福利厚生を見直したい、新しい制度を入れたいと考えたとき、まず社員の声を聞こうとアンケートを検討する会社は多いはずです。ところが、何を聞けばよいのか、どう聞けば本音が集まるのか、集めた結果をどう使えばよいのかが分からず、形だけの調査で終わってしまうこともあります。
この記事では、福利厚生アンケートで聞くべき項目を、設問の例とあわせて整理します。設問を作るときのこつ、個人情報や雇用形態への配慮、実施の手順、結果をもとに制度を選ぶときの判断の基準まで、公的機関の資料をもとに解説します。
アンケートの前に、福利厚生にかけている費用を知っておく
アンケートの設計に入る前に、自社が福利厚生にどれくらいの費用をかけているかを把握しておくと、結果を判断しやすくなります。参考になるのが、厚生労働省の就労条件総合調査です。
令和3年の調査では、常用労働者1人1か月平均の「法定外福利費」は4,882円でした。内訳は、住居に関する費用が2,509円(51.4%)、医療保健に関する費用が729円(14.9%)、食事に関する費用が493円(10.1%)などです(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」)。法定外福利費とは、社会保険料のように法律で義務づけられたもの以外の、会社が任意で行う福利厚生にかかる費用のことです。
企業の規模によって、費用のかけ方は違います。同じ調査で、従業員30〜99人の企業の法定外福利費は1人1か月平均4,414円で、内訳は私的保険制度への拠出金が1,027円、住居に関する費用が960円、食事に関する費用が849円、医療保健に関する費用が660円などでした(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」)。

1,000人以上の企業では住居に関する費用が3,974円と大きな割合を占める一方、30〜99人の企業では食事や私的保険への拠出の割合が高くなっています(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」)。これはあくまで平均の数字ですが、自社の費用と比べることで、どの分野に偏っているか、社員に聞くべき論点はどこかが見えてきます。
福利厚生アンケートで聞くべき項目
福利厚生アンケートの設問は、大きく6つのまとまりで考えると整理しやすくなります。

| まとまり | 聞くことの例 | 設問の形 |
|---|---|---|
| 回答者の属性 | 年代、雇用形態、勤務地、家族構成の有無 | 選択式(範囲で聞く) |
| 制度の認知 | それぞれの制度を知っているか | 選択式 |
| 利用の状況 | この1年で使ったか、使った回数 | 選択式 |
| 満足度 | 使った制度に満足しているか | 5段階などの尺度 |
| 使わない理由 | 知らなかった、条件が合わない、手続きが面倒など | 複数選択式 |
| これからの希望 | あったらよい制度、優先してほしい分野 | 複数選択式と自由記述 |
属性は「分析に使う分」だけ聞く
属性の設問は、結果を年代や雇用形態ごとに分けて見るために必要です。ただし、細かく聞きすぎると、少人数の部署では誰の回答か分かってしまいます。年齢は「20代」「30代」のように範囲で聞く、勤務地は拠点の単位にとどめるなど、分析に必要な粒度に抑えます。
「知っているか」と「使ったか」を分けて聞く
制度が使われていない理由は、知られていないのか、知っていても使いにくいのかで、打つ手がまったく違います。認知と利用を分けて聞くと、周知を工夫すべき制度と、条件や手続きを見直すべき制度を区別できます。
使わない理由は選択肢を用意する
使わない理由を自由記述だけで聞くと、回答が集まりにくく、集計も大変です。「制度を知らなかった」「対象の条件に当てはまらない」「手続きが面倒」「使える時間や場所が合わない」「必要を感じない」など、よくある理由を選択肢にし、「その他」に自由記述を添える形が使いやすいでしょう。
これからの希望は、分野で聞く
「あったらよい制度」を自由に挙げてもらうと、実現が難しい要望ばかりが集まることがあります。住まい、食事、健康、休暇、育児や介護、学び、余暇や旅行といった分野を示し、優先してほしい分野を選んでもらうと、結果を予算の配分に結びつけやすくなります。
そのまま使える設問の例
ここまでの考え方をもとに、設問の例を挙げます。自社の制度の名前や選択肢に置き換えて使ってください。
