エクセルの関数が思い出せない、マクロを組みたいが書き方が分からない、データの整理に毎月時間がかかる。こうした悩みに、生成AIを使う会社が増えています。一方で、「どこまで任せてよいのか」「社内のデータを入れても大丈夫か」と迷って、使い方が定まらない会社も少なくありません。

この記事では、生成AIをエクセルの業務に活用する方法を、使える場面、指示(プロンプト)の書き方、注意点、社内での進め方に分けて解説します。公的機関の調査とガイドラインをもとに、任せてよいことと人が確かめるべきことの線引き、社内に広げるときの判断の基準まで整理しました。

企業での生成AIの利用は広がっている

まず、企業での利用の状況を確認しておきます。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)によると、日本の企業で生成AIの活用方針を「積極的に活用する方針」「活用する領域を限定して利用する方針」と回答した割合の合計は、2025年度調査で68.9%となり、2024年度調査の49.7%から大きく上昇しました(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」)。

日本の企業で生成AIの活用方針を定めている割合が、2024年度調査の49.7%から2025年度調査の68.9%に上昇したことを示す棒グラフ

同じ資料では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は86.4%で、業務の種類では「議事録・メール作成補助」の回答割合が約7割と最も高いとされています(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」)。この調査は、従業員10名以上で、デジタル化の取り組みを始めた企業に勤める管理職以上を対象としたものです。すべての企業の平均ではない点に注意が必要です。

個人の利用も広がっています。同じ資料では、日本における生成AIの利用率(利用経験率)は2025年度調査で58.8%となり、2024年度調査の26.7%から大きく上昇したとされています。ただし、2025年度調査からは15歳から19歳も対象に加えており、20歳以上の利用率は52.2%でした(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」)。社員の中には、仕事とは別に個人で生成AIを使い慣れている人もいれば、まったく使ったことがない人もいる、という前提で進め方を考える必要があります。

一方で、前年の令和7年版の白書では、日本の中小企業では生成AIの活用方針を「明確に定めていない」との回答が約半数を占め、導入の懸念として「効果的な活用方法がわからない」が最も多かったとされています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅰ部第1章第2節)。エクセルは多くの社員が毎日使う道具なので、活用方法が分からないという壁を越える最初の題材に向いています。

生成AIでエクセル作業はどこまで助けてもらえるか

生成AIがエクセルの作業で役に立つのは、主に「作り方を教えてもらう」「たたき台を作ってもらう」場面です。代表的な使い方を整理すると、次のとおりです。

作業生成AIに頼めること人が確かめること
関数を作るやりたいことを文章で伝え、関数の式を作ってもらう実際のデータで、想定どおりの結果になるか
関数やエラーを理解する式の意味や、エラーが出る原因の候補を説明してもらう説明が自分のファイルの状況に合っているか
マクロを作る繰り返しの作業を自動化するVBAのコードを書いてもらうコードの内容と、元のファイルへの影響
データを整える表記ゆれの直し方や、表の形を整える手順を教えてもらう直したあとのデータに抜けや重複がないか
集計結果をまとめる集計した数字から、報告用の文章のたたき台を作ってもらう数字の読み取りと、結論の妥当性

表の右の列にあるように、どの場面でも最後に人が確かめる工程が残ります。生成AIは式やコードを作るのは得意ですが、そのファイルの中身や業務の前提を知りません。答えが正しく見えても、自社のデータで正しく動くとは限らないためです。

エクセルの作業ごとに、生成AIに頼めることと人が確かめることを、関数、マクロ、データの整理、集計結果のまとめに分けて示した表

使える場面ごとの活用のしかた

関数を作ってもらう

関数の名前や引数の順番を覚えていなくても、やりたいことを文章で伝えれば、式のたたき台を作ってもらえます。たとえば「A列に日付、B列に担当者名、C列に売上金額がある表で、担当者ごとの今月の売上合計を出したい」と伝えると、条件つきの合計を出す関数の候補が返ってきます。

