求人を出しても応募が集まらない。入社してもらっても、思っていた仕事と違うと早くに辞めてしまう。こうした悩みへの手立てとして、採用サイトや求人票に社員インタビューを載せる会社が増えています。
この記事では、採用で使う社員インタビューの作り方を、作成の手順、テーマ別の質問例、読まれる記事の構成に分けて整理します。公開前に確認したい法令と同意の注意点、動画や口コミとの使い分け、自社で作るか外部に頼むかの判断の基準もまとめました。
採用で社員インタビューが役立つ理由
社員インタビューの一番の役割は、求人票だけでは伝わらない仕事の中身や職場の様子を、応募する前に知ってもらうことです。入社後の「思っていたのと違う」を減らすことにつながります。
早期の離職は、多くの会社にとって課題です。厚生労働省のまとめでは、令和5年3月に卒業して就職した人のうち、就職後3年以内に離職した人の割合は、大学卒で31.2%、高校卒で36.9%でした(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)を公表します」)。前年に公表された令和4年3月卒業者では、大学卒が33.8%、高校卒が37.9%でした(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」)。わずかに下がったものの、大学卒でおよそ3人に1人が3年以内に離職している状況は変わっていません。

大学卒の3年以内の離職率は、事業所の規模が小さいほど高く、5人未満で58.2%、5〜29人で50.6%、30〜99人で39.7%でした。1,000人以上では24.2%です(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)を公表します」)。規模の小さい会社ほど、入社前に職場のことを具体的に伝える工夫が欠かせません。
辞めた理由にも手がかりがあります。厚生労働省の若年者雇用実態調査では、初めて勤務した会社を辞めた若年労働者が挙げた主な理由は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が28.5%、「人間関係がよくなかった」が26.4%、「賃金の条件がよくなかった」が21.8%、「仕事が自分に合わない」が21.7%でした(出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」個人調査)。勤続期間が1年未満で辞めた人では、「人間関係がよくなかった」が最も多い理由でした(出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」個人調査)。働き方、職場の人間関係、仕事の中身は、社員の言葉で伝えやすいテーマです。
会社の側も、入社前の情報提供を定着のための取り組みと考えています。若年正社員の定着のための対策を行っている事業所は73.7%でした(出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」事業所調査)。同じ調査で、若年正社員の定着のための対策として、採用前の詳しい説明や情報提供を挙げた事業所は58.4%で、職場での意思疎通の向上(59.7%)に次ぐ割合でした(出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」事業所調査)。
新卒採用では、職場の情報を提供することが法律でも求められています。青少年の雇用の促進等に関する法律は、学校を卒業する見込みの人を対象に募集する会社に、募集と採用の状況や、職場への定着の促進に関する取り組みの状況などの情報を提供するよう努めることを求めています(出典:e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律」第13条)。応募しようとしている学生などから求められたときは、これらの情報を提供しなければならないとされています(出典:e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律」第13条第2項)。社員インタビューは、こうした数字の情報を補い、働く人の実感を伝える手段になります。
職場の情報を公開する場としては、厚生労働省の職場情報総合サイトもあります。サイトは次のように説明されています。
しょくばらぼは、勤務実態などの働き方や採用状況に関する企業の職場情報を検索・比較できるサイトです!
出典:厚生労働省「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」
応募者は、こうした公的なサイトや求人票で働き方の数字を確かめ、採用ページで社員の声を読んで職場の姿を想像します。数字と声の両方がそろうと、応募者は入社後の自分を具体的に思い描きやすくなります。社員インタビューで語られる内容が、公開している数字と食い違わないようにしておくことも大切です。
社員インタビューを作る5つの手順
社員インタビューは、話を聞いて書くだけでは、誰に何を伝えたいのかがぼやけた記事になりがちです。次の5つの手順で進めます。

