燃料価格や為替の動きを受けて、電気代の負担が経営を圧迫している企業は少なくありません。店舗や事務所、工場など、事業所の電気代は毎月かかる固定費です。この記事では、法人の電気料金の仕組み、2026年度の制度の動き、削減の方法とその順番、判断基準とチェックリスト、そして見直しの効果が出にくいケースまでを整理します。

法人の電気料金の仕組み

電気代を減らすには、まず請求書の中身を知ることが出発点です。法人の電気料金は、一般的に次の4つで構成されています。

法人の電気料金を構成する基本料金、電力量料金、燃料費調整額、再エネ賦課金の4項目を整理した図
項目中身自社で変えられるか
基本料金契約電力(kW)に応じてかかる固定の料金契約電力の見直し・デマンド管理で変えられる
電力量料金使った電力量(kWh)に応じてかかる料金使う量の削減・単価の見直しで変えられる
燃料費調整額燃料の価格の変動を料金に反映する調整分契約の種類によって仕組みが異なる
再エネ賦課金再生可能エネルギーの買い取りにかかる費用を、使った量に応じて負担するもの単価は全国一律で、変えられるのは使う量だけ

このうち、自社の工夫で変えられるのは主に「基本料金」と「電力量料金」です。再エネ賦課金は単価が全国一律で決まるため、減らせるのは使う量だけになります(出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー 賦課金」)。

低圧と高圧で契約の考え方が違う

法人の電気の契約は、主に低圧と高圧に分かれます。一般的に、契約電力が50kW未満の小さな店舗や事務所は低圧、50kW以上のビルや工場は高圧です。

高圧の契約では、30分ごとの使用電力の平均(デマンド値)のうち、過去1年で最も大きい値をもとに契約電力が決まる仕組みが一般的です。一度でも使用電力が跳ね上がると、その後1年間の基本料金が上がることがあります。そのため、高圧では「ピークを抑える」ことが削減の大きな手段になります。

燃料費調整額の決まり方を確かめる

燃料費調整額は、発電に使う燃料の価格の変動を、毎月の電気料金に反映する仕組みです。燃料の価格が上がると電気代が上がり、下がると電気代が下がります。

燃料費調整の計算の方法や上限の有無は、契約によって異なります。同じ電力量を使っても、契約によって請求額の動き方が違うのはこのためです。見直しの際は、単価だけでなく、燃料費調整の仕組みがどうなっているかも確認してください。

2026年度に知っておきたい制度の動き

電気代には、国の制度で決まる部分があります。2026年度の主な動きは次のとおりです。

2026年度の再エネ賦課金4.18円と、7月から9月使用分の低圧・高圧の値引き単価をまとめた表

再エネ賦課金の単価

再エネ賦課金の単価の決め方について、資源エネルギー庁は次のように説明しています。

再エネ賦課金の単価は、買取価格等を踏まえて年間でどのくらい再生可能エネルギーが導入されるかを推測し、毎年度経済産業大臣が決めます。

出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー 賦課金」

2026年度の単価は1kWhあたり4.18円で、2026年5月検針分から2027年4月検針分の電気料金まで適用されます(出典:経済産業省「2026年度の賦課金単価を設定します」)。2025年度の単価は3.98円でした(出典:経済産業省「2025年度の賦課金単価を設定します」)。

使う電力量が多い事業所ほど、負担の増加も大きくなります。たとえば月に10,000kWhを使う事業所なら、賦課金は月41,800円(4.18円×10,000kWh)で、2025年度の単価で計算した39,800円より2,000円増えます。使用量は仮の数字です。自社の請求書の使用量を当てはめて計算してください。

電気・ガス料金の支援

経済産業省は、2026年7月・8月・9月の使用分について、電気料金の値引きによる支援を行うと発表しました。値引きの単価は1kWhあたり、低圧で7月と9月が3.5円、8月が4.5円、高圧で7月と9月が1.8円、8月が2.3円です(出典:経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援」)。こうした支援は期間が限られているため、支援が終わった後の請求額を前提に、費用の見通しを立てておくことが大切です。