うまく使うこつは、列の構成と、どのセルに結果を出したいかを具体的に書くことです。返ってきた式は、少ない件数のデータで手計算と照らし合わせ、正しく動くかを確かめてから全体に広げます。

マクロ(VBA)のコードを書いてもらう

毎月同じ手順で行っている転記や並べ替え、ファイルの分割などは、マクロにすると手間を減らせます。これまでは書き方を学ぶ時間が壁になっていましたが、生成AIにコードを書いてもらうことで、始めやすくなりました。

自治体の例では、愛知県日進市が、全職員が使える対話型AIサービスを導入し、エクセルの関数やマクロのプロンプトを紹介する活用事例集を作りました。令和6年度の業務時間の削減効果は職員へのヒアリングで約858時間、生成AIを利用した職員の85%が業務効率化の効果を実感し、特に効果が大きかった活用方法はエクセルのマクロのコード作成だったとされています(出典:総務省 地域DXポータルサイト「自治体DX推進参考事例集」愛知県日進市の事例)。

ただし、マクロは使い方を誤ると、元のデータを上書きしたり消したりすることがあります。生成AIが書いたコードは、必ずファイルのコピーで試してから使います。また、インターネットから取得したファイルのマクロは、セキュリティの観点から既定でブロックされる設定になっています(出典:Microsoft Learn「インターネットからのマクロは、Office で既定でブロックされます」)。出どころの分からないマクロ付きのファイルを、生成AIの回答に従って安易に開かないようにします。

データの整理と、集計結果のまとめ

「株式会社」と「(株)」が混ざっている、全角と半角がそろっていないといった表記ゆれは、手で直すと時間がかかります。生成AIに直し方を相談すると、置換や関数を使った手順を示してくれます。集計が終わったあとに、数字の変化を報告用の文章にまとめるたたき台を作ってもらう使い方もあります。

このとき、数字の読み取りを生成AIに任せきりにしないことが大切です。前の月と比べて増えたのか減ったのか、その理由は何かといった判断は、業務を知っている人が行います。

操作の手順を聞く

ピボットテーブルの作り方や、グラフの種類の選び方、条件付き書式の設定など、メニューの場所を探すのに時間がかかる操作も、生成AIに手順を聞くことができます。「売上の推移を月ごとに比べたい」のように目的を伝えると、合う表やグラフの作り方を提案してもらえます。画面の表示はエクセルの種類やバージョンで違うことがあるため、使っている環境を伝えておくと、手順の行き違いが減ります。

伝わる指示(プロンプト)の書き方

生成AIから使える答えを引き出せるかどうかは、指示の書き方で大きく変わります。エクセルの作業を頼むときは、次の点を入れると答えの精度が上がりやすくなります。

  • 表の構成:どの列に何が入っているか(見出しの名前、データの種類)
  • やりたいこと:何を求めたいのか、どこに結果を出したいのか
  • 条件:対象にする期間や、除外したいデータ
  • 使っている環境:エクセルの種類や、使える関数の制約
  • 出力の形:式だけ欲しいのか、手順の説明も欲しいのか
  • 入力の例:架空の数字で作った、数行の見本のデータ

見本のデータを渡すときは、実際の顧客名や金額を使わず、架空の値に置き換えます。最初の答えが期待と違っていても、何が違うのかを伝えて直してもらえば、少しずつ近づけられます。

使う前に知っておきたい注意点

個人情報と社外秘の情報を入力しない

エクセルには、顧客の名前や連絡先、社員の給与など、扱いに注意が必要な情報が入っていることが多くあります。個人情報保護委員会は、生成AIサービスを使う事業者に対して、次のように注意を呼びかけています。

個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)

実務では、ファイルをそのまま生成AIに読み込ませるのではなく、列の構成と架空のデータだけを伝える方法が安全です。入力した情報がサービスの学習に使われるかどうか、どこに保存されるかも、使うサービスごとに確かめておきます。

答えには誤りが含まれることがある

生成AIの答えには、誤りが含まれる可能性があります。情報処理推進機構(IPA)のガイドラインは、生成物に現実には存在しない情報や事実と異なる内容が含まれる場合があるため、常に正確性を確認する必要があるとしています(出典:独立行政法人情報処理推進機構「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」)。

