求人広告を出しても応募が集まらない。若い人に会社のことを知ってもらう方法がない。採用の担当者が少ない中小企業では、こうした悩みを抱えるところが少なくありません。
その対策の一つとして、SNSを採用に活用する会社が増えています。SNSは、求人票だけでは伝わらない職場の雰囲気や社員の様子を、少ない費用で継続して発信できる手段です。一方で、成果が出るまでに時間がかかり、発信の内容によっては法令上の注意も必要です。
この記事では、中小企業が採用にSNSを活用する方法を、始め方の6ステップと注意点に分けて整理します。SNSの選び方、発信する内容のアイデア、効果の測り方、SNS採用が向いていないケースもまとめました。
中小企業が採用にSNSを活用する意味
中小企業の採用では、会社の名前を知られていないことが大きな壁になります。求人サイトに載せても、知らない会社の求人は選ばれにくく、条件の比較だけで判断されがちです。
SNSは、この壁を越える手段になり得ます。日々の仕事の様子、社員の人柄、職場の雰囲気など、求人票の項目には収まらない情報を、写真や動画で伝えられるからです。求職者が「この会社で働く自分」を想像しやすくなれば、条件だけでない理由で応募を考えてもらえるようになります。
厚生労働省の委託事業として運営されている情報サイトでも、SNSや動画は企業のありのままの姿を伝え、求職者に働くイメージを持ってもらうために有効だとしたうえで、高額な設備がなくてもスマートフォンの短い動画から始められると紹介されています(出典:厚生労働省委託事業「LO活 for company」)。
SNS採用の主なメリット
- 会社の名前を知らない人にも、職場の様子を知ってもらうきっかけになる
- 求人広告に比べて、少ない費用で継続して発信できる
- 写真や動画で、文章だけでは伝わらない雰囲気を伝えられる
- 応募の前から関心を持ってくれる人と、つながりを作れる
- 社員の声を通して、入社後のギャップを小さくできる
知っておきたいデメリット
SNSは、すぐに応募が増える方法ではありません。同じサイトでは、成果は1年から2年の期間で見ていくべきで、短期的な話題づくりより継続して運用することが大切だと紹介されています(出典:厚生労働省委託事業「LO活 for company」)。担当者が他の仕事と兼ねていると、更新が止まりやすいことも課題です。発信の内容によっては、誤解や批判を招くおそれもあります。
若い世代のSNS利用の実態
SNSを採用に使うなら、採用したい世代がどのSNSを使っているかを知ることが出発点です。総務省の調査では、SNSの種類ごとに、よく使われている年代が分かれています。

全年代では、「X(旧Twitter)」 の利用率は増加しており、20代で73.4%と最も高い利用率。
出典:総務省情報通信政策研究所「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」
同じ調査では、Instagramも全年代で増加傾向にあり、20代の利用率が82.6%と最も高くなっています。TikTokは10代の利用率が67.9%と最も高く、LINEは10代から60代で90%を超えています(出典:総務省情報通信政策研究所「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」)。
YouTubeは、10代から40代で利用率が90%を超えています(出典:総務省情報通信政策研究所「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」)。新卒や若手を採用したい場合は、こうした世代がよく使うSNSを中心に考えるとよいでしょう。
採用に使うSNSの選び方
SNSにはそれぞれ得意な表現があります。すべてを始める必要はありません。採用したい人と、伝えたい内容に合わせて、まずは1つか2つに絞りましょう。
| SNS | 得意な表現 | 採用での使い方の例 |
|---|---|---|
| 写真、短い動画 | 職場の風景、社員の紹介、仕事の様子 | |
| TikTok | 縦型の短い動画 | 仕事の一場面、社員の一日、若手の声 |
| X | 短い文章、こまめな発信 | 採用の告知、説明会の案内、日々の出来事 |
| YouTube | 長めの動画 | 仕事の詳しい説明、社員のインタビュー |
| LINE | 個別の連絡、案内の配信 | 説明会や選考の案内、応募者との連絡 |
選ぶときは、次の3つの点で考えると決めやすくなります。
- 採用したい人の年代と、その年代がよく使うSNS
- 伝えたい内容が、写真、動画、文章のどれに向いているか
- 社内で作れる量と、更新を続けられる頻度
SNS採用の始め方|6つのステップ
SNS採用は、アカウントを作ってすぐ投稿を始めるより、先に目的と体制を決めたほうが長続きします。ここでは、始め方を6つのステップに分けて整理します。

ステップ1:採用したい人と目的を決める
新卒か中途か、どの職種か、どんな人に来てほしいかを決めます。あわせて、SNSで何を達成したいのか(会社を知ってもらう、説明会に来てもらう、応募してもらう)を決めておくと、発信する内容がぶれにくくなります。
ステップ2:伝えたい自社の魅力を整理する
仕事のやりがい、職場の雰囲気、働き方、教え方、地域とのつながりなど、自社の魅力を書き出します。社員に「入社してよかったこと」「入社前に知りたかったこと」を聞くと、求職者の目線に近い材料が集まります。
ステップ3:使うSNSを選ぶ
採用したい人がよく使うSNSと、伝えたい内容に合うSNSを選びます。最初は1つに絞り、慣れてから広げるほうが続けやすくなります。
