来店客に「口コミを書いてもらえませんか」と頼むのは、多くの店舗で行われている集客の方法です。ところが、2023年10月からステマ規制が始まり、頼み方によっては景品表示法の違反になるおそれが出てきました。
「割引と引き換えに口コミを頼むのはだめなのか」「スタッフが自分の店の口コミを書いてもよいのか」と迷う担当者も多いはずです。
この記事では、店舗が口コミを依頼するときの線引きを、消費者庁の告示、運用基準、Q&Aをもとに整理します。違反したときの措置と、店舗で整えておきたい運用ルールもまとめました。
内容は2026年10月25日に消費者庁の公開資料で確認したものです。個別の判断に迷う場合は、消費者庁の資料を確認したうえで、弁護士などの専門家に相談してください。
ステマ規制とは
ステマは「ステルスマーケティング」の略です。消費者庁は、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すことを、いわゆるステルスマーケティングと説明しています(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)。
景品表示法の「不当表示」に追加された
ステマ規制は、新しい法律ではありません。景品表示法の不当表示の一つとして、内閣総理大臣が指定する告示が追加されたものです。告示は令和5年3月28日内閣府告示第19号で、2023年10月1日から施行されています(出典:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(告示))。
告示では、規制の対象となる表示を次のように定めています。
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
出典:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)
少し硬い言い回しですが、要するに「お店や会社が出している表示なのに、消費者からはそう見えないもの」が対象です。お店が関わった口コミを、第三者の自然な感想のように見せることが問題になります。
景品表示法の不当表示には、次の3つの類型があります(出典:消費者庁「表示規制の概要」)。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 優良誤認表示 | 商品・サービスの品質や規格などを、実際より著しく優れていると思わせる表示 |
| 有利誤認表示 | 価格などの取引条件を、実際より著しく有利だと誤認させる表示 |
| その他誤認されるおそれのある表示 | 内閣総理大臣が指定する表示。ステマはここに含まれる |
規制の対象は「広告主」
ステマ規制の対象は、投稿した人ではなく、表示の内容の決定に関与した事業者、いわゆる広告主です(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。店舗が来店客やインフルエンサーに投稿を頼んだ場合、責任を問われるのは店舗の側です。
また、施行日より前の投稿でも、施行後も表示が続いていて、事業者の表示であることが明瞭になっていなければ、行政処分の対象になる可能性があるとされています(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。昔に頼んだ投稿も、点検の対象になります。
なぜ規制されたのか
消費者庁の検討会は、2022年12月に報告書をまとめています。報告書では、広告であるのに広告と分からない表示は、消費者が中立的な第三者の感想だと受け取るため、自主的で合理的な選択を妨げると整理されています(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会 報告書」(2022年12月))。
消費者は、広告だと分かっていれば内容を少し割り引いて受け取ります。広告だと分からないと、その警戒が働きません。口コミが店選びに強く影響するからこそ、店舗の関与を隠すことが問題とされています。
判断の2段階:「事業者の表示か」と「明瞭か」
ステマにあたるかどうかは、大きく2つの段階で考えます。1つ目は、その口コミが「事業者の表示」にあたるかどうか。2つ目は、事業者の表示であることが、消費者に明瞭に分かるかどうかです。
事業者の表示にあたらなければ、規制の対象外です。事業者の表示にあたっても、「広告」「PR」などで明瞭に示していれば、ステマにはなりません。

事業者の表示にあたる場合
運用基準では、事業者が自ら行う表示だけでなく、第三者に頼んで行わせる表示も、事業者の表示にあたるとしています。販売促進の立場にある役員や従業員が、自社の商品を宣伝する投稿をする場合も含まれます(出典:消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(令和5年3月28日))。
明確な依頼がなくても、事業者が表示の内容を決められる関係があり、第三者の自主的な意思による表示とはいえない場合は、事業者の表示とされます。判断では、やり取りの内容、対価の有無、関係が続いているかなどを総合的に見ます(出典:消費者庁「運用基準」(令和5年3月28日))。
対価は金銭や物品に限られません。イベントへの招待など、経済上の利益も含まれます(出典:消費者庁「運用基準」(令和5年3月28日))。
事業者の表示にあたらない場合
一方で、第三者が自分の意思で投稿した口コミは、事業者の表示にはあたりません。運用基準は、その例として次のように示しています。
第三者が自主的な意思に基づく内容として当該ECサイトのレビュー機能を通じて、当該事業者の商品等の表示を行う場合。