容量拠出金

2024年度から、将来の電力の供給力を確保するための容量市場の仕組みにより、小売電気事業者が容量拠出金を負担しています。電力広域的運営推進機関の資料では、容量拠出金は相対契約の有無にかかわらずすべての小売電気事業者が支払い、負担の割合は年間の最大需要時の販売電力量のシェアで決まると説明されています(出典:電力広域的運営推進機関「容量市場の動向について」(2023年10月))。この負担を料金に反映している電力会社もあり、契約によっては請求書に項目として表示されます。見積もりを比べるときは、こうした項目が含まれているかを確認します。

電気代を減らす方法は4つに分かれる

法人の電気代を減らす方法は、大きく次の4つに分けられます。費用と手間が小さいものから順に検討するのが目安です。

電気代を減らす契約の見直し、使い方の見直し、設備の更新、自家発電の4つの方法の図
方法主な内容初期費用効果が出るまで
契約の見直し電力会社やプランの切り替え、契約電力の見直し小さい切り替え後の請求から
使い方の見直しピークの分散、空調の設定、不要な電源の停止ほぼかからないすぐ
設備の更新照明のLED化、空調や冷蔵設備の更新中〜大更新後から
自家発電など自家消費型の太陽光発電、蓄電池大きい数年単位で回収を考える

方法1:契約を見直す

電力会社やプランを切り替える

2016年の電力の小売全面自由化により、低圧を含むすべての法人が電力会社を選べるようになっています。切り替えても今ある送配電網を使うため、新たに電線を引く必要はありません(出典:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化 よくある質問」)。料金プランは会社ごとに違い、使い方に合うプランを選ぶと単価を下げられることがあります。

ただし、プランの中には、卸電力市場の価格に連動して単価が変わるものもあります。市場の価格が上がると、かえって電気代が増えるおそれがあります。単価の安さだけでなく、料金の決まり方を確認してください。

電力会社が事業から撤退する可能性も、頭に入れておきます。資源エネルギー庁は、電力会社が倒産・撤退する場合は無契約状態になるまでの期日の通知が来て、原則としてその期日までに新しい会社と契約すれば供給を受け続けられると説明しています(出典:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化 よくある質問」)。通知が来たときに慌てないよう、契約の担当者と連絡先をはっきりさせておくと安心です。

契約電力が使い方に合っているか確かめる

低圧の契約では、店舗の設備に比べて契約の容量が大きすぎる場合があります。高圧では、過去に一度だけ跳ね上がったデマンド値が、契約電力を押し上げていることがあります。直近1年の使用量を確かめ、契約が実態に合っているかを見直します。

見積もりは同じ条件でそろえる

複数の電力会社から見積もりを取るときは、過去12か月分の使用量の明細を渡し、同じ条件で比べます。基本料金の単価、電力量料金の単価、燃料費調整の仕組み、契約期間、解約時の違約金をそろえて比べるのが目安です。

電気代の負担が大きい事業所や店舗では、法人向けの電力切り替えサービスを使い、現在の使用状況をもとに見直しの余地を確かめる方法もあります。自社で見積もりを集める手間を減らしたい場合に向いています。

方法2:使い方を見直す

ピークを分散する

高圧の契約では、使用電力のピークを抑えると、翌年以降の基本料金を下げられる可能性があります。たとえば、朝の始業時に空調や機械を一斉に動かすのをやめ、時間をずらして順番に動かす方法です。デマンド値を見える化する機器を使い、ピークが近づいたら知らせる仕組みを入れる企業もあります。

空調と照明の使い方を決める

事業所の電気代の中で、空調と照明が占める割合は大きくなりがちです。設定温度のルール、使っていない部屋の消灯、フィルターの定期的な掃除など、費用をかけずにできることから始めます。

待機電力と営業時間外の電気を減らす

営業時間外や休日に動き続けている機器がないかを確かめます。タイマーで電源を切る、使わない機器のプラグを抜くといった小さな積み重ねも、事業所の数が多いほど効果が大きくなります。

