社員が増えてきたのに、社長がいないと物事が決まらない。部署の間で連携がうまくいかず、人が育つ前に辞めてしまう。

中小企業の経営者からは、こうした組織の悩みがよく聞かれます。

組織づくりは、制度を一つ入れれば解決するものではなく、経営の方針、役割の分担、採用・評価・育成の仕組みをつなげていく取り組みです。

この記事では、中小企業が組織づくりを進める手順を6つのステップで整理し、規模別の進め方、よくある失敗、自社で進める場合と外部の支援を使う場合の判断基準までをまとめます。

中小企業の組織づくりとは

組織づくりとは、会社の目的に向かって、人が役割を分担し、協力して成果を出せる状態をつくる取り組みです。

具体的には、次のような要素を整えていきます。

組織づくりで整える4つの要素として、方針、役割、人の流れ、対話と、それぞれが整っていないと起きやすいことを示した図
要素内容整っていないと起きやすいこと
方針会社が目指すこと、大切にする考え方判断の基準がそろわず、指示がぶれる
役割誰が何に責任を持つか、権限の範囲社長に判断が集中し、物事が進まない
人の流れ採用・配置・育成・評価の仕組み人が育たず、育っても辞めてしまう
対話情報共有、会議、面談の場部署間の連携不足、不満の放置

大企業のように細かな規程や部署をそろえることが目的ではありません。

中小企業では、少ない人数でも方針と役割がはっきりし、人が育つ流れができていることが大切です。

人を組織の力に変えていく考え方として、経済産業省は「人的資本経営」を次のように説明しています。

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

出典:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」

上場企業向けの議論と受け止められがちですが、人を育て、力を引き出すことで会社の価値を高めるという考え方は、少人数の会社の組織づくりにも当てはまります。同じページでは、その実践のためのアイデアをまとめた「人材版伊藤レポート2.0」(2022年5月公表)も紹介されています(出典:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」)。

中小企業で組織づくりが必要になる理由

組織づくりの必要性は、会社の成長とともに高まります。

能力開発や人材育成に問題があるとした事業所が挙げた問題点として、指導する人材の不足59.5%、育成しても辞めてしまう51.6%、育成の時間がない45.5%を示した棒グラフ

人が辞めやすく、1人の退職の影響が大きい

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、就職後3年以内の離職率は、大学卒で事業所規模5〜29人が52.0%、30〜99人が41.9%と、1,000人以上(27.0%)より高い水準でした(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」)。

少人数の会社では、1人が辞めると業務と職場の雰囲気の両方に大きな影響が出ます。

転職した人が前の職場を辞めた理由を見ても、「職場の人間関係が好ましくなかった」が女性で11.5%、男性で8.9%ありました(出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」)。待遇だけでなく、職場の関係づくりも組織の課題です。

育成の担い手が足りない

厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所が80.1%でした。

問題の内容は「指導する人材が不足している」(59.5%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(51.6%)、「人材育成を行う時間がない」(45.5%)が上位です(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。

育成と定着は、個人の努力だけでなく、組織の仕組みとして考える必要があることが分かります。

同じ調査では、事業内職業能力開発計画を「いずれの事業所においても作成していない」企業が79.8%、職業能力開発推進者を「いずれの事業所においても選任していない」企業が82.2%でした(出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。

職業能力開発促進法は、事業主が育成の計画を作り、推進役を選ぶよう努めることを定めています(出典:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」)。育成を誰が、どの計画で進めるかを決めることは、組織づくりの一部といえます。

社長への依存が成長の壁になる

創業期は、社長がすべてを判断することで速く動けます。

しかし社員が増えると、社長の時間が足りなくなり、判断待ちが増えます。

社長がいなくても日々の判断が進むように、役割と権限を分けていくことが、次の成長に必要になります。

組織づくりの進め方:6つのステップ

ここからは、中小企業が組織づくりを進める手順を順に説明します。

中小企業が組織づくりを進める6つのステップを、現状把握から振り返りと見直しまで順に示した表

ステップ1:組織の現状と課題を把握する

まず、今の組織で何が起きているかを把握します。

経営者の感覚だけで判断せず、社員の声と数字の両方で確かめることが大切です。

  • 社員へのアンケートや面談で、仕事の負担、人間関係、方針の分かりやすさを聞く
  • 過去数年の退職者数と、退職までの期間、退職理由を整理する
  • 社長が判断している仕事を書き出し、他の人に任せられるものを分ける
  • 部署間で仕事が止まりやすい場面を、現場から聞き取る