出典:消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(令和5年3月28日)
ここでの要点は「自主的な意思」です。投稿の内容をお客さまが自分で決めていれば、お店が投稿のきっかけを作っていても、ただちに事業者の表示になるわけではありません。逆に、お店が内容に口を出すと、事業者の表示に近づきます。
明瞭ではないとされる表示
事業者の表示であることを示していても、分かりにくければ明瞭とはいえません。運用基準では、次のような例が挙げられています(出典:消費者庁「運用基準」(令和5年3月28日))。
- 事業者の表示である旨を、部分的にしか示していない
- 表示の末尾など、気づきにくい位置にだけ示している
- 周囲の文字より小さい、薄い色、長文の中に埋もれているなど、認識しにくい
- 動画で、認識できないほど短い時間だけ示している
- 他の情報に紛れ込ませている
「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった言葉で示すことは、明瞭にする方法の例として挙げられています。ただし、言葉を入れていても、表示全体から見て事業者の表示だと分からなければ、明瞭とはいえません。
店舗の口コミ依頼、OKとNGの線引き
店舗でよくある口コミの依頼を、消費者庁の資料の考え方にあてはめて整理します。最終的な判断は個別の事情で変わるため、目安として読んでください。

投稿を条件に割引するのは、内容を指定しなければ通常は問題になりにくい
消費者庁のQ&Aでは、サービスの利用後に予約サイトへ口コミを投稿することを条件に、割引価格で提供する例を取り上げています。投稿内容の指示がなく、割引程度の関係にとどまる場合は、表示の内容の決定に関与したとはいえず、通常は事業者の表示にあたらないとされています(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。
ただし、口コミサイトや地図サービスには、それぞれ独自の投稿ルールがあります。法律上の問題になりにくくても、サービスの規約で特典と引き換えの依頼が制限されていることがあるため、使っている媒体の規約もあわせて確認してください。
星5や、ほめる内容を条件にするのはNG
同じQ&Aでは、星5をつけることを条件にした場合について、次のように答えています。
一方で、後段の場合、口コミ投稿に当たって、「星5(☆☆☆☆☆)」を付けることが条件とされており、事業者は表示(投稿)の内容を決定しているといえるため、「事業者の表示」に当たると考えられます。
出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」(Q6)
Q&Aでは、品質や価格などをほめるコメントを条件にする場合も同様とされています。店舗が評価や内容を指定した口コミは、事業者の表示です。その旨を明瞭に示さなければ、告示に違反することになります。
従業員や家族が、客を装って投稿するのはNG
販売促進の立場にある従業員が、自店の宣伝になる口コミを書けば、事業者の表示にあたります。お客さまの感想のように見せて投稿すれば、消費者は店舗の表示だと判別できません。
アルバイトを含め、スタッフが自店の口コミを書かないことを、ルールとして明文化しておくと安全です。家族や知人に頼む場合も、店舗が頼んで書かせた投稿である点は変わりません。
業者に口コミを書かせる、競合店の悪い口コミを頼むのはNG
外部の業者に頼んで口コミを投稿させれば、事業者の表示です。運用基準は、競合他社の商品について低い評価を投稿させる場合も、事業者の表示にあたる例として挙げています(出典:消費者庁「運用基準」(令和5年3月28日))。
よい口コミだけを抜き出して自社サイトに載せるのは注意
自社サイトやチラシに口コミを載せる場合、好意的な意見だけを恣意的に抜き出し、消費者が判別しにくい方法で表示すると、事業者の表示とされます。内容を変えずにそのまま引用する場合は、事業者の表示とはされないと整理されています(出典:消費者庁「運用基準」(令和5年3月28日))。
招待や無料提供でSNSに投稿してもらう場合
インフルエンサーや常連客を招待し、無料で料理やサービスを提供してSNSに投稿してもらうケースもあります。投稿の内容について店舗とやり取りがなく、相手が自分の意思で投稿したと認められれば、事業者の表示にはなりません。
一方で、投稿をお願いし、内容や写真、ハッシュタグを指定するなら、事業者の表示です。その場合は「PR」「広告」などを、投稿の冒頭など分かりやすい位置に入れてもらうよう依頼してください。
違反した場合の措置
告示に違反した場合、消費者庁は事業者に対して、誤認を取り除くこと、再発防止策の実施、今後同じ行為をしないことなどを命じる措置命令を行うとしています(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。
ステマの告示違反そのものは、原則として課徴金納付命令の対象にはなりません。ただし、違反行為に優良誤認表示や有利誤認表示が含まれる場合は、課徴金の対象になることがあります。違反の事実が認められなくても、違反のおそれがある行為には指導が行われることがあります(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。
行政上の措置に加えて、口コミ操作が知られれば、店の信頼そのものが傷つきます。口コミは店選びの判断材料として読まれるため、一度失った信頼を取り戻すには時間がかかります。
店舗で整えておきたい運用ルール