- あなたの年代を教えてください(20代以下/30代/40代/50代/60代以上)
- あなたの雇用形態を教えてください(正社員/契約社員/パート・アルバイト/その他)
- 次の制度を知っていますか(制度ごとに「知っている」「名前だけ知っている」「知らない」)
- この1年間に、次の制度を利用しましたか(制度ごとに「利用した」「利用していない」)
- 利用した制度の満足度を教えてください(5段階)
- 利用していない制度について、主な理由を選んでください(複数選択)
- 今後、会社に優先して充実してほしい分野を3つまで選んでください
- 今の福利厚生全体の満足度を教えてください(5段階)
- 福利厚生について、ご意見や希望があれば自由にお書きください(任意)
設問3と4を制度ごとに表の形で並べると、回答する人も答えやすく、集計もしやすくなります。設問7で「3つまで」と数を区切るのは、何でも選べる形にすると、すべての分野に印がついて優先順位が分からなくなるためです。
設問を作るときのこつ
設問の作り方しだいで、回答の質は大きく変わります。次の点に気をつけて作ります。
- 1つの設問では1つのことだけを聞く(「満足していて、今後も使いたいか」のように2つを混ぜない)
- 「使っていない人」が答えにくい設問には、「使ったことがない」の選択肢を入れる
- 満足度の尺度は、すべての設問で同じ段階数と言葉にそろえる
- 制度の名前だけでなく、内容が分かる短い説明を添える
- 設問の数を絞り、回答にかかる時間の目安を最初に伝える
- 自由記述は最後に置き、必須にしない
制度の名前が社内でしか通じない呼び方になっている場合は特に、説明を添えることが大切です。名前を知らないだけで「使っていない」と答える人が多くなり、本当の課題が見えにくくなります。
個人情報と回答者への配慮
利用目的を伝えて実施する
アンケートで氏名や社員番号など個人を特定できる情報を集める場合、その回答は個人情報になります。個人情報保護法は、個人情報を取得したときの利用目的について、次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第21条第1項
アンケートの冒頭で、何のために実施するのか、結果を誰が見るのか、個人が特定される形で公表しないことを明記しておくと、法令への対応になるだけでなく、社員が安心して本音を書けるようになります。福利厚生の見直しが目的であれば、記名式にする必要がない場合も多いはずです。
健康に関する設問は特に慎重に
健康や病気に関わる制度について聞くときは注意が必要です。個人情報保護法では、病歴などを含む個人情報は「要配慮個人情報」とされ(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第2条第3項)、取得するには、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要です(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第20条第2項)。
福利厚生のアンケートでは、本人の病気や通院の状況を聞く必要はほとんどありません。「健康に関する制度で、あったらよいもの」のように、制度への希望として聞く形にとどめます。取り扱いの詳しい考え方は、個人情報保護委員会のガイドラインで確認できます(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。
雇用形態の違いにも目を向ける
アンケートの結果は、正社員とパート・アルバイトなど、雇用形態ごとに分けて見ることをおすすめします。厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインは、福利厚生も対象に含めています。
不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた取組が必要であるため、これらの待遇についても記載しています。
出典:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
改正後のガイドラインは、令和8年10月1日から適用されています(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」)。アンケートで「対象の条件に当てはまらないから使えない」という回答が特定の雇用形態に偏っていれば、制度の対象範囲を点検するきっかけになります。
