電気の使用量はそれほど増えていないのに、電気代の基本料金が高いまま下がらない。高圧で電気を契約している事業所や店舗では、こうした悩みがよく聞かれます。
原因の一つが「デマンド」です。高圧の契約などでは、30分ごとの平均の使用電力の最大値が、その後1年間の基本料金に影響します。
この記事では、デマンドの仕組み、自社の電力の山の見つけ方、費用をかけずにできる対策から、監視装置や省エネ診断の活用までを順に解説します。
電力会社の切り替えとは別の、「使い方」で基本料金を抑える方法を知りたい方に向けた内容です。
デマンドとは。基本料金が決まる仕組み
デマンドとは、30分ごとに計測した使用電力の平均値です。浜松市の資料では、次のように説明されています。
デマンドとは、電力会社が 30 分間単位で計測している電気使用量の平均値のこと
出典:浜松市「デマンド削減について」
堺市の資料によると、デマンドは毎時0分〜30分と30分〜0分の30分間で区切って、24時間365日計測されています。過去1年間のうち最大のデマンド値を「最大デマンド」と呼びます(出典:堺市「デマンドとは??」)。
1回の山が1年間の基本料金に響く
高圧の契約などでは、この最大デマンドが基本料金に影響します。堺市の資料では、支払月を含む過去12か月の最大デマンドが基本料金に使われると説明されています(出典:堺市「デマンドとは??」)。
同じ資料の例では、6月の最大デマンドが77kWだった事業所でも、前年7月に記録した89kWが6月の基本料金に使われています(出典:堺市「デマンドとは??」)。つまり、ある日のある30分だけ電力を使いすぎると、その後1年間、高い基本料金を払い続けることになりかねません。
基本料金の計算式
堺市の資料では、基本料金と電気料金の関係を次のように示しています(出典:堺市「デマンドとは??」)。
- 基本料金 = 単価 × 最大デマンド × 力率割引(割増)
- 電気料金 = 基本料金 + 電力量料金 + 消費税
単価は契約によって違いますが、最大デマンドを下げれば、基本料金はそれに比例して下がります。力率は、設備の状態によって割引にも割増にもなる項目です。具体的な計算の方法は、契約している電力会社の約款で確認してください。
なお、家庭向けの従量電灯などの契約には、デマンドの考え方は当てはまりません(出典:堺市「デマンドとは??」)。この記事の内容は、主に高圧で契約している事業所や店舗、工場を対象にしています。
どれくらい効果があるのか:1kWあたりの考え方
デマンドを下げたときの効果は、契約の単価によって違います。
浜松市の資料では、デマンド1kWあたりの基本料金は年間で1万6千円〜1万8千円程度とされ、デマンドを10kW削減できれば年間16万円の電気料金削減になるという例が示されています(出典:浜松市「デマンド削減について」)。
これは資料が示す目安であり、実際の金額は契約の種類、単価、力率、時期によって変わります。自社の効果を試算するときは、検針票や請求書に書かれた基本料金の単価を使ってください。
試算の手順は次のとおりです。
- 検針票で、今の契約電力(または最大デマンド)と基本料金の単価を確かめる
- 下げられそうなデマンドの幅(kW)を見込む
- 単価 × 下げる幅 × 12か月で、1年あたりの基本料金の差を出す
- 対策にかかる費用(装置や工事)と比べて、何年で回収できるかを見る
自社のデマンドの「山」を見つける
デマンドを下げるには、まず、いつ、何が原因で山ができているかを知る必要があります。

検針票と30分ごとのデータを見る
検針票には、その月の最大デマンドや契約電力が書かれています。月ごとに並べると、夏と冬のどちらに山があるかが分かります。
契約によっては、電力会社のWebサービスなどで30分ごとの使用量を確認できる場合があります。何時ごろに山ができているかを見ると、原因の見当がつきます。
計測して原因を特定する
浜松市の資料では、キュービクルや分電盤に計測器を設置し、デマンドの推移を記録して原因を特定する方法が紹介されています。原因によって対策が違うため、省エネの専門家の助言も有効とされています(出典:浜松市「デマンド削減について」)。
よくある山のでき方
- 朝の営業開始の直後に、空調や照明を一斉に入れる