手順1:読んでほしい人と伝えたいことを決める
新卒向けか中途向けか、どの職種の募集か、応募者がどんな不安を持っていそうかを書き出します。「入社前の不安」を一つ決めておくと、聞くべきことがはっきりします。
手順2:話を聞く社員を選ぶ
読んでほしい人に近い立場の社員を選びます。新卒採用なら入社2〜3年目の社員、中途採用なら同じ職種に転職してきた社員が向いています。活躍している社員だけでなく、迷いながら仕事を覚えた経験を話せる人も、応募者には身近に感じられます。
手順3:質問を準備し、本人に目的を伝える
質問は10〜15問程度に絞り、事前に本人に渡しておきます。記事をどこに載せるか、名前や写真を出すかも、この段階で伝えて了解を得ておきます。
手順4:取材と撮影をする
取材は会議室よりも、普段の職場に近い場所で行うと、話も写真も自然になります。録音する場合は、本人の了解を取ってから始めます。
手順5:記事にまとめ、本人と関係者が確認する
話し言葉を読みやすく整え、本人の確認を受けてから公開します。労働条件や制度に触れる部分は、人事の担当者も内容を確かめます。
社員インタビューの質問例
質問は、過去・現在・未来の順に並べると、話の流れが自然になります。テーマ別の質問例をまとめました。
| テーマ | 質問の例 | 応募者に伝わること |
|---|---|---|
| 入社の経緯 | 入社を決めた理由は何でしたか。ほかにどんな会社を見ていましたか | この会社を選ぶ理由 |
| 仕事の中身 | 1日の流れを教えてください。いちばん時間を使う仕事は何ですか | 入社後の具体的な姿 |
| 入社前後の違い | 入社前の印象と違ったことはありますか | ミスマッチの手がかり |
| 大変なこと | 難しかった仕事と、それをどう乗り越えましたか | 仕事の厳しさと支え |
| 働き方 | 忙しい時期はいつですか。休みはどのように取っていますか | 労働時間や休日の実感 |
| 職場の人 | 困ったときに誰に相談しますか | 人間関係と雰囲気 |
| これから | 今後挑戦したいことは何ですか | 成長の道すじ |
「やりがいは何ですか」のような大きな質問だけでは、どの会社でも同じような答えになりがちです。「最近うれしかった出来事は」「先週いちばん時間を使った仕事は」のように、具体的な場面を聞くと、その会社ならではの話が出てきます。
読まれる記事の構成
応募者は、採用ページを最初から最後まで読むとは限りません。必要なところだけ拾い読みしても伝わるように、次の構成にまとめます。
- タイトル:話の中で印象に残った一言を、短く入れる
- プロフィール:所属、職種、入社年、前職など
- 本文:質問ごとに小見出しを付け、答えを短い段落でまとめる
- 1日のスケジュール:時間ごとの仕事を表で示す
- 応募を考えている人へのメッセージ
- 募集要項へのリンク:記事を読んだ人がすぐに応募の条件を確かめられるようにする
写真は、正面を向いた写真だけでなく、仕事をしている様子や、同僚と話している様子も入れると、職場の雰囲気が伝わります。
本音を引き出す取材のコツ
社員インタビューでよくある失敗は、どの社員も「やりがいがある」「雰囲気が良い」と話し、どれも同じ記事になってしまうことです。本音を引き出すために、次の点を意識します。
- 上司が同席しない:上司がいると、本人は良いことしか言いにくくなる
- 大変だった話も聞く:苦労と、それをどう乗り越えたかがあると、話に説得力が出る
- 「たとえば」を重ねる:抽象的な答えには、具体的な場面を聞き返す
- 答えを誘導しない:「楽しいですよね」のような聞き方を避ける
大変な話を載せることに不安を感じるかもしれません。しかし、良いことだけの記事は応募者に信じてもらいにくく、入社後のギャップの原因にもなります。どんな支えがあったかと一緒に伝えれば、職場の姿として前向きに受け止めてもらえます。
公開前に確認したい注意点
社員インタビューは、求人に関する情報の一部として読まれます。公開の前に、内容の正確さと本人の同意を確認します。

労働条件の表現は正確に
職業安定法は、広告などで労働者の募集に関する情報を提供するときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の4)。あわせて、募集を行う者には次のことも求めています。
労働者の募集を行う者及び募集受託者は、この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
出典:e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の4第2項
インタビューの中で「残業はほとんどない」「すぐに昇給した」といった話が出たときは、その社員の個人的な経験なのか、会社全体の制度なのかが分かるように書きます。募集要項の条件と食い違わないかを人事の担当者が確かめ、制度が変わったときは記事も見直します。
本人の同意と掲載の範囲
名前、顔写真、経歴などを載せるときは、掲載する場所と期間を本人に説明し、同意を書面などで残しておきます。退職した場合や本人が希望した場合に、記事をどう扱うか(非公開にする、名前を伏せるなど)も、あらかじめ決めておくと安心です。前職の会社名や家族の話など、本人が話しても載せないほうがよい情報がないかも確認します。
記事以外の見せ方:動画と社員の口コミ
社員の声を伝える方法は、文章のインタビュー記事だけではありません。伝えたいことと、応募者がどこで情報を見ているかによって使い分けます。
| 形式 | 向いていること | 注意点 |
|---|---|---|
| インタビュー記事 | 入社の経緯や仕事の中身を詳しく伝える | 読むのに時間がかかる |
| 動画 | 職場の雰囲気、話し方、表情を伝える | 撮影と編集の手間、出演者の負担 |
| 社員の口コミ・短い声 | 多くの社員の実感を幅広く見せる | 集め方と、掲載する声の選び方 |
若い世代の応募者には、スマートフォンで短い動画を見て職場の様子をつかむ人も多くいます。インタビュー記事で詳しく伝え、動画や短い声で雰囲気を補う、という組み合わせも考えられます。
自社で作るか、外部に頼むかの判断の基準
社員インタビューは、社内の担当者だけでも作れます。一方で、本数を増やしたい場合や、文章や動画の作り方に不安がある場合は、外部の力を借りる方法もあります。
自社で作りやすいケース
- 年に数本の記事で足り、採用担当者が取材と執筆の時間を取れる
- 社内に文章を書くことや写真を撮ることに慣れた人がいる
- 採用ページを自社で更新できる
外部のサービスを考えたいケース
- 多くの社員の声を、継続して集めて発信したい
- 若手の採用に向けて、スマートフォンで見やすい動画を用意したい
- 採用担当者が少なく、取材や編集に時間を割けない
たとえば、社員の口コミを活用した採用マーケティングのサービスのように、社員の声をリアルタイムに集めて発信する仕組みを使うと、少数のインタビュー記事だけでは伝えきれない職場の姿を補いやすくなります。どのように声を集め、どこに発信できるかはサービスによって違うため、資料で確認してください。
なお、応募が少ない原因が、給与や勤務時間などの条件そのものにある場合は、社員インタビューだけで状況を大きく変えるのは難しいこともあります。条件の見直しと、伝え方の見直しを分けて考えることが大切です。
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よくある質問
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