電話で受けた問い合わせの内容を、あとから手で書き起こしている。担当者が不在のときに、前回の電話で何を話したかが分からない。電話の多い職場では、こうした悩みがよく聞かれます。

そこで使われ始めているのが、AIによる通話の文字起こしです。通話を録音し、AIが音声を文字にすることで、記録や共有の手間を減らせます。

この記事では、通話の文字起こしの仕組み、活用できる業務、メリット、導入の前に確かめたい個人情報と生成AIの注意点、導入の手順、ツール選びのチェックポイントを整理します。導入しなくてよいケースもあわせてまとめました。

通話の文字起こしとは|AIで電話の内容をテキストにする仕組み

通話の文字起こしとは、電話でのやり取りを録音し、その音声をAIの音声認識で文字にすることです。文字にした内容を、さらに生成AIで要約したり、決まった項目に整理したりする使い方も広がっています。

通話の文字起こしの3つの方式(電話の仕組みに組み込む、通話録音ツールと組み合わせる、録音ファイルを読み込む)の仕組みと向いている使い方を比べた表

文字起こしの仕組みは、大きく次の3つに分けられます。どれを選ぶかで、使える場面や手間が変わります。

方式仕組み向いている使い方
電話の仕組みに組み込む方式クラウド電話などの通話を自動で録音し、そのまま文字にする電話の件数が多く、すべての通話を記録したい
通話録音ツールと組み合わせる方式録音ツールで保存した通話を、文字起こしの機能で文字にするいまの電話を使いながら、録音と記録を始めたい
録音したファイルを読み込む方式録音データを文字起こしのサービスに読み込ませる特定の通話だけを、あとから文字にしたい

通話の途中で文字が表示される「リアルタイム型」と、通話が終わってから文字にする「後処理型」があります。通話中に話の要点を確かめたい場合はリアルタイム型、記録を残すことが目的なら後処理型でも足ります。

通話の文字起こしを活用できる業務

通話の文字起こしは、電話でのやり取りが仕事の中心になっている部署ほど効果が出やすくなります。代表的な使い道は次のとおりです。

通話の文字起こしを活用できる4つの業務(問い合わせ対応、電話営業、受付・取り次ぎ、応対の振り返りと教育)をまとめた図

問い合わせ・顧客対応

問い合わせの内容と対応の結果を、文字で残せます。次に同じお客様から電話があったとき、別の担当者でも前回の内容を確かめてから話せます。よくある質問の一覧を作るときの材料にもなります。

電話での営業・商談

お客様の要望や、次に連絡する日、見積もりの条件などを聞き漏らさずに記録できます。生成AIで要約し、顧客の管理の仕組みに転記すれば、通話のあとの入力の手間を減らせます。

受付・取り次ぎ

代表電話で受けた用件を、担当者にそのまま文字で渡せます。伝言のメモの書き間違いや、聞き違いを減らせます。

応対の振り返りと新人の教育

文字にした通話は、音声を聞き直すよりも短い時間で読み返せます。よい応対の例を教材にしたり、説明が伝わりにくかった場面を見つけたりするのに使えます。

AIで通話を文字起こしするメリット

通話の文字起こしを入れると、主に次のような利点があります。

  • 記録の手間が減る:通話のあとに手でメモを書き起こす時間を減らせます。
  • 「言った・言わない」を確かめやすい:やり取りの内容を、あとから文字で確かめられます。
  • 情報を共有しやすい:担当者が不在でも、ほかの人が内容を確かめて対応できます。
  • 探しやすい:言葉で検索できるため、過去の通話を音声で聞き直すより早く見つけられます。
  • 応対の質を見直せる:多くの通話を読み比べ、説明の仕方や対応の手順を改善できます。

カスタマーハラスメントへの備えとしての記録

通話の記録は、従業員を守るためにも役立ちます。2025年に労働施策総合推進法などが改正され、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になりました。施行は2026年10月1日です(出典:厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」)。改正の目的は、カスタマーハラスメントや、求職者などへのセクシュアルハラスメントなどのない職場づくりを進めることなどとされています(出典:厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」)。厚生労働省は、事業主に求められることを次のように説明しています。

職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確にし、労働者に周知・啓発しなければなりません。

出典:厚生労働省 Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」

同じ記事では、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動もカスタマーハラスメントの対象になるとされています(出典:厚生労働省 Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」)。相談窓口の設置や事実の確認も、事業主が取り組むこととして挙げられています(出典:厚生労働省 Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」)。

電話でのやり取りが記録として残っていれば、何があったかを確かめるときの手がかりになります。厚生労働省は、対策の具体例をまとめた「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の令和8年度改訂版も公表しています(出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」)。通話の記録の扱いを決めるときは、こうした資料もあわせて確かめておきます。