厚生労働省の同一労働同一賃金特集ページでも、事業主が社内で点検する項目として、正社員とパート・アルバイトなどとの間で賃金や福利厚生などの待遇に違いはないかが挙げられています(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」)。アンケートの結果は、こうした点検の材料としても使えます。
アンケートの実施から見直しまでの手順
アンケートは、実施して集計するだけでは意味がありません。次の流れで、制度の見直しまでつなげます。

- 目的を決める:新しい制度を選ぶのか、今の制度の使われ方を確かめるのかを決める
- 設問を作る:目的に必要な項目に絞り、少人数で試しに答えてもらって分かりにくい設問を直す
- 実施する:利用目的と回答の扱いを伝え、回答期間を区切って実施する
- 集計する:全体の結果に加え、年代や雇用形態ごとに分けて見る
- 結果を伝える:結果の概要と、会社としてどう対応するかを社員に共有する
回答率を上げる工夫
回答が一部の人に偏ると、結果が社員全体の声を表さなくなります。業務時間の中で回答してよいことを伝える、スマートフォンからも答えられる形にする、回答期間を1〜2週間程度に区切って途中で一度だけ案内を出す、といった工夫で回答率を上げやすくなります。上司が回答を確認できる形にすると本音が出にくくなるため、回答の集計は人事や総務など限られた担当者だけが見る形にします。
最後の「結果を伝える」を省くと、次にアンケートを行ったときに回答が集まりにくくなります。すべての要望に応えられなくても、何を検討し、何を見送ったかを伝えることが大切です。
結果をもとに制度を選ぶときの判断の基準
利用の状況と満足度で整理する
今ある制度は、利用の多さと満足度の高さの2つで整理すると、次の打ち手が見えやすくなります。
- 利用が多く満足度も高い:続ける。費用の負担の割合を見直す余地があるかを確かめる
- 利用が多いが満足度が低い:内容や手続きを改善する
- 利用が少ないが満足度は高い:周知の方法を見直す
- 利用が少なく満足度も低い:廃止や、別の制度への置き換えを検討する
自由記述の読み方
自由記述は件数が少なくても、制度の使いにくさの具体的な理由が書かれていることが多く、改善の手がかりになります。読むときは、内容ごとに「制度の内容」「対象の条件」「手続き」「周知」などに分けて数を数えると、どこに不満が集まっているかが見えます。一人の強い意見に引きずられず、同じ趣旨の声がどれくらいあるかで重みを判断します。
新しい制度を選ぶときの確認点
アンケートで希望の多かった分野から新しい制度を選ぶときは、次の点を確かめます。
- 一部の人だけでなく、多くの社員が使える制度か
- 勤務地や勤務時間が違う社員も、同じように使えるか
- 会社と社員の費用負担の割合が、続けられる水準か
- 税務上、給与として課税されない条件を満たせるか
- 申し込みや精算の手続きが、担当者の負担になりすぎないか
たとえば旅行や宿泊の補助を望む声が多い場合、会社が独自に制度を作ると、予約や精算の管理に手間がかかります。社員が旅行や宿泊を割安に利用できる旅行と組み合わせた福利厚生サービスのように、仕組みをサービス側が用意する形を検討する方法もあります。
税務の扱いを確かめる
福利厚生として提供したものが、税務上は給与として課税される場合があります。たとえば食事の支給は、社員が食事の価額の半分以上を負担し、会社の負担額が1か月あたり7,500円(消費税等を除く)以下であれば、給与として課税されません(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2594 食事を支給したとき」)。
会社が行う従業員レクリエーション旅行は、旅行の期間が4泊5日以内で、参加した人数が全体の50%以上であることなどを満たせば、原則として参加した人の給与としなくてよいとされています(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」)。制度の形によって扱いが変わるため、導入の前に税理士などの専門家に確認しておくと安心です。
費用の考え方
