社員の本音を知りたい。新しい制度が現場でどう受け止められているかを確かめたい。そう考えて社内アンケートを作り始めたものの、何をどう聞けばよいか迷う担当者は少なくありません。

社内アンケートは、質問の作り方ひとつで結果が大きく変わります。聞き方が偏っていれば、実際とは違う結果が集まります。質問が多すぎれば、最後まで答えてもらえません。

この記事では、社内アンケートの作り方を、目的の決め方、作成の手順、質問文と選択肢の注意点、テーマ別の質問例、匿名性と個人情報の扱い、結果の生かし方の順に整理します。

総務省統計局が公開している調査票づくりの考え方も参考にしながら、中小企業で使いやすい形にまとめました。質問を作る前の確認に使ってください。

社内アンケートとは|目的によって聞くことが変わる

社内アンケートは、社員に質問に答えてもらい、職場の状態や施策への受け止め方を把握するための調査です。同じ「社内アンケート」でも、目的によって聞くことや頻度が変わります。

種類主な目的頻度の例
従業員満足度の調査仕事や職場、処遇への満足度を把握する年1回
エンゲージメントの調査仕事への意欲や会社への愛着を把握する年1〜2回
短い定点の調査少ない質問で変化を早めに捉える月1回など
施策の振り返り新しい制度や研修の受け止め方を確かめる施策の後に1回
テーマ別の調査働き方、福利厚生、社内の情報共有などを深く聞く必要なとき

社員の意識を把握することは、社外への説明でも重視されるようになっています。内閣官房の人的資本可視化指針では、開示事項の一つとして「従業員エンゲージメント」が挙げられ、関連する開示事項の例が示されています(出典:内閣官房 非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」)。中小企業では開示が求められるわけではありませんが、社員の状態を数字で継続して見る考え方は参考になります。

社内アンケートの作り方|5つのステップ

社内アンケートは、質問を書き始める前の準備で質が決まります。次の順番で進めます。

社内アンケートの作り方を、目的を決める、聞くことを決める、質問文と選択肢を作る、少人数で試す、実施して結果を返すの5段階で示した図
  1. 目的を決める:結果を見て、何を判断したいのかを一文で書きます。「離職の理由の傾向を知り、来年度の施策を決める」のように、使い道まで決めます。
  2. 聞くことを決める:目的に必要な項目だけを洗い出します。「ついでに聞きたいこと」は入れません。
  3. 質問文と選択肢を作る:1つの質問で1つのことを聞き、答えを誘導しない言葉で書きます。
  4. 少人数で試す:数人の社員に回答してもらい、分かりにくい質問や、答えにくい選択肢がないかを確かめます。
  5. 実施・集計し、結果を返す:回答の期間を決めて実施し、集計した結果と、会社として取り組むことを社員に伝えます。

一番大切なのは、1つ目の目的です。目的が決まっていないと、質問がどんどん増え、結果を見ても何を判断すればよいか分からなくなります。

総務省統計局も、調査項目や質問文が長くなりすぎることの影響を、次のように説明しています。

調査項目や質問文が不必要に長くなってしまうと、回答者の負担が増大し、最後まで回答してくれる回答者が少なくなってしまったり、調査の時間や費用が増加してしまいます。

出典:総務省統計局「なるほど統計学園 調査票の作成」

社内アンケートでも同じです。質問は、結果を何に使うかを説明できるものに絞り、回答にかかる時間の目安を最初に伝えておくと、最後まで答えてもらいやすくなります。

質問文を作るときの注意点

質問文の書き方は、結果の正しさに直結します。総務省統計局の資料をもとに、社内アンケートで気をつけたい点を整理します。

1つの質問で1つのことを聞く

「上司や同僚とのコミュニケーションに満足していますか」という質問は、上司と同僚の2つのことを同時に聞いています。上司には不満でも同僚には満足している人は、どう答えればよいか迷います。

1つの質問文の中に2つ以上の論点を含むことは「ダブルバーレル」と呼ばれ、避けるべきとされています。論点は1つに絞るのがよいとされています(出典:総務省統計局「Data StaRt 質問文の作成」)。

答えを誘導しない

質問文の書き方によって、答えが一方に寄ってしまうことがあります。総務省統計局は、誘導の影響を次のように説明しています。

質問に答えを誘導するような文章等が入っている場合、調査結果は本来の姿とは異なった結果になってしまいます。

出典:総務省統計局「なるほど統計学園 調査票の作成」

たとえば「多くの社員が評価している新しい在宅勤務の制度に満足していますか」と聞くと、満足と答えたほうがよい雰囲気が生まれます。「在宅勤務の制度について、どの程度満足していますか」のように、中立的な書き方にします。

どんな質問にも肯定的に答えやすい人がいることも知られています。一方の立場だけを強調すると、強調したほうの回答が増えてしまうため、賛成と反対の両方がありうることを示す書き方が必要とされています(出典:総務省統計局「Data StaRt 質問文の作成」)。

