外国人材の採用を決めたあと、多くの会社が最初につまずくのが住まいの確保です。来日前の人は日本で部屋を探す手段が少なく、保証人や初期費用の準備も一人では難しいためです。

この記事では、外国人社員の社宅・住居を確保する3つの方法と、特定技能で求められる住居支援の基準を整理します。家賃や初期費用の負担の考え方、物件探しで断られないための準備、入居後の支援、自社で対応するか外部に頼むかの判断の基準もまとめました。

外国人社員の住居確保が課題になる理由

外国人を雇う会社は増え続けています。厚生労働省のまとめでは、令和7年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人で、前年より268,450人(11.7%)増えました(出典:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」)。外国人を雇用する事業所も371,215か所と、前年より8.5%増えています(出典:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」)。

一方で、外国人が自分で部屋を借りるのは簡単ではありません。法務省の委託調査では、過去5年間に日本で住む家を探した外国人2,044人のうち、39.3%が「外国人であることを理由に入居を断られた」経験があると答えました(出典:法務省委託調査研究事業「外国人住民調査報告書(訂正版)」(平成29年6月))。

法務省の委託調査で、住む家を探した外国人のうち、保証人がいないことを理由に断られた人が41.2%、外国人であることを理由に断られた人が39.3%、外国人お断りの物件を見てあきらめた人が26.8%だったことを示す棒グラフ

同じ調査で、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」経験がある人は41.2%、「外国人お断り」と書かれた物件を見て申し込みをあきらめた経験がある人は26.8%でした(出典:法務省委託調査研究事業「外国人住民調査報告書(訂正版)」)。調査は平成28年度のものですが、保証人と言葉の壁が住まい探しの障害になりやすいことが分かります。

住まいが決まらないと、入社日に間に合わない、通勤に無理が出る、生活が安定せず早期に辞めてしまう、といった問題につながります。採用の計画を立てる段階で、住居をどう用意するかを決めておくことが大切です。

外国人社員の住居を確保する3つの方法

住居の確保の方法は、大きく3つに分けられます。特定技能の運用要領でも、住居の確保に関する支援として同じ3つの形が示されています(出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」)。

方法1:会社が所有する社宅・寮を提供する

自社で持っている社宅や寮に入ってもらう方法です。入社日に合わせて住まいを用意しやすく、通勤の距離も会社が決められます。一方で、空き部屋がない場合は使えず、建物の維持や修繕の手間がかかります。

方法2:会社が借りた物件を提供する(借上げ社宅)

会社が賃借人として物件を借り、外国人社員に住んでもらう方法です。会社名義で契約するため、本人の保証人の問題を避けやすくなります。その代わり、契約や解約の手続き、退去時の原状回復の確認などを会社が担います。

方法3:本人が契約し、会社が探す・契約を手伝う

外国人社員が自分の名義で借り、会社は不動産会社の紹介や内見・契約への同行、保証の手配などを手伝う方法です。本人が住む場所を選べる一方、入居まで時間がかかりやすく、来日前の人には向きにくい方法です。

方法向いている場面会社の主な負担注意点
所有する社宅・寮空き部屋があり、入社日に合わせたい建物の維持・修繕、入居者の管理広さや設備が基準を満たすか
借上げ社宅来日前の採用、保証人がいない契約・解約の手続き、初期費用家賃の決め方、退去時の精算
本人契約の支援日本で生活した経験がある人物件探しや同行、保証の手配入居まで時間がかかりやすい

どの方法を選んでも、採用する人の在留資格によって会社に求められる支援の内容が変わります。特に特定技能1号の人を受け入れる場合は、次の基準を確認しておきます。

特定技能で求められる住居支援の基準

特定技能1号の外国人を受け入れる会社(特定技能所属機関)は、支援計画に住居の確保に関する支援を入れる必要があります。基準は出入国在留管理庁の運用要領に定められています。主なものを順に見ていきます。

居室の広さは1人あたり7.5㎡以上

運用要領では、居室の広さについて、1人あたり7.5㎡以上を満たすことが求められています(出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」)。複数人で1つの部屋に住む場合は、人数に応じた広さが必要です。

例外として、技能実習2号などを終えた人が、技能実習生として住んでいた社宅に引き続き住むことを希望する場合は、寝室が1人あたり4.5㎡以上あれば要件を満たすとされています(出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」)。新しく社宅を用意する場合は、7.5㎡以上を前提に考えます。

保証人がいないときは会社が手当てする

本人が賃借人になる場合で、連帯保証人として適当な人がいないときは、会社が連帯保証人になるなどの対応が求められます。家賃債務保証業者を利用した場合、保証料は会社が負担する必要があります(出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」)。

