求人を出しても応募が集まらず、給与のほかに打ち出せる材料を探している会社は少なくありません。福利厚生はその候補になりますが、制度の名前を並べるだけでは、求職者の目に留まりにくいのが実情です。

この記事では、福利厚生を採用でアピールする方法を、求職者が見ている点、自社の制度の棚卸し、求人票や採用ページへの書き方に分けて整理します。税金や求人の表示に関するルール、新しく制度を入れるかどうかの判断の基準、アピールに向かないケースもまとめました。

福利厚生が採用のアピールになる理由

福利厚生には、健康保険や厚生年金などの法律で決まっている「法定福利」と、会社が独自に用意する「法定外福利」があります。採用でアピールの材料になるのは、主に法定外福利です。法定福利はどの会社にもあるため、それだけでは他社との違いになりにくいからです。

会社が負担している費用の大きさを見ると、法定外福利の位置づけが分かります。厚生労働省の調査では、常用労働者1人1か月平均の労働費用総額は408,140円で、そのうち現金給与以外の労働費用は73,296円でした。現金給与以外の内訳は、法定福利費が50,283円、退職給付等の費用が15,955円、法定外福利費が4,882円です(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」労働費用(結果の概要))。

つまり、法定外福利にかけている費用は、平均すると1人1か月5,000円に届きません。金額だけで見れば大きくないため、少ない費用で始められる制度でも、伝え方しだいで採用の材料になり得ます。

求職者は「働きやすさ」を見ている

転職した人が前の会社を辞めた理由を見ると、給与だけでなく働く環境も大きな要素です。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、転職入職者が前職を辞めた理由として「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」を挙げた割合は、男性で8.6%、女性で12.8%でした。「給料等収入が少なかった」は男性10.1%、女性8.3%、「職場の人間関係が好ましくなかった」は男性9.0%、女性11.7%です(出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」転職入職者の状況)。

福利厚生は、こうした働く環境への関心に応える材料の一つです。休みの取りやすさや日々の負担を減らす制度は、求職者が入社後の生活を想像する手がかりになります。

法定外福利の費用の内訳から分かること

法定外福利と一口にいっても、会社が費用をかけている分野には偏りがあります。自社の制度を見直すときの参考に、全体の内訳を確認しておきます。

厚生労働省の令和3年就労条件総合調査による、常用労働者1人1か月平均の法定外福利費の内訳を、住居2,509円、医療保健729円、食事493円、文化・体育・娯楽373円などで示した棒グラフ

法定外福利費4,882円のうち、最も大きいのは住居に関する費用で2,509円、構成比は51.4%でした。続いて医療保健に関する費用が729円、食事に関する費用が493円、文化・体育・娯楽に関する費用が373円です(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」労働費用(結果の概要))。

企業規模による差もあります。法定外福利費の合計は、従業員1,000人以上の企業で5,639円、30〜99人の企業で4,414円でした(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」労働費用(結果の概要))。住宅手当や社宅のように費用の大きい制度では、規模の大きい会社と同じ土俵で競うのは簡単ではありません。中小企業では、費用の大きさよりも「日々の生活で使える」「社員の声から生まれた」といった中身で違いを出すほうが現実的です。

アピールの前に、自社の福利厚生を棚卸しする

アピールの材料は、新しい制度を入れる前に、すでにある制度の中から探します。就業規則や社内の案内に載っていない慣習的な取り組みも、整理すれば材料になります。

制度を一覧にする

まず、今ある制度を一覧にします。住宅、食事、健康、休暇、育児・介護、学び、余暇などの分野に分けると、抜けが見つけやすくなります。法律で決まっている制度と会社独自の制度は、分けて書いておきます。

利用の実態を確かめる

制度があっても、使われていなければアピールになりません。利用した人数や、利用の手続きにかかる手間を確かめます。申請の手間が大きく、ほとんど使われていない制度は、求人票に書く前に運用を見直します。

社員に聞く

社員がどの制度をありがたいと感じているかは、会社側の見立てと違うことがあります。短いアンケートや面談で、よく使う制度と、その理由を聞きます。社員の言葉は、そのまま求人票や採用ページの説明に使える材料になります。