- 夏の午後の暑い時間帯に、空調の負荷が重なる
- 消費電力の大きい機器を、同じ時間帯にまとめて動かす
- 冬の朝に、暖房や給湯の立ち上げが重なる
資源エネルギー庁の資料では、多くの業種で日中の特定の時間帯に電力の消費が集中するとされています。オフィスビルでは9〜18時頃、卸・小売店では9〜21時頃が電力のピークの目安です(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」)。
費用をかけずにできるデマンドの下げ方
デマンドを下げる方法は、運用の工夫、監視、設備の見直しの3段階に分けられます。まずは費用のかからない運用の工夫から始めます。
機器の起動時間をずらす
営業開始の直後に最大デマンドを記録する場合は、複数台の空調機の起動を1台ずつずらすのが有効とされています(出典:浜松市「デマンド削減について」)。
堺市の資料の例では、空調を1台ずつ時間をずらして起動した場合の最大デマンドは約50kW、2台を一気に起動した場合は約60kWでした。30分の区切りをまたぐように起動をずらすと、効果的とされています(出典:堺市「デマンドとは??」)。
消費電力の大きい機器の運転を移す
日中に短い時間だけデマンドが上がる場合は、消費電力の大きい機器の運転を別の時間に移せないかを検討します(出典:浜松市「デマンド削減について」)。
間引き運転をする
空調などの機器を交互に止める間引き運転も、デマンドを抑える方法の一つです(出典:堺市「デマンドとは??」)。
照明と空調の使い方を見直す
資源エネルギー庁の事業者向けの資料では、使用していないエリア(会議室、休憩室、廊下等)の消灯や、空調の停止、日射を避けるためのブラインドやカーテンの活用が挙げられています(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネ(事業者向けリーフレット)」)。
同庁の省エネメニューでは、オフィスビルの場合の効果の目安として、建物全体の消費電力に対し、執務室の照明を半分程度間引くと12.7%、室温を26℃から2℃上げると4.1%、日射遮蔽で3.7%、未使用エリアの消灯で3.3%、長時間離席時のOA機器の電源オフで2.8%、未使用エリアの空調停止で2.4%とされています(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」)。

これらは消費電力全体に対する目安ですが、ピークの時間帯に行えば、デマンドを下げることにもつながります。
業種ごとに電力の使い方は違う
どの対策が効きやすいかは、業種によって違います。資源エネルギー庁の省エネメニューでは、業種ごとの電力のピークの時間帯と、電力の内訳の目安が示されています(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」)。
| 業種 | ピークの目安 | 電力の内訳の目安 | 効きやすい対策の例 |
|---|---|---|---|
| オフィスビル | 9〜18時頃 | 空調約49%、照明約23%(17時頃) | 照明の間引き、室温の調整、日射遮蔽 |
| 卸・小売店 | 9〜21時頃 | 空調約26%、照明約22% | 店舗照明の間引き、看板・外部照明の消灯 |
| 食品スーパー | 9〜17時頃 | ショーケース約38%、空調約24% | 冷蔵庫の台数の限定、ショーケースの消灯 |
| 飲食店 | 10〜20時頃 | 空調約51%、照明約17% | 室温の調整、未使用エリアの消灯 |
| 医療機関 | 8〜16時頃 | 空調約35%、照明約33% | 事務室の照明の間引き、未使用エリアの空調停止 |
出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」をもとにツナグバ編集部が作成。

製造業では生産設備の電力の割合が高いため、生産工程の対策が特に有効とされています。インバータ付きのポンプやファンの運転の見直しや、コンプレッサの台数制御などが例として挙げられています(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」)。
資源エネルギー庁のリーフレットは、事業者の取組の重要性について、次のように述べています。