エクセルの場合、存在しない関数を示されたり、条件の範囲がずれた式を返されたりすることがあります。総務省と経済産業省のガイドラインも、AIに判断を任せきりにしないことを求めています。

AI の出力結果が公平性を欠くことがないよう、AI に単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討する。

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」(令和7年3月28日)

この考え方は、エクセルの作業にもそのまま当てはまります。生成AIが作った式やコードで出した数字を、そのまま社外への報告や請求に使う前に、必ず人が確かめる工程を入れます。

社内の利用ルールを先に決めておく

令和7年版の白書では、日本の企業が生成AIの導入に際して懸念することとして、「効果的な活用方法がわからない」に次いで、「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」「ランニングコストがかかる」「初期コストがかかる」が挙げられています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅰ部第1章第2節)。

IPAのガイドラインでは、組織へのヒアリングの結果として、生成AIの取り扱い方法や規則をまとめたガイドラインやポリシーを作ること、誰がどのような内容を入力し、どのような出力を得たかを記録しておくことが、情報漏えいへの対策として紹介されています(出典:独立行政法人情報処理推進機構「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」)。小さな会社であっても、使ってよいサービス、入力してはいけない情報、答えを使う前の確認の方法の3点は、文書にして社員に伝えておくと安心です。

社内で活用を広げる進め方

4つのステップで進める

一部の人だけが使っている状態から、社内で使える状態にするには、次の順で進めると無理がありません。

生成AIのエクセル活用を社内に広げる進め方を、対象を選ぶ、ルールを決める、小さく試す、共有するの4つの段階で示した図
  1. 対象を選ぶ:毎月繰り返している、手順が決まっているエクセル作業を選ぶ
  2. ルールを決める:入力してよい情報と、いけない情報を決めて周知する
  3. 小さく試す:コピーしたファイルで試し、手計算や元の結果と照らし合わせる
  4. 共有する:うまくいった指示の書き方を、社内で共有して使い回す

総務省の白書でも、先進的な取り組みを進める企業の特徴として、人材育成や利用ポリシー・ガイドラインの整備、評価の仕組みづくりを進めていることが挙げられています(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」)。道具を入れるだけでなく、使い方を学ぶ機会とルールをそろえることが、活用を広げる近道です。

作った式やマクロを属人化させない

生成AIのおかげで、詳しくない人でも関数やマクロを作れるようになりました。その反面、作った本人しか中身を分からないファイルが増えるおそれがあります。担当者が異動したあとに誰も直せない、という状態は避けたいところです。

対策としては、マクロの冒頭に何をするコードなのかを書いておく、どの生成AIにどんな指示を出して作ったかを記録しておく、使っているファイルの一覧と担当者を決めておく、といった方法があります。生成AIにコードの説明文を書いてもらえば、記録を残す手間も減らせます。

研修や外部の支援を検討する目安

自社だけで進めるか、研修や外部のサービスを使うかは、次の点で考えると判断しやすくなります。

  • 生成AIを使っているのが一部の社員にとどまり、社内に広がらない
  • 指示の書き方が人によってばらばらで、答えの質に差が出ている
  • 入力してよい情報の線引きを、社内で決めきれていない
  • うまくいった使い方を、社内で共有するしくみがない

当てはまるものが多い場合は、指示の書き方を業務の題材で学べるAIプロンプト研修や、業務ごとの指示文を社内で共有できるサービスを検討する価値があります。

費用の考え方

研修の費用は、受講する人数、形式(対面かオンラインか)、時間、自社の業務に合わせた調整の有無で変わります。業務で使うサービスは、利用する人数ごとの料金か、利用量に応じた追加の費用があるかで総額が変わります。比べるときは、同じ人数と期間の条件で見積もりを取り、研修後の質問対応や導入時の支援が含まれるかも確かめます。