あいまいな言葉を使わない

「最近」「よく」「十分に」といった言葉は、人によって受け取り方が違います。総務省統計局は、あいまいな言葉を避け、回答者にとって明確で分かりやすい言葉を使うよう示しています(出典:総務省統計局「なるほど統計学園 調査票の作成」)。「最近」は「この3か月」、「よく」は「週に1回以上」のように、期間や回数で示します。

社内でしか通じない略語や、部署によって意味が違う言葉にも注意します。

答えやすい質問から並べる

答えにくい質問を最初に置くと、回答者が不安になり、最後まで回答してもらえなくなることがあるとされています(出典:総務省統計局「なるほど統計学園 調査票の作成」)。所属などの基本的な質問や、答えやすい質問から始め、不満や改善してほしい点などの答えにくい質問は後半に置きます。

社内アンケートで避けたい4つの質問の作り方と、その直し方の例をまとめた図

選択肢と回答の形式の決め方

選択肢の作り方も、結果に大きく影響します。総務省統計局は、1つだけ選ぶ形の選択肢は「網羅的に、かつ、相互排他的に」作るのが原則だとしています(出典:総務省統計局「Data StaRt 選択肢の作成」)。

網羅的とは、考えられるすべての答えが選択肢に含まれていることです。相互排他的とは、答えるべき選択肢が1つに絞られることです(出典:総務省統計局「Data StaRt 選択肢の作成」)。たとえば勤続年数を「1〜3年」「3〜5年」と区切ると、3年の人はどちらを選べばよいか迷います。「1年以上3年未満」「3年以上5年未満」のように区切ります。

同じ資料は、選択肢の作り方しだいで回答の分布がまったく変わることさえありうると注意しています(出典:総務省統計局「Data StaRt 選択肢の作成」)。満足度を聞くときは、次のような形をよく使います。

回答の形式向いている質問注意点
5段階の尺度満足度や同意の度合いを数字で比べたいとき「どちらともいえない」に回答が集まりやすい
4段階の尺度どちらかに寄った意見を知りたいとき中間がないため、答えにくいと感じる人もいる
複数選択当てはまるものをすべて知りたいとき選択肢の数が多すぎると、上のほうばかり選ばれやすい
自由記述理由や具体的な意見を知りたいとき集計に時間がかかる。少人数の会社では書いた人が推測されやすい

同じ尺度を毎回使うと、前回の結果と比べやすくなります。尺度の段階や言葉は、一度決めたら変えないようにします。

テーマ別の社内アンケートの質問例

ここからは、テーマ別の質問例を紹介します。そのまま使うのではなく、目的に合うものを選び、自社の言葉に直して使ってください。

仕事の内容・やりがい

  • 現在の仕事の内容に、どの程度満足していますか
  • 自分の能力や経験が、いまの仕事に生かされていると感じますか
  • 仕事を通じて、成長していると感じますか
  • 仕事の目標や期待されている役割は、明確になっていますか

上司・職場の人間関係

  • 直属の上司は、仕事について必要な指示や助言をしてくれますか
  • 困ったときに、職場の人に相談しやすいと感じますか
  • 部署の中で、意見を言いやすい雰囲気がありますか
  • ほかの部署との連携は、うまくいっていると感じますか

働き方・業務量

  • この3か月の業務量は、適切だと感じますか
  • 休暇は取りたいときに取れていますか
  • 仕事に必要な道具や仕組み(パソコン、ソフトなど)は整っていますか

評価・処遇

  • 人事評価の基準は、分かりやすく示されていますか
  • 評価の結果について、上司から十分な説明を受けていますか
  • 給与や賞与の決め方に、納得していますか

会社・経営

  • 会社の方針や目標は、社員に伝わっていると感じますか
  • 会社の今後に期待を持てますか
  • この会社で、これからも働き続けたいと思いますか

自由記述

  • 職場で改善してほしいことがあれば、具体的に教えてください
  • 会社の制度や取り組みで、よいと感じているものがあれば教えてください

「働き続けたいと思いますか」のような質問は、毎回同じ文で聞くと、変化を追う指標として使えます。テーマ別の質問は毎回すべて聞く必要はなく、その年の目的に合わせて入れ替えます。

匿名性と個人情報の扱い

社内アンケートで本音を集めるには、回答した内容で不利な扱いを受けないと社員が信じられることが前提です。

記名で行う場合や、所属や年齢などから個人が分かる場合は、回答は個人情報として扱う必要があります。個人情報保護法は、個人情報を取り扱うときは利用目的をできる限り特定しなければならないと定めています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。個人情報保護委員会のQ&Aでも、従業員の個人情報について利用目的の特定が必要かという問いが取り上げられています(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」)。

