社員が席を離れてひと息つける場所がない。昼食を自席でとる人が多く、執務スペースが落ち着かない。こうした悩みから、オフィスに休憩スペースを作ろうと考える企業は少なくありません。ただ、目的を決めずに家具を置くだけでは、使われない空間になりがちです。この記事では、休憩スペースを作る手順を、目的の決め方、場所選び、レイアウト、設備、運用ルールの順に整理し、法令で確認しておきたい点や費用の考え方もまとめます。

オフィスの休憩スペースとは:役割を3つに分けて考える

休憩スペースは、社員が業務から離れて休んだり、食事をしたり、気分を切り替えたりするための場所です。一口に休憩スペースといっても、求められる役割は会社によって違います。大きく分けると、次の3つです。

オフィスの休憩スペースの役割を、休む・食べる・話すの3つに分けて示した図
役割主な使われ方向いているつくり
休む短い仮眠、目を閉じて休む、ひとりで過ごす人目を遮る配置、照明を落とせる場所、1人用の席
食べる昼食、軽食、飲み物テーブルと椅子、電子レンジや給湯、手洗い場の近く
話す雑談、部署をまたいだ交流、気軽な打ち合わせ複数人で座れる席、執務スペースから少し離れた位置

3つの役割を1か所ですべて満たそうとすると、どれも中途半端になりやすくなります。たとえば、静かに休みたい人と、にぎやかに昼食をとりたい人が同じ場所にいると、どちらも使いにくくなります。スペースが限られている場合は、優先する役割を1つか2つに絞るのが現実的です。

休憩スペースを設ける意味と、期待しすぎないこと

休憩スペースづくりは、国が事業者に求めている「快適な職場環境の形成」の一部でもあります。労働安全衛生法は、次のように定めています。

事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。(中略)三作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第71条の2

これは努力義務ですが、休憩スペースを「疲労を回復するための施設」として位置づける考え方の根拠になります。東京労働局の案内でも、快適職場指針の4つの措置の一つに「疲労回復支援施設」が挙げられ、改善事例として、殺風景な事務室に観葉植物や四季の花々を置くことなどが紹介されています(出典:東京労働局「快適職場づくりを進めましょう」)。

働く人のストレスの状況も、休む場所を考えるきっかけになります。厚生労働省の調査では、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある労働者は67.5%でした。内容は「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%で最も多く、「対人関係」が32.9%で続きます(出典:厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」2026年8月7日公表)。

強いストレスと感じる事柄の内容の上位3つを示した棒グラフ。仕事の量39.5%、仕事の失敗・責任の発生等39.5%、対人関係32.9%

ただし、ストレスの主な原因は仕事の量や責任、人間関係です。休憩スペースを作るだけで、これらが解決するわけではありません。休憩スペースは、業務量の見直しや休みやすい運用とあわせて、短い時間でも気分を切り替えられる場所を用意する施策と考えるのが現実的です。

法令で確認しておきたいこと

休憩スペースづくりに関係する主な法令は、労働基準法と事務所衛生基準規則です。義務と努力義務を分けて確認します。

オフィスの休憩スペースづくりで確認したい労働基準法と事務所衛生基準規則の主な規定をまとめた表

休憩時間の基本(労働基準法)

労働基準法第34条は、休憩時間について次のように定めています。

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第34条第1項

同じ条の第3項では、休憩時間を自由に利用させなければならないとしています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第34条第3項)。休憩スペースで電話番をさせるなど、実質的に業務から離れられない状態は休憩とはいえないため、運用ルールを決めるときに注意が必要です。

休憩の設備と休養室(事務所衛生基準規則)

事務所衛生基準規則では、次のように定められています(出典:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」)。

  • 第19条:労働者が有効に利用できる休憩の設備を設けるよう努めなければならない(努力義務)
  • 第20条:夜間に睡眠を与える必要があるときや、就業の途中に仮眠の機会があるときは、睡眠・仮眠の場所を男性用と女性用に区別して設けなければならない
  • 第21条:一定の人数以上を使用するときは、横になって休める休養室または休養所を設けなければならない

第21条の条文は、次のとおりです。

事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。

出典:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」第21条

「が床」とは、横になって休むことです。この休養室は、体調が悪くなった人が横になって休むための場所で、一般的な休憩スペース(ラウンジやカフェスペース)とは目的が異なります。人数の条件に当てはまる会社は、休憩スペースとは別に確保する必要があるかを確認します。

温度・湿度と照明の基準

同規則第5条では、空気調和設備を設けている場合、室の気温を18度以上28度以下、相対湿度を40%以上70%以下にするよう努めることとされています。第10条では、作業面の照度を、一般的な事務作業で300ルクス以上、付随的な事務作業で150ルクス以上とすることが定められています(出典:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」第5条・第10条)。休憩スペースは作業場所ではありませんが、執務スペースと同じ空調の範囲に入るかどうかは、場所選びの段階で確認しておきます。