ステマ規制への対応は、特別なことをするより、口コミの頼み方と社内のルールを決めておくことが中心です。

1. 頼み方を統一する
口コミの依頼は、スタッフごとに言い方が変わると、意図せず内容を指定してしまうことがあります。声かけやカード、メールの文面を決めておきましょう。
- よい例:「よろしければ、ご来店の感想を口コミでお聞かせください」
- 避けたい例:「星5でお願いします」「おいしかったと書いていただけたら割引します」
2. スタッフの投稿ルールを決める
アルバイトを含むスタッフが、自店や競合店の口コミを書かないことを、就業時のルールとして伝えます。SNSで自店を紹介する場合は、店舗の関係者であることが分かるように書く、といった決まりも決めておきます。
3. 招待やタイアップは「PR」表記を取り決める
インフルエンサーへの依頼や招待では、投稿に「PR」などを入れる位置と書き方を、事前に文書で取り決めます。動画の場合は、冒頭など気づきやすい位置での表示を依頼します。
4. 外部に任せる場合も、責任は店舗に残る
集客や口コミ対策を外部に任せる場合でも、規制の対象は広告主である店舗です。依頼先がどのような方法で口コミを集めているかを確認し、投稿の代行や内容の指定をしないことを契約で決めておきましょう。
口コミの管理や返信、地図検索での表示対策などをまとめて効率化したい場合は、店舗の口コミ管理と集客をまとめて効率化するツールのようなサービスもあります。導入する場合も、口コミの集め方そのものは自店のルールにそって運用してください。
5. 過去の投稿を点検する
施行前に頼んだ投稿でも、表示が続いていれば対象になりえます。過去にインフルエンサーやブロガーに依頼した投稿、自社サイトに載せている口コミを洗い出し、必要に応じて「PR」の追記や掲載の見直しを依頼します。
自社でできること、外部に頼まなくてよいケース
ステマ規制への対応の多くは、店舗の中で完結します。頼み方の統一、スタッフへのルールの周知、過去の投稿の点検は、外部に頼まなくても進められます。
店舗が1〜2店で、口コミの数もまだ少ない段階では、まずは来店客への声かけを丁寧に続け、届いた口コミに一つずつ返信するだけでも十分なことがあります。
一方で、店舗が多い、複数の口コミサイトや地図サービスを使っている、担当者が手作業で追いきれない、といった場合は、口コミの管理をツールで効率化したり、集客の実務を外部に任せたりする選択肢が出てきます。どちらを選ぶ場合も、口コミの内容を店舗が操作しないという原則は変わりません。
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- 口コミをまとめて確認・返信できる:店舗に寄せられた口コミを一つの画面で確認できるものが一般的です。返信の漏れを減らし、対応を管理しやすくなります。
- 地図検索での表示を整える作業を支える:営業時間や写真など、地図検索に出る店舗情報の管理を助けます。表示の順位を約束するものではありません。
- 複数店舗の情報をまとめて管理できる:店舗が複数ある場合も、情報の更新を一か所から行える形が一般的です。対応する範囲は製品によって違うため、資料で確認してください。
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- 対応している口コミサイトや地図サービスの範囲
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よくある質問
「口コミを書いてください」と声をかけるだけでも違反になりますか?
内容を指定せず、お客さまが自分の意思で書く形であれば、通常は事業者の表示にあたりにくいと考えられます。消費者庁のQ&Aでも、投稿を条件にした割引について、投稿内容の指示がなければ通常は告示に違反しないとしています。星5やほめる内容を求めるのは避けてください。
スタッフが個人のSNSで自分の店を紹介してもよいですか?
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口コミを集める業者に頼んだ場合、責任は誰にありますか?
ステマ規制の対象は、表示の内容の決定に関与した事業者、いわゆる広告主です。店舗が業者に頼んで口コミを投稿させた場合、店舗が責任を問われます。
2023年10月より前に頼んだ投稿はどうすればよいですか?
施行後も表示が続いていて、事業者の表示であることが明瞭でなければ、行政処分の対象になる可能性があるとされています。依頼した投稿を洗い出し、「PR」などの追記を依頼するか、掲載の見直しを検討してください。
参考資料
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」(2026年10月25日確認)
- 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)
- 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(令和5年3月28日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」(2026年10月25日確認)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会 報告書」(2022年12月)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会」(2026年10月25日確認)
- 消費者庁「景品表示法」(2026年10月25日確認)
- 消費者庁「表示規制の概要」(2026年10月25日確認)
