指示文を生成AIに渡し、議事録の下書きを作らせます。指示文の書き方は次の章で詳しく解説します。

5. 人が確かめて仕上げる

出力された下書きを、会議に出ていた人が確かめます。特に、決定事項、数字、期限、担当者の名前は、録音や手元のメモと照らし合わせます。修正が終わったら、社内の書式に合わせて共有します。

議事録を作る指示文(プロンプト)の書き方

指示文は、生成AIに何を、どのような形で出してほしいかを伝える文章です。議事録の場合は、次の5つの要素を入れると、出力が安定します。

要素書く内容例
役割生成AIにどの立場で作業させるか会議の書記として議事録を作成してください
会議の情報会議名、日時、出席者、議題営業定例会議、出席者5名、議題は3つ
出力の形見出しと並び順概要、議題ごとの要点、決定事項、宿題(担当・期限)、保留事項
制約守ってほしい条件文字起こしにない内容は書かない。不明な点は「不明」と書く
元の文章整えた文字起こし(文字起こしのテキストを貼り付ける)

特に大切なのは、「文字起こしにない内容は書かない」「不明な点は不明と書く」という制約です。この一文を入れておくと、生成AIが推測で内容を補うことを抑えやすくなります。

指示文の例

標準的な議事録を作る場合の指示文の例は、次のとおりです。

  • 会議の書記として、以下の文字起こしから議事録を作成してください
  • 会議名は「〇〇会議」、日時は〇月〇日、出席者は〇〇、〇〇です
  • 出力は「会議の概要」「議題ごとの要点」「決定事項」「宿題(担当者・期限)」「保留事項」の順にしてください
  • 宿題は表の形で、担当者と期限が分からない場合は「未定」としてください
  • 文字起こしにない内容は書かず、聞き取れない部分は「不明」と書いてください

一度で完成させようとせず、「決定事項だけをもう一度確かめて」「宿題の担当者を発言から確かめて」のように、追加の指示で直していく使い方も有効です。

会議の種類に合わせて変える

議事録に求められる形は、会議の種類で変わります。定例会議では決定事項と宿題が中心になり、企画の会議では出た案と論点の整理が中心になります。商談の記録では、顧客の要望と次の提案の予定が大切です。

よく使う会議の種類ごとに指示文の型を作り、社内で共有しておくと、誰が作っても同じ品質の議事録になりやすくなります。業務ごとの指示文があらかじめ用意され、社内で使い方を共有できる、ツナグバ掲載の社員全員が生成AIを使いこなせる業務プラットフォームも比較の候補になります。

生成AIに向いていない会議

すべての会議で生成AIを使えばよいわけではありません。次のような会議では、使うかどうかを慎重に判断します。

  • 人事評価、採用の選考、懲戒など、個人の評価や処遇を扱う会議
  • 健康の状態や家族の事情など、配慮が必要な個人の情報を扱う面談
  • 未公表の経営の情報、取引の条件、新製品の開発など、機密性の高い会議
  • 社外の人が参加し、録音や外部サービスの利用について合意していない会議
  • 法的な紛争やトラブルの対応など、記録の正確さが特に問われる会議

AI事業者ガイドラインは、AI利用者が注意すべき事項として、個人情報の不適切な入力への対策と、機密情報等を不適切に入力しないことを挙げています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編」)。会議の中身によって、入力してよいかどうかを分けて考えることが大切です。

情報の扱いで決めておきたい社内ルール

議事録には、取引先の名前、社員の名前、数字、今後の計画など、さまざまな情報が含まれます。生成AIを使う前に、情報の扱いのルールを決めておきます。

個人情報の扱い

議事録の文字起こしには、社員や顧客の名前など、個人情報が含まれることがあります。個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について次のように注意を促しています。

個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

個人情報保護法は、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないと定めています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第18条・第27条)。また、個人データを第三者に提供する場合は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ることが原則とされています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第18条・第27条)。外部のサービスに入力する情報の範囲は、法務や個人情報の担当者と相談して決めておくと安心です。顧客の名前などは、議事録の目的に必要でなければ、入力の前に伏せるか置き換える運用も考えられます。

機密情報の扱い

生成AIのサービスによっては、入力した内容がサービスの改善に使われる設定になっていることがあります。どのサービスを使ってよいか、入力した内容がどのように扱われるかを、利用規約や設定で確かめておきます。

