来客が最初に目にするのは、オフィスのエントランスです。受付のまわりが雑然としていたり、案内が分かりにくかったりすると、会社の印象にも影響します。一方で、移転や改装のときにどこから考えればよいか分からず、内装業者に任せきりになってしまう会社も少なくありません。

この記事では、オフィスのエントランスデザインを考える手順を整理します。目的の決め方、サイン・色・照明・受付・アートといった要素ごとのポイント、消防や通路など法令で確認しておきたいこと、広さと予算に応じた考え方、設計の前に使えるチェックリストまでまとめました。

オフィスのエントランスが担う役割

エントランスのデザインを考える前に、エントランスがどのような役割を持つ場所かを整理しておきます。役割がはっきりすると、何にお金と場所を使うべきかが決めやすくなります。

  • 来客の第一印象をつくる:取引先、採用の候補者、協力会社など、来客が最初に会社を体験する場所です。
  • 受付と案内をする:来客の取り次ぎ、待ち時間の過ごし方、会議室への案内など、実務の機能を担います。
  • 社内と社外を分ける:来客が入れる範囲と、社員だけが入れる範囲の境目になります。情報やセキュリティの面でも大切な場所です。
  • 社員が毎日通る:社員にとっても、出社して最初に通る場所です。会社の考え方を日々目にする場所でもあります。

来客が多い会社と、来客がほとんどない会社とでは、エントランスにかけるべき費用は違います。役割のうちどれを重視するかを、最初に決めておくことが大切です。

社員にとってのエントランス

エントランスは、社員が毎日通る場所でもあります。会社の理念や大切にしている言葉を掲示する、季節ごとに作品や植物を入れ替えるといった工夫は、来客だけでなく社員の目にも入ります。

ただし、社員の掲示物や私物が置かれたままになると、雑然とした印象になります。エントランスに置いてよいものと置かないものを決め、定期的に見直す担当者を決めておきます。

デザインを考える前に決めること

エントランスのデザインは、色や素材から考え始めると、全体がまとまりにくくなります。先に決めておきたいのは、次のような前提です。

オフィスのエントランスデザインを考える前に決めることを、目的、来客、広さと制約、予算と順番の4段階で示した図
  1. 目的を決める:来客の印象を整えたいのか、受付の手間を減らしたいのか、採用の候補者に会社の雰囲気を伝えたいのかを決めます。
  2. 来客の種類と人数を確かめる:1日にどのくらいの来客があり、どのような立場の人が多いかを確かめます。待つ人が多いなら、待合のスペースが必要です。
  3. 広さと制約を確かめる:使える面積、天井の高さ、窓の有無に加えて、賃貸の場合は工事できる範囲や、退去時の原状回復の条件を確かめます。
  4. 予算と優先順位を決める:すべてを一度に整えようとせず、何から手をつけるかの順番を決めます。

賃貸のオフィスでは、壁や床に手を加えられる範囲が限られることが多くあります。管理会社やビルのオーナーに、工事の可否と申請の手順を早めに確かめておくと、計画のやり直しを防げます。

エントランスデザインの要素とポイント

エントランスの印象は、いくつかの要素の組み合わせで決まります。要素ごとに、考えることと注意点を整理します。

要素考えること注意点
サイン・ロゴ社名やロゴを、入ってすぐ目に入る位置に置く大きさより、読みやすさと位置を優先する
色と素材会社の色を1〜2色に絞り、床や壁の素材と合わせる色を増やしすぎると落ち着かない印象になる
照明明るさと光の色で、清潔感と落ち着きを出す受付で作業する場合は、作業面の明るさとまぶしさに注意する
受付の形有人の受付、内線電話、タブレットなどから選ぶ来客の人数と、取り次ぎにかかる手間で選ぶ
待合のスペース椅子の数、荷物を置く場所、資料の置き方を決める通路をふさがない配置にする
アートとグリーン空間の雰囲気をつくり、会社の考え方を伝える手入れや入れ替えの手間も考える