休憩スペースの作り方:6つの手順

休憩スペースは、次の6つの手順で進めると、使われない空間になるのを防ぎやすくなります。

1. 目的と利用者を決める

最初に、誰が、いつ、何のために使う場所にするかを決めます。昼食の場所が足りないのか、短時間でも静かに休める場所がほしいのか、部署間の会話を増やしたいのかで、必要な広さも家具も変わります。社員アンケートや、昼休みの過ごし方の観察から始めると、思い込みで作ることを避けられます。

2. 場所を選ぶ

場所選びでは、執務スペースとの距離が大切です。近すぎると話し声が業務の邪魔になり、遠すぎると使われなくなります。窓際など自然光が入る場所は、気分を切り替えやすい場所として選ばれることが多い一方、夏場の暑さや西日にも注意が必要です。給湯設備や手洗い場との位置関係も確認します。

3. レイアウトを考える

レイアウトは、使い方に合わせてゾーンを分けると使いやすくなります。食事をするテーブル席と、ひとりで休むソファ席を、棚や観葉植物で緩やかに区切る方法があります。通路をふさがないこと、避難経路を確保することも忘れずに確認します。

4. 家具と設備を選ぶ

家具は、目的に合わせて選びます。昼食が中心ならテーブルと椅子、休むことが中心ならソファや背もたれの高い椅子が向いています。電源、照明の調整、ごみ箱、飲み物の置き場など、細かな設備が使いやすさを左右します。

5. 空間の雰囲気を整える

執務スペースと同じ白い壁と蛍光灯のままでは、気分を切り替えにくくなります。照明の色を暖かみのあるものにする、観葉植物を置く、壁に絵画を飾るなど、執務スペースとは違う雰囲気をつくる工夫があります。季節に合わせて絵を入れ替えたい場合は、オフィスに飾る絵画を定期的に入れ替えてレンタルするサービスを使う方法もあります。

6. 運用ルールを決めて周知する

作ったあとに使われるかどうかは、ルールと雰囲気で決まります。利用できる時間、食事のにおいへの配慮、片付けのルール、仕事の電話をしてよいかなどを決めて、短い文で掲示します。管理職が率先して使うと、「使ってよい場所」という空気が生まれやすくなります。

広さ別のレイアウトの考え方

休憩スペースに使える広さは、オフィスによって大きく違います。広さに応じた考え方の目安を整理しました。

使える広さ考え方置くものの例
執務室の一角のみ役割を1つに絞る。パーテーションや棚で視線を遮るハイテーブルとスツール、または1〜2人掛けのソファ
小さめの個室が1つ静かに休む場所にするか、食事の場所にするかを決めるテーブル席、照明の調整、観葉植物
まとまった広さがある食べる・休む・話すのゾーンを分けるテーブル席とソファ席、半個室のブース、打ち合わせもできる席

スペースが狭い場合は、会議室を昼休みだけ開放する、使っていない応接室を休憩に使う、といった既存の部屋の活用も選択肢です。新しい場所を作らなくても、休める時間と場所を明確にすることで改善することもあります。

休憩と打ち合わせを兼ねる設備という選択肢

専用の休憩スペースを作るほどの広さがない場合は、休憩にも打ち合わせにも使える設備を置く考え方もあります。半個室のブースや、少人数で使える個室型の設備は、休み時間には休憩の場所として、業務時間には短い打ち合わせやオンライン会議の場所として使えます。

オフィスに設置できる酸素ボックスの中には、休憩や打ち合わせのスペースとしても使えるものがあります。こうした設備を選ぶときは、設置に必要な広さと電源、搬入経路、利用ルール(予約制にするか、1回あたりの利用時間など)を事前に確認します。健康への効果を目的に導入するのではなく、働く環境づくりの一つとして、どう使ってもらうかを考えるのがよいでしょう。

休憩スペースの費用の考え方

休憩スペースの費用は、広さ、内装工事の有無、家具や設備のグレードで大きく変わります。一律の相場を当てはめるより、項目ごとに見積もりを積み上げるほうが判断を誤りません。

  • 内装工事:間仕切り、床・壁の張り替え、照明や電源の増設
  • 家具:テーブル、椅子、ソファ、収納
  • 設備:電子レンジ、冷蔵庫、給湯、個室型のブースなど
  • 空間演出:観葉植物、絵画、照明器具
  • 運用費:清掃、消耗品、レンタルやサブスクリプションの月額費用

費用を抑えたい場合は、工事をせずに家具の配置だけで区切る、家具や設備をレンタルにする、といった方法があります。購入する場合は、1点あたりの金額によって経費処理の方法が変わります。法人の場合、取得価額10万円未満の資産は事業に使い始めた年度に全額を損金にでき、20万円未満なら3年で均等に償却する一括償却資産を選べます(出典:国税庁「タックスアンサーNo.5403」)。青色申告の中小企業者等は、令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年間合計300万円まで取得年度に損金にできる特例もあります(出典:国税庁「タックスアンサーNo.5408」)。適用の可否は経理担当者や顧問税理士に確認しておきます。