社内の情報が不正競争防止法の「営業秘密」として保護されるには、秘密として管理されていることが条件の一つになっています(出典:e-Gov法令検索「不正競争防止法」第2条第6項)。機密の情報を外部のサービスに自由に入力できる状態は、管理の面でも問題になりえます。

社内ルールに入れたい項目

生成AIで議事録を作るときに社内で決めておきたい6つのルールを並べたチェックリスト
  • 使ってよい生成AIサービスと、使ってはいけないサービス
  • 入力してよい情報と、入力してはいけない情報の区分
  • 録音や文字起こしをする前の、出席者への伝え方
  • 出力を確認する人と、確認する項目
  • 録音、文字起こし、議事録の保存場所と保存期間
  • 困ったときの相談先

デジタル庁は、テキスト生成AIを利活用する際に想定されるリスクと対応策をまとめたガイドブックを公開しています(出典:デジタル庁「テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)」)。主に行政の担当者向けの資料ですが、リスクの洗い出しの考え方は、社内ルールを作るときの参考になります。

議事録に使う生成AIツールの選び方

議事録に生成AIを使う方法は、大きく分けて3つあります。

方法特徴向いている会社
汎用の生成AIサービスを使う文字起こしのテキストを貼り付けて指示文で要約させるまず試してみたい、議事録の量が多くない
会議ツールの機能を使うオンライン会議のツールの文字起こしや要約の機能を使うオンライン会議が中心
業務向けの生成AIの仕組みを導入する業務ごとの指示文の用意、社内での共有、利用の管理ができるものがある全社で使い方をそろえたい、利用の状況を管理したい

選ぶときは、次の点を確かめます。

  • 入力した内容が、サービスの学習などに使われない設定にできるか
  • 会社として、誰がどのように使っているかを管理できるか
  • 日本語の文字起こしと要約の精度が、自社の会議で十分か
  • よく使う指示文を、社内で共有できるか
  • 費用が、使う人数と頻度に見合っているか

ツールを入れても、指示文の書き方や確認の方法が社員に伝わっていないと、使われないまま終わることがあります。議事録をきっかけに生成AIの使い方を広げたい場合は、指示文の書き方を基礎から学ぶ研修を組み合わせる方法もあります。

自社でできること、外部に頼むこと

議事録の作成に生成AIを試すだけであれば、汎用のサービスと、この記事の指示文の例で始められます。まずは機密性の低い定例会議などで試し、出力の確認にかかる時間を含めて効果を確かめるとよいでしょう。

全社で使い方をそろえたい、情報の扱いのルールまで含めて整えたい、という場合は、業務向けの仕組みや研修を比べて検討します。

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ツナグバで、生成AIの研修と業務ツールを比べる

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  • 指示文(プロンプト)の書き方を基礎から学べる:AIに何をどう伝えればよいかを、例を使って学びます。目的に合った答えを引き出す考え方を身につけます。
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資料で確かめたいことの例です。

  • 利用人数ごとの料金と、利用量による追加費用の有無
  • 入力した情報がAIの学習に使われないか、保存先はどこか
  • 自社の業務に合った指示文を追加・編集できるか

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よくある質問

生成AIが作った議事録は、そのまま配ってもよいですか?

おすすめしません。生成AIは、聞き取れなかった部分を推測で補ったり、数字や名前を間違えたりすることがあります。

会議に出ていた人が、決定事項、数字、期限、担当者を確かめてから共有してください。

録音せずに、手元のメモから議事録を作れますか?

できます。箇条書きのメモを渡し、「議事録の形に整えて」と指示すれば、文章を整えた下書きを作れます。

ただし、メモにないことは生成AIにも分かりません。メモに決定事項と宿題を残しておくことが前提になります。

無料の生成AIサービスを議事録に使ってもよいですか?

会社のルールで認められているかを、まず確かめてください。入力した内容の扱いはサービスや設定によって違います。

社外秘の情報や個人情報を含む会議では、会社として利用を認めたサービスを使うことが大切です。

生成AIで作った議事録の形式は、どう決めればよいですか?

会議の種類ごとに、見出しと並び順を決めておくのがおすすめです。定例会議なら「概要、決定事項、宿題、保留事項」のように決め、指示文に書いておきます。

形式がそろうと、あとから議事録を探したり読み返したりしやすくなります。

参考資料