ステップ2:会社の方針と大切にする考え方を言葉にする

組織の土台は、会社がどこを目指し、何を大切にするかという方針です。

経営理念がすでにある場合も、日々の判断に使える言葉になっているかを確かめます。

「顧客の困りごとを最後まで引き受ける」「迷ったら安全を優先する」のように、行動に落とせる表現にすると、社員が判断の基準として使いやすくなります。

ステップ3:役割と権限を整理する

次に、誰が何に責任を持つかを決めます。

組織図を描くだけでなく、役職ごとに「何を決めてよいか」「何を報告するか」を書き出すことが大切です。

整理すること例
役割営業の責任者は、月の売上目標と案件の優先順位に責任を持つ
権限一定額までの値引きや、取引先との日程調整は責任者が決めてよい
報告大口の案件や、クレームは社長に報告する

権限を少しずつ任せることで、社長の判断待ちが減り、管理職やリーダーも育ちます。

ステップ4:採用・評価・育成をつなげる

方針と役割が決まったら、それに合う人を採り、育て、評価する仕組みをつなげます。

  • 採用:方針と役割から、求める人物像を言葉にする
  • 育成:役割ごとに必要な知識と行動を整理し、教える順番を決める
  • 評価:方針に沿った行動と成果を評価の項目にする
  • 処遇:評価の結果を、昇給や賞与、役割の変更に反映する

採用・評価・育成がばらばらに作られていると、「採用で重視した点」と「評価される点」が食い違い、社員が混乱します。

同じ方針から作ることで、仕組み同士がかみ合うようになります。

ステップ5:対話の場をつくる

仕組みを作っても、社員に伝わらなければ組織は変わりません。

方針を共有する場と、現場の声を聞く場の両方を用意します。

  • 月1回程度の全体会議で、方針と進み具合を共有する
  • 上司と部下の定期的な面談で、困りごとと今後の希望を聞く
  • 部署をまたぐ課題を話し合う場を設ける
  • 社員アンケートの結果と、それに対して取り組むことを共有する

困りごとを相談できる窓口も、対話の仕組みの一つです。職場のパワーハラスメントについては、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備などの措置が、法律で事業主に求められています(出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)。

メンター制度、従業員調査(エンゲージメントサーベイ)、1on1ミーティングの導入は、人材確保等支援助成金の「職場活性化制度」の対象にもなっています。離職率の低下目標などの要件があるため、使う場合は最新の案内を確認してください(出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」)。

ステップ6:振り返りと見直しを続ける

組織づくりに終わりはありません。

半年や1年ごとに、ステップ1で把握した課題が改善しているかを確かめ、取り組みを見直します。

離職率や社員アンケートの結果など、変化を確かめる指標を最初に決めておくと、振り返りがしやすくなります。

会社の規模別の進め方の目安

組織づくりの進め方は、会社の規模によって変わります。

次の表は一般的な目安です。

規模の目安よくある課題優先したい取り組み
10人前後社長がすべてを判断している、仕事が人についている方針の言語化、業務の書き出しと分担
30人前後リーダー層が育っていない、部署間の連携が弱い役割と権限の整理、リーダーの育成、評価の基準づくり
50〜100人程度方針が現場まで届かない、管理職によって運営がばらつく管理職の育成、評価制度の運用、対話の仕組み化

人数はあくまで目安です。

同じ人数でも、拠点の数や職種の数によって、必要な取り組みは変わります。

人数が増えると、法令上の対応も変わります。たとえば労働基準法は、就業規則について次のように定めています。

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」

また、ストレスチェックはこれまで労働者数50人以上の事業場で義務とされてきましたが、令和10年4月1日からは50人未満の事業場にも義務化されます(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」)。

