RPAを導入したものの、思ったほど作業が減らなかった、ロボットがすぐ止まってしまう、という声は少なくありません。多くの場合、原因はツールではなく、自動化する業務の選び方にあります。

この記事では、RPAに向いている業務と向いていない業務の見分け方を、5つの特徴、部門別の例、チェックリストに分けて整理します。総務省の調査にもとづく導入の効果と課題、導入の手順、RPA以外の方法を選んだほうがよいケースもまとめました。

RPAとは

RPAは、パソコン上の決まった操作を、ソフトウェアのロボットに代わりに行わせる仕組みです。総務省のガイドブックは、RPAを次のように説明しています。

RPA(Robotic Process Automationの略)は、普段人が行う定型的なパソコン操作をソフトウェアのロボットが代替して自動化するものです。

出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月)

RPAは、人が画面で行うクリックや入力、コピーと貼り付けなどの手順を、そのまま覚えて繰り返します。手順を記録したものは「シナリオ」と呼ばれます。既存のシステムを作り直さずに、複数のシステムをまたぐ作業を自動化できる点が特徴です。

生成AIとの違いも押さえておきます。総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成AIの活用方針について「わからない」と回答した企業を除いた集計で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した日本企業の割合は86.4%でした(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの業務利用状況)。生成AIは文章の作成や要約など、内容を考える作業を助けます。RPAは、決まった手順を正確に繰り返す作業に向いています。両者は役割が違い、組み合わせて使うこともできます。

RPAに向いている業務の5つの特徴

RPAが効果を出しやすい業務には、共通する特徴があります。ガイドブックは、RPAが真価を発揮できるのは、同じ処理を何件も繰り返し行う必要があるときだとしています(出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月))。また、RPAに行わせるのは、判断を必要としない、または判断の条件をすべて定義しきれるような単純作業だとしています(出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月))。

RPAに向いている業務の特徴を、手順が決まっている、判断が不要か条件を書き出せる、件数や頻度が多い、データが電子化されている、システム間の転記や照合の5つで示した図
  • 手順が決まっていて、毎回同じ流れで進む
  • 判断が必要ない、または判断の条件をすべて書き出せる
  • 同じ処理を何件も繰り返す、または頻度が高い
  • 扱うデータが電子化されていて、形式がそろっている
  • 複数のシステムやファイルの間で、転記や照合をしている

5つすべてに当てはまる必要はありませんが、当てはまる数が多いほど、RPAの効果は出やすくなります。特に「判断が必要ない」と「データが電子化されている」は、外せない条件です。

部門別の向いている業務の例

部門向いている業務の例
経理請求データの会計システムへの入力、入金データと請求データの照合
人事・総務勤怠データの集計、入退社に伴う複数のシステムへの登録
営業受注データの基幹システムへの転記、定期的な売上レポートの作成
情報システムアカウントの発行・削除の作業、定期的なデータのバックアップ
カスタマーサポート問い合わせ内容のシステムへの登録、定型の回答メールの送信

表の業務は一般的な例です。同じ業務でも、会社によって手順や例外の多さが違うため、実際の手順を書き出してから判断します。

RPAに向いていない業務

一方で、RPAには苦手な業務もあります。ガイドブックは、RPAの限界を次のように説明しています。

人間のようにあらゆる状況に応じてその都度判断し、迷ったら指示を仰ぐということはできません。

出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月)

このため、次のような業務はRPAに向きません。

  • 毎回、内容を読んで判断する必要がある業務(契約内容の審査、クレームへの対応など)
  • 例外が多く、手順が決まっていない業務
  • 紙の書類や手書きの情報をもとに進める業務
  • 画面の構成や手順がひんぱんに変わる業務
  • 年に数回しか発生しない業務

例外が多い業務でも、例外の部分だけを人が対応し、定型の部分だけをRPAに任せる分け方はできます。業務全体を自動化しようとせず、自動化できる部分を切り出すのが現実的です。

向いているかを見分けるチェックリスト

自動化する業務を選ぶときは、次の点を一つずつ確かめます。

RPAに向いているかを見分けるチェックリストを、手順を書き出せるか、判断の条件、データの電子化、件数と時間、手順や画面の変更予定、止まったときの担当者、業務の見直しでなくせないかの7項目で示した図
  • 作業の手順を、ほかの人に説明できるほど書き出せるか
  • 判断が必要な場面と、その条件を書き出せるか
  • 扱うデータは電子化されていて、形式がそろっているか
  • 月にどのくらいの件数があり、1件に何分かかっているか
  • 手順や画面が、近いうちに変わる予定はないか
  • ロボットが止まったときに、対応できる担当者がいるか
  • 業務そのものを見直せば、なくせる作業ではないか