電力最終消費の7割が事業者による電気使用、石油消費の4割が事業者による燃料消費です。
出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネ(事業者向けリーフレット)」
政府は毎年、夏と冬に省エネルギーの取組を呼びかけており、業種ごとのメニューもその一環として公表されています(出典:資源エネルギー庁「令和8年度 夏季の省エネルギーの取組について」)。
デマンド監視装置と設備の見直し
運用の工夫だけでは山を抑えきれない場合は、監視の仕組みを入れます。
資源エネルギー庁の省エネメニューでは、全業種に共通する対策として、デマンド監視装置を導入し、警報が出たときに事前に決めた省エネ対策を行う方法が挙げられています(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」)。
監視装置を入れるときは、警報が出たときに「誰が」「何を止めるか」を決めておくことが大切です。警報が鳴っても対応が決まっていなければ、デマンドは下がりません。
空調や照明が古い場合は、設備の更新でデマンドそのものを下げられることもあります。ただし、設備の更新は費用が大きいため、前の章で示した手順で回収の年数を試算してから判断します。
省エネ診断を活用する
自社だけで原因を見つけるのが難しい場合は、専門家の診断を受ける方法があります。
資源エネルギー庁の補助事業として、省エネの専門家が施設のエネルギーの使用状況を把握し、改善項目を提案する省エネ診断が行われています。診断の費用を補助する仕組みです(出典:資源エネルギー庁 補助事業「設備を診断して光熱費削減 省エネ診断」)。
資源エネルギー庁の資料では、専門家が設備を点検して光熱費の削減を提案するウォークスルー診断や、診断後の取組を伴走して支援する省エネお助け隊などが紹介されています(出典:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者)本州・四国・九州」)。省エネルギーセンターも、中小企業などの省エネや節電の取組を促すポータルサイトで、診断の申し込みを案内しています(出典:一般財団法人省エネルギーセンター「省エネ・節電ポータルサイト」)。
申し込みの条件や費用の負担は年度や事業によって変わるため、各窓口で確認してください。
社内で続けるための体制づくり
デマンドの対策は、一度決めれば終わりではありません。季節や人の入れ替わりで、決めたルールが守られなくなることがよくあります。
- 担当者を決める:検針票の確認と、警報が出たときの指示を出す人を一人決める
- ルールを紙に残す:空調の起動の順番や、止めてよい機器の一覧を、設備の近くに掲示する
- 月に一度ふり返る:最大デマンドの推移を確認し、山ができた日の原因を記録する
- 複数の拠点で共有する:店舗や事業所が複数ある場合は、うまくいった方法をほかの拠点にも広げる
対策の効果が数字で見えると、現場の協力も得やすくなります。基本料金がいくら下がったかを、社内で共有するとよいでしょう。
デマンドを下げるときの注意点
デマンドを下げることだけを目的にすると、業務や働く環境に無理が出ることがあります。
- 室温を上げすぎない:京都府は府庁の取組として、冷房を使う場合は室温28℃を目安とする適正冷房を定めています(出典:京都府地球温暖化対策推進本部「京都府の省エネ・節電対策について」)。働く人や来店客の体調に配慮して設定する
- 衛生や品質に関わる機器は止めない:冷蔵・冷凍設備や医療機器など、止めると問題が出る機器は対象から外す
- 一度の油断で1年分が決まる:猛暑の日や繁忙期に、対策が手薄になりやすい
- 契約電力の見直しは慎重に:契約の種類によっては、デマンドの実績と契約電力の関係が違う。電力会社に確認してから手続きする
特に、夏の猛暑日や冬の寒い朝は、山ができやすい時期です。その時期だけでも、起動のずらし方や警報が出たときの対応を、社内で共有しておきます。
電力会社の切り替えとの組み合わせ
デマンドを下げる対策は「使い方」で基本料金を抑える方法です。一方で、基本料金の単価や電力量料金の単価そのものは、契約の内容によって決まります。