無理に外部の支援を入れなくてよいケース

次のような場合は、まず社内で小さく試すことから始めても十分です。

  • エクセルを使う業務が少なく、対象になる作業が限られている
  • 社内に生成AIに詳しい人がいて、ルールづくりと教える役を担える
  • 扱うデータに個人情報や社外秘の情報がほとんどない

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ツナグバで、生成AIの活用を支えるサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

生成AIの活用に関しては、生成AIへの指示文(プロンプト)の書き方を学び、日々の業務を効率化する研修と、業務ごとに用意された指示文を使って社員が生成AIを活用できるようにする業務プラットフォームを掲載しています。

社員の学び方を整えたいのか、日々の業務で使える環境を整えたいのかによって、合うサービスは変わります。自社の課題に照らして、資料を取り寄せて比べてみてください。

業務効率化のためのAIプロンプト研修

こんな課題に向いています。

  • 生成AIを使ってみたが、思うような答えが返ってこない
  • 一部の社員しかAIを使っておらず、社内に広がらない
  • AIに社内の情報を入れてよいのか判断できない

主な特徴は次のとおりです。

  • 指示文(プロンプト)の書き方を基礎から学べる:AIに何をどう伝えればよいかを、例を使って学びます。目的に合った答えを引き出す考え方を身につけます。
  • 自社の業務に合わせた題材で練習できる:メール作成や資料のまとめなど、日々の仕事を題材にした演習を行うものが一般的です。題材を調整できるかは製品によって違うため、資料で確認してください。
  • 安全な使い方のルールにも触れる:入れてはいけない情報や、答えをそのまま使わず確認する大切さを学びます。社内ルールづくりのきっかけになります。

資料で確かめたいことの例です。

  • 研修の形式(対面かオンラインか)と時間
  • 受講人数ごとの費用と、追加費用の有無
  • 社内で使っているAIツールに合わせた内容か

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社員全員が生成AIを使いこなせる業務プラットフォーム

こんな課題に向いています。

  • 生成AIを導入したが、使っているのは一部の社員にとどまっている
  • 社員がAIにどう指示を書けばよいか分からず、活用が進んでいない
  • 社員が個人で生成AIを使っていて、情報の扱いに不安がある

主な特徴は次のとおりです。

  • 業務ごとに指示文(プロンプト)が用意されている:議事録やメールの下書きなど、業務ごとに使える指示文が用意されています。指示の書き方に慣れていない社員も使い始めやすくなります。
  • 社内で使い方を共有できる:よく使う指示文を社内で共有できるものが一般的です。うまくいった使い方を広げやすくなります。
  • 会社として利用を管理できる:誰がどのように使っているかを管理者が確認できる製品があります。管理機能や情報の扱いは製品によって違うため、資料で確認してください。

資料で確かめたいことの例です。

  • 利用人数ごとの料金と、利用量による追加費用の有無
  • 入力した情報がAIの学習に使われないか、保存先はどこか
  • 自社の業務に合った指示文を追加・編集できるか

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よくある質問

生成AIにエクセルのファイルをそのまま読み込ませてもよいですか?

ファイルに個人情報や社外秘の情報が含まれている場合は、そのまま読み込ませないほうが安全です。列の構成と架空のデータだけを伝えれば、関数やマクロの作り方は教えてもらえます。会社として使ってよいサービスと、入力してよい情報の範囲を決めておきます。

生成AIが作った関数が正しいかは、どう確かめればよいですか?

少ない件数のデータで手計算した結果と照らし合わせるのが確実です。空白のセルや、条件に当てはまらないデータが混ざった場合の動きも試しておきます。

マクロの知識がなくても、生成AIでマクロを作れますか?

コードを書いてもらうことはできますが、内容をまったく理解せずに使うのは避けます。何をするコードなのかを生成AIに説明してもらい、ファイルのコピーで動きを確かめてから使います。

無料で使える生成AIサービスを業務に使ってもよいですか?

会社として利用を認めているかどうかが先です。入力した情報がサービスの学習に使われるか、保存される期間や場所はどこかは、サービスや設定によって違います。業務で使うサービスと設定を会社で決め、社員が個人の判断で使い分けない状態にしておくと安心です。

参考資料