移動の時間をかけずに顧客と話せるオンライン商談は、多くの会社で営業の手段の一つになりました。一方で、「対面より話が深まらない」「画面の向こうの反応が分からない」「次の約束につながらない」といった悩みもよく聞かれます。
この記事では、オンライン商談のコツと進め方を、事前準備、当日の進め方、事後のフォローの3段階で整理します。対面との違い、伝わり方を良くする工夫、Web会議のセキュリティと記録の扱い、機材や仕組みの選び方、オンラインに向いていない商談まで、公的機関の資料をもとにまとめました。
オンラインで仕事をする環境は定着している
総務省の通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は、令和元年の20.2%から令和2年に47.5%へ大きく増えました。その後は令和3年51.9%、令和4年51.7%、令和5年49.9%、令和6年47.3%と5割前後で推移し、令和7年は50.1%でした(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。この調査は常用雇用者100人以上の企業を対象としています(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査(企業編)の概要」)。

同じ調査では、クラウドサービスを一部でも利用している企業は令和7年に83.5%、全社的に利用している企業は60.0%でした。また、インターネット利用者のうち業務目的でオンライン会議システムを利用した人の割合は23.4%でした(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)。オンラインで打ち合わせをする環境は、多くの会社にとって特別なものではなくなっています。商談の相手もオンラインに慣れている前提で、進め方を工夫する段階にあるといえます。
対面の商談とオンライン商談の違い
オンライン商談は、対面の商談をそのまま画面に移したものではありません。三重県がものづくり企業向けに開いたオンライン商談のセミナーの資料にも、次のような一文があります。
「ごあいさつ」から始まる対面での商談を、そのままオンライン化しようとしても、ダメ。
出典:三重県「オンライン商談力UPセミナー(ものづくり企業向け)」
同じ資料は、事前準備の段階から商談相手を巻き込むことや、オンラインの商談ではヒアリングが重要であることを挙げています(出典:三重県「オンライン商談力UPセミナー(ものづくり企業向け)」)。対面との違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 対面の商談 | オンライン商談 |
|---|---|---|
| 相手の反応 | 表情や身振りから読み取りやすい | 画面越しで読み取りにくい。言葉で確かめる必要がある |
| 時間 | 移動を含めて長くなりやすい | 移動がなく、短い時間で設定しやすい |
| 資料 | 紙を渡して一緒に見る | 画面共有と事前送付が中心 |
| 現物の確認 | 手に取って確かめられる | 映像や資料で伝える工夫が必要 |
| 参加者 | 会える人に限られる | 離れた場所の決裁者や担当者も参加しやすい |
| 通信の影響 | なし | 音声や映像の乱れで中断することがある |
違いの中でも大きいのが、相手の反応の読み取りにくさです。オンラインでは、相手がうなずいているか、資料のどこを見ているかが分かりにくくなります。そのため、話の区切りごとに「ここまでで気になる点はありますか」と言葉で確かめる進め方が欠かせません。
オンライン商談の進め方
オンライン商談は、当日の話し方より、前後の準備と段取りで差がつきます。進め方は、事前準備、当日、事後のフォローの3段階で考えます。

事前準備
- 商談の目的を決める:今回の商談で何を決めたいのか(課題の確認、提案、見積もりの説明など)を一つに絞ります。
- 議題と時間を先に伝える:招待の連絡に、議題と所要時間、参加してほしい人を書きます。
- 相手の情報を確かめる:これまでのやり取り、問い合わせの内容、相手の業種や規模を確認します。
- 資料を用意する:画面共有で見せる資料と、事前に送る資料を分けます。事前に送る資料は短くします。
- 機材と通信を確かめる:カメラ、マイク、イヤホン、照明、通信を前日までに試します。
三重県のセミナーの案内では、参加にあたってWebカメラとマイク付きイヤホンなどを用意することや、無線より有線の接続のほうが安定することが案内されています(出典:三重県「オンライン商談力UPセミナー(ものづくり企業向け)」)。商談でも同じ考え方で、音声が途切れない環境を優先して準備します。
当日の進め方
- 冒頭で目的と時間を確認する:最初の1〜2分で、今日の議題と終了の時刻を共有します。
- ヒアリングから始める:提案の前に、相手の課題、現状、決め方を聞きます。
- 画面共有で要点を示す:資料は必要な部分だけを映し、1枚に1つの内容にとどめます。
- 区切りごとに確かめる:説明のあとに、質問や気になる点を言葉で聞きます。
- 次の行動を決める:終わる前に、次の打ち合わせの日程や、資料を送る期限など、誰が何をするかを決めます。