社宅の提供で利益を得てはいけない

家賃の決め方で特に注意したいのが、会社が利益を得てはいけないという点です。運用要領は次のように定めています。

特定技能所属機関等が自ら賃借人となるときは、1号特定技能外国人に社宅等を貸与することにより経済的利益を得てはなりません。

出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」

借上げ社宅の場合、本人から受け取る額は、借上げにかかる費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料などは含まない)を入居する人数で割った額以内とされています(出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」)。たとえば家賃と管理費の合計を2人で分ける場合、1人から受け取れるのはその半分までです。

家電や家具などの備品の費用を定期的に受け取る場合も、実費の範囲内で、備品の耐用年数や入居人数をもとに計算した合理的な額であることが条件になります(出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領(別冊1)」)。金額の根拠を書面に残し、本人に説明しておくと、後からの疑問にも答えやすくなります。

なお、運用要領は改正されることがあります。支援計画を作るときは、出入国在留管理庁が公表している最新版を確認してください。技能実習や、ほかの在留資格の人を受け入れる場合は、それぞれの制度の基準を確かめる必要があります。

家賃・初期費用と税の考え方

社宅を用意するときは、誰が何を負担するかを先に決めておきます。決めずに入居すると、退去時の精算や給与からの控除でもめる原因になります。

費用の分け方を決めておく

住まいにかかる費用には、毎月の家賃や管理費のほか、敷金・礼金・仲介手数料・保証料などの初期費用、家具や家電、光熱費、退去時の原状回復費用があります。特定技能1号の人を借上げ社宅に入れる場合、先に見たとおり、敷金や礼金などを本人から受け取る家賃に上乗せすることはできません。

家賃の額は、地域、広さ、築年数、1部屋に住む人数で大きく変わります。全国一律の相場で考えるより、勤務地の近くで条件に合う物件を複数見て、目安をつかむほうが確実です。給与から家賃を控除する場合は、労使協定など、控除のための手続きを社会保険労務士などの専門家に確認してから始めてください。

社宅の家賃と給与課税

社宅を安く貸す場合は、税の扱いも確認が必要です。国税庁は、会社が従業員に社宅や寮を貸す場合について、家賃が一定の額以上であれば給与として課税されないとしています。

使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。

出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」

賃貸料相当額は、建物と敷地の固定資産税の課税標準額や建物の床面積をもとに計算します(出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」)。家賃を無料にしたり、極端に安くしたりすると、差額が給与として課税される場合があります。特定技能の「利益を得てはいけない」という基準と、税の基準の両方を満たす額になっているかを、税理士に確認しておくと安心です。

物件探しで断られないための準備

借上げ社宅でも本人契約でも、物件を貸す側の不安を減らすことが入居の近道です。貸す側が心配するのは、言葉が通じないこと、生活のルールが伝わらないこと、家賃の支払いが滞ることなどです。

国土交通省は、賃貸人や仲介業者、管理会社に向けて「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を公表しています。ガイドラインは、外国人を受け入れることについて次のように述べています。

外国人であっても、正しい知識と民間や行政の様々なサービスの活用により円滑に受け入れることが可能です。

出典:国土交通省「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」第1章

このガイドラインでは、外国人が入居する場合の実務対応をQ&A方式で解説し、入居申込書や契約書などの様式を6か国語に翻訳しています(出典:国土交通省「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」第1章)。不動産会社に相談するときに、こうした公的な資料があることを伝えると、貸す側の不安を和らげる材料になります。

国土交通省のページでは、外国人向けの「部屋探しのガイドブック」が、韓国語やミャンマー語を含む14言語で公開されています。多言語に対応できる登録家賃債務保証業者の一覧も掲載されています(出典:国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」)。本人に母語の資料を渡しておくと、契約の内容や生活のルールを理解してもらいやすくなります。

不動産会社に相談するときは、次の情報をそろえておくと話が早く進みます。

  • 入居する人数、入居の開始日、予定している期間
  • 契約の名義(会社か本人か)と、緊急時の会社の連絡先
  • 本人の在留資格と在留期間、勤務先と勤務時間
  • 日本語の理解の程度と、会社側で通訳や説明を担当する人
  • 家賃の支払い方法と、保証会社の利用の可否

入居前後に会社が準備すること

部屋が決まっても、それで支援が終わるわけではありません。来日直後の数週間は、生活に必要な手続きや買い物、近隣との付き合い方など、分からないことが続きます。入居の前と後で準備することを、チェックリストにまとめました。