効果の大きさは、月の件数と1件あたりの作業時間をかけ合わせると見積もれます。ただし、シナリオの作成や修正にかかる時間、ツールの費用、止まったときの対応の手間も含めて比べる必要があります。件数が少ない業務は、作成と保守の手間のほうが大きくなることがあります。

自治体の導入状況と効果・課題

RPAの導入が進んでいる分野の一つが、地方自治体です。総務省の令和7年度の調査は、令和7年10月31日時点の状況について、1,788団体すべてから回答を得て行われました(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」(令和8年4月24日版))。調査結果は令和8年4月24日に公表されています(出典:総務省「令和7年度『地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査』の調査結果の公表」(令和8年4月24日))。

総務省の令和7年度調査による自治体のRPA導入済みの割合を、都道府県98%、指定都市100%、その他の市区町村44%で示した棒グラフ

この調査によると、RPAを導入済みの割合は、都道府県が98%、指定都市が100%、その他の市区町村が44%でした(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」(令和8年4月24日版))。実証中、導入予定、導入検討中を含めると、約62%がRPAの導入に向けて取り組んでいます(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」(令和8年4月24日版))。令和4年の資料では、導入済みの割合は都道府県が91%、指定都市が95%とされており、導入が広がってきたことが分かります(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進」(令和4年6月27日版))。

効果の例として、都道府県の河川海岸等許可台帳システムへの入力業務で年間3,300時間の削減(99%減)、住所異動データの入力業務で年間4,000時間の削減(40.0%削減)が示されています(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」(令和8年4月24日版))。いずれも、同じ形式のデータを大量にシステムへ入力する業務です。

一方で、導入の課題も示されています。複数回答で最も多かったのは「取り組むための人材がいない又は不足している」の1,026件で、コストが高額で予算の獲得が難しいとする回答が621件、RPAの技術を理解することが難しいとする回答が495件でした(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」(令和8年4月24日版))。民間の会社でも、担当者の確保と費用は同じように課題になりやすい点です。総務省は、毎年度この調査の結果を公表しています(出典:総務省「令和6年度『地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査』等の調査結果の公表」(令和7年6月30日))。

RPAの導入の手順

RPAの導入は、次の流れで進めると、使われないロボットを作るのを防げます。

  1. 業務を洗い出す:手作業で繰り返している業務を一覧にし、件数と時間を記録する
  2. 業務を見直す:なくせる作業、まとめられる作業がないかを先に確かめる
  3. 対象の業務を選ぶ:チェックリストで向いている業務を選び、効果の大きい順に並べる
  4. ツールを選んで試す:小さな業務で試し、作成と修正のしやすさを確かめる
  5. 運用のルールを決める:誰が作り、誰が直し、止まったときにどうするかを決める

ガイドブックは、設定した目標を達成できるよう、RPAを導入するだけでなく業務の見直しを行うことが効果的だとしています(出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月))。手順の多い業務をそのままロボットに覚えさせるより、手順を減らしてから自動化したほうが、作成も保守も楽になります。

作ったロボットを使い続けるには、保守と引継ぎの体制が欠かせません。

一度作成したRPAを引き続き使い続けることができるよう、「シナリオ」はメンテナンスのしやすさを考慮しながら作成し、引継ぎを通じて継承していくことが大切です。

出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月)

ガイドブックは、RPAを安全かつ有効に利用できるよう、全体的なガバナンス体制を整え、共通的なルールを作成することが必要だとしています(出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月))。作った人しか分からないロボットが増えると、担当者の異動で止まったまま放置されることがあります。ロボットの一覧、作成者、使っているIDとパスワードの管理方法を決めておきます。

ロボットが使うIDやパスワードの管理も、情報セキュリティの対策の一つです。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編では、「内部不正による情報漏えい等」が7位に入っています(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」)。ロボットに与える権限は必要な範囲にとどめ、操作の記録を残します。社内の対策を見直すときは、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も参考になります(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。

ツールを選ぶときは、社内で作成や修正を担う人がいるかどうかが大きな判断材料になります。専門の知識がなくても扱いやすいツールや、複数人で使えるツールもあります。ツナグバでは、複数人での利用や、専門知識がなくても扱いやすい点を特徴とする複数人で使える国産のRPAツールを掲載しています。

導入後に効果を確かめ、広げる

ロボットを動かし始めたら、削減できた時間、止まった回数、修正にかかった時間を記録します。導入前に見積もった効果と比べると、次に自動化する業務を選ぶときの判断材料になります。

止まる回数が多いロボットは、対象の業務が向いていないか、シナリオの作り方に問題があることが多いものです。止まった理由を記録し、手順の見直しやシナリオの修正につなげます。