新しい制度の費用は、対象にする人数、会社の負担の割合、利用の頻度で大きく変わります。外部のサービスを使う場合は、会社が払う固定の費用と、社員の利用に応じてかかる費用を分けて見積もります。アンケートで分かった「使いたい人の数」をもとに、利用の見込みと費用が釣り合うかを確かめます。
制度を増やさなくてよいケース
次のような場合は、新しい制度を入れるより、今ある制度の周知や手続きの見直しを先に行うほうが効果的です。
- 制度を知らないと答えた人が多い
- 手続きが面倒という理由で使われていない制度がある
- 希望が特定の少数の人に限られている
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ツナグバで、福利厚生のサービスを比べる
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福利厚生の分野では、福利厚生のメニューの一つとして導入できるセルフホワイトニングのサービスと、社員が旅行や宿泊を割安に利用できる、旅行に特化した福利厚生サービスを掲載しています。
アンケートで見えた社員の希望や、制度が使われていない理由に照らして、自社に合うかを比べるときの材料にしてください。
セルフホワイトニングを使った福利厚生サービス
こんな課題に向いています。
- 福利厚生のメニューが少なく、社員から物足りないと言われている
- 既存の福利厚生が一部の社員にしか使われていない
- 採用の場面で、福利厚生として伝えられる特徴がない
主な特徴は次のとおりです。
- 身だしなみのケアを福利厚生に加えられる:歯の見た目のケアに関心がある社員に向けて、新しいメニューとして用意できます。仕事で人と会う機会が多い社員にも案内しやすい内容です。
- 社員が自分の都合に合わせて使える:店舗型や持ち帰り型など、利用の形は製品によって違います。勤務時間との兼ね合いを考えて選べます。
- 会社の費用負担の方法を選べる場合がある:全額を会社が負担する方法や、一部を補助する方法などがあります。選べる形は製品によって違うため、資料で確認してください。
資料で確かめたいことの例です。
- 会社と社員の費用負担の内訳と、利用1回あたりの費用
- 利用できる場所や時間帯が、社員の働き方に合っているか
- 利用前の注意事項や、体質に合わない場合の案内があるか
旅行と組み合わせた福利厚生サービス
こんな課題に向いています。
- 福利厚生を増やしたいが、社員がどれを使うか分からず決められない
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主な特徴は次のとおりです。
- 旅行や宿泊を割安に使える:社員が旅行や宿泊を割引の価格などで利用できる仕組みです。対象となる施設や割引の内容は製品によって違うため、資料で確認してください。
- 会社で制度を作る手間を抑えられる:予約や割引の仕組みはサービス側が用意する形が一般的です。会社が独自に制度を作るより、管理の手間を抑えられます。
- 社員の家族と使える場合がある:家族での旅行に使えるサービスもあります。家族の利用範囲は製品によって違うため、事前に確認してください。
資料で確かめたいことの例です。
- 会社が払う費用と、社員が払う費用の内訳
- 対象となる施設や地域の範囲
- 社員と家族が使える範囲
よくある質問
福利厚生アンケートは記名式と無記名式のどちらがよいですか?
制度の見直しが目的であれば、無記名式のほうが本音を集めやすくなります。ただし、無記名でも属性の設問を細かくしすぎると個人が特定されるおそれがあるため、範囲で聞くなどの工夫が必要です。個別に対応したい要望を集めたい場合は、記名の欄を任意にする方法もあります。
設問の数はどれくらいが目安ですか?
決まった数はありませんが、回答にかかる時間が長くなるほど、途中でやめる人や適当に答える人が増えます。目的に必要な項目に絞り、試しに数人に答えてもらって、かかる時間を確かめておくと安心です。
アンケートはどれくらいの頻度で行えばよいですか?
制度を見直す時期に合わせて行うのが基本です。新しい制度を入れた場合は、一定の期間が過ぎたあとに使われ方を確かめるアンケートを行うと、続けるかどうかの判断材料になります。
外部のアンケートツールを使ってもよいですか?
使ってかまいませんが、回答のデータがどこに保存されるか、誰がアクセスできるか、回答の期間が終わったあとにデータをどう扱うかを確かめておきます。個人が特定できる情報を集める場合は、利用目的を回答の画面で示しておきます。