導入の前に確かめたい注意点|個人情報と生成AI

通話の録音と文字起こしは、お客様や取引先の声と話の内容を扱います。便利な一方で、情報の扱い方を決めずに始めると、トラブルのもとになります。

通話の内容は個人情報にあたる場合がある

個人情報保護委員会のQ&Aでは、顧客との電話の通話内容が個人情報に該当するか、通話を録音している場合に録音している旨を相手に伝える必要があるか、といった問いが取り上げられています(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」)。録音した会話に個人の氏名が含まれている場合の扱いについても、別の問いがあります(出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」)。

録音と文字起こしを始める前に、これらの回答を確かめ、利用の目的や、相手への案内の仕方を決めておきます。たとえば、電話の冒頭で「品質の向上のため、通話を録音しています」と自動音声で伝えている会社も多くあります。

生成AIに通話の内容を入れるときの注意

文字にした通話を、要約のために生成AIのサービスに入れる場合もあります。個人情報保護委員会は、2023年6月の注意喚起で、事業者に次のように求めています。

個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

つまり、お客様の情報を含む通話の内容を生成AIに入れるときは、自社が定めた利用の目的の範囲に収まっているかを確かめる必要があります。入力した内容がサービスの側でどう扱われるか、学習に使われる設定になっていないかも、あわせて確かめます(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

総務省の「AI事業者ガイドライン」も、AIを使う側の役割と心がけを示しています。2026年3月には第1.2版が公表されました(出典:総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ)。ガイドラインは、プライバシーについて次のように述べています。

各主体は、AI システム・サービスの開発・提供・利用において、その重要性に応じ、プライバシーを尊重し、保護することが重要である。

出典:総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」

ガイドラインでは、AIを使う側の役割を、AIを提供する側が意図した適正な使い方をすること、などとしています(出典:総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」)。ツールの説明書や利用規約にある使い方の範囲を守ることも、利用者の大切な務めです。総務省は、ガイドラインを使いやすくするためのチャットボットと活用の手引きも公開しています(出典:総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ)。社内のルールを作るときの参考になります。

文字起こしは間違えることがある

AIの文字起こしは、固有名詞や専門用語、数字、早口や雑音の多い通話で誤りが出やすくなります。生成AIの要約では、話していない内容が混じることもあります。金額や日付、約束した内容など大切な部分は、元の音声で確かめる決まりにしておきます。

保存の期間と見られる人を決める

録音と文字のデータは、たまり続けます。何のために、どのくらいの期間残すのか、誰が見られるのかを決めておきます。不要になったデータを消す手順まで決めておくと、管理しやすくなります。

従業員の側から見ても、自分の通話が録音され、文字で残ることになります。何のために使い、評価や指導にどう使うのかを、導入の前に従業員にも説明しておくと、不安や誤解を減らせます。

通話の文字起こしを導入する手順

文字起こしは、いきなり全社の電話に入れるのではなく、目的をしぼって小さく始めるのが確実です。次の順で進めます。

通話の文字起こしを導入する手順を、目的を決める、ルールを決める、小さく試す、使い方を広げるの4段階で示した図
  1. 目的を決める:記録の手間を減らしたいのか、引き継ぎをよくしたいのか、応対の質を見直したいのかを決めます。
  2. ルールを決める:録音の案内の仕方、利用の目的、保存の期間、見られる人、生成AIに入れてよい範囲を決めます。
  3. 小さく試す:一つの部署や一部の電話で試し、文字起こしの精度と、使い勝手を確かめます。
  4. 使い方を広げる:要約の型や、顧客の管理の仕組みへの転記の手順を決めてから、ほかの部署に広げます。

試すときは、実際の職場の電話で、雑音や話し方の違いも含めて確かめます。デモで聞く音声と、実際の通話では、精度が違うことがあるためです。

まずは通話の録音と保存から始め、内容を確かめたり共有したりしやすくしたい場合は、ツナグバ掲載のAIを活用した通話録音・管理ツールも比較の候補になります。

文字にした内容を生成AIで要約するには、AIへの指示の書き方も大切です。「顧客名、要件、次の対応、期日を箇条書きで」のように、ほしい項目と形式を決めて指示すると、要約の質がそろいます。

要約の型を決めておく

文字にした通話は、そのままでは長く、読み返すのに時間がかかります。業務ごとに要約の型を決めておくと、誰が見ても必要な情報をすぐに拾えます。たとえば、次のような型があります。

  • 問い合わせ対応:お客様の名前、問い合わせの内容、回答した内容、残っている課題、次の連絡の予定
  • 営業の電話:相手の会社と担当者、困りごと、提案した内容、相手の反応、次の対応と期日
  • 受付・取り次ぎ:かけてきた人、用件、取り次ぐ相手、折り返しの要否と連絡先