サインとロゴ

エントランスに入ってすぐ、社名やロゴが目に入ると、来客は正しい場所に着いたと安心できます。大きくすることより、視線の高さで読みやすいこと、照明で暗くならないことを優先します。ビルの共用部に案内の表示を出す場合は、管理会社のルールに従います。

色と素材

会社の色を取り入れる場合は、壁の一面や小物など、面積を絞って使うとまとまりやすくなります。床や壁の素材は、見た目だけでなく、汚れにくさや掃除のしやすさも考えて選びます。エントランスは人の出入りが多いため、傷みやすい場所です。

照明

照明は、エントランスの印象を大きく左右します。明るすぎる白い光は事務的な印象に、暗すぎる光は入りにくい印象になりがちです。

受付の担当者がエントランスで事務作業をする場合は、作業面の明るさにも注意します。事務所衛生基準規則は、一般的な事務作業の作業面の照度を300ルクス以上、付随的な事務作業を150ルクス以上と定めています(出典:事務所衛生基準規則(第10条 照度等))。この基準は令和4年12月1日から施行されています(出典:愛媛労働局「令和3年12月から職場における労働衛生基準が変わります」)。あわせて、まぶしさにも配慮が必要です。厚生労働省の質疑応答集は、次のように説明しています。

採光や照明の種類や角度により、まぶしさを感じることがあるので、事業者は、労働者が照度にかかわらず、まぶしさを感じないようにすることが必要です。

出典:厚生労働省「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の改正に係る質疑応答集」

デザインのために照明を絞る場合でも、受付の机の上は十分な明るさを確保し、照明が目に直接入らない位置にするのが基本です(出典:厚生労働省「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の改正に係る質疑応答集」)。

受付の形

受付の形は、来客の人数と、取り次ぎの手間で選びます。来客が多く、案内の質を重視するなら有人の受付、来客が少ないなら内線電話やタブレットでの呼び出しが選択肢になります。無人の受付にする場合も、来客が迷わないように、使い方の案内を分かりやすく表示しておきます。

待合のスペース

来客が待つ時間が長い会社では、待合のスペースが印象を左右します。椅子の数は、同じ時間帯に重なる来客の人数から考えます。コートや荷物を置く場所、会社案内やパンフレットを置く場所もあわせて決めておくと、来客が落ち着いて待てます。

待合を受付のすぐ横に置く場合は、受付での会話がほかの来客に聞こえないかにも気を配ります。採用の面接の候補者と取引先が同じ場所で待つこともあるため、配置に余裕があれば、少し距離をとれるようにしておくと安心です。

アートとグリーン

絵画や植物は、空間の雰囲気をつくりやすい要素です。会社の考え方や業種に合わせた作品を選ぶと、来客との会話のきっかけにもなります。一方で、植物の水やりや、作品の掃除と入れ替えなど、置いたあとの手間も考えておく必要があります。アートの扱いについては、後の章で詳しく整理します。

法令やルールで確認しておきたいこと

エントランスは人の出入りが集中する場所のため、デザインだけでなく、安全や法令の面も確認が必要です。主な項目を整理します。

オフィスのエントランスで確認したい法令として、照明の照度、通路の障害物、防炎、アートの展示の4項目をまとめた表

通路をふさがない

デザインのために家具や装飾を置くと、通路が狭くなることがあります。労働安全衛生規則は、屋内に設ける通路について、用途に応じた幅を持つことなどを定めています。

通路面から高さ一・八メートル以内に障害物を置かないこと。

出典:労働安全衛生規則(第542条 屋内に設ける通路)

同じ条文は、通路面をつまずきやすべりの危険のない状態に保つことも求めています(出典:労働安全衛生規則(第542条 屋内に設ける通路))。待合の椅子や植物、看板などを置くときは、人がすれ違える幅を残し、床に配線を這わせないようにします。避難の経路や非常口の表示をふさがないことも大切です。