外国人社員の入居前後に会社が準備することを、基準の確認、費用負担の書面化、備品の用意、ライフラインの開通、住所の届出、生活ルールの説明、生活に必要な場所の確認、連絡先の決定の8項目で示したチェックリスト

入居の前に準備すること

  • 広さや設備が、受け入れる在留資格の基準を満たしているか確認する
  • 家賃、初期費用、光熱費、備品の費用を誰が負担するか書面にする
  • 寝具や照明、カーテンなど、入居した日から必要なものを用意する
  • 電気・ガス・水道、インターネットの開通の手続きを済ませる

入居の後に支援すること

  • 住所が決まったあとの市区町村での届出に同行する
  • ごみの分け方と出す日、騒音など、生活のルールを母語の資料で説明する
  • 近くの病院、スーパー、交番など、生活に必要な場所を一緒に確認する
  • 困ったときに連絡する社内の担当者と、連絡の方法を決めておく

入居時の部屋の状態を写真で残しておくと、退去時の原状回復の話し合いがしやすくなります。国土交通省は、原状回復のポイントと、入退去時の物件の状況を確認するリストの例を、多言語で公開しています(出典:国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」)。

自社で用意するか、外部に頼むかの判断の基準

住居の確保は、自社だけで進めることもできます。ただし、受け入れる人数や社内の体制によっては、外部の力を借りたほうが確実な場合もあります。判断の手がかりを整理します。

外国人社員の住居確保を、社宅に空きがある場合は自社で対応、初めての受け入れでは外部も検討、すでに住まいがある人は用意不要という3つのケースで示した図

自社で対応しやすいケース

  • 空いている社宅や寮があり、広さや設備の基準を満たしている
  • 受け入れる人数が少なく、総務の担当者が入居の手続きに時間を割ける
  • 付き合いのある不動産会社があり、外国人の入居に慣れている

外部に頼むことを考えたいケース

  • 初めて外国人を採用し、来日前の段階から住まいを用意する必要がある
  • 本人の母語で説明できる社員がいない
  • 特定技能の支援計画の作成や実施を、社内だけで回す自信がない

特定技能1号の人の支援は、登録支援機関に委託することもできます。ただし、委託しても受け入れる会社としての責任がなくなるわけではありません。どこまでを任せ、どこを自社で担うかを、契約の前に確認しておきます。

採用の段階から住まいの準備まで、まとめて相談できる相手を探す方法もあります。たとえば、ミャンマーの人材の採用を支援するサービスのように、送り出し機関と連携した採用支援を使えば、来日前の準備を含めて進め方を相談しやすくなります。住居の手配まで支援の範囲に入るかは、サービスごとに違うため資料で確認してください。

社宅を用意しなくてよいケース

日本で長く暮らしていて、すでに自分の住まいがある人を採用する場合は、新たに社宅を用意する必要はありません。在留資格によっては、会社に住居の確保の支援が義務づけられていないこともあります。その場合でも、通勤の距離や住まいの状況を入社前に聞いておくと、入社後の困りごとを防ぎやすくなります。

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ツナグバで、外国人材の採用支援サービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

採用支援の分野では、外国人材の採用に関わるサービスとして、ミャンマーの人材の採用支援と、韓国の人材に特化した採用プラットフォームを掲載しています。住まいの準備は採用の時期や人数と一緒に考える必要があるため、採用の計画を立てる段階で比べておくと進めやすくなります。

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よくある質問

外国人社員には、必ず会社が社宅を用意しなければなりませんか?

すべての外国人社員に社宅の用意が義務づけられているわけではありません。特定技能1号の場合は、住居の確保に関する支援が求められますが、方法は社宅の提供のほか、物件探しや契約の手伝いでもかまいません。在留資格ごとの基準を確認してください。

複数人で1つの部屋に住んでもらってもよいですか?

特定技能1号の場合は、居室の広さが1人あたり7.5㎡以上であることが求められます。人数に対して部屋が狭いと基準を満たさないため、入居人数を決める前に広さを確認してください。生活のしやすさを考えると、個室を用意できるかも検討するとよいでしょう。

家賃を給与から差し引いてもよいですか?

給与からの控除には、労使協定などの手続きが必要です。特定技能1号の場合は、受け取る額が借上げの費用を人数で割った額以内であることも求められます。控除の前に、本人に金額と内訳を説明し、同意を書面で残しておきます。

退去するときの費用は誰が払いますか?

契約の名義と、入居時に決めた費用の分け方によります。通常の使い方による傷みと、本人の不注意による傷みでは扱いが変わるため、入居時の部屋の状態を写真で残し、原状回復の考え方を母語の資料で説明しておくと安心です。

参考資料