利用目的の通知については、法律で次のように定められています。

個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。

出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」

実務では、アンケートの最初に、目的、結果の使い道、誰が回答を見るか、集計の単位を書いておきます。人事評価には使わないのであれば、そのことも明記します。

匿名のアンケートでも、少人数の部署で集計すると、誰の回答かが推測できてしまいます。集計は一定の人数以上の単位で行い、それに満たない部署はほかの部署とまとめて示すなどの配慮をします。

自由記述にハラスメントの訴えが書かれることもあります。職場のパワーハラスメントの防止のための措置は、中小企業の事業主にも2022年4月1日から義務化されています(出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」)。アンケートは相談窓口の代わりにはならないため、相談窓口の連絡先をアンケートの最後に載せておくと、必要な人が相談につながりやすくなります。

健康やストレスに関わる質問は別の仕組みで

社員のストレスの状態を知りたいと考える会社もあります。ただ、健康に関わる情報は、通常の社内アンケートとは分けて扱うのが基本です。

厚生労働省の調査では、仕事や職業生活に関して強いストレスと感じる事柄がある労働者の割合は68.3%でした(出典:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」)。社員のストレスへの関心が高まるのは自然なことです。

社内アンケートとストレスチェックの違いを、目的、質問票、含める項目、結果を扱う人の4つの点で比べた表

ストレスの状態を測る仕組みとしては、法律に基づくストレスチェック制度があります。厚生労働省は、何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57項目の質問票(職業性ストレス簡易調査票)を使うよう示しています(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度 導入マニュアル」)。質問票には、ストレスの原因、ストレスによる心身の自覚症状、周囲のサポートの3つの項目を含めることとされています(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度 導入マニュアル」)。

ストレスチェックは、医師や保健師などの実施者が結果を扱い、本人の同意なしに会社が個人の結果を見られない仕組みです。社内アンケートに心身の状態を聞く質問を混ぜると、この配慮が働かなくなります。社内アンケートでは、職場や仕事の進め方についての質問にとどめておくのが安全です。

回答率を上げ、結果を改善につなげる

社内アンケートは、回答を集めて終わりではありません。結果を社員に返し、何かが変わったと感じてもらえるかどうかで、次回の回答率も変わります。

  • 実施の前に、目的と結果の使い道を社員に伝える
  • 回答にかかる時間の目安を示し、回答の期間を1〜2週間ほどとる
  • 勤務時間中に回答してよいことを伝える
  • 集計した結果を、よい点も課題も含めて社員に共有する
  • 会社として取り組むことを1〜3つに絞って示す
  • 次回のアンケートで、取り組みの前後の変化を確かめる

回答を手作業で集計していると、結果を返すまでに時間がかかり、社員の関心が薄れてしまいます。配信から回収、集計までをまとめて行える仕組みを使うと、部署別や時期別の比較もしやすくなります。アンケートの作成から結果の見える化までを検討したい場合は、ツナグバ掲載の顧客と従業員の声を見える化するサービスも比較の候補になります。

自社で作るか、ツールを使うか

社員が少なく、年に1回、少ない質問で行うだけであれば、無料のフォーム作成ツールと表計算ソフトでも十分なことがあります。まずは自社で作ってみて、続けるうちに手間や限界が見えてから、専用の仕組みを検討しても遅くはありません。

状況自社で作る専用の仕組みを使う
社員数・頻度社員が少なく、年1回程度社員が多い、または定期的に行う
分析全体の集計だけで足りる部署別・時期別に比べたい
匿名性社内で回答を見る人を限定できる社外の仕組みで匿名性を保ちたい
設問自社で設問を作れる設問の例や読み方の支援がほしい

一方で、アンケートを取ること自体が目的になっているなら、ツールを入れる前に目的を見直すことが先です。結果を受けて何を変えるかを決められないまま実施すると、社員の期待だけが高まり、かえって不信につながることがあります。

あわせて読みたい

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こんな課題があれば

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掲載サービスでできること

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よくある質問

社内アンケートの質問数は、どれくらいが適切ですか?

決まった数はありませんが、目的に必要な質問に絞ることが基本です。回答にかかる時間の目安を最初に示し、試しに数人に答えてもらって、負担が大きすぎないかを確かめてください。

匿名にすると、本音が集まりますか?

匿名にすると答えやすくなる人は多いですが、少人数の部署では匿名でも誰の回答かが推測されることがあります。集計の単位を工夫し、誰が回答を見るのかを事前に伝えておくことが大切です。

回答を義務にしてもよいですか?

回答を強制すると、適当な回答が増えるおそれがあります。目的と結果の使い道を丁寧に伝え、勤務時間中に回答してよいことを示すなど、答えやすい環境を整えるほうが、質の高い回答につながります。

結果が悪かったときは、どう伝えればよいですか?

よくなかった結果も隠さずに伝え、会社として何に取り組むかを合わせて示します。すべての課題に一度に取り組む必要はありません。優先する課題を絞り、次回のアンケートで変化を確かめると伝えると、社員の信頼につながります。

参考資料