カーテンやじゅうたんの防炎

消防法は、高層建築物や地下街、政令で定める防火対象物で使うカーテンやじゅうたんなどに、一定の防炎性能を求めています(出典:消防法(第8条の2、第8条の3))。ここでいう高層建築物は、高さ31メートルを超える建築物です(出典:消防法(第8条の2、第8条の3))。対象となる物品には、カーテン、布製のブラインド、じゅうたんのほか、展示用の合板なども含まれます(出典:消防法施行令(第4条の3 防炎防火対象物の指定等))。

オフィスが入るビルが高層建築物にあたる場合、エントランスに新しくカーテンやじゅうたん、展示用の合板などを入れるときは、防炎の表示があるものを選ぶ必要があります。対象になるかどうかは、ビルの管理会社や所轄の消防署に確認してください。

カメラと来訪者の記録

エントランスに防犯カメラを置く場合や、来訪者の名前を記録する場合は、個人情報の扱いにも注意が必要です。個人情報保護委員会のQ&Aでは、防犯カメラの設置と画像の利用についての留意点が取り上げられています(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」)。撮影していることを分かるように示す、記録の保管期間を決めるなど、運用のルールを決めておきます。来訪者の名簿をほかの来客が見られる状態で置かないことも大切です。

アートを飾るときの考え方

エントランスに絵画を飾ると、空間の印象を変えやすくなります。ここでは、飾るときに知っておきたい考え方を整理します。

まず、著作権との関係です。作品を飾ることについて、著作権法は次のように定めています。

美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。

出典:著作権法(第45条 美術の著作物等の原作品の所有者による展示)

購入した原作品を社内に飾ることは、この規定の範囲で考えられます(出典:著作権法(第45条 美術の著作物等の原作品の所有者による展示))。レンタルの場合は、作品の所有者であるサービスの提供者の同意のもとで飾る形になります。なお、同じ条文は、屋外の一般公衆が見やすい場所に恒常的に設置する場合を例外としています(出典:著作権法(第45条 美術の著作物等の原作品の所有者による展示))。建物の外壁などに作品を設置する場合は、別に確認が必要です。一方、作品を撮影してWebサイトや会社案内に載せる場合は、展示とは別の利用にあたる可能性があるため、作者や提供者に確認します。

次に、購入とレンタルの違いです。購入はまとまった費用がかかりますが、作品は自社のものになります。レンタルは、購入せずに飾れるうえ、一定の期間ごとに作品を入れ替えられる仕組みが一般的です。季節や来客の目的に合わせて雰囲気を変えたい場合や、作品選びに自信がない場合は、オフィスに飾る絵画を定期的に入れ替えてレンタルするサービスも選択肢になります。

作品を選ぶときは、飾る壁の広さ、照明の当たり方、来客の視線の高さを確かめます。直射日光が当たる場所や、人や荷物がぶつかりやすい場所は避けます。

広さと予算に応じた考え方

エントランスの改装にかかる費用は、工事の範囲、使う素材、受付の設備によって大きく変わります。同じ広さでも、壁や床の工事を伴うかどうかで費用は大きく違うため、ここでは金額ではなく、考え方の順番を整理します。

  • 工事をしないでできること:整理整頓、サインの見直し、照明の電球の交換、アートや植物の配置。費用を抑えながら印象を変えやすい方法です。
  • 部分的な工事:壁の一面の仕上げの変更、受付カウンターの入れ替え、照明器具の交換。賃貸の場合は、事前の申請と原状回復の条件を確認します。
  • 全面的な改装:床、壁、天井、受付をまとめて見直す方法です。移転のときに合わせて行うと、工事の手間を減らせます。

見積もりを比べるときは、工事費だけでなく、設計の費用、什器の費用、退去時の原状回復の費用まで含めて考えます。複数の業者から、同じ条件で見積もりを取ると比べやすくなります。