型を決めたら、要約が型どおりになっているかを、最初のうちは人の目で確かめます。足りない項目や、まちがいやすい項目が分かれば、指示の書き方を直していきます。

ツール選びのチェックポイント

通話の文字起こしができるツールは、電話の仕組みと一体のものから、録音したファイルを読み込むものまでさまざまです。比べるときは、次の点を確かめます。

確かめる点見るポイント
いまの電話との相性いま使っている電話の番号や機器のまま使えるか、電話の仕組みを替える必要があるか
文字起こしの精度自社の通話で試したときに、商品名や専門用語、数字を正しく文字にできるか
要約や整理の機能要約、話者の区別、決まった項目への整理ができるか
検索と共有言葉で過去の通話を探せるか、担当者の間で共有できるか
ほかの仕組みとの連携顧客の管理の仕組みやチャットなどに、内容を送れるか
権限と保存の設定見られる人を分けられるか、保存の期間を決めて自動で消せるか
データの扱い保存の場所、入力した内容がAIの学習に使われるかどうか
料金の決まり方利用する人数、通話の時間、文字起こしの時間で料金がどう変わるか

費用の考え方

費用は、ツールの方式と使い方で大きく変わります。利用する人数ごとの月額、通話や文字起こしの時間に応じた料金、電話の仕組みごと替える場合の初期の費用などが組み合わさります。金額は各サービスの最新の料金表や見積もりで確かめてください。

比べるときは、ひと月の通話の件数と合計の時間を先に把握しておくと、実際にかかる費用を見積もりやすくなります。あわせて、文字起こしで減らせそうな記録の時間も見積もり、費用に見合うかを判断します。

通話の文字起こしを導入しなくてよいケース

次のような場合は、文字起こしを入れなくても困らないことがあります。

  • 電話の件数が少なく、手でメモを取る手間が負担になっていない
  • 電話の内容が単純で、記録として残す必要がほとんどない
  • 録音や文字のデータを管理する担当者を、社内に置けない
  • 通話の内容の多くが、社外に出せない秘密の情報で、外部のサービスに保存できない

最初の2つにあたる場合は、電話のメモの書式をそろえるだけで足りることもあります。最後の場合は、データの保存の場所を選べるか、社内の決まりに合うかを先に確かめてください。

よくある質問

通話を録音するとき、相手に伝える必要はありますか?

個人情報保護委員会のQ&Aで、この点が取り上げられています。回答を確かめたうえで、利用の目的と相手への案内の仕方を決めてください。電話の冒頭で、録音していることを自動音声で伝える方法がよく使われています。

AIの文字起こしの精度は、どのくらい信頼できますか?

通話の音質、話し方、専門用語の多さで大きく変わります。導入の前に、自社の実際の通話で試すのが確実です。金額や日付など大切な部分は、元の音声で確かめる決まりにしておきます。

文字にした通話を、生成AIで要約してもよいですか?

使うことはできますが、お客様の情報を含む場合は、利用の目的の範囲内かを確かめる必要があります。入力した内容がサービスの側でどう扱われるかも確かめ、社内で入れてよい範囲を決めてから使います。

いまの電話のまま、文字起こしを始められますか?

ツールによります。いまの電話に録音の機能を足せるもの、電話の仕組みごと替えるもの、録音したファイルを読み込むものがあります。いまの電話の契約や機器を確かめたうえで、資料を取り寄せて比べると判断しやすくなります。

あわせて読みたい

ツナグバで、通話の記録とAI活用のサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

ITツール・SaaSの分野では、AIを活用した通話録音・管理ツールを掲載しています。電話の通話を録音・保存し、内容の確認や共有をしやすくするツールで、応対の質の確認やトラブルの防止に役立ちます。電話での営業や顧客対応が多い会社に向いています。

人材育成・研修の分野では、業務の効率化のためのAIプロンプト研修も掲載しています。生成AIへの指示文(プロンプト)の書き方を学び、日々の業務を効率化する研修です。文字にした通話の要約や整理にAIを使いたい会社は、あわせて資料を確かめられます。

AIを活用した通話録音・管理ツール

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  • 通話を自動で録音・保存できる:電話の内容を録音し、あとから聞き返せます。顧客とのやり取りを確認したいときに役立ちます。
  • AIで通話内容を文字にする機能がある:この種のツールには、通話を文字に起こしたり、要点をまとめたりする機能を持つものがあります。精度や機能の範囲は製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 応対の振り返りや共有に使える:録音や文字の記録を社内で共有し、良い対応の例を教育に使えます。担当者ごとの応対の差を見直すきっかけになります。

資料で確かめたいことの例です。

  • 今使っている電話回線や電話機で使えるか
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  • 安全な使い方のルールにも触れる:入れてはいけない情報や、答えをそのまま使わず確認する大切さを学びます。社内ルールづくりのきっかけになります。

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  • 研修の形式(対面かオンラインか)と時間
  • 受講人数ごとの費用と、追加費用の有無
  • 社内で使っているAIツールに合わせた内容か

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参考資料