方法3:設備を更新する

古い照明や空調、冷蔵・冷凍の設備は、新しいものより多くの電気を使うことがあります。照明のLED化や、効率の高い空調への更新は、使う電力量そのものを減らす方法です。

設備の更新には初期費用がかかるため、更新にかかる費用と、減らせる電気代を比べて判断します。国や自治体には、省エネ設備の導入を支援する補助金がある場合があります。資源エネルギー庁の省エネルギーに関する情報や、自治体の窓口で、使える制度がないか確認してください(出典:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」)。補助金は公募の期間が決まっていて、交付の決定前に発注した設備は対象外になるのが一般的です。更新の時期が決まったら、早めに制度を調べておきます。

方法4:自家発電などを検討する

屋根に太陽光発電の設備を置き、発電した電気を自社で使う方法もあります。電力会社から買う電気の量が減るため、電力量料金と再エネ賦課金の両方を減らせます。再エネ賦課金は2026年度に1kWhあたり4.18円で(出典:経済産業省「2026年度の賦課金単価を設定します」)、自家消費した分はこの負担がかかりません。

一方で、初期費用が大きく、回収には年単位の期間がかかるのが一般的です。建物が自社の所有か、屋根の強度や向き、日当たりはどうかによって、向き不向きが分かれます。初期費用をかけずに設備を置く契約の形もありますが、契約期間が長くなることが多いため、条件をよく確認してください。

業種別の削減のポイント

電気の使い方は業種によって大きく違います。代表的な業種ごとに、見直しの手がかりを整理します。

小売店・飲食店

冷蔵・冷凍の設備、空調、照明が電気代の多くを占めます。冷蔵ケースの扉の開け閉めを減らす、設備の周りの通気を確保する、閉店後の照明を減らすといった運用の見直しが手軽です。厨房の機器が多い飲食店では、開店前に機器を一斉に立ち上げないことも、ピークを抑える工夫になります。

事務所

空調と照明、パソコンなどの事務機器が中心です。空調の設定温度のルールと、使っていない会議室の消灯から始めるのが目安です。賃貸の事務所では設備を変えにくいため、契約の見直しと使い方の見直しが中心になります。

工場・倉庫

生産の設備やコンプレッサー、空調が電気を多く使います。高圧の契約が多いため、設備の稼働の時間をずらしてピークを抑える効果が出やすい業種です。なお、原油換算で年1,500kl以上のエネルギーを使う事業者は、省エネ法にもとづいてエネルギーの使用状況などを定期的に報告する対象になります(出典:資源エネルギー庁「省エネ法の概要」)。古いモーターや照明の更新も、使う量を減らす方法として検討されます。

医療機関・介護施設

24時間動かし続ける設備が多く、空調も止めにくい業種です。利用者の快適さや安全を優先したうえで、使っていない区域の空調や照明を見直す、設備の更新の時期に効率の高い機器を選ぶといった方法が現実的です。

社内で取り組みを続けるコツ

電気代の削減は、一度の見直しで終わらせず、続けることで効果が積み上がります。続けるためには、次の3つを決めておくのが目安です。

  • 担当者:請求書の確認と、使い方のルールの見直しを担う人を決める
  • 見える化:毎月の使用量と金額を、前年の同じ月と比べて記録する
  • 共有:減った金額や取り組みの結果を、社内で定期的に伝える

使用量の記録があると、急に増えた月の原因を探しやすくなります。設備の故障や設定の誤りに早く気づけることもあります。

どの方法から始めるかの判断基準

自社に合う方法は、事業所の規模や使い方で変わります。次の表を目安に、優先順位を決めてください。

自社の状況優先して検討したい方法
ここ数年、電力会社やプランを見直していない契約の見直し
高圧で、季節や時間帯によって使用量の差が大きいピークの分散とデマンド管理
照明や空調が10年以上前のもの設備の更新
自社の建物で、屋根が広く日当たりがよい自家消費型の太陽光発電
賃貸の事務所で、設備を変えられない契約の見直しと使い方の見直し