10人、50人といった規模の節目は、ルールや仕組みを見直すきっかけにもなります。法令への対応とあわせて、方針や役割の整理を進めると効率的です。

組織づくりのチェックリスト

自社の状況を確かめるために、次の項目を確認してみてください。

  • 会社の方針を、社員が自分の言葉で説明できる
  • 役職ごとに、決めてよいことと報告することが決まっている
  • 社長がいなくても、日々の業務の判断が進む
  • 求める人物像が言葉になっており、採用で使われている
  • 新しく入った社員を、誰がどの順番で教えるかが決まっている
  • 評価の基準が社員に説明されている
  • 上司と部下が定期的に話す場がある
  • 退職者数と退職理由を記録し、振り返っている

チェックが付かない項目が多い場合は、ステップ1の現状把握と、ステップ2の方針の言語化から始めるのがおすすめです。

よくある失敗と防ぎ方

組織づくりでは、次のような失敗がよく見られます。

よくある失敗起きやすい原因防ぎ方
制度や研修だけを入れて終わる方針や役割を決めないまま施策を足したステップ2と3を先に行う
社長が権限を手放せない任せる範囲と報告のルールがない金額や案件の大きさで、任せる範囲を決める
現場に伝わらない方針を一度説明しただけで終わった会議や面談で繰り返し共有する
一度に変えようとして反発が出る多くの施策を同時に始めた優先度の高い1〜2つから始める
効果が分からず続かない変化を確かめる指標を決めていない離職率やアンケートなどの指標を最初に決める

組織づくりは、変化が見えるまでに時間がかかる取り組みです。

短期間で成果を求めすぎず、続けられる形で進めることが大切です。

リーダー・管理職をどう育てるか

組織づくりの成否を左右するのが、社長と現場の間に立つリーダーや管理職です。

中小企業では、現場で成果を出した人がそのまま管理職になることが多く、部下の育て方や任せ方を学ぶ機会がないまま役割を担うことも少なくありません。

役割の変化を本人に伝える

管理職になると、自分で成果を出すことから、チームで成果を出すことへ役割が変わります。

この変化を言葉で伝え、何を期待しているかを明確にすることが出発点です。

任せる範囲を少しずつ広げる

最初から大きな権限を渡すと、本人も周囲も戸惑います。

小さな判断から任せ、結果を一緒に振り返りながら範囲を広げていくと、経験が積み重なります。

管理職同士で学ぶ場をつくる

同じ立場の管理職が集まり、部下との関わり方や困りごとを共有する場は、少ない費用で始められる育成の方法です。

社外の研修を使う場合も、学んだことを社内で共有する場をあわせて設けると、組織全体に考え方が広がります。

費用の考え方

組織づくりにかかる費用は、自社で進めるか外部の支援を使うか、どこまでの範囲を扱うかによって大きく変わります。

金額は条件によって幅が大きいため、ここでは費用の種類と考え方を整理します。

費用の種類内容費用の形の例
社内の時間経営者・幹部・社員が会議や面談、制度づくりに使う時間直接の支出はないが、本来の業務の時間が減る
調査・診断社員アンケートや組織の診断社員数に応じた料金、または一括
研修管理職研修、リーダー研修など1回ごと、または受講者数に応じた料金
制度づくりの支援評価制度や等級制度の設計期間と範囲に応じた一括、または月額
総合的な支援経営方針・組織・採用・育成をまとめて見直す期間と範囲に応じた個別見積もり

外部の支援を比べるときは、支援の範囲、期間、打ち合わせの頻度、社内で担う作業をそろえたうえで見積もりを並べるのが目安です。

また、費用は「離職による採用・教育のやり直し」や「社長の判断待ちによる機会の損失」と比べて考えると、どこまでかけるべきかを判断しやすくなります。

自社で進めるか、外部の支援を使うかの判断基準

組織づくりは、自社だけで進めることもできます。

一方で、課題が複数からみ合っている場合や、社内に推進役がいない場合は、外部の支援が役立つことがあります。

判断の観点自社で進めるのが向いている外部の支援が向いている
課題の数課題が1〜2つに絞れている離職・育成・評価・採用など複数の課題がからみ合っている
推進役経営者や幹部が時間を割ける推進役がおらず、日々の業務で手が回らない
社内の声社員が本音を話せる関係がある経営者に直接言いにくい空気がある
経験制度づくりや組織改善の経験者が社内にいる経験者がおらず、何から手を付けるか決めきれない