エントランスデザインのチェックリスト

設計を依頼する前、または完成したあとに、次の点を確かめてみてください。

オフィスのエントランスデザインで確かめたい8つの項目をまとめたチェックリストの図
  • エントランスの目的を、一言で説明できる
  • 社名やロゴが、入ってすぐ読める位置にある
  • 来客が、どこで何をすればよいか迷わない
  • 待合の椅子や装飾が、通路や非常口の表示をふさいでいない
  • 受付で作業する場合、机の上が十分に明るく、まぶしくない
  • カーテンやじゅうたんを入れる場合、防炎の対象かを確かめた
  • 社員だけが入れる範囲との境目が、はっきりしている
  • 来訪者の記録やカメラの運用ルールを決めている
  • 掃除や植物の手入れ、作品の入れ替えの担当者が決まっている

やりすぎないための注意点

エントランスに費用をかけすぎると、執務スペースや会議室の整備が後回しになることがあります。来客がほとんどない会社や、オンラインでの商談が中心の会社では、エントランスよりも、社員が働く場所の環境に費用を使うほうが効果的な場合もあります。

また、デザインを優先して、受付の使い勝手や掃除のしやすさを犠牲にすると、毎日の運用が負担になります。見た目と運用のどちらも続けられるかを、完成前に確かめておくことが大切です。迷ったときは、まず工事をしないでできることから始め、来客や社員の反応を見ながら手を加えていく方法もあります。

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ツナグバで、オフィスの印象づくりのサービスを比べる

ツナグバは、法人向けのサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

福利厚生の分野では、オフィスに絵画を飾れる法人向けのレンタルアートを掲載しています。オフィスや店舗に飾る絵画を定期的に入れ替えてレンタルするサービスで、来客の印象づくりや、働く環境づくりに使えます。工事をせずにエントランスの雰囲気を変えたい場合の選択肢の一つです。

作品の入れ替えの頻度や、設置の方法は、資料で確認できます。

こんな課題があれば

  • 来客を迎える受付や会議室が殺風景で、会社の印象に自信がない
  • 絵を飾りたいが、どんな作品を選べばよいか分からない
  • 一度買った絵をずっと飾ったままで、職場の雰囲気が変わらない

掲載サービスでできること

  • 絵画を定期的に入れ替えられる:レンタルのため、一定の期間ごとに作品を入れ替えられます。季節や目的に合わせて空間の雰囲気を変えられます。
  • 購入せずに作品を飾れる:作品を買い取らずに利用できるため、まとまった購入費用をかけずに始められます。料金の仕組みは製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 空間に合った作品の相談ができる:飾る場所の広さや雰囲気を伝えて、作品を選ぶ相談ができるサービスが一般的です。作品選びに詳しくない場合も検討しやすくなります。

資料で確かめたいこと

  • 月額料金と、入れ替え時の費用の有無
  • 入れ替えの頻度と、作品を選べる範囲
  • 設置や取り外しを誰が行うか
  • 作品が傷ついた場合の補償の取り扱い
  • 契約期間と、途中で解約できるか

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よくある質問

賃貸のオフィスでも、エントランスのデザインを変えられますか?

変えられる範囲は、契約の内容とビルのルールによります。壁や床の工事には、管理会社やオーナーの承諾が必要なことが多く、退去時の原状回復の条件も確かめておく必要があります。工事を伴わない方法として、サインや照明の見直し、アートや植物の配置から始める方法もあります。

無人の受付にすると、来客の印象は悪くなりますか?

受付の形よりも、来客が迷わずに取り次ぎを頼めるかどうかが印象を左右します。無人にする場合は、呼び出しの方法を分かりやすく表示し、担当者がすぐに出迎えられる体制を整えておきます。

エントランスに絵画を飾るのに、許可は必要ですか?

購入した原作品を社内に飾る場合や、所有者の同意を得たレンタルの作品を飾る場合は、著作権法の規定の範囲で考えられます。作品を撮影してWebサイトなどに載せる場合は、別に作者や提供者への確認が必要です。

小さなオフィスで、まず手をつけるべきことは何ですか?

整理整頓と、社名の表示、照明の見直しから始めるのが現実的です。物が置かれていない状態をつくるだけでも、印象は変わります。そのうえで、アートや植物など、空間の雰囲気をつくる要素を加えていきます。

参考資料