電気代削減のチェックリスト

見直しを始める前に、次の項目を確認しておきます。

  • 過去12か月分の請求書または使用量の明細を手元にそろえた
  • 低圧か高圧か、契約電力はいくつかを確認した
  • 今の契約の種類(燃料費調整の仕組み、市場連動かどうか)を確認した
  • 契約期間と、解約時の違約金の有無を確認した
  • 使用量が多い時間帯と季節を把握した
  • 空調と照明の使い方のルールがあるかを確認した
  • 照明や空調の設備がいつ導入されたものかを確認した
  • 賃貸の場合、契約の名義と、切り替えに貸主の承諾が必要かを確認した

費用対効果の考え方

電気代の削減は、「いくら減るか」だけでなく、「いくらかけて、何年で取り戻せるか」で判断します。

契約の見直しや使い方の見直しは、初期費用がほとんどかからないため、少しでも減れば効果が出ます。一方、設備の更新や太陽光発電は初期費用が大きいため、「初期費用 ÷ 1年あたりに減らせる電気代」で回収の年数を計算するのが目安です。設備が使える年数より回収の年数が長くなる場合は、見送る判断もあります。

削減の効果は、使用量、契約の種類、地域、時期によって大きく変わります。他社の削減率の数字は参考にとどめ、自社の使用量の明細をもとに試算してください。

見直しの効果が出にくいケース

次のような場合は、見直しをしても大きな削減につながらないことがあります。

  • すでに直近で電力会社やプランを見直し、使い方に合う契約になっている
  • 使用量が少なく、単価が下がっても金額の差が小さい
  • ビル全体で一括して契約しており、テナントとして契約を変えられない
  • 電気代の大半が、業務に欠かせない機械の稼働によるもの

こうした場合は、無理に契約を変えるより、設備の更新の時期に合わせて効率の高い機器を選ぶほうが現実的です。電気代は、事業を続けるうえで必要な費用でもあります。削減のために業務の質を落とさないことも大切です。

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  • 現在の使用状況から見直しの余地を確認できる:検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算します。見直す前に比較の材料を得られます。
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資料で確かめたいこと

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  • 問い合わせ先と、請求書の受け取り方

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

電力会社を切り替えると、停電が増えたり電気の質が落ちたりしませんか?

変わりません。資源エネルギー庁は、よくある質問の中で次のように回答しています。

また、電気そのものの品質や信頼性(停電の可能性など)は、どの会社から電気を買っても同じです。

出典:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化 よくある質問」

電気は今ある送配電網を使って届けられ、送配電を担う会社は切り替えの前後で変わりません。

賃貸の事務所や店舗でも電力会社を切り替えられますか?

電気の契約の名義が自社であれば、切り替えられることが一般的です。資源エネルギー庁も、契約の名義が本人であれば切り替えでき、他人名義の場合は名義人に確認が必要としています(出典:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化 よくある質問」)。ただし、ビル全体で一括して契約している場合は、テナントが個別に切り替えられないことがあります。賃貸の契約や管理会社の規約を確認してください。

電気代削減のサービスに費用はかかりますか?

サービスによって異なります。見積もりや相談を無料で受け付けるものもあれば、削減額に応じた報酬がかかるものもあります。契約の前に、費用がかかる条件を確認してください。

料金の支援が終わると、電気代はどれくらい上がりますか?

支援で値引きされていた単価の分だけ、使用量に応じて請求額が上がります。たとえば高圧で1kWhあたり2.3円の値引きがあった月なら、使用量に2.3円を掛けた金額がおおよその差になります。支援の有無に左右されない費用の見通しを立てておくと安心です。

電力会社の切り替えには、どんな手続きが必要ですか?

一般的には、新しい電力会社に申し込むと、今の電力会社への解約の連絡は新しい会社が代わりに行います。申し込みの際には、請求書に書かれた契約の情報が必要になります。高圧の契約では、切り替えの時期が契約の更新月に合わせられることがあるため、早めに確認しておくと安心です。

参考資料