外部の支援を使う場合も、組織づくりの主役は経営者と社員です。

任せきりにせず、経営者が方針づくりに関わり、社内に考え方が残る進め方を選ぶことが大切です。

どこから手を付けるかを整理したい段階では、国が設置する無料の経営相談窓口「よろず支援拠点」に相談する方法もあります(出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点」)。

経営戦略、組織づくり、採用、人材育成をまとめて見直す経営・組織の総合パッケージのように、経営と組織を一体で扱う支援もあります。

外部の支援を急がなくてよいケース

  • 社員が少なく、経営者が全員と日常的に話せている
  • 課題がはっきりしており、取り組む順番も決まっている
  • 経営者や幹部が、組織づくりに時間を使える

このような場合は、まず自社でできることから始め、課題が広がってきた段階で外部の支援を検討しても遅くありません。

あわせて読みたい

ツナグバで、組織づくりのサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

人材育成・研修の分野では、経営戦略、組織づくり、採用、人材育成をまとめて見直し、社員が働きたくなる会社づくりを支援する、経営・組織の総合パッケージを掲載しています。

経営と組織を一体で見直したい企業に向いたサービスです。

支援の範囲や進め方は、資料で確認してから検討することをおすすめします。

こんな課題があれば

  • 経営方針はあるが、社員に伝わらず現場の動きとずれている
  • 採用・育成・評価がばらばらに進み、全体のつながりが見えない
  • 社員の定着が悪く、何から手をつければよいか分からない

掲載サービスでできること

  • 経営と組織をまとめて見直せる:戦略、組織、採用、育成を別々に考えず、一つの流れとして整理します。施策同士の食い違いを減らしやすくなります。
  • 社員の声をもとに課題を整理する:アンケートや面談で社員の考えを集め、会社の課題を見える形にします。経営者の思い込みに頼らずに進められます。
  • 必要な部分から順に取り組める:すべてを一度に変えるのではなく、優先順位をつけて進めるものが一般的です。進め方は製品によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいこと

  • 支援の範囲(戦略、組織、採用、育成のどこまでを扱うか)
  • 費用の内訳と、追加の施策にかかる費用
  • 支援する担当者の経験や、関わる頻度
  • 社内で用意する人員や時間の目安
  • 契約期間と、途中で範囲を変えられるか

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

組織づくりは何から始めればよいですか?

まずは現状の把握から始めることをおすすめします。

社員の声と、退職者数などの数字を確かめ、課題の優先順位を決めてから、方針の言語化や役割の整理に進むと、取り組みがぶれにくくなります。

社員が10人程度でも組織づくりは必要ですか?

人数が少ないうちから、方針を言葉にし、業務の分担を決めておくと、人が増えたときに混乱しにくくなります。

大がかりな制度は必要なく、方針の共有と役割の整理から始める形で十分です。

組織づくりにはどのくらいの期間がかかりますか?

課題や会社の規模によって異なります。

方針の言語化や役割の整理は比較的短い期間で進められますが、社員の行動や職場の雰囲気が変わるまでには、年単位の時間がかかることが一般的です。

経営者が忙しくて時間が取れない場合はどうすればよいですか?

推進役を幹部や担当者に任せ、経営者は方針の決定と節目の確認に関わる形があります。

社内に推進役がいない場合は、外部の支援を使って進め方を整える方法もあります。

組織づくりの効果はどう測ればよいですか?

離職率、早期離職者数、社員アンケートの結果、社長が判断している業務の数など、最初に指標を決めておくと変化を確かめやすくなります。

少人数の会社では数字が年によって大きく動くため、複数の指標をあわせて見ることが大切です。

参考資料