求人票・採用ページでのアピールの方法

棚卸しができたら、伝え方を考えます。ポイントは、制度の名前ではなく、入社後の生活がどう変わるかを書くことです。

福利厚生を採用でアピールする手順を、制度を一覧にする、利用の実態を確かめる、社員に聞く、求人票と採用ページで具体的に伝えるの4つで示した図

求人票では「何が・いくら・誰が」を書く

ハローワークに求人を出す場合、最初に登録する事業所情報には、会社の特長や事業内容に加えて、社会保険や福利厚生などの基本情報を入れます。この内容は、その後に申し込む求人票に共通して掲載されます(出典:ハローワークインターネットサービス「求人申込み手続きの流れ」)。

福利厚生の欄には、制度の名前だけでなく、対象者、金額や回数、利用の条件を具体的に書きます。「食事補助あり」よりも「昼食代の一部を会社が負担(正社員・パート共通)」のほうが、求職者は自分が使えるかどうかを判断できます。

ハローワークの求人担当の案内でも、福利厚生や両立支援などの独自の取り組みを、求人票の特記事項で示す工夫が紹介されています(出典:ハローワーク三沢「バズる求人へ」(令和6年5月))。限られた欄の中でも、自社ならではの取り組みが伝わるように書くことが大切です。

採用ページでは、使っている場面を見せる

採用ページや求人サイトの自社ページでは、文字数の制限が比較的ゆるやかです。制度ごとに、使っている社員の声や、1日の中で使う場面を紹介します。利用した人数や利用率など、社内で確かめた数字を添えると、制度が実際に使われていることが伝わります。

面接では、質問される前に説明する

福利厚生について、求職者が面接で自分から質問するのはためらわれることがあります。面接官が会社の説明の中で主な制度を紹介し、質問しやすい雰囲気をつくると、入社後の認識のずれを防げます。

種類ごとの伝え方の例

福利厚生の種類ごとに、求人票や採用ページで伝えたいことの例をまとめます。

種類制度の例求職者に伝えたいこと
住まい住宅手当、社宅対象者、支給額、支給期間
食事食事補助、置き型の社食利用できる時間帯、会社の負担の割合
健康健康診断の上乗せ、健康関連のサービス対象者、費用の負担、利用の手続き
休暇特別休暇、連続休暇取得の実績、取得しやすい時期
余暇旅行の補助、社員旅行自由参加かどうか、利用の頻度
学び資格取得の支援、研修対象の資格、費用の負担の範囲

求人で福利厚生を書くときのルールと注意点

福利厚生を魅力的に見せたいあまり、実態より大きく書いてしまうと、入社後のトラブルにつながります。求人の表示には法律のルールがあります。

求人の情報は正確で最新の内容に

職業安定法は、求人や労働者の募集に関する情報について、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じています(出典:職業安定法(e-Gov法令検索))。そのうえで、募集を行う者に次のような義務を定めています。

労働者の募集を行う者及び募集受託者は、この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

出典:職業安定法(e-Gov法令検索)

福利厚生に当てはめると、廃止した制度を求人票に残したままにしない、対象者が限られる制度を全員が使えるように書かない、といった点に気をつける必要があります。制度を見直したときは、求人票や採用ページも同時に直します。

ハローワークも、求人票に記載した条件を順守するよう求めています(出典:ハローワークインターネットサービス「求人申込み、採用・選考にあたっての留意事項」)。正社員だけが対象の制度は、その旨を明記します。

食事の補助は税金の扱いを確認する

食事の補助や置き型の社食は、日々の生活で使えるため、求職者に伝わりやすい制度です。ただし、会社が負担する分は、条件によっては給与として課税されます。国税庁は、食事を支給したときに給与として課税されない要件を次のように示しています。

役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。(中略)次の金額が1か月当たり7,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。

出典:国税庁「タックスアンサーNo.2594 食事を支給したとき」

ここでいう「次の金額」とは、食事の価額から役員や使用人が負担している金額を引いた額です。要件を満たさない場合は、その差額が給与として課税されます(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2594 食事を支給したとき」)。制度を設計するときは、会社の負担の割合と月の上限を決め、顧問の税理士などに確認しておきます。