オンラインでは、相手が別の作業をしながら参加していることもあります。説明が長く続くと、集中が途切れやすくなります。説明と質問を交互に入れ、相手が話す時間をつくることを意識します。
事後のフォロー
商談が終わったら、その日のうちに、話した内容と次の行動をまとめたメールを送ります。約束した資料や見積もりも、期限を決めて送ります。商談の内容は、顧客ごとに記録しておき、次の担当者や上司が見ても分かる形にします。
見積書や請求書を電子メールなどでやり取りした場合は、税の帳簿や書類の保存の決まりにも注意が必要です。電子帳簿保存法第7条は、所得税と法人税の保存義務者が電子取引を行った場合に、その取引情報の電磁的記録を保存しなければならないと定めています(出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(e-Gov法令検索)第7条)。保存の方法や要件は、国税庁の特設サイトで確認できます(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。
伝わり方を良くするコツ
オンライン商談では、話の内容と同じくらい、見え方と聞こえ方が印象を左右します。次の点を整えると、相手の聞きやすさが変わります。
- 音声を最優先にする:映像が多少乱れても話は続けられますが、音声が聞き取れないと商談になりません。マイク付きのイヤホンや外付けのマイクを使います。
- カメラの位置を目の高さに合わせる:見下ろす角度にならないよう、画面の高さを調整します。
- 顔を明るく映す:窓を背にすると顔が暗くなります。正面から光が当たる位置に座ります。
- 話す速さを少し落とす:音声の遅れがあるため、対面より間をとって話します。
- 資料は大きな文字で:相手の画面が小さい場合もあります。1枚に載せる情報を絞ります。
- 画面共有の前に整理する:通知や関係のないファイルが映らないよう、共有する画面を決めておきます。
商談で手書きの図を使って説明したい、会議室から複数人で参加したいといった場合は、会議室の機材も見直します。ホワイトボードの内容をカメラで映すと、相手には読みにくいことがあります。画面に直接書き込み、そのまま共有できる機材を使う方法もあります。
Web会議のセキュリティと記録の扱い
商談では、顧客の情報や、見積もりなどの社外に出せない情報を扱います。IPA(情報処理推進機構)は、Web会議サービスを使うときの注意事項をまとめています。会議の準備では、会議のURLやパスワードを送る経路が安全かを確かめ、会議パスワードの設定や待機室の機能を使うことを挙げています(出典:IPA「Web会議サービスを使用する際のセキュリティ上の注意事項」)。会議の実施中については、次のように書かれています。
組織外参加者がいる会議では特に、意図しない第三者が会議に参加しないよう、参加者確認業務の担当者を明確にしているか?
出典:IPA「Web会議サービスを使用する際のセキュリティ上の注意事項」(2020年7月14日)
社外の人が参加する商談は、まさにこの場面にあたります。招待した人以外が参加していないかを、主催する側が確かめる役を決めておきます。同じ資料は、参加者が入室したときの設定(主催者以外を全員ミュートにするなど)の確認も挙げています(出典:IPA「Web会議サービスを使用する際のセキュリティ上の注意事項」)。
録画や資料の扱いを決めておく
商談を録画する場合は、相手に伝えて了承を得てから始めます。録画には相手の顔や声、話した内容が残ります。個人情報の保護に関する法律は、個人情報を取得したときの利用目的について、次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)第21条第1項
録画を何に使うのか(議事の確認、社内の共有など)を伝え、使い終わった録画の扱いも決めておきます。IPAの資料は、会議の録音・録画データや共有資料、チャットがクラウド上にある場合に、端末への移動や暗号化、クラウド上からの削除を実施したかを確認項目に挙げています。クラウドに録画を保存する場合は、復元できない形で完全に削除できるかを確かめることも重要だとしています(出典:IPA「Web会議サービスを使用する際のセキュリティ上の注意事項」)。
テレワーク全般のセキュリティについては、総務省がテレワークセキュリティガイドライン(第5版)や、中小企業の担当者向けのチェックリストを公開しています(出典:総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」)。自宅や外出先から商談に参加する社員がいる場合は、あわせて確認します。

機材と仕組みの選び方
オンライン商談の機材と仕組みは、商談の数、参加する人数、場所によって必要なものが変わります。主な選択肢は次のとおりです。
| 選択肢 | 向いている場面 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| ノートパソコンの内蔵カメラ・マイク | 1人で席から参加する、件数が少ない | 周りの声が入らないか、顔が暗くならないか |
| 外付けのカメラ・マイク・イヤホン | 1人で参加する商談が多い | 音声が聞き取りやすいか、使うWeb会議ツールで動くか |
| 会議室のWeb会議用の機材 | 社内の複数人で参加する、図を書きながら説明する | 会議室の広さに合うか、今使っているツールに対応しているか |