単価を見直したい場合は、電力会社の切り替えも選択肢になります。ツナグバでは、法人向けの電力切り替えによる電気代の見直しのサービスを掲載しています。検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算するサービスです。
デマンドを下げる取組と、単価の見直しは、どちらか一方ではなく組み合わせて考えられます。試算を受けるときは、前提となる使用量が実態に合っているかを確かめてください。
デマンド対策のチェックリスト
- 検針票で、月ごとの最大デマンドと基本料金の単価を確認したか
- 30分ごとの使用量で、山ができる時間帯を把握したか
- 営業開始時に、空調や照明を一斉に入れていないか
- 消費電力の大きい機器の運転を、別の時間に移せないか
- 警報が出たときに止める機器と担当者を決めたか
- 室温や衛生など、止めてはいけない条件を整理したか
- 省エネ診断の利用を検討したか
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ツナグバで、電気代の見直しサービスを比べる
ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。
コスト削減の分野では、電力会社の切り替えで電気代の削減を図るサービスを掲載しています。現在の使用状況をもとに、見直しの余地を確認できます。電気代の負担が大きい事業所・店舗に向いています。
料金単価の内訳、契約期間と途中で解約したときの費用、今の契約に合ったプランがあるかは、資料で確認できます。デマンドの対策と合わせて、単価の見直しも比べてみてください。
こんな課題があれば
- 電気代が上がり続けているが、何を見直せばよいか分からない
- 今の電力会社のまま契約内容を一度も確認していない
- 切り替えたいが、停電や手続きの手間が心配で踏み出せない
掲載サービスでできること
- 現在の使用状況から見直しの余地を確認できる:検針票などの情報をもとに、切り替えた場合の料金を試算します。見直す前に比較の材料を得られます。
- 電気の品質は切り替え前と変わらない:電気は同じ送電網を通じて届くため、切り替えで品質が変わることは一般的にありません。停電時の復旧の対応も地域の送配電会社が行います。
- 工事なしで切り替えられる場合が多い:この種の切り替えは、大がかりな工事を伴わないものが一般的です。必要な手続きは契約の内容によって違うため、資料で確認してください。
資料で確かめたいこと
- 料金単価の内訳と、燃料費などで変わる部分の仕組み
- 契約期間と、途中で解約したときの費用
- 今の契約(容量や契約の種類)に合ったプランがあるか
- 試算の前提となる使用量が実態に合っているか
- 問い合わせ先と、請求書の受け取り方
よくある質問
デマンドと契約電力は同じものですか?
デマンドは30分ごとの平均の使用電力で、その最大値が最大デマンドです。高圧の契約などでは、過去1年間の最大デマンドが基本料金の計算に使われます(出典:堺市「デマンドとは??」)。契約電力との関係は契約の種類によって違うため、検針票と約款で確認してください。
デマンド監視装置を入れれば、必ず基本料金は下がりますか?
監視装置は、デマンドが上がりそうなときに知らせる仕組みです。警報が出たときに機器を止めるなどの対応をしなければ、デマンドは下がりません。対応の手順を決めてから導入します。
夏だけ対策すればよいですか?
山ができる時期は事業所によって違います。冬の朝に暖房や給湯の立ち上げが重なって山ができる場合もあります。月ごとの最大デマンドを並べて、どの時期に山があるかを確かめてください。
家庭用と同じ低圧の契約ですが、デマンド対策は必要ですか?
堺市の資料では、従量電灯などの家庭向けの契約には、デマンドの考え方は当てはまらないとされています(出典:堺市「デマンドとは??」)。低圧の契約では、使用量そのものを減らす省エネや、契約の見直しを検討します。
ビルにテナントとして入居している場合はどうすればよいですか?
ビル全体で一つの高圧契約を結び、テナントには別の計算で電気代を請求している場合があります。その場合、自社の使い方だけで基本料金がどう変わるかは、ビルの管理会社との契約によって違います。
まずは電気代の請求の仕組みを管理会社に確認し、そのうえで照明や空調の使い方を見直します。