例えば、会社の負担を利用額の半分以内とし、1か月の会社負担に上限を設ければ、要件を意識した設計になります。採用の場面では、こうした具体的な負担の割合を伝えると、求職者が使い方を想像しやすくなります。

旅行の補助や社員旅行の扱い

旅行を福利厚生に取り入れる場合も、税金の扱いを確かめます。国税庁は、従業員レクリエーション旅行の費用を、原則として給与としなくてよい条件を次のように示しています。

旅行の期間が4泊5日以内であること。(中略)旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であること。

出典:国税庁「タックスアンサーNo.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」

自己都合で参加しなかった人に金銭を支給した場合は、参加した人と参加しなかった人の全員に、その支給額に相当する給与があったものとされます(出典:国税庁「タックスアンサーNo.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」)。社員旅行を一律に行うのではなく、社員が自分の都合で旅行や宿泊を割安に使える仕組みにする方法もあります。どちらの形でも、求人では「自由参加」「年に何回まで」などの条件を書いておくと、誤解を防げます。

健康・美容に関するサービスの書き方

健康や美容に関するサービスを福利厚生に入れる場合、求人票や採用ページでは効果を約束する書き方を避けます。「利用できる」「会社が費用の一部を負担する」など、制度の事実を書くのにとどめます。

新しく福利厚生を入れるかどうかの判断の基準

今ある制度だけでは材料が足りない場合、新しい制度を検討します。その前に、次の点を確かめておきます。

  • 採用で競合する会社と比べて、何が足りないのかが分かっている
  • 求職者だけでなく、今いる社員も使いたいと考えている
  • 正社員とパート・アルバイトなど、対象者の範囲を決められる
  • 1人あたりの費用と、利用が増えたときの総額を見込める
  • 税金の扱いや就業規則への記載を確認できる
  • 利用の手続きを担当する人を決められる

費用の考え方

費用は、1人あたりの月額と利用の見込みから考えます。先に見たとおり、法定外福利費は平均で1人1か月4,882円でした(出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」労働費用(結果の概要))。これはあくまで全体の平均の目安で、業種や規模、住宅手当の有無によって大きく変わります。新しい制度の費用を、今の法定外福利費と比べてどのくらい増えるかで考えると、続けられるかどうかを判断しやすくなります。

外部のサービスを使う場合は、初期費用、月額の費用、利用人数による変動、解約の条件を確かめます。料金の体系はサービスによって異なるため、複数の資料を取り寄せて比べると、自社の規模に合うものを選びやすくなります。

認定制度を活用する

若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業は、厚生労働省のユースエール認定を受けられる場合があります。対象は常時雇用する労働者が300人以下の企業で、有給休暇の取得率が平均70%以上、または年間の取得日数が平均10日以上であることなどが基準に含まれています。認定を受けると、ハローワークなどで重点的に紹介されるほか、認定マークを広告などに使えます(出典:厚生労働省「ユースエール認定制度」)。福利厚生と合わせて、働きやすさを第三者の基準で示す方法の一つです。

福利厚生のアピールに向かないケース

福利厚生は採用の材料になりますが、どんな場合でも効くわけではありません。次のような場合は、先に別の課題に取り組むほうが効果的です。

  • 給与の水準が、同じ地域・同じ職種の相場より明らかに低い
  • 残業が多い、休みが取れないなど、働き方そのものに課題がある
  • 仕事内容が求人票から伝わらず、応募の判断材料が足りない
  • 制度はあるが、職場の雰囲気から使いにくい

仕事内容の書き方について、ハローワークの案内では、求人票の重要なポイントは仕事内容であり、できるだけ具体的に書くことが勧められています(出典:ハローワーク三沢「バズる求人へ」(令和6年5月))。福利厚生は、仕事内容や労働条件が十分に伝わったうえで、他社との違いを後押しする材料と考えるとよいでしょう。

求人票で福利厚生を書く前に確かめたい点を、対象者の明記、金額や回数、利用の実績、廃止した制度の削除、税金の扱い、効果を約束しない書き方の6項目で示したチェックリスト