| 顧客管理やメール配信の仕組み | 商談の件数が多く、事後のフォローが追いつかない | 今のツールから乗り換えられるか、支援の範囲 |
会議室から複数人で参加する商談が多い会社では、会議室の機材をまとめる方法があります。たとえば、Web会議もできる、オールインワンの電子ホワイトボードのように、ホワイトボード、画面共有、Web会議を1台で行える大型のディスプレイがあります。書いた内容を保存して共有できるものが一般的で、商談のあとに相手へ送る資料づくりにもつなげやすくなります。
商談の件数が増えてくると、問題になりやすいのが事後のフォローです。問い合わせ、商談の記録、その後のメールがばらばらのツールに分かれていると、誰にいつ何を送ったかが分からなくなります。顧客の情報を一か所で見られる仕組みを使うと、商談の前の確認と、商談のあとのフォローを同じ画面で進めやすくなります。
費用の考え方
オンライン商談にかかる費用は、どこまで整えるかで変わります。一律の相場はないため、次の項目に分けて考えます。
- Web会議ツールの利用料:無料の範囲で足りるか、録画や参加人数の上限のために有料の契約が必要か
- 個人の機材:外付けのカメラ、マイク、イヤホン、照明など
- 会議室の機材:大型のディスプレイ、会議用のカメラやスピーカー、設置の費用、保守の費用
- 顧客管理などの仕組み:初期費用、月額料金、設定や使い方の支援の費用
- 運用の手間:資料の作り直し、記録のルールづくり、社内の研修
まずは個人の機材と進め方の型を整え、商談の件数や参加人数が増えてきたら、会議室の機材や顧客管理の仕組みを検討する順番にすると、無駄な投資を避けやすくなります。
オンライン商談が向いていないケース
オンライン商談は便利ですが、すべての商談に向いているわけではありません。次のような場合は、対面を組み合わせるほうがよいことがあります。
- 現物の手触りや大きさ、動きを確かめてもらう必要がある商品
- 現場の状況を見ないと提案できない仕事(工事、設備の設置など)
- 初めての取引で、相手が対面での面談を重視している
- 価格や契約の条件など、細かな交渉が続く場面
- 相手の通信環境や機材が整っていない
すべてをオンラインにするか、すべてを対面にするかで考える必要はありません。初回の課題の確認はオンラインで行い、現場の確認や契約の前の打ち合わせは対面で行うなど、段階によって使い分けます。
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- Web会議にも使える:カメラやマイクを備え、Web会議に使えるものが一般的です。対応する会議ツールは製品によって違うため、資料で確認してください。
- 書いた内容を保存・共有できる:画面に書いた内容をデータとして保存できるものが一般的です。会議後に参加者へ共有しやすくなります。
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よくある質問
オンライン商談は何分くらいが適切ですか?
決まった長さはありません。商談の目的を一つに絞り、その目的に必要な時間を招待の段階で伝えます。説明が長くなりそうな場合は、資料を事前に送り、当日は質問と確認に時間を使うと、短い時間でも話が深まりやすくなります。
商談を録画してもよいですか?
録画する場合は、始める前に相手に伝えて了承を得ます。録画を何に使うのか、どのくらいの期間残すのかも伝えておくと安心です。録画のデータは、見られる人を限り、使い終わったら扱いを決めた方法で処理します。
カメラをオフにして商談してもよいですか?
相手の希望や通信の状況によっては、カメラをオフにすることもあります。ただし、こちらが提案する側の場合は、顔を見せたほうが相手に安心感を与えやすくなります。冒頭だけでもカメラをオンにする、資料の説明の間は画面共有に切り替えるなど、場面に合わせて使い分けます。
相手の反応が分からないときは、どうすればよいですか?
話の区切りごとに、言葉で質問します。「ここまでで分かりにくい点はありますか」「御社の場合はいかがですか」など、相手が答えやすい問いを用意しておきます。相手が話す時間を増やすことで、反応を確かめやすくなります。
参考資料
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(令和8年5月29日公表)
- 総務省「令和7年通信利用動向調査(企業編)の概要」
- 総務省「通信利用動向調査」
- IPA「Web会議サービスを使用する際のセキュリティ上の注意事項」(2020年7月14日)
- 総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(令和3年5月)
- 総務省「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)(第3版)」(令和4年5月)
- 三重県「オンライン商談力UPセミナー(ものづくり企業向け)」
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(e-Gov法令検索)
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