賃貸オフィスでは、工事の可否と退去時の原状回復の範囲を、管理会社に事前に確認することも大切です。民法は、賃借人が賃借物を受け取った後に生じた損傷について、通常の使用による損耗や経年変化を除き、賃貸借の終了時に原状に復する義務を負うとしています(出典:e-Gov法令検索「民法」第621条)。間仕切りや照明の工事をする場合は、退去時の費用も含めて考えます。

休憩スペースづくりでよくある失敗

休憩スペースは、作ったあとに「思ったより使われない」となることが少なくありません。一般的によく見られる失敗と、その対策を整理しました。

よくある失敗起きる理由対策
執務スペースから丸見えで使いにくい上司や同僚の視線が気になる棚や植物で視線を遮る。入口の向きを変える
昼食時だけ混み、それ以外は空いている食べる場所としてしか想定していない休む・話す用途の席も用意する。昼休みの時間をずらす
においや音が執務スペースに届く距離が近い、換気が足りない場所を見直す。食べ物の持ち込みルールを決める
散らかって使いにくくなる片付けの担当やルールがない片付けのルールを掲示し、清掃の頻度を決める
おしゃれだが座り心地が悪い見た目を優先して家具を選んだ実際に座って選ぶ。社員の意見を聞く

失敗を防ぐには、最初から完成形を目指さないことが大切です。家具の一部をレンタルにするなどして小さく始め、使われ方を見ながら配置や設備を足していくと、無駄な投資を避けられます。

作ったあとの見直し方

休憩スペースは、作って終わりではありません。数か月使ってみて、目的に合った使われ方をしているかを確認します。見直しの材料には、次のようなものがあります。

  • 時間帯ごとの利用人数(昼休み、午後の休憩など)
  • 社員アンケートでの満足度と、使わない理由
  • 自席で昼食をとる人の数の変化
  • 清掃や片付けの状況

休憩スペースの効果を、離職率や生産性などの数字だけで測るのは難しいものです。数字に表れにくいからこそ、社員の声を定期的に聞き、使われ方に合わせて改善を続ける姿勢が大切です。

休憩スペースを作らなくてよいケース

休憩スペースは、どの会社にも同じように必要なわけではありません。次のような場合は、新しく作るより先に、別の手を考えたほうがよいこともあります。

  • 在宅勤務が中心で、出社する人が少ない
  • 休憩時間に席を離れにくい業務の流れや雰囲気がある(場所より運用の問題)
  • 近くに飲食店や公園など、外で休める場所が多く、社員もそれを好んでいる
  • 執務スペース自体が手狭で、休憩スペースを作ると業務に支障が出る

特に、休憩時間に休めていない原因が「場所がないこと」ではなく「休みにくい雰囲気」にある場合は、スペースを作っても使われません。休憩時間を明確にする、昼休みの電話当番を交代制にするなど、運用の見直しから始めるのが効果的です。労働基準法が休憩について求めているのは、労働時間の途中に与えて自由に利用させることであり、休憩のための場所の設置は、事務所衛生基準規則で努力義務とされている点も押さえておきます(出典:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」第19条)。

休憩スペースづくりのチェックリスト

  • 休憩スペースの目的(休む・食べる・話す)を決めた
  • 社員の声を聞き、使い方のイメージを確かめた
  • 執務スペースとの距離、音、においの影響を考えた
  • 常時50人以上(または女性30人以上)の場合、休養室の設置を確認した
  • 仮眠の機会がある場合、男女別の仮眠場所を確認した
  • 空調・照明が休憩に適しているか確認した
  • 避難経路や通路をふさいでいない
  • 賃貸オフィスの場合、工事や設置の可否と原状回復の範囲を管理会社に確認した
  • 費用を項目ごとに見積もり、購入かレンタルかを比べた
  • 利用ルールを決め、掲示や社内チャットで周知した
  • 数か月後に利用状況を確認し、見直す時期を決めた

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よくある質問

休憩スペースの設置は義務ですか?

事務所衛生基準規則では、休憩の設備を設けることは努力義務とされています。一方、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用する場合は、横になって休める休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けることが義務とされています(出典:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」第19条・第21条)。

狭いオフィスでも休憩スペースは作れますか?

作れます。役割を1つに絞り、棚やパーテーションで執務スペースと緩やかに区切るだけでも、休憩の場所として使えます。会議室を昼休みだけ開放するなど、既存の部屋を活用する方法もあります。

休憩スペースが使われないときはどうすればよいですか?

まず、使われない理由を社員に聞きます。場所が執務スペースから見えすぎる、ルールが分からない、休みにくい雰囲気がある、などの理由が考えられます。配置の変更やルールの周知、管理職が率先して使うといった対応で改善することがあります。

休憩スペースで仕事をしてもよいですか?

会社のルール次第です。ただし、休憩時間中の人が業務の会話に巻き込まれると、休憩になりません。業務にも使う場合は、時間帯で使い分ける、休憩用の席と作業用の席を分けるなど、休む人の邪魔にならないルールを決めておきます。

休憩スペースの家具や設備は購入とレンタルのどちらがよいですか?

長く同じ形で使うなら購入、使われ方を見ながら変えたい場合や移転の予定がある場合はレンタルが向いています。初期費用と、使う期間全体の総額の両方で比べて判断してください。

参考資料