ステップ4:運用の体制とルールを決める
担当者、投稿の頻度、投稿前の確認の流れ、写真に写る社員の同意の取り方、コメントへの対応などを決めます。ルールは、後で紹介するチェックリストを参考にしてください。
ステップ5:発信を始める
最初から完成度の高い投稿を目指す必要はありません。スマートフォンで撮った写真や短い動画でも、職場の様子は十分に伝わります。決めた頻度で続けることを優先しましょう。
ステップ6:効果を測り、内容を見直す
見られている投稿、反応が多い投稿、説明会や応募につながった投稿を確認し、内容を見直します。応募者に「どこで会社を知ったか」を聞くことも、効果を知る手がかりになります。
発信する内容のアイデア
何を投稿すればよいか迷ったときは、求職者が知りたいことから考えます。たとえば、次のような内容があります。
- 社員の一日の流れや、仕事の一場面
- 入社1年目から3年目の若手社員の声
- 先輩が新人に仕事を教えている様子
- 休憩時間や社内の行事など、職場の雰囲気
- 職場の設備や、働く場所の紹介
- 説明会や職場見学の案内
特に効果が出やすいのは、社員の声です。会社が自分で伝える魅力より、実際に働く人の言葉のほうが、求職者には信じてもらいやすいからです。社員の声を集めて発信する仕組みをつくりたい場合は、社員の声をリアルタイムに集めて発信し、採用活動に活かすサービスのような方法もあります。若手に向けて職場の雰囲気を伝えたい場合は、スマートフォン向けの縦型動画を使う方法も考えられます。
求職者が見たいのは「ありのまま」
良いところだけを見せようとして作り込みすぎると、かえって伝わりにくくなります。先に紹介した厚生労働省の委託事業のサイトでも、作り込みすぎず、求職者が知りたい情報を発信することが大切だとされています(出典:厚生労働省委託事業「LO活 for company」)。仕事の大変なところも含めて正直に伝えるほうが、入社後のギャップを減らせます。採用の後に早く辞めてしまう人を減らすことにもつながります。
SNS採用で守るべき法令と注意点
SNSでの発信も、採用活動の一部です。求人の情報を発信するときは、職業安定法などのルールを守る必要があります。
募集の情報は正確で最新に
職業安定法は、労働者の募集を行う者が広告などで募集に関する情報を提供するときのルールを定めています。虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないことに加え、次のように定めています。
労働者の募集を行う者及び募集受託者は、この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
出典:e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の4第2項
ここでいう「広告等」には、刊行物の広告のほか、厚生労働省令で定める方法も含まれます。職業安定法施行規則では、電子メールの送信や、インターネットを通じて情報を送る方法などが挙げられています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」第4条の3)。SNSで給与や休日などの条件を発信するときは、求人票と食い違いがないか、募集を終えた情報が残っていないかを確認しましょう。
社員の写真や名前は本人の同意を取る
SNSに社員の写真や名前を載せる場合は、本人の同意を取ることが大切です。個人情報保護委員会のガイドラインでは、顔画像も個人を識別する情報の例として挙げられています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。退職した社員の投稿をどう扱うかも、あらかじめ決めておきましょう。
応募者のSNSを選考に使わない
SNSは、発信だけでなく、応募者の情報が目に入る場でもあります。厚生労働省は、就職差別につながるおそれがある事項として、本籍・出生地や家族のこと、宗教、支持政党などとともに、身元調査などの実施も挙げています(出典:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」)。応募者の個人的なSNSを調べて、適性や能力と関係のない情報を選考に使うことは避けましょう。
新卒の募集では職場の情報の提供も
新卒者を募集する企業には、募集や採用の状況、職業能力の開発、職場への定着の取り組みなどの情報(青少年雇用情報)を提供するよう努め、応募者から求めがあったときは提供する決まりがあります(出典:e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律」第13条)。厚生労働省は、職場の情報を検索・比較できるサイトも運営しています。
企業の残業時間や有給休暇取得実績などの職場情報を横断的に検索・比較できる、厚生労働省が運営するサイトです。
出典:厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」
SNSで伝える職場の様子と、こうした公的なサイトに載せる数字がそろっていると、求職者の安心につながります。
運用ルールのチェックリスト
SNS採用を少人数で続けるには、最初にルールを決めておくことが大切です。雇用労働相談センターのセミナーでも、採用に効くSNS運用とあわせて、社内SNS運用管理のポイントや採用募集時のルールが取り上げられています(出典:福岡市・北九州市雇用労働相談センター「成功事例に学ぶ!採用に効くSNS運用」)。次の項目を参考に、自社のルールを作りましょう。

- 担当者と、担当者が不在のときの代わりを決める