制度を入れたあとの運用

新しい制度は、入れたあとに使われ続けることが大切です。社内への案内を繰り返し、利用の手続きをできるだけ簡単にします。

利用の状況は、半年から1年ごとに確かめます。使われていない制度は、理由を社員に聞いて改善するか、別の制度に切り替えます。その結果を求人票や採用ページに反映すると、職業安定法が求める「正確かつ最新の内容」を保つことにもつながります(出典:職業安定法(e-Gov法令検索))。

採用の面でも、応募者に福利厚生が応募のきっかけになったかを面接で聞いておくと、次の求人でどの制度を前面に出すかを判断できます。食事の補助を入れる場合は、オフィスに冷蔵庫などを置いて総菜やサラダを購入できる置き型の社食サービスのように、日々の利用の様子を採用ページで見せやすい制度もあります。

あわせて読みたい

ツナグバで、福利厚生のサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

福利厚生の分野では、置き型の社食、旅行に特化した福利厚生、セルフホワイトニングのサービスを掲載しています。いずれも、福利厚生のメニューを増やしたいときや、採用で伝えられる材料を増やしたいときの選択肢になります。

今ある制度の棚卸しと、対象者・予算の見込みをまとめたうえで、資料で詳細を確認してください。

セルフホワイトニングを使った福利厚生サービス

主な特徴は次のとおりです。

  • 身だしなみのケアを福利厚生に加えられる:歯の見た目のケアに関心がある社員に向けて、新しいメニューとして用意できます。仕事で人と会う機会が多い社員にも案内しやすい内容です。
  • 社員が自分の都合に合わせて使える:店舗型や持ち帰り型など、利用の形は製品によって違います。勤務時間との兼ね合いを考えて選べます。
  • 会社の費用負担の方法を選べる場合がある:全額を会社が負担する方法や、一部を補助する方法などがあります。選べる形は製品によって違うため、資料で確認してください。

このサービスの詳細を見る

社員に健康的な食事を届ける、置き型の社食サービス

主な特徴は次のとおりです。

  • オフィスで食事を購入できる:冷蔵庫などを設置し、野菜やサラダ、総菜を社内で購入できるようにします。外に出ずに食事をとれます。
  • 社食の設備を作らずに始められる:調理場や専任の人員を用意せずに導入できる形が一般的です。必要な設置場所や設備は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 福利厚生として社内外に伝えられる:食事の支援は、社員が日々の中で利用しやすい福利厚生です。採用の場で職場環境の一つとして伝えることができます。

このサービスの詳細を見る

旅行と組み合わせた福利厚生サービス

主な特徴は次のとおりです。

  • 旅行や宿泊を割安に使える:社員が旅行や宿泊を割引の価格などで利用できる仕組みです。対象となる施設や割引の内容は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 会社で制度を作る手間を抑えられる:予約や割引の仕組みはサービス側が用意する形が一般的です。会社が独自に制度を作るより、管理の手間を抑えられます。
  • 社員の家族と使える場合がある:家族での旅行に使えるサービスもあります。家族の利用範囲は製品によって違うため、事前に確認してください。

このサービスの詳細を見る

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

福利厚生は、求人票のどこに書けばよいですか?

ハローワークの求人票では、事業所情報の福利厚生の欄に基本的な内容を登録し、独自の取り組みは特記事項などで補足します。求人サイトや採用ページでは、制度ごとに対象者や条件を添えて紹介します。

パートやアルバイトにも同じ福利厚生を用意すべきですか?

制度の目的や性質によって判断が分かれます。対象者を限る場合は、求人票にその旨を明記し、誤解が生じないようにします。待遇の差については、就業規則とあわせて社会保険労務士などの専門家に確認すると安心です。

小さな会社でも福利厚生でアピールできますか?

できます。法定外福利費は平均で1人1か月5,000円に届かない水準で、少ない費用の制度でも伝え方しだいで材料になります。社員の声や利用の実績を添えて、具体的に伝えることが大切です。

福利厚生の制度をやめたときは、どうすればよいですか?

求人票や採用ページから速やかに削除します。職業安定法は、募集に関する情報を正確で最新の内容に保つことを求めています。就業規則に記載がある場合は、変更の手続きも必要です。

参考資料