効果が確かめられた業務は、ほかの部署の似た業務にも広げられます。総務省の資料も、庁内での横展開や先進事例の横展開が効果的だとしています(出典:総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進」(令和4年6月27日版))。社内で使えたロボットの例を共有し、自動化したい業務の相談を受け付ける窓口を決めておくと、取り組みが広がりやすくなります。

RPA以外の方法を選んだほうがよいケース

RPAは、業務の自動化の方法の一つにすぎません。次のような場合は、ほかの方法も比べます。

状況考えられる方法
使っているアプリ同士でデータを受け渡したいアプリを連携させる自動化ツール
使っているシステムに、同じ機能があるシステムの設定や標準の機能を使う
作業そのものが不要かもしれない業務の手順を見直し、作業をなくす
内容を読んで判断する作業が中心人が対応する、または生成AIで補助する

社内で使っているアプリがAPI(システム同士をつなぐ仕組み)で連携できる場合は、画面の操作を再現するRPAより、アプリ同士を直接つなぐ方法のほうが止まりにくいことがあります。費用は、ツールの料金だけでなく、作成と保守にかかる社内の時間も含めて比べます。RPAの費用も、利用する人数や台数、作るロボットの数によって変わるため、同じ条件で見積もりを取って比べます。

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ツナグバで、RPAと業務自動化のサービスを比べる

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自動化したい業務と件数、使っているシステムをまとめたうえで、資料で詳細を確認してください。

複数人で使える国産のRPAツール

こんな課題に向いています。

  • 毎日の転記や集計に時間を取られ、本来の仕事に手が回らない
  • 自動化を試したいが、社内に専門知識を持つ人がいない
  • 一人が作った自動化の仕組みを、ほかの人が直せず困っている

主な特徴は次のとおりです。

  • パソコンの定型作業を自動化できる:RPA(パソコン作業を自動で行うソフト)を使い、決まった手順のくり返し作業を任せられます。入力や転記、ファイルの整理などが対象になります。
  • 複数人で使うことを前提にしている:作った自動化の手順を、複数の人で共有したり管理したりできます。担当者が変わっても、仕組みを引き継ぎやすくなります。
  • 国産のため日本語で使える:画面や説明書、問い合わせ窓口が日本語に対応しています。サポートの範囲や対応時間は製品によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいことの例です。

  • 自動化したい作業に、いま使っているソフトが対応しているか
  • 料金が利用人数ごとか、パソコンの台数ごとか
  • 専門知識のない担当者が手順を作れるか、デモで確かめられるか

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社内のアプリをつなぎ、業務を自動化するツール

こんな課題に向いています。

  • あるシステムの情報を、別のシステムに手で入力し直している
  • 問い合わせが届くたびに、担当者へ手作業で連絡している
  • 社内で使うアプリが増え、情報がどこにあるか分からなくなっている

主な特徴は次のとおりです。

  • 複数のアプリやシステムをつなげる:社内で使っているアプリ同士を連携させ、情報を受け渡せます。どのアプリと連携できるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 転記や連絡を自動で行える:ある操作をきっかけに、決まった処理を自動で行う設定ができます。手作業の転記や、関係者への連絡の手間を減らせます。
  • 画面上で処理の流れを組み立てられる:プログラムを書かずに、画面上で処理の流れを設定できるものが一般的です。ただし設定には、業務の流れを整理しておくことが欠かせません。

資料で確かめたいことの例です。

  • いま使っているアプリやシステムと連携できるか
  • 料金が処理の回数や件数で変わるか、上限はあるか
  • 設定を社内の担当者が行えるか、支援を受けられるか

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よくある質問

RPAを導入すれば、担当者は不要になりますか?

不要にはなりません。ロボットを作る人、直す人、止まったときに対応する人が必要です。例外の処理や判断が必要な部分も、人が担当します。

プログラミングの知識がなくても、RPAは使えますか?

画面上の操作でシナリオを作れるツールが多く、プログラミングの知識がなくても始められる場合があります。ただし、業務の手順を正確に書き出す力や、エラーへの対応は必要になります。

どのくらいの件数があれば、RPAの効果が出ますか?

決まった基準はありません。月の件数と1件あたりの時間から削減できる時間を見積もり、作成と保守にかかる時間や費用と比べて判断します。件数が少ない業務は、効果より手間が上回ることがあります。

RPAとAIは、どう使い分ければよいですか?

決まった手順を正確に繰り返す作業はRPA、内容を読んで判断や要約をする作業はAIが向いています。AIで読み取った内容をRPAでシステムに入力するように、組み合わせて使う方法もあります。

参考資料