- 投稿の頻度と、投稿前に確認する人を決める
- 社員の写真や名前を載せるときの同意の取り方を決める
- 給与や休日などの条件は、求人票と同じ内容にする
- 取引先や顧客の情報、社内の機密が写り込まないようにする
- コメントや問い合わせへの返し方と、返す期限を決める
- 批判的な反応があったときの相談先と対応の流れを決める
- アカウントのIDとパスワードを、個人でなく会社で管理する
効果の測り方と費用の考え方
SNS採用の効果は、応募の数だけで見ないことが大切です。始めたばかりの時期は、まず見てもらえているか、関心を持ってもらえているかを確認します。
| 段階 | 見る指標の例 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 知ってもらう | 投稿の表示回数、フォロワーの数 | SNSの分析機能 |
| 関心を持ってもらう | 保存、コメント、プロフィールへのアクセス | SNSの分析機能 |
| 行動してもらう | 説明会や職場見学の申込み、応募 | 申込みの経路の記録 |
| 入社と定着 | SNSを見て入社した人の数と定着 | 面接や入社時の聞き取り |
費用は、社内で撮影や編集を行うか、外部に頼むか、広告を使うかによって大きく変わるため、一律の目安はありません。アカウントの開設や投稿そのものは無料で始められることが多く、主にかかるのは担当者の時間です。外部の支援やツールを使う場合は、削減できる時間や得られる応募と比べて判断しましょう。
少人数で投稿を続けるための工夫
SNS採用でよくあるのは、始めた直後は投稿が多くても、数か月で更新が止まってしまうことです。少人数で続けるには、次のような工夫が役に立ちます。
- 1か月分の投稿の予定を、月の初めにまとめて決めておく
- 撮影は、行事や作業の合間にまとめて行い、少しずつ投稿する
- 社員に写真や話題を出してもらい、担当者1人で抱え込まない
- 同じ写真や動画を、複数のSNSで使い回す
- 投稿の型(社員紹介、仕事の一場面、お知らせなど)を決めておく
投稿の頻度は、多さよりも続けられることを優先して決めましょう。週に1回でも、半年、1年と続けば、会社の様子が伝わる記録になります。
SNS採用が向いていないケース
SNS採用は、すべての会社に合うわけではありません。次のような場合は、先にほかの方法を考えたほうがよいことがあります。
- すぐに人を採用する必要があり、1年以上かけて運用する余裕がない
- 発信を担当できる人がおらず、更新を続けられない
- 職場の写真や動画を出すことが難しい業務(機密の多い現場など)が中心である
- 採用する人数がごく少なく、紹介やハローワークで足りている
このような場合は、求人票の書き方を見直す、職場見学の機会を増やす、社員からの紹介を進めるなど、ほかの方法から取り組むのも一つの考え方です。
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- 社員に採用への協力を頼んでも、何を発信すればよいか分からないと言われる
- 内定を出しても、入社前に思っていた職場と違うという理由で辞退や早期退職が起きている
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- 制作費と月額費用の内訳
- 求人サイトや自社の採用ページに載せられるか
よくある質問
中小企業がSNS採用を始めるなら、どのSNSがよいですか?
採用したい人の年代と、伝えたい内容によって変わります。総務省の調査では、20代ではInstagramやXの利用率が高く、10代ではTikTokの利用率が高くなっています。最初は1つに絞り、続けられる頻度で発信することを優先しましょう。
SNS採用の効果はどのくらいで出ますか?
会社の状況や発信の内容によって変わるため、一律には言えません。すぐに応募が増える方法ではないため、1年から2年の期間で、表示回数や反応、説明会の申込みなどを段階的に見ていくとよいでしょう。
社員にSNSへの出演をお願いしてもよいですか?
本人の同意を取ったうえでお願いしましょう。出演を断っても不利にならないことを伝え、写真や名前の扱い、退職した後の投稿の扱いもあらかじめ決めておくと安心です。
SNSで給与などの条件を書いてもよいですか?
書くことはできますが、求人票と同じ内容にし、正確で最新の状態に保つ必要があります。職業安定法は、募集の情報について虚偽や誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つことを求めています。条件を変えたときは、SNSの投稿も見直しましょう。
参考資料
- 総務省情報通信政策研究所「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」(令和8年6月)
- e-Gov法令検索「職業安定法」
- e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」
- e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律」
- 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
- 厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(令和8年6月一部改正)
- 厚生労働省委託事業「LO活 for company」(2024年12月公開)
- 福岡市・北九州市雇用労働相談センター「成功事例に学ぶ!採用に効くSNS運